
[ ブランディングデザイン ]
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?意味・効果・構成要素・見直し方・事例
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは、企業やブランドの理念や価値観、個性を、ロゴ、カラー、書体、写真、グラフィック、レイアウトなどの視覚表現へ変換し、一貫して伝えるための仕組みです。
重要なのは、単にデザインを統一することではありません。接点ごとの表現に差があると、顧客や求職者が受け取る企業像も不安定になり、ブランドへの理解や印象にもずれが生まれます。
本記事では、VIの意味や必要性、見直す範囲、判断基準や評価方法まで、株式会社チビコ代表取締役/ブランディングディレクターの今田佳司が、実務経験をもとに解説します。
CONTENTS | 目次
- ■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?
- ■ VIとロゴ・CI・ブランドガイドラインは何が違うのか?
- ■ VIには、何が含まれるのか?
- ■ VIにはどのような効果があるのか?
- ■ VIを見直すべきタイミングはいつか?
- ■ VIはどこまで変えるべきか?
- ■ 良いVIはどのように判断するのか?
- ■ VIを作っても機能しない原因は何か?
- ■ VIの効果はどのように測るのか?
- ■ CHIBICOはVI開発をどのように考えているのか?
- ■ CHIBICOのVI開発では何をどのように変えたのか?
- ■ 他社のVI事例から何を学べるのか?
- ■ VI開発に関するよくある質問
- ■ VIが必要か確認する4つのチェックポイント
- ■ まとめ
- ■ おすすめ関連記事
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?

VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは、企業やブランドの理念、価値観、個性をロゴ、カラー、書体、写真、グラフィックへ変換し、接点で一貫して伝える視覚的な仕組みです。見た目を揃えるだけでなく、ブランドを識別し、記憶させ、信頼を蓄積する役割があります。
VIとは「ロゴ」ではなく視覚システム
VIはロゴと同じではありません。ロゴは企業やブランドを象徴する識別要素ですが、VIはロゴ、カラー、書体、写真、グラフィックなどを同じ考え方で機能させる仕組み全体です。複数の接点で表現が統一され、「ブランドらしい」と認識できる状態をつくることがVIの役割です。
ブランドの考え方を「見れば分かる状態」へ変える
VIの前提にはブランドの考え方があります。「なぜ存在するのか」「誰にどのような価値を提供するのか」を明確にし、意味を視覚表現へ変換します。CHIBICOでは、ブランド戦略から視覚コンセプトを導き、ロゴ、カラー、書体、写真、グラフィックへ一貫して展開します。
[ VIが機能している状態 ]
- ロゴがなくても、色や写真、レイアウトからブランドを識別できる
- WEB、営業資料、採用、広告などで同じ企業らしさを感じる
- 社内外の制作者が共通基準で表現を判断できる
- 媒体が変わっても、ブランドの核となる印象が失われない
[ VIが機能していない状態 ]
- ロゴは同じでも、媒体ごとに別のブランドのように見える
- 担当者や制作会社によって表現が変わる
- 競合と並んだときに、ブランド固有の特徴が伝わらない
- 新しい媒体をつくるたびに、表現方法をゼロから考えている
➤ 詳細記事:CIとVIの違いとは?目的・関係・見直し方・成功事例
■ VIとロゴ・CI・ブランドガイドラインは何が違うのか?

VIとロゴは同じではありません。ロゴはVIを構成する要素の一つで、CIは企業全体の存在意義や価値観を含む上位概念です。ブランドガイドラインは、その考え方や視覚表現を社内外で運用する共通基準です。役割を分けて理解すると、必要な開発範囲を判断しやすくなります。
CIは企業全体のアイデンティティ
CIは、企業が「何者で、何を大切にし、どこを目指すのか」を明確にし、理念、行動、言葉、視覚表現までを企業全体で一貫させる考え方です。VIはその考えを目に見える形へ変換することで、事業や存在意義にズレがある場合は、VIだけでなくCIから見直す必要があります。
➤ 詳細記事:CI戦略とは?目的・進め方・デザイン開発のポイント
➤ CI変更が必要になる5つの理由と判断基準を確認する
ロゴはVIを構成する1つの要素
ロゴは企業やブランドを識別する中心的要素ですが、ブランドのすべてを表現するものではありません。カラー、書体、写真、グラフィック、アイコンなどが連動することで、一貫したブランドらしさを構築できます。ロゴを残し、周辺の視覚要素だけを見直す方法も有効です。
➤ 詳細記事:ロゴガイドラインとは?目的・構成項目・作り方・運用方法と事例
ブランドガイドラインはVIを運用する共通基準
VIを開発しても、一貫した状態はそのままでは続きません。社内担当者や制作会社など関係者が増えるほど、判断基準の共有が必要です。ブランドガイドラインでは、ロゴやカラーなどの使い方に加え、変更可能な範囲、守るべき基準、承認者まで整理し、VIを継続的に運用します。
➤ 詳細記事:ブランドガイドラインとは?作り方・構成内容・運用方法と成功事例
■ VIには、何が含まれるのか?

