
[ ブランディングデザイン ]
ブランドカラーとは?設定方法とロゴの配色について
色には、イメージやメッセージを伝える力があります。ブランドカラーは、ユーザーがブランドを見た際の印象に大きく影響します。また、数多くの競合ブランドから独自性を発揮させる役割もあります。ブランドとカラーの関係について、多くの研究において商品を判断する場合の90%近くが色によるものであることが分かっています。このように色はユーザーにとって、ブランドがどのように見えるかを決定します。では、ブランドカラーをどのように設定すればいいのでしょうか?ここでは、ブランドカラーについて展開事例を踏まえながらご説明させていただきます。
■ ブランドイメージの多くは「カラー」で記憶されている

人間の目から入る視覚情報のうち、80%以上が「色彩からの情報」だと言われています。色彩が人に与える影響は、私たちが想像する以上に大きく、色の選び方次第で好印象にも悪印象にもなります。言い換えれば、多くのモノは色のイメージによって記憶されているのです。
■ ブランドカラーの設定方法
ブランディングにおいて、カラーには様々な役割があります。その中でも特に、ブランドそのものを印象付ける役割がとても大きいのです。そのため「ブランドのイメージを言語化し、それを表現するのに最もふさわしいカラーを導き出す」ことが最も効果的です。ブランドカラーの設定方法は、ブランディングの目的や内容によって変動はありますが、基本的な設定方法は以下となります。
⚫︎ キーワードの抽出
「ブランドのコンセプト」となるキーワードを抽出し、特性ごとにグルーピングし整理します。
そして、グルーピングしたキーワードを包括する形容詞でまとめます。
⚫︎ キーワードのマッピング
キーワードとカラーを紐づけるために「言語イメージスケール」というものを使用します。
先ほどグルーピングした形容詞をイメージスケールに落と込みます。 ※下図をご参照ください。
⚫︎ ブランドカラーの抽出
言語イメージスケールに対してカラーを配色していきます。
色相が持つ一般的なイメージを形容詞で表現し整理します。 ※下図をご参照ください。
[ 画像引用 ] 日本カラーデザイン研究所より:言語イメージスケール
⚫︎ ブランドカラーの検証と選定
結果としてブランドカラーの候補はいくつか出てくると思います。その場合、「ユーザーに一番伝えたいイメージとは何か?」「サービスや商品を最も表しているカラーは何か?」などを判断基準に決定することが重要です。その際、下記のようにブランドカラーを使用したデザイン展開を作成し検証することをおすすめします。実際にブランドカラーがどのように使われ、どのような印象になるのかイメージができ、ブランドカラーの比較検討がしやすくなります。

■ ブランドカラーとブランドロゴの関係とは
[ 画像引用 ] Canava公式サイトより
有名なブランドのロゴを見たとき、そのブランドが何なのかをすぐイメージできるでしょう。例えば、Appleやマクドナルドのブランドロゴを見ると、迷いなくその企業の商品またはブランドイメージが浮かびます。ブランドロゴは、ブランドの視覚的シンボルで、ブランドアイデンティティを可視化したものです。そんなブランドロゴのカラーによって、ブランドイメージは大きく左右されます。企業の規模が大きいほど、ブランドカラーがブランドアイデンティティに与える存在感と影響力が大きのです。例えば、スターバックスの緑色のブランドロゴに白いコップは、誰もが記憶しています。スターバックスのブランドロゴの緑色はブランドアイデンティティを象徴するとても重要な要素なのです。ブランドロゴの一番の目的は、消費者に商品やサービスを認知してもらうことです。
■ ブランドロゴから見えてくるブランドカラーの傾向
[ 画像引用 ] Brand Colors公式サイトより
ブルーを基調としたブランドロゴが最も多いことがわかります。それは何故かというと、青は安心や安全、信頼といったイメージを想起するカラーだからです。金融や保険業界などにとっては最適なカラーなのです。その一方、赤は情熱を表現する力強いカラーです。赤いブランドロゴは、食品や小売ブランドで使用されることが多いのです。
■ ロゴカラーとブランドアイデンティティの関連性
学術誌「The Journal of the Academy of Marketing Science」のローレン・ラブレックとジョージ・ミルンは「慎重に選ばれたブランド名のように、色はブランドのアイデンティティの中心となる役割をもち、一般消費者に認知していただくための大事な要素」と説明しています。つまり、色とブランドアイデンティティの関連性は非常に高いのです。ラブレックとミルンの論文「市場での色の差別化」では、業界別に好まれる配色パターンが違うと説明されています。例えば、クレジットカード会社の75%以上とファストフードチェーンの20%相当がロゴマークに青を取り入れています。また、小売ブランドのロゴマークの60%以上が赤を使っていますが、アパレルブランドで赤を基調としたロゴマークは稀だと言われています。日々、圧倒的な量の広告を目にする消費者は、ロゴマークの配色によって、無意識にどの業界のブランドから、どのような商品が提供されているかを判断していると言われているのです。
■ イメージによる配色例
ロゴに使う色の数は、3色までが基本です。それ以上になると、色が煩雑に見えてしまい、かえって視認性が悪くなってしまいます。また、彩度の高すぎる色はワンポイントの使用だと有効ですが、面積が広くなると、パソコン画面で見た時にちらつき、目に痛い印象を与えてしまいます。配色だけでなく、彩度にも注意しましょう。
左:明るさ・知的なイメージを与える配色 右:明るさ・活発・美味しそうなイメージを与える配色
右:穏やかさ・癒やしのイメージを与える配色 左:シック・高級なイメージを与える配色
[ 画像引用 ] 配色の見本帳より
■ ブランドカラーの持つイメージと展開事例
ブランドの方向性や価値を表現する上で、カラーが持つ役割は大きいのです。ブランドのロゴCI(コーポレート・アイデンティティ)やVI(ビジュアル・アイデンティティ)には、様々な視覚的要素が含まれています。そうした視覚的要素には、形状、数字、言葉などがありますが、最も人の記憶に残りやすいものは色なのです。ブランディングをする上で、色が持つ力は感情に訴えかけるものであり、更に実利的な側面も持ち合わせているのです。つまり、その色を見る消費者に何らかの感覚を与えたり、分かりやすい色を使うことでそのロゴやブランドのアイデンティティを目立たせたりすることができるのです。
[ 赤 色|レッド ]

