[ ブランディングデザイン ]
ブランドガイドラインの作り方 | 構成内容と成功事例
ブランドガイドラインは、企業や商品・サービスのブランドイメージを一貫して管理するための基準です。統一したメッセージやビジュアルを発信するには欠かせないもので、どのチャネルや媒体でもブレのない表現を保つことで、消費者に強い印象を残せます。さらに、グローバル展開を行う企業にとっては、ブランドの統一性を維持しつつ、各市場に合わせて調整するための重要なツールになります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ブランドガイドラインを作成するステップと、成功事例を通して詳しく解説していきます。
CONTENTS | 目次
■ ブランドガイドラインとは？
ブランドガイドラインとは、ブランドの印象を一貫して伝えるための「共通ルール」をまとめたものです。ロゴやカラー、フォントといったデザイン要素だけでなく、ブランドの理念やトーン＆マナーなど、言葉や表現の方向性も含まれます。目的は、社内外の人が同じ考え方でブランドを扱い、見せ方や伝え方のズレをなくすことです。広告やSNS、商品パッケージなど、どんな場面でもブランドらしさを保てるようにします。ガイドラインは「縛るためのルール」ではなく、「ブランドらしさを守りながら自由に表現するため」のものであり、ブランドの