VIには、ロゴ、ブランドカラー、書体、写真、イラスト、グラフィック、アイコン、レイアウト、モーションなどが含まれます。重要なのは要素の数ではなく、同じブランド思想から一貫して展開できることです。必要な範囲は、事業特性と顧客接点を基準に決める必要があります。
1. ブランドを識別する基本要素
VIの基本要素は、ブランドシンボル、ロゴタイプ、ブランドカラー、書体などです。ただし必要な項目は企業ごとに異なります。BtoB企業なら営業資料や展示会、商品ブランドならパッケージやECなど、実際の接点から逆算して必要となるVIの範囲を決めることが重要です。
2. ブランドらしさを形成する要素
写真、イラスト、グラフィック、アイコン、図表、レイアウト、余白、モーションも、ブランドらしさをつくる重要な要素です。WEBやSNS、動画では、写真の光や構図、人物の表情、図版の形、余白まで共通原則を持つことで、ロゴが見えない場面でもブランドを認識できます。
3. ブランドの接点へ展開する要素
VIは、基本要素を決めて終わりではありません。WEB、会社案内、営業資料、広告、SNS、商品、店舗、展示会など、各接点で機能して初めて意味があります。CHIBICOでは、主要接点と印象のズレを確認し、どこでブランドを認識させるかを基準に開発範囲を決めます。
➤ 詳細記事:VIの作り方|7つの開発手順・構成要素・成功のポイント
■ VIにはどのような効果があるのか?

VIの効果は、見た目を整えることではなく、ブランドを識別しやすくし、価値を直感的に伝え、接点ごとの印象をそろえることです。一貫した視覚表現が繰り返されることで、認知、想起、信頼、差別化が蓄積され、ロゴや色などが長期的なブランド資産へ着実に育っていくのです。
1. ブランドを識別しやすくする
市場に似た商品やサービスが増えるほど、見た瞬間にブランドを識別できる価値は高まります。ロゴ、色、書体、写真など視覚資産を継続して使い、競合との混同を減らすことが重要です。
2. ブランドの価値を直感的に伝える
理念やブランドコンセプトは、言葉では伝わりにくい場合があります。VIは色、形、書体、写真へ価値観や個性を変換し、言葉を読む前にブランドらしさを感じられる状態をつくります。
3. ブランド接点の印象をそろえる
顧客はWEB、営業資料、広告、SNS、商品、店舗、採用など複数接点で企業像を形成します。VIで視覚原則を共有すると、媒体が変わっても同じ企業として認識されやすくなります。
4. 制作や運用の判断を共有できる
VIは、顧客への表現に加え、社内外の判断をそろえる役割があります。写真や色、SNS表現の基準を共有し、個人の感覚への依存を減らし、ブランドらしさと実務効率を両立できます。
5. 視覚表現を長期的なブランド資産へ育てる
ロゴやブランドカラーは、繰り返し使われることで認知や記憶と結びつき、資産へ育ちます。VIは頻繁に変えず、変える要素と継承する資産を分け、長期的に育てる視点が特に重要です。
【 研究ではVIの効果をどのように捉えているのか? 】
VIの役割は、実務だけでなく研究の面からも論じられています。van den Boschらの査読研究では、Corporate Visual Identity(CVI)と企業評判との関係を、認知されやすさ、識別性、真正性、透明性、一貫性という5つの側面から検討しています。その結果、デザインの質、展開範囲、各接点での適切な運用を通じて、CVIはこれらの側面を支援し得るとしています。
■ VIを見直すべきタイミングはいつか?