視覚的に訴える力が一番強い色だと言われています。その分、人に与える印象も鮮烈です。炎を連想させる色でもあるので、「赤い壁の部屋に入ると、体感温度が上がる」という実験結果もあります。化粧品などの女性向け商品やお祝いの品、エネルギーを表す商品、バーゲンセールの広告などに、特によく使用されています。バーゲンセールのポスターやタグに赤を入れるかどうかで、「売上が20%変わる」とも言われています。日本企業において、ブランドカラー として最も使用されている色なのです。
● 心理的な効果
興奮させる、闘争心を沸き立たせる、温かみを感じる、
目を引く、苛立たせる
● ポジティブなイメージ
情熱、興奮、熱狂、挑戦、元気、明るい、力強い、生命、
エネルギッシュ、鮮烈、闘争心、祝い事、幸福、暖かい
● ネガティブなイメージ
情熱、興奮、熱狂、挑戦、元気、明るい、力強い、生命、
エネルギッシュ、鮮烈、闘争心、祝い事、幸福、暖かい
● 連想するアイテム
太陽、炎、火事、血、バラ、口紅、イチゴ、りんご、
さくらんぼ、消防車、ポスト、鳥居、バーゲンセール
● 相性のよい色
白、黒、グレー、ベージュ、カーキ、緑、紺
[ 青 色|ブルー ]

鎮静効果を与える色だと言われています。実際に、「青い壁に部屋に入ると、体温や心拍数が下がった」「街頭を青にすると犯罪が減少した」という実験結果もあります。海や空の色でもあるので、広大で開放感のあるイメージも持っています。爽やかさやクリーンさ、安心感のある落ち着いたイメージを与えることから、世界的に、ブランドロゴとして使われることが一番多い色です。なお、統計によると、青は日本人の一番好きな色だそうです。
● 心理的な効果
鎮静、闘争心を鎮める、集中力を高める、睡眠の促進、
リラックスさせる、清涼感を与える、冷たさを感じる
● ポジティブなイメージ
知的、クール、かっこいい、ストイック、謙虚、神秘的、
品がある、清らか、クリーン、純粋、慎重、信頼感、誠実、
公平、広い、開放感、包み込む、忠実、安息、清涼感、
平和、眠り、若さ
● ネガティブなイメージ
寂しさ、悲しみ、孤独、不安、冷たい、病、保守的、絶望
● 連想するアイテム
水、海、空、氷、雨、ガスの炎、信号機、男性、プール、
かき氷、地球、青の洞窟、サファイヤ、ラピスラズリ、青い鳥
● 相性のよい色
白、黒、グレー、黄、ピンク
[ 黄 色|イエロー ]

