
[ ブランディングデザイン ]
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?効果と成功事例
VI(ビジュアル・アイデンティティ)は、企業やブランドの価値を視覚的な要素を通じて効果的に伝える重要な戦略です。具体的には、ロゴマークやカラー、フォント、写真など、視覚的なデザイン要素のすべてを含み、これらを通じて消費者の心に一貫したブランドイメージを構築していきます。VIは単なるデザインの統一ではなく、ブランドの本質をいかに視覚的に表現するか、より戦略的な意味を持ちます。これを適切に開発し運用することで、市場における競争優位性を確立し、顧客の記憶に残るブランドを築くことが可能となります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、VIの基本的な定義から実践的な役割、そしてブランドの成功への具体的な貢献について、体系的に解説していきます。
CONTENTS | 目次
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは?

ブランドを視覚的に統一し伝えること
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは、ブランドの考え方や価値を「見た目」でわかりやすく伝えるための手法です。ロゴや色づかい、フォント、写真やグラフィックのトーンなど、ブランドを構成する視覚的な要素を統一しデザインします。これによって、どんな場面でも同じ世界観や印象を感じてもらうことができ、ブランドの信頼や共感を得ることができます。たとえば、Appleのシンプルなデザインやスターバックスの緑のロゴのように、見ただけでそのブランドを思い出せる状態が理想です。VIは単なる「見た目」づくりではなく、ブランドのビジョンや理念を視覚的に表現するもの。言葉を使わなくても、そのブランドらしさを自然に感じてもらうために、とても重要な役割を果たします。
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)の目的

1. 統一された印象による信頼の獲得
VIを導入することで、ブランドの見た目が統一され、信頼感のある印象を築くことができます。ロゴや色、トーンを揃えることで「しっかりしている」「安心できる」といった印象を与え、ブランドの信頼性が高まります。特に新規顧客との最初の接点において、視覚の整合性は信頼を左右する大きな要素です。統一されたビジュアルは企業の姿勢を映す鏡となり、ブランド価値を安定的に支える基盤になります。
[ ポイント ]
● 一貫したデザインが信頼を形成
● ブランドの印象を安定化
● 初見時の信頼獲得につながる
2. 記憶に残るブランドイメージの形成
VIによってブランドの視覚的特徴が定まると、見るたびに同じ印象を受けるため、記憶への定着が進みます。顧客は意識せずとも、色や形、フォントなどを通じてブランドを思い出すようになります。こうした繰り返しの接触が「ブランドの記号化」を促し、他との混同を防ぎます。結果として、選ばれる確率や想起率が高まり、長期的なブランド認知の強化につながります。
[ ポイント ]
● 視覚的特徴が記憶に残る
● 繰り返し接触で想起率が上がる
● ブランドの識別力を強化
3. ブランドの価値伝達力を高める
VIは、ブランドが何を大切にしているかを視覚的に伝える力を持ちます。理念や価値観をデザインに落とし込むことで、顧客がブランドの姿勢を直感的に理解できます。言葉よりも早く「このブランドらしさ」を感じ取ってもらえるため、コミュニケーションの質が向上します。さらに、ビジュアルがメッセージと一貫していることで、発信内容に説得力が生まれ、信頼を深める効果があります。
[ ポイント ]
● 価値観や理念を視覚で伝達
● 言葉に頼らない理解促進
● メッセージの信頼性を強化
4. 社内外の意識を統一する
VIは、外部への印象形成だけでなく、社内の意識統一にも効果があります。デザインガイドラインを共有することで、社員一人ひとりが「ブランドらしさ」を理解し、同じ方向性で発信できるようになります。外部パートナーとの連携もスムーズになり、全体として整ったブランド体験を提供できます。組織全体で同じ基準を持つことが、ブランドの安定した成長を支えます。