VIを見直すべきなのは、デザインが古く見えたときではなく、事業や顧客、競争環境、ブランド戦略が変化し、現在の視覚表現との間にズレが生じたときです。WEBと営業資料の印象が違う、競合と区別しにくい、運用が属人化している状態は、再検討すべき具体的なサインです。
➤ 詳細記事:VIだけでなく企業ブランド全体を見直すべきかは、リブランディングのタイミングで判断できます。
1. 事業内容と現在の企業イメージが合わなくなった
創業時から事業領域が広がった、BtoCからBtoBへ進出したなど、実際の事業とロゴやWEBサイトが示す企業像にズレがある場合は、VIの見直しが必要です。単にデザインが古いのではなく、現在の事業内容と社会から見える姿が一致しているかを確認することが重要です。
2. 競合と並んだときに「らしさ」が見えない
同業他社と似た色、書体、写真、レイアウトが増えると、個々のデザインに問題がなくてもブランドの識別性は弱くなります。競合と並んだときに自社だと認識できる固有の視覚要素があるかを確認し、違いが伝わらない場合はVI全体を見直す必要があります。
3. ブランドの接点が増え、表現がばらついている
企業の成長に伴い、営業資料、採用サイト、SNS、動画、展示会、サービスサイトなど接点が増えると、担当者や制作会社ごとに表現がずれやすくなります。個別の制作物を都度修正するのではなく、共通するVIを整理することで、一貫性と制作効率をより高めることができます。
4. デジタル環境で現在のVIが使いにくい
細かすぎるロゴや画面で読みにくい書体、動画で展開しにくい表現など、以前は問題がなくても、デジタル接点の増加で課題が表面化することがあります。ただし、既存のブランド資産をすべて変える必要はなく、認知を継承しながら必要な部分だけ適切に更新する判断こそ重要です。
➤ 詳細記事:VIのトレンド6選|ビジュアル・アイデンティティの進化と事例
■ VIはどこまで変えるべきか?

VIは、すべてを新しくする必要はありません。CHIBICOでは既存のブランド資産を3つの視点で捉えています。認知や信頼につながる要素は残し、事業と合わない部分は変えます。その上で、一貫性と柔軟性を両立できる範囲まで視覚システムを広げることを基本とします。
1. 未来にも残すべきもの
長く使われてきたロゴ、色、形、名称には、企業が意図した以上の認知や信頼が蓄積されている場合があります。見た目が古いという理由だけで捨てず、顧客に認識されているか、企業の本質を表しているか、将来の事業でも使えるかという視点から、残す価値を総合的に判断します。
2. 現在のズレを変えるべきもの
事業内容や顧客、競争環境が変化し、現在のブランドを正しく表していない要素は変更対象です。ロゴそのものではなく、カラー、書体、写真、グラフィック、WEB上の表現だけを変える場合もあります。何を変えるかは、古さではなく現在のブランドとのズレを基準に判断します。
3. これから新たに追加すべきもの
ブランド接点が広がると、デジタル用の書体、SNS用グラフィック、動画のモーション、アイコン、データビジュアライゼーションなど新たな視覚要素が必要になります。既存要素を整えるだけでなく、未来の事業や媒体で必要な表現を加え、成長に対応できるVIへ発展させます。
■ 良いVIはどのように判断するのか?

良いVIは単に美しいかでは判断できません。CHIBICOでは、ブランドの意味が表れているか、競合と識別できるか、複数媒体で一貫するか、状況に応じて展開できるか、長期運用できるかの5点で確認します。好き嫌いではなく、戦略と運用の両面で評価することが重要です。
1. ブランドの意味が伝わっているか
見た目が美しくても、どの企業にも使える表現ではVIとして十分ではありません。事業特性、文化、価値観、提供価値など、ブランド固有の意味が視覚にも反映されているか確認します。
2. 競合と明確に差別化ができているか
同じ業界で多用される色、写真、表現をなぞるだけでは、安心感は得られても独自性は弱くなります。競合と並んだとき、自社にしかない視覚的な特徴があるかを確認することが重要です。
3. 各接点でブランド表現が一貫しているか
ロゴ、WEBサイト、営業資料、SNS、商品などで、同じブランドとして認識できるか確認します。一貫性とは、同じ見た目でなく、共通する考え方や視覚原則が保たれている状態です。
4. 各種媒体に応じて正しく展開できているか
VIは名刺や会社案内だけで使うものではありません。スマートフォンの画面から大型サイン、静止画から動画まで、異なる媒体や条件でもブランドらしさを保てる十分な柔軟性が必要です
5. 長期的な視点で管理運用できているか
短期的なトレンドだけに依存した表現は、数年後に古く見える可能性があります。ブランドの本質と結びついた要素を核に、時代に合わせて柔軟に更新しながら長く使えるVIになります。
■ VIを作っても機能しない原因は何か?