有彩色の中で一番明るく、視覚に訴える力の強い色です。周囲の明るさに関係なく認識できるため、「危険を知らせる色」としても知られています。特に、黄色と黒の組み合わせが目立つため、道路標識や工事現場、踏切などで使用されています。日本では、明るく、希望のあるイメージであることから、活動的な印象を与えたい企業でよく使用されています。
● 心理的な効果
気分が明るくなる、活動的になる、注意を促す、
判断力が上がる、緊張を和らげる、注目させる、
活力が湧いてくる
● ポジティブなイメージ
明るい、華やか、天真爛漫、無邪気、陽気、軽快、ポジティブ、
楽しさ、喜び、活発、素直、純粋、幸福、幸運、希望、
フレンドリー、ユーモアさ、躍動感、幼い
● ネガティブなイメージ
危険、緊張、軽率、イライラ、落ち着きがない、
無神経、浪費、奇抜、批判的、神経質、独善的
● 連想するアイテム
太陽、ひまわり、光、雷、信号機、金、金貨、
レモン、カレー、バナナ、マンゴー、とうもろこし、
プリン、イチョウ、道路標識、ヘルメット、
イエローカード、ひよこ、キリン、イエローキャブ
● 相性のよい色
白、黒、グレー、オレンジ、緑、青、紫
[ 緑 色|グリーン ]

中間色なので、どの色ともバランスよく調和することができます。安心感や安らぎを与えてくれる癒やしの色でもあります。薬局や衛生商品を扱う企業、飲食店、リラクゼーション系など、消費者に安らいだイメージを与えたい場合によく使用されます。緑の語源は、日本では「瑞々しさ」、英語圏では「grow(育つ)」や「grass(草)」だと言われており、いずれにしても「新鮮さ」のイメージを持っています。
● 心理的な効果
リラックスさせる、身体と心のバランスを整える、
身体と心の緊張を和らげる、鎮静、集中力を高める
● ポジティブなイメージ
穏やか、癒やし、健康、休息、平和、安全、安息、
爽やか、生命力、成長、再生、新鮮、若さ、エコ、
環境に優しい、自然、安眠、努力、粘り強い、
豊穣、永続性
● ネガティブなイメージ
苦い、青臭い、未熟、地味、暗い、保守的、重い、優柔不断
● 連想するアイテム
森林、草、クローバー、ミント、山、公園、
カエル、カメ、わかめ、メロン、ほうれん草、
緑茶、信号機、エメラルド
● 相性のよい色
白、黒、グレー、茶色、ベージュ、黄色、赤、ピンク、紺色
[ 橙 色|オレンジ ]

赤と黄色の中間色で、温かみのある陽気なイメージを与える万人受けする色です。ビタミンカラーとも呼ばれています。デザイナーの間では「配色に困ったらオレンジ」と言われている程、汎用性の高い色です。人の心を開かせ、コミュニケーションを活発にしてくれる効果があると言われています。そのため、エンタメ系やキャリア系など、人との繋がりを重視したサービスを提供する企業に使われることが多いです。
● 心理的な効果
陽気な気持ちになる、親しみを感じる、
温かさを感じる、緊張を和らげる、活力を感じる、
食欲を促進する
● ポジティブなイメージ
暖かい、温もり、親しみやすい、美味しそう、
挑戦、エネルギッシュ、元気、陽気、賑やか、
喜び、健康、家庭的、幸福、カジュアル、
開かれている、ノリがいい
● ネガティブなイメージ
自惚れ、くどい、安っぽい、見栄っ張り、おせっかい、目立ちたがり屋
● 連想するアイテム
太陽、炎、暖炉、夕日、紅葉、マリーゴールド、
オレンジ、みかん、柿、マンゴー、かぼちゃ、
にんじん、ハロウィン、レンガ、室内灯
● 相性のよい色
白、黒、グレー、赤、黄色、ベージュ、茶色、紺
[ 桃 色|ピンク ]

赤に白が混ざった色合いなので、赤と同じく目を引きやすい色です。女性的なイメージが強く、母性や安らぎを感じさせる色であると共に、味覚の甘みを刺激する色でもあります。女性的な商品やお菓子によく使用されています。色味がきつくなると、アダルトなイメージや下品なイメージを与えてしまうので注意が必要です。一方、欧米では、赤ちゃんや幼児の肌の色を連想させる親しみやすい色だとされています。
● 心理的な効果
幸福を感じる、愛しい気持ちになる、安らぎを覚える、
緊張を和らげる、血行が良くなる
● ポジティブなイメージ
女性的、可愛らしい、可憐、華やか、優しい、
甘い、恋、愛情、エレガント、美しい、まろやか、
繊細、若さ、美容に効果がある、感謝
● ネガティブなイメージ
性的、妖しい、派手、下品、いやらしい、媚びる、ぶりっ子、甘え
● 連想するアイテム
女性、ハート型、春、桜、梅、バラ、ハイビスカス、
コスモス、リボン、アイドル、ヒロイン、口紅、
チーク、デート、イチゴ、フラミンゴ、ネオン、マイメロディ
● 相性のよい色
白、黒、グレー、ベージュ、青、紺、緑、カーキ
[ 紫 色|パープル ]