[ ポイント ]
● 社内外で共通の理解を形成
● 制作物のクオリティを均一化
● ブランド運用の効率化
5. 長期的なブランド資産の構築
一貫したVIの運用は、時間とともにブランドそのものを資産化します。ロゴやカラー、デザインルールが長く使われることで、顧客の記憶に積み重なり、信頼や愛着として蓄積されていきます。短期的な流行ではなく、継続的な運用こそがブランド価値を安定させ、長く選ばれる理由になります。VIは、企業にとって「見た目の投資」ではなく、「信頼の資産形成」です。
[ ポイント ]
● 継続運用で価値を蓄積
● 流行に左右されない強さを構築
● 信頼を生む長期的な資産化
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)の効果

1. ブランドの一貫性を保つこと
VIは、ブランドのビジュアル要素を統一し、一貫性を保つための仕組みです。ロゴ、色、フォントなどを整えることで、どの接点でも同じ印象を与えられるようにします。これによって信頼感が生まれ、ブランドの軸がより明確になります。一方で、デザインにばらつきがあると印象が不安定になり、信頼を損ねてしまうこともあります。統一されたデザインは、社内外で共有されることでブランド理解を深めるきっかけになります。また、ビジュアルの一貫性は企業文化を可視化し、長く信頼を育てていく土台にもなります。
[ ポイント ]
● ロゴ・カラー・フォントなどの統一化
● 信頼性と安心感の確立
● 社内外でのブランド理解の共有
2. ブランド認知を高めること
人は視覚的な情報を瞬時に記憶します。VIは、見た目からブランドを識別できる「視覚的な記号」を設計することで、認知を高めます。ロゴやカラー、形などを通じて繰り返し接触するうちに、「見ただけでわかる」状態をつくり出します。これにより、広告、店舗、パッケージ、SNSなど、あらゆる媒体でブランドが自然に想起されるようになります。視覚の統一は、ブランドを認識から記憶へ、そして記憶から信頼へと導くプロセスです。つまり、ブランドが自然に記憶の中に残っていくための大切な仕組みなのです。
[ ポイント ]
● 一目で識別できるデザイン設計
● 多様な接点での一貫した露出
● 認知から想起へつながる記憶形成
3. ブランドの世界観を伝える
VIは、ブランドの理念や価値観、世界観を視覚で伝えるための手段です。たとえば、誠実さを重視するブランドなら落ち着いたトーンで構成し、革新性を打ち出したい場合は大胆なデザインで印象づけます。デザインは単なる装飾ではなく、ブランドの感情やストーリーを体験的に伝える“言語”です。見る人に「このブランドらしさ」を感じさせることで、共感を生み、ブランドの人格が形づくられます。そして、その世界観に共感した人がブランドの支持者となり、関係性が少しずつ育っていきます。
[ ポイント ]
● 世界観や価値観をデザインで表現
● 感情に訴えるトーン設計
● ブランドの人格と共感を形成
4. 差別化を図ること
競合がひしめく市場で、ブランドを際立たせるのがVIの役割です。独自の色彩や構図、ビジュアルのルールを明確に持つことで、他ブランドとの差が視覚的に生まれます。その個性が「選ばれる理由」をつくり、模倣されにくい資産になります。デザインの個性は、商品やサービスの特徴を引き立てるだけでなく、ブランドの存在意義を明確にし、価格競争からの脱却にもつながります。さらに、その独自性が積み重なることで、時間とともにブランドの信頼と価値が深まっていきます。
[ ポイント ]
● 独自性のあるビジュアル構築
● ブランドの強みを視覚的に強調
● 模倣されにくい差別化資産の形成
5. ブランド体験を築くこと
VIは、ブランドに触れるすべての体験を統一するためのものです。ウェブ、SNS、パッケージなど、どこで触れても同じ世界観を感じられることが大切です。この一貫した体験が、ブランドへの信頼や愛着を育てていきます。デザインを通して顧客がブランドの価値を自然に感じ取れることが、体験の質を高め、長く続く関係づくりにつながります。そして、その体験が積み重なることで、ブランドは人々の生活の中にゆるやかに根づいていきます。そうした積み重ねが、ブランドの温度や人間らしさをゆっくりと育てていきます。
[ ポイント ]
● すべての接点で統一された体験を提供