VIが機能しない主な原因は、ロゴだけを変える、戦略との関連が弱い、媒体ごとに個別で開発する、既存資産を不用意に捨てる、運用基準をつくらないことです。完成時の見栄えだけでなく、誰が、どこで、どのように使い続けるかまで決めなければ、一貫性を今後も維持できません。
1. ロゴの変更だけで終わっている
ロゴだけを新しくして、WEBサイト、写真、書体、営業資料、SNSなどが以前のままでは、ブランドの印象は変わりません。課題がロゴか、VI全体かをまず見極める必要があります。
2. ブランド戦略と視覚表現がつながっていない
「先進的にしたい」「高級感を出したい」など抽象的な要望だけで決めると、競合と似た表現になりがちです。提供価値や将来像からも、なぜその表現なのかを説明できることが重要です。
3. 各媒体ごとに個別で開発している
WEBサイト、会社案内、採用サイトを個別に進めると、品質が高くてもブランドとしてまとまらない場合があります。共通するVIを定めて、各媒体の判断軸をそろえることが重要です。
4. 既存のブランド資産を不用意に捨てている
刷新自体が目的になると、顧客に認識されている色や形まで変えてしまう場合があります。リニューアルでは、何を変えるかだけでなく、何を残すかも同時に判断していく必要があります。
5. 運用基準と責任者が決まっていない
VI完成後に、誰がデータを管理し、判断して、外部制作会社へ何を渡すかが未定なら、表現も再びばらつきます。VI開発とガイドライン、運用体制も切り離さず考える必要があります。
➤ 詳細記事:ブランドガイドラインとは?作り方・構成内容・運用方法と成功事例
■ VIの効果はどのように測るのか?

VIの効果は、売上だけで評価するものではありません。目的に応じて、ブランド認知、指名検索、想起、問い合わせ内容、顧客評価に加え、ロゴやカラーの誤用、制作時間、外部制作会社の確認件数などを追います。開発前に評価指標を決めることで、成果を継続して確認できます。
1. 認知・想起・指名検索を見る
VI刷新の目的が認知や識別性の向上なら、ブランド認知調査、純粋想起、助成想起、指名検索等を確認します。変更直後ではなく、一定期間使用した後の変化を必ず見ることも重要です。
2. 問い合わせや商談の質を見る
問い合わせ数だけでなく、どのような企業と認識されたか、どのサービスへの相談が増えたか、狙う顧客層との接点が増えたかも確認します。複数の指標で事業への効果も総合的に見ます。
3. 制作や管理の効率を見る
ロゴやカラーの誤用数、外部制作会社からの確認件数、制作時間、ブランド担当者の修正回数は、VIの運用性を測る指標です。現場で自ら適切に判断できる範囲が増えたかを確認します。
4. 社内の理解と再現性を見る
社員がブランドの考え方を理解し、同じ基準で判断できるかも重要です。理解度調査だけでなく、実際の制作物や発信内容への反映を確認し、VI開発前の段階で評価指標を明確にします。
■ CHIBICOはVI開発をどのように考えているのか?