純色のひとつで、赤と青が混ざり合った色です。他の色以上に、見る人によって受ける印象が大きく変わる色でもあります。高貴かつ神秘的なイメージがあるため、女性向けの化粧品やファッション、デザイン、音楽、演劇などの芸術系分野の企業で採用されることが多いです。日本では、古くから、身分の高い人間が身につける高貴な色とされており、その影響から、「高貴、上品」なイメージがあります。一方、海外では、「不気味」「気持ち悪い」「下品」などマイナスイメージを持つ人が多いとされています。
● 心理的な効果
感受性が豊かになる、感覚が鋭くなる、直感が鋭くなる、
睡眠を促進する、身体の回復機能を高める
● ポジティブなイメージ
神秘的、神聖、不思議、高貴、高級、上品、美しい、
優雅、華麗、魅力的、感性がするどい、繊細、芸術、
古風、知的、中性的、思慮深い
● ネガティブなイメージ
不気味、気持ち悪い、毒々しい、不吉、下品、不安定、
プライドが高い、孤独、意地悪、欲求不満、欲望、
二面性がある、複雑、理解しがたい、近寄りがたい
● 連想するアイテム
大人の女性、占い師、魔法使い、芭蕉、アサガオ、
アジサイ、すみれ、藤、ぶどう、ブルーベリー、
紅芋、紫キャベツ、オオムラサキ、アメジスト、紫水晶
● 相性のよい色
黒、白、グレー、紺、ピンク、黄色、青
[ 灰 色|グレイ・シルバー ]

白と黒の中間色で、無彩色に分類されます。どの色にも馴染むため、柔軟性の高い色と言えます。メインカラーではなく、ベースカラーとして使用すると全体が安定します。上品で落ち着いたイメージがあるため、教育系や士業系の企業、または自動車や時計などの高額商品のロゴに採用されやすい傾向にあります。ナチュラルで調和感のとれた印象を与えるため、日本では特に人気のある色です。
● 心理的な効果
気持ちを落ち着かせる、忍耐がつく、
現実を受け入れやすくする、信頼感を持たせる、
警戒心を和らげる、もやもやした気分にさせる
● ポジティブなイメージ
上品、高級感、クール、お洒落、都会的、
洗練されている、穏やか、調和が取れている、
信頼感、安定感、知的、大人、
● ネガティブなイメージ
暗い、陰気、憂鬱、曖昧、不安、寂しい、
悲しい、無気力、地味、不透明、薄い、
不味そう、目立ちたくない、疲労感、徒労感
● 連想するアイテム
曇り、雲、煙、灰、砂、冬、コンクリート、
ビル、銀、金属、ハト、ねずみ、
ロシアンブルー、狼、ゾウ、サイ、トレーナー
● 相性のよい色
黒、白、青、赤、黄色、ピンク、紺

[ 黒 色|ブラック ]
無彩色で、光をすべて吸収する色です。そのため、他の色に比べて、重く、暗いイメージを与えます。強さや威厳、重厚さを感じさせるので、落ち着いたイメージや高級感を出したい企業に人気です。欧米では、高価さや優雅さのイメージが強いですが、日本や東アジアなどでは、死や闇などのマイナスイメージがあるので、注意が必要です。
● 心理的な効果
圧力を感じる、高級感がある、気分が暗くなる、
後ろ向きになる、終わりを感じさせる、
重さを感じさせる、神聖さを感じさせる、神秘性を感じさせる
● ポジティブなイメージ
高級感、威厳、重厚、クール、スタイリッシュ、
シンプル、上品、真面目、上質感、神秘的、絶対感、
強さ、中世、力がある、大人っぽい、無限の可能性
● ネガティブなイメージ
暗い、陰気、寂しい、不安、冷酷、拒絶、
孤独、恐怖、闇がある、不気味、沈黙、
絶望感、終わり、閉塞感
● 連想するアイテム
宇宙、ブラックホール、夜、夜空、影、未知、
権力者、男性、大人、黒髪、喪服、葬式、備長炭、
墨、書道、カラス、黒猫、黒豹、黒揚羽、タイヤ、悪魔
● 相性のよい色
どんな色でも可(※どの色でも黒はニュートラルです)
■ まとめ
ブランドの方向性や価値を表現する上で、カラーが持つ役割はとても大きいのです。商品やサービス、WEBサイトや広告など、様々な場面で消費者の目に触れるものなので、伝えたいイメージに合せ、慎重にブランドカラーを設定することが重要なのです。
引用:メーカーブランドカラーが購入意向に与える影響
引用:ファッションブランドの色彩についての定量的解析と予測
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