● デザインを通じた感情的な共鳴
● 体験から信頼・愛着への発展
■ 視覚による情報の判断

人間の五感による情報知覚の割合を分析すると、視覚が87%を占め、聴覚7%、嗅覚2%と続きます。このデータは極めて示唆的で、私たちの日常における情報判断が、いかに視覚に依存しているかを明確に示しています。このことから、ブランドコミュニケーションにおいて視覚的要素が果たす役割の重要性が、科学的にも裏付けられているといえるでしょう。
1. カラー(色)
カラー(色)が人間の心理に与える影響は大きく、視覚情報において重要な要素となります。例えば、青色は信頼性や冷静さを想起させ、赤色は情熱や緊急性を表現し、緑色は自然との調和や安心感を醸成します。このような色彩の持つ心理的効果を戦略的に活用することで、ブランドの本質やメッセージを、より効果的に視覚伝達することが可能となります。さらに、色の組み合わせ方によっても印象は大きく変化します。
➤ 詳細記事:ブランドカラーとは?設定方法とロゴの配色について
2. フォルム(形)
フォルム(形)は、視覚的メッセージを端的かつ効果的に伝達する重要な要素です。円形や曲線的な形状は親和性や安定感を表現し、直線的で角張った形状は力強さや堅実性を示唆します。このような形状の持つ視覚的特性は、ロゴやアイコンのデザインにおいて戦略的に活用され、ブランドの個性や意図を明確に表現する役割を果たします。さらに、形のバランスや比率も印象を大きく左右します。
3. 配置とレイアウト
配置とレイアウトは、視覚情報を効果的に伝達する上で重要な要素となります。適切な配置戦略は、閲覧者の視線を自然に誘導し、情報の重要度を明確に提示する機能を持ちます。例えば、核となる情報を中央に配置することや、コントラストを戦略的に活用することで、視覚的な情報の伝達効率が大幅に向上します。これにより、デザイン全体の一貫性とメッセージの理解度がさらに高まります。
4. 動き
動きやアニメーションは、視覚的注目度を高める効果的な要素として機能します。特に情報やメッセージの強調において、その効果は顕著です。WEBサイトや広告媒体において、戦略的に動的要素を組み込むことで、視覚的な関心を喚起し、より印象的なメッセージ伝達を実現することが可能となります。さらに、動きのリズムや速度を最適化することで、感情的な共感や体験価値の向上にもつながります。
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)の成功事例

【 Apple | VIの成功事例 】
シンプルでスタイリッシュなデザインで高い評価を得ています。
AppleのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、「林檎」のロゴに象徴されます。このシンプルな黒のシルエットは、製品の革新性と洗練された美意識を見事に表現し、今や世界的なブランドシンボルとなっています。Appleのデザイン戦略の特徴は、徹底した一貫性にあります。製品のUIから、パッケージング、広告、店舗デザインに至るまで、全ての接点で統一されたビジュアル体験を提供することで、強固なブランドイメージを構築しています。この戦略的なVI展開は、特定のデザインスタイル、カラー、フォントを通じて、視覚的な認知度を最大化し、製品やサービスの強力なブランド化を実現しています。その結果、Appleは独自のエコシステムを確立し、世界規模での圧倒的な支持を獲得するに至っています。これは、体系的なVIの構築と展開が、ブランドの市場価値向上に直結することを示す代表的な事例といえるでしょう。
[ VIにおける成功ポイント ]
● シンプルでミニマルなデザイン
Appleのデザインは「シンプルさ」を基本にしており、製品、パッケージ、広告すべてに無駄を排したミニマルなデザインを採用。これにより洗練された印象を与え、Appleらしいスタイルを強調しています。
● 象徴的なロゴ
Appleのリンゴマークは、世界中で認知されているシンプルで象徴的なロゴです。文字なしでもAppleを想起させる強力なアイデンティティを持ち、どの製品にも一貫して使用されています。
● モノトーンとホワイトスペースの活用
広告や製品デザインにおいて、モノトーンやホワイトスペースを多く使用し、製品自体を際立たせています。この手法により、シンプルさとプロフェッショナリズムが表現されています。