CHIBICOのVI開発は、最初にロゴを考えるのではなく、事業、顧客、競合、ブランドの現在地と未来像を整理することから始めます。戦略を視覚コンセプトへ変換し、ロゴ、色、書体、写真、WEBへ展開します。目に見えない価値を再現可能な仕組みにすることが目的です。
BRAND STRATEGY
[ 最初にブランドの考え方を整理する ]
CHIBICOでは、すぐにロゴ案をつくることからVI開発を始めません。現在の事業、顧客、競合、ブランド資産、企業文化、将来像を整理し、「何を視覚化すべきか」を明確にします。企業が目指す方向と今の見え方を一致させ、表面的な変更で終わらせないことを重視します。
DESIGN CONCEPT
[ ブランド戦略を視覚の方向性へ変換する ]
整理したブランド戦略を、そのままロゴへ落とし込むのではなく、どのような視覚原則で表現するかを定めます。色、形、書体、写真、余白、構図へ意味を変換する考え方を持つことで、単に好みや流行ではなく、ブランドとの整合性を基準にデザインを判断できる状態をつくります。
VISUAL IDENTITY
[ 複数の要素を一つの思想で開発する ]
ロゴ、カラー、書体、写真、グラフィックなどを個別に考えるのではなく、一つのブランド思想から展開します。それぞれが別々に目立つのではなく、組み合わせたときに同じブランドらしさが生まれ、複数の接点でも一貫した印象を確実に継続して伝えられる視覚体系を目指します。
COMMUNICATION
[ 実際の接点で機能するかを確認する ]
VIは、ガイドラインの中だけで完成するものではありません。WEBサイト、営業資料、広告、商品、空間など、実際のブランド接点へ展開したときに、企業らしさやブランドの意味が伝わり、担当者や制作会社が迷わず使える実務性と再現性をも備えていることがとても重要です。
➤ 詳細記事:VIの作り方|7つの開発手順・構成要素・成功のポイント
■ CHIBICOのVI開発では何をどのように変えたのか?
CHIBICOのVI開発では、見た目を新しくするのではなく、企業や事業の価値の何を残し、何を変え、どこまで展開するかを判断します。ここでは4つの実例を、課題、判断、残した資産、変えた資産、開発範囲、展開という共通項目で整理し、VI開発を具体的に紹介します。

JAPANITURE│日本家具の価値を海外へどう伝えたか
[ 課 題 ]
JAPANITUREは、日本の家具メーカーが培ってきた技術や美意識を海外へ発信する共同ブランドです。個々のメーカーの特徴だけでなく、「日本家具」として共有できる品質や思想を整理し、複数の商品を一つのブランドとして見せながら、海外市場で独自性を伝える必要がありました。
[ 判 断 ]
個々の商品やメーカーを前面に出すだけでは、共同ブランドとしての認識は生まれにくいと判断しました。そこで「JAPAN」と「FURNITURE」を組み合わせた名称と、「日出ずる国の家具」というコンセプトを軸に、日本の伝統、美意識、現代性を一つのブランド世界として表現しました。
[ 継承した要素 ]
活かしたのは、各メーカーが長年培ってきた家具づくりの技術、品質、日本独自の美意識です。新規の共同ブランドであるため、既存ロゴなどの視覚資産を残すのではなく、各社が持つものづくりの価値を共通のブランド資産として捉え、JAPANITUREの核として活かしました。
[ 変更した要素 ]
個々のメーカーごとに分かれて伝わっていた価値を、「日本家具」という一つのブランドとして認識できる表現へ変えました。伝統的な日本らしさをそのまま表現するのではなく、海外市場でも理解される現代性と普遍性を加え、固有のブランドシンボル、ロゴタイプ、ステートメントとして明確にしました。
[ 開発範囲 ]
シンボル/ロゴタイプ/ブランドステートメント/ロゴガイドラインを開発し、名刺、封筒、WEBサイト、広告、ポスター、トートバッグなど、国内外で使用されるブランド接点へ一貫して展開しました。
[ 結 果 ]
VIをロゴだけで完結させず、WEBサイト、広告、ポスター、名刺、封筒、トートバッグなどへ展開しました。媒体が変わっても同じJAPANITUREとして認識できる状態をつくることで、日本家具の価値を一つのブランドとして継続的に発信できる視覚体系へつなげています。
➤ CHIBICO WORKS | JAPANITUREより

MONOCOTO│「モノの先にあるコト」の価値をどう可視化したか
[ 課 題 ]
MONOCOTOは、リアルソーシングを特徴とするソーシャルマニュファクチュアリングサービスです。単にモノをつくる仕組みとして説明するのではなく、その先に生まれる楽しみや経験、人とのコミュニケーションまで含めた事業価値を、顧客が理解できるブランドとして伝える必要がありました。
[ 判 断 ]
サービスの機能や仕組みだけを説明しても、MONOCOTOならではの価値は十分に伝わらないと判断しました。そこで「モノの先にあるコトの価値」という考え方を核に、事業そのものの意味を整理し、ブランド戦略からネーミング、VI、コミュニケーションまで一貫して開発しました。
[ 継承した要素 ]
活かしたのは、リアルソーシングという事業の特徴と、ものづくりによって新しい経験や人とのつながりを生み出すという考え方です。既存の視覚表現を残すことではなく、事業が本来持っていた強みや思想を見つけ出し、新しいブランドの核として活かしました。
[ 変更した要素 ]
製造やサービスの仕組みを中心とした説明から、利用することで生まれる体験や価値まで伝わるブランド表現へ変えました。「何をつくれるか」だけではなく、「その先にどのようなコトが生まれるのか」を伝えることで、事業の独自性を視覚と言葉の両方から理解できる状態へ整理しました。
[ 開発範囲 ]
ブランド戦略/ブランドコンセプト/ブランドネーミング/ブランドシンボルを開発し、WEBサイト、サービスガイド、ロゴガイドラインまで展開しました。事業の考え方から実際に顧客が触れるブランド接点まで、同じ思想で一貫させています。
[ 結 果 ]
ブランドの考え方をWEBサイトやサービスガイドへ展開し、顧客がサービスの仕組みだけでなく、MONOCOTOが提供する価値まで理解できるコミュニケーションへつなげました。さらにロゴガイドラインを整備し、担当者や媒体が変わっても同じブランド表現を継続できる状態を整えています。

ASBO STAY HOTEL│滞在体験そのものをどうブランド化したか
[ 課 題 ]
ASBO STAY HOTELでは、施設や設備だけではなく、沖縄県金武町の自然、海辺の風景、温泉、地域とのつながり、そこで過ごす時間まで含めた「滞在体験」をブランドとして伝える必要がありました。一般的なリゾートホテルとの差ではなく、この場所でしか得られない体験を明確にすることが課題でした。
[ 判 断 ]
ホテルの魅力を設備や機能の一覧として見せるのではなく、「どのような時間を過ごし、どのような感覚を持ち帰る場所なのか」からブランドを考える必要があると判断しました。そこで、自然に身を委ねながら心と身体を解放するという体験価値を中心に、ブランドコンセプトとVIを一体で開発しました。
[ 継承した要素 ]
活かしたのは、沖縄県金武町の自然、海、空気、温泉、地域とのつながりなど、その場所にもともと存在している価値です。新しい装飾を加えてホテルらしさをつくるのではなく、土地が持つ魅力そのものをブランド資産として捉え、VIの出発点としました。
[ 変更した要素 ]
施設や設備を中心に伝える見せ方から、「そこで過ごす体験」を中心に伝えるブランド表現へ変えました。ロゴだけでホテルの個性を表現するのではなく、コンセプトやWEBサイトを含めて一つの世界観を形成し、ASBO STAY HOTELらしさが接点全体から伝わる状態へ整理しました。
[ 開発範囲 ]
ブランドコンセプト/ブランドロゴ/ロゴガイドライン/WEBサイトを一貫して開発しました。ブランドの考え方から視覚表現、宿泊を検討する顧客との接点まで、同じ世界観が続くように整理しています。
[ 結 果 ]
ブランドロゴとコンセプトをWEBサイトへ展開し、施設情報だけではなく、自然、時間、滞在体験まで感じられるブランド表現へつなげました。VIを単独のデザインとして扱わず、宿泊前にブランドを知る段階から同じ世界観を伝えることで、ホテルの特徴を一貫して理解できる状態を目指しています。
➤ CHIBICO WORKS | ASBO STAY HOTELより