● ユニークなフォントとタイポグラフィ
Appleは専用フォント「San Francisco」を開発し、視認性と美しさを両立。統一されたタイポグラフィにより、デジタル画面でも一貫した視覚的アイデンティティが確立されています。
● 製品に合わせたパッケージデザイン
製品のパッケージもVIの一部として、シンプルで高級感のあるデザインを徹底。パッケージの開封体験を含めてAppleらしさを伝え、購入者に特別な体験を提供しています。
● 店舗デザインとの統一感
Apple StoreもVIに基づいたシンプルかつ洗練された空間デザインを採用し、どの店舗でも統一されたブランドイメージが感じられるようになっています。
● 広告のトーンとビジュアル
広告では、製品のデザインや機能性を前面に押し出し、言葉数を減らしながらも製品の魅力を強調するトーンが特徴です。
[ 出典 ] アップル公式サイトより

【 Coca-Cola | VIの成功事例 】
赤と白の配色や独自のロゴ、キャッチフレーズが特徴的です。
Coca-ColaのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、その特徴的なスクリプトロゴに象徴されています。伝統と現代性を融合させた波打つような曲線は、ブランドの永続的な魅力を表現しています。また、鮮烈な赤と白のコントラストは、強い視覚的インパクトを生み出し、独自のブランドイメージを確立しています。このカラースキームは、広告、パッケージング、販促物に至るまで徹底して統一され、グローバルで一貫したビジュアル体験を提供しています。さらに「Taste the Feeling」というキャッチフレーズは、感情に訴求する親近感のあるメッセージとして、ブランド価値を効果的に強化しています。このような戦略的なVI展開により、Coca-Colaは世界中で愛される普遍的なブランドとしての地位を確立し、世代や文化を超えた強固な支持基盤を構築することに成功しています。これは、一貫したVIの展開が、グローバルブランドの価値向上に直結することを示す典型的な事例といえるでしょう。
[ VIにおける成功ポイント ]
● 象徴的なロゴと筆記体のデザイン
Coca-Colaのロゴは、独自の筆記体でデザインされており、消費者に強い印象を与えます。このロゴは長い歴史の中でほとんど変更されておらず、ブランドの伝統と信頼性を表現しています。
● 赤と白のブランドカラー
Coca-Colaを象徴する赤と白のカラースキームは、どの製品や広告にも一貫して使用されており、消費者に強い認知度をもたらしています。赤は「活力」や「楽しさ」を表現し、Coca-Colaのイメージと結びつけられています。
● 独自のコンツアーボトル
Coca-Colaのコンツアーボトル(くびれのある独特な形状)は、ブランドの象徴であり、視覚と触覚で一貫したブランド体験を提供します。このボトルは、暗闇でも手で触るだけでCoca-Colaと認識できるほど独自性が強いデザインです。
● ハピネステーマの視覚表現
広告やプロモーション活動では「ハピネス」や「共有」のテーマが視覚的に表現されています。楽しさや爽やかさを感じさせるビジュアルが使われ、ブランドイメージが消費者に共感されやすくなっています。
● 統一されたフォント
Coca-Colaの広告やプロモーションで使用されるフォントも統一されており、シンプルで親しみやすいデザインが多く、ブランドの一貫性を維持しています。
● 一貫したビジュアルストーリーテリング
一貫したビジュアルストーリーテリング
● グローバルで統一されたデザインとローカライズのバランス
グローバルブランドとして統一されたデザインを維持しつつ、各国の文化や習慣に合わせてローカライズした広告展開も行っており、世界中で親しまれるブランドとして認識されています。
[ 出典 ] コカ・コーラ公式サイトより

【 Airbnbの | VIの成功事例 】
シンプルで親しみやすいデザインが特徴的です。
AirbnbのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、そのロゴタイプに象徴的に表現されています。小文字で表記された丸みを帯びたフォントと、家の屋根を想起させる三角形のシンボルマークは、親しみやすさと共に、「人々をつなぎ、世界をより広く深くする」というブランド理念を巧みに視覚化しています。特筆すべきは、Airbnbの視覚戦略における写真の重要性です。世界中のユニークな宿泊施設を提供するプラットフォームとして、高品質な写真を戦略的に活用し、没入感のある視覚体験を創出しています。広告やウェブサイトにおいても、この質の高い写真表現は一貫して維持されています。このように、シンプルさと親和性を基調としたVI展開により、Airbnbは独自の宿泊体験を提供するブランドとしての地位を確立し、グローバルな支持基盤の構築に成功しています。これは、明確な理念に基づいたVIの構築が、新しいビジネスモデルの価値向上に寄与することを示す代表的な事例といえるでしょう。
[ VIにおける成功ポイント ]
● Béloシンボルの導入
2014年に「Bélo(ベロ)」と呼ばれるシンボルを導入し、「人」「場所」「愛」「A」の意味を融合。このシンボルにより、Airbnbの理念である「どこにでも居場所がある」というメッセージを視覚的に表現しています。
● 親しみやすさを感じさせるロゴとフォント
ロゴと専用フォントは、柔らかい線とシンプルなデザインで親しみやすさを演出。視認性が高く、どのデバイスでも統一されたイメージを提供するため、ユーザーに一貫したブランド体験を提供します。
● 一貫したカラーとトーン
Airbnbは柔らかく落ち着いたカラーパレットを採用し、視覚的な安心感と温かみを演出。特にピンクやサンドカラーが多く使用され、ユーザーに居心地の良さや信頼感を伝えています。
● ビジュアルでのコミュニティ重視の表現
Airbnbの広告やウェブサイトでは、実際のホストとゲストの写真や物語が多く使用され、ユーザー同士がつながるコミュニティを強調しています。これにより、単なる宿泊サービスではなく、「体験の共有」をブランドメッセージとして伝えています。
● 地域ごとに柔軟に対応したデザイン
グローバルに統一されたVIを維持しつつ、各地域の文化や特性に合わせたローカライズ戦略も採用。これにより、世界中で親しまれながらも、各地域での親近感や適応力が高まります。
● シンプルでユーザーフレンドリーなUI/UX
WEBサイトやアプリのデザインは、直感的で操作しやすく、ユーザーが迷わず使えるよう設計されています。余分な装飾を排し、ユーザーにとってシンプルで快適な使用体験を提供しています。
● ホストのためのビジュアルガイドライン
Airbnbはホスト向けにもブランドガイドラインを提供し、物件写真の撮影やゲスト対応に一貫性を持たせることで、Airbnb全体のブランドイメージが統一されるよう配慮しています。
[ 出典 ] エアビーエンドビー公式サイトより

【 FedEx | VIの成功事例 】
シンプルで認識性の高いロゴとデザインが特徴的です。
FedExのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、その戦略的なロゴデザインに特徴が表れています。紫を基調とした文字構成は、一見シンプルでありながら、文字間に巧妙に配置された矢印のネガティブスペースが、スピードと正確性という企業価値を象徴的に表現しています。このロゴデザインの視覚的要素は、企業活動全般に一貫して展開されています。例えば、輸送車両や航空機には、コーポレートカラーである紫を効果的に使用し、側面には矢印モチーフを大胆に配置することで、迅速性と確実性というサービス品質を視覚的に強調しています。このように、シンプルさと高い認識性を基調としたVI展開により、FedExは高品質な輸送サービスプロバイダーとしての確固たる地位を確立しています。特に、ロゴに込められた視覚的な仕掛けは、ブランドの本質的価値を巧みに表現し、グローバルなビジネス領域における信頼獲得に大きく寄与しているといえるでしょう。
[ VIにおける成功ポイント ]
● 象徴的なロゴデザインと隠れた矢印
FedExのロゴは、”E”と”X”の間に矢印が隠されており、「速さ」や「前進」という意味を暗示しています。このシンプルで洗練されたロゴは、ブランドの信頼性や迅速さを視覚的に表現しています。
● サービスごとのカラー区分
ロゴの「Ex」部分のカラーがサービスごとに異なり、FedEx Express(オレンジ)、FedEx Ground(緑)など、視覚的に各サービスを識別しやすくしています。これにより、消費者がどのサービスを利用しているかを一目で把握できるようになっています。