DOME ATHLETE HOUSE│専門性と科学性をどうブランドとして伝えたか
[ 課 題 ]
DOME ATHLETE HOUSEは、専門的かつ科学的な知見によってトップアスリートを支援するパフォーマンス開発機関です。単なるトレーニング施設ではなく、アスリートを次のステージへ導く専門組織として、その役割と信頼性を明確に伝える必要がありました。
[ 判 断 ]
施設の設備やトレーニング内容だけを見せるのではなく、アスリートの可能性を高めるために専門家が支援する組織として表現する必要があると判断しました。そこで、専門性、科学性、力強さをブランドの核として整理し、組織の使命が視覚からも伝わるVIを開発しました。
[ 継承した要素 ]
活かしたのは、トップアスリートを支えてきた専門的・科学的な知見と、競技力向上を支援する組織としての姿勢です。表面的なスポーツらしさではなく、蓄積された専門性とアスリートへの向き合い方そのものを、ブランドを形成する重要な資産として捉えました。
[ 変更した要素 ]
トレーニング施設として見られやすい表現から、専門的なパフォーマンス開発機関として認識されるブランド表現へ変えました。施設の機能だけではなく、組織の思想、専門性、科学性まで視覚化することで、DOME ATHLETE HOUSEが担う役割を明確にしました。
[ 開発範囲 ]
ブランドシンボル/ロゴタイプ/ロゴガイドラインを開発し、名刺、ステッカー、タオル、紙コップ、WEBサイト、サービスガイドなどへ展開しました。基本となるVIから日常的に使用される細かなブランド接点まで、一貫して開発しています。
[ 結 果 ]
VIをWEBサイトやサービスガイドだけでなく、名刺、ステッカー、タオル、紙コップなどへ幅広く展開しました。顧客やアスリートが触れる複数の接点で同じブランドらしさを繰り返し体験できることで、専門機関としての認識と一貫したブランドイメージを形成しています。
➤ CHIBICO WORKS |DOME ATHLETE HOUSEより
■ 他社のVI事例から何を学べるのか?
他社の優れたVIから学べるのは、目立つロゴを持つことではなく、固有の視覚資産を継承しながら、媒体や時代に合わせて進化させる姿勢です。ToyotaやCoca-Colaでは、色、書体、写真、レイアウトまで共通原則を持ち、認識性と運用性を十分に両立させています。

TOYOTA│ロゴではなく視覚システム全体でブランドを管理する
Toyota Brand Hubでは、Visual Identity Systemとして、ロゴだけでなく、タイポグラフィ、ブランドカラー、写真、カラープロファイル、アイコン、レイアウトなどを体系的に整理しています。各要素を個別に扱わず、一つのブランド思想のもとで連動させ、さまざまな媒体や接点で同じToyotaらしさを再現できる仕組みとして構築しています。さらに、ブランド要素を一貫して使用することが、企業やブランドを識別しやすくし、認知や信頼の形成につながる考え方も示されています。VIは見た目を統一するだけでなく、ブランド資産を蓄積する仕組みでもあります。
[ 出典 ] Toyota Brand Hub「Visual Identity System」より

Coca-Cola│既存の資産を残しながらVIを進化させる
The Coca-Cola Companyは2026年7月20日、新しいグローバルVIを発表しました。赤と白の配色、Dynamic Ribbon、Arden Square、Spencerian scriptなど、長年使われてきたブランド資産を核にしながら、200以上の市場で一貫したブランド体験をつくる方向を示します。重要なのは、刷新をすべて新しくすることと捉えていない点です。強い認知を持つ資産を維持し、現在の環境に合わせて適応し、新たに必要な要素を加える考え方は、既存資産を継承しながらブランドを進化させるVI開発の参考になります。
[ 出典 ] The Coca-Cola Company「One Iconic Brand. One Iconic Look.」より

■ VI開発に関するよくある質問
VIについての疑問は、ロゴとの差、開発範囲、変更時期、ロゴ変更の必要性、ガイドラインとの関係、効果測定です。迷う場合は、何を変えるかより、どこにズレがあるかを確認します。
Q1. VIとロゴデザインは同じですか?
ロゴとVIは同じではありません。ロゴはVIを構成する中心要素の一つで、VIにはカラー、書体、写真、グラフィック、アイコン、レイアウトなどを含み、視覚表現全体を統合します。
Q2. VIにはどこまで含めるべきですか?
企業ごとに異なります。重要なのは項目数を増やすことではなく、実際の顧客接点と制作現場で必要な範囲を整理し、WEB、営業資料、採用、商品、店舗から必要な各要素を判断します。
Q3. VIを変更するタイミングはいつですか?
VIを見直すのは、単にデザインが古く見えたときではなく、事業、顧客、市場、ブランド戦略と現在の視覚表現にズレが生じたときです。接点のばらつきやデジタル環境での使いにくさも判断材料になります。
Q4. VI開発では必ずロゴを変更しますか?
必ずしも必要ではありません。現在のロゴに認知や信頼があり、今後のブランド戦略とも整合するなら、ロゴを残したままカラー、書体、写真、グラフィックなどを適切に再整理できます。
Q5. VIとブランドガイドラインの違いは何ですか?
VIはブランドの考え方を視覚表現へ変換する仕組みです。ブランドガイドラインはVIを一貫して使う基準で、長期運用は表現ルールに加え、データ管理、承認、更新方法も整理します。
➤ 詳細記事:ブランドガイドラインの作り方|構成内容と成功事例
Q6. VIの効果はどのように測りますか?
VIの効果は、認知や想起、指名検索だけでなく、問い合わせの質、ロゴやカラーの誤用、制作時間、社内理解などを目的に応じて測ります。開発前に評価指標を設定し、一定期間運用した後の変化を比較することが重要です。