● 一貫性のあるフォントとタイポグラフィ
FedExは一貫性のあるフォントとシンプルなデザインを採用し、視認性が高く信頼感を与えるタイポグラフィを維持しています。これにより、広告やウェブサイト、パッケージングなど、どの媒体でも統一感のあるブランド体験が提供されています。
● ビジュアルとメッセージのシンプルさ
FedExの広告やプロモーションでは、複雑さを排したシンプルなデザインとメッセージが特徴です。「The World on Time」など、明快なスローガンを用いることで、迅速で信頼できる配送サービスの価値を強調しています。
● 車両や航空機へのブランディング
FedExのトラックや航空機にはロゴとブランドカラーが大きく配されており、移動する広告塔として機能しています。これにより、街中や空港での視覚的な認知度が高まり、どこにいてもFedExの存在感が際立ちます。
● 社員の制服や配送センターのデザイン
FedExの従業員の制服や配送センターのデザインもVIの一環として統一されており、顧客と接するあらゆる場面でブランドの一貫性が保たれています。これにより、顧客に対して信頼感と安心感が伝わりやすくなっています。
● グローバル展開とローカライズのバランス
FedExは世界中で統一されたVIを持ちながら、地域に応じたローカライズも行っています。各国で同じFedExブランドが感じられる一方、地域のニーズに合わせたアプローチが取られています。
[ 出典 ] フェデックス公式サイトより
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)の弊社開発実績
株式会社チビコは、商品やサービスの「らしさ」を可視化するVI(ビジュアル・アイデンティティ)開発を行っています。ロゴやカラー、フォントなどの要素を戦略的に設計し、ブランドの世界観を一貫して伝えるデザインを構築しています。業種や規模を問わず、愛されるブランドの基盤づくりを支援しています。
[ JAPANITURE ]
日本発の家具ブランド「JAPANITURE」の海外展開」。JAPANITUREとは、JAPANとFURNITUREの造語に由来し、ブランドコンセプトは「日出ずる国の家具」。日本の伝統と革新的でモダンなデザイン家具を海外に広く発信し新規マーケットを開拓することを目的とするブランドです。
[ 詳細 ] chobico WORKS | JAPANITUREより
[ MONOCOTO ]
MONOCOTOは、リアルソーシングを特徴とするソーシャルマニュファクチュアリングサービスです。モノが溢れ余る社会において「モノの先にあるコトの価値」が求められています。単にモノを作るという発想から、その先にあるモノを使う楽しみや経験、人とのコミュニケーションを提案するブランドです。
[ 詳細 ] chobico WORKS | MONOCOTOより
[ ASBO STAY HOTEL ]
ASBO STAY HOTELは、沖縄県金武町の豊かな自然が残る東海岸に佇む、全室オーシャンビューのリゾートホテル。澄みわたった空気と、清らかな海辺。五感のすべてに響いてくるのは、大自然からのメッセージ。精神と身体を解放することの素晴らしさを知ることのできるホテルです。
[ 詳細 ] chobico WORKS | ASBO STAY HOTELより
[ DOME ATHLETE HOUSE ]
ドームアスリートハウスは、最新の専門的かつ科学的な情報を提供し、日本のトップアスリートをソフト面から支える、世界最高水準のパフォーマンス開発機関です。日本のスポーツ全体を世界トップレベルへと引き上げ、活性化させることで豊かで活気のある社会づくりに貢献していくことを掲げるブランドです。
[ 詳細 ] chobico WORKS |DOME ATHLETE HOUSEより

■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)開発に関するよくある質問
VI開発の現場では、「美しさ」だけを追求して本質を見失うケースが少なくありません。私自身の経験から、戦略とデザインを結ぶための視点を紹介します。
[ よくある質問① ]
Q :VIとCIの違いは何ですか?