■ VIが必要か確認する4つのチェックポイント
VIの見直しはロゴの好みではなく、ブランドと事業のズレで判断します。媒体ごとに表現が違う、競合と見分けにくい、デジタルで使いにくいなど、複数課題があれば再検討が必要です。
1. 経営・事業とのズレ
□ 事業内容が変わったのに、企業イメージが以前のままである
□ 新しい事業領域や顧客層に、現在のVIが対応できていない
□ 目指す企業像と、WEBサイトや営業資料から受ける印象が違う
2. 識別性の課題
□ 競合企業と並んだとき、自社らしい特徴が見えない
□ ロゴ以外にブランドを識別できる視覚資産が少ない
□ 自社らしさを「色」「写真」「書体」などで説明できない
3. ブランド接点の課題
□ WEB、営業資料、採用、SNSで別の企業のように見える
□ 制作会社ごとにデザインの方向が変わる
□ 新しい媒体をつくるたびに表現方法を考え直している
4. 運用の課題
□ ロゴやカラーの誤用が多い
□ ブランド担当者に確認が集中している
□ 社内外の関係者が、どこまで変えてよいか判断できない
□ 正しいデータやルールが一元管理されていない
➤ 詳細記事:CIとVIの違いとは?目的・関係・見直し方・成功事例

■ まとめ
VIは、企業や事業の考え方を視覚へ変換し、どの接点でも同じブランドとして認識できる状態をつくる仕組みです。重要なのは、ロゴを新しくすることではなく、ブランドの考え方と社会から見える姿を一致させることです。既存の資産を活かしながら、一貫した視覚表現へ整えることが大切です。
事業が変化しても、過去のブランド資産をすべて捨てる必要はありません。残すもの、変えるもの、加えるものを見極め、ブランドの核を守りながら現在と未来に対応できるVIへ進化させます。完成時ではなく、継続して使われることで認知や信頼が蓄積され、企業像とのズレも常に確認できます。
■ 参考文献・一次情報
研究論文
- van den Bosch, A.L.M., de Jong, M.D.T. & Elving, W.J.L. (2005), How corporate visual identity supports reputation.
- Corporate visual identity: exploring the dogma of consistency (2018).
- Investigating the effects of consistent visual identity on social media (2021).
- Organizational-level visual identity: an integrative literature review (2022).
企業一次情報
- Toyota Brand Hub|Visual Identity System
- The Coca-Cola Company|One Iconic Brand. One Iconic Look.

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 VIを変えるべきか迷う段階からご相談ください 】
ロゴだけを見直すのか、VI全体を刷新するのか、あるいは現在のブランド資産を残すべきか。
まだ変更範囲が決まっていなくても問題ありません。
現在の事業、ブランド接点、既存資産、目指す企業像を確認し、
何を残し、何を変え、何を加えるべきかを整理します。
■ おすすめ関連記事
VIを詳しく理解するには、定義だけでなく、CIとの関係、開発手順、ブランドガイドラインによる運用、VIの最新動向まで確認することが重要です。課題に応じて関連記事を読み分けることで、自社に必要な見直し範囲と次に取るべき行動をより具体的に整理しやすくなります。
VIの具体的な作り方を知りたい方

[ おすすめ記事 ] VIの作り方|開発手順・構成要素・成功のポイント
CIとVIの違いを知りたい方

VIを継続して運用したい方

[ おすすめ記事 ] ブランドガイドラインの作り方|構成内容と成功事例
VIの最新動向や変化を知りたい方

[ おすすめ記事 ] VIのトレンド6選|ビジュアル・アイデンティティの進化と事例


