A :CI(コーポレート・アイデンティティ)は、企業の理念・価値観・存在意義を包括的に定義するブランドの「核」です。一方、VI(ビジュアル・アイデンティティ)は、その理念を視覚要素(ロゴ、カラー、フォント、レイアウトなど)によって具現化し、社会に伝えるための「表現手段」です。
[ よくある質問② ]
Q :VI開発は何のために必要ですか?
A :一言でいえば、消費者に「一貫したブランドイメージを即座に伝え、記憶に残す」ためです。視覚情報が支配的な現代において、VIは認知・信頼・差別化のすべてを支える基盤であり、ブランドの印象を決定づける重要な要素となります。
[ よくある質問③ ]
Q :VIに含まれる要素は何がありますか?
A :ロゴ、カラー、フォント、写真表現、レイアウト、アイコン、シンボルなど、あらゆる視覚的要素が該当します。強いVIを構築するには、これらの要素を戦略的かつ一貫性のある設計思想のもとで組み合わせることが欠かせません。
[ よくある質問④ ]
Q :VIを統一することで得られる効果とは?
A :主に以下の5つの効果が得られます。
① ブランド理解の浸透
② 認知度の向上
③ 他社との差別化
④ 視覚的一貫性の確立
⑤ 消費者の信頼感向上
[ よくある質問⑤ ]
Q :成功事例にはどんなものがありますか?
A :以下のような、世界におけるVI成功事例が挙げられます。
① Apple:ミニマルに統一されたロゴ・フォント・空間・開封体験により、洗練された世界観を創出。
② Coca-Cola:赤と白の象徴的カラーと筆記体ロゴ、ボトル形状で普遍的なブランドアイコンを確立。
③ Airbnb:シンボルマークBéloで理念「居場所」を視覚化し、温もりのある写真体験で共感を拡張。
④ FedEx:ロゴの矢印で「速さ・正確さ」を象徴し、カラーによるサービス区分で視覚的識別を実現。

■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)に関するチェックリスト
VI開発を支援してきて感じるのは、デザインの統一だけでなく「意図の一貫性」を保つことの難しさです。ここでは、その確認に役立つ実践的なチェック項目をまとめました。
[ VIの定義と本質を抑えるチェック ]
⬜︎ VI(ロゴ、カラー、フォント、写真など)が企業の理念や価値観を視覚的に正確に表現しているか?
⬜︎ 視覚要素(色、形など)が意図するメッセージ(例:信頼、革新、親近感)を適切に伝えているか?
[ 認知と差別化を促進するチェック ]
⬜︎ VIが統一されており、すべての接点(広告、Web、店舗など)でブランド認知が促進されているか?
⬜︎ 競合との差別化を視覚的に行えているか?視覚から「独自性」を即座に感じられるか?
[ 一貫性と信頼のあるブランド体験のチェック ]
⬜︎ ブランド全体で使用する視覚的表現(フォント、カラー、写真スタイルなど)が統一されているか?
⬜︎ VIが消費者に安心感を与え、ブランドに対する信頼やロイヤルティの構築に貢献しているか?

■ まとめ
VI(ビジュアル・アイデンティティ)は、ブランドの価値や理念をロゴ、色、フォント、写真表現などの視覚的要素を通じて戦略的に体現する仕組みです。単なるデザインの統一に留まらず、消費者の視覚に直感的に訴えかけ、市場での認知度・信頼を高める役割を担います。視覚情報の効果が非常に高い(視覚が情報判断の87%を占める)という事実も、その重要性を裏付けています。統一されたVIはブランドの印象を鮮烈に残し、差別化や長期的なロイヤルティ育成にも貢献します。さらに、社内外関係者との共通理解を促し、一貫したブランド体験を支える基盤ともなります。成功事例として、Apple、Coca-Cola、Airbnb、FedExなどが挙げられ、これらの明快かつ統一されたビジュアルは、ブランド認知と価値向上に直結しています。VIは、ブランド戦略の中核を担う重要な位置付けなのです。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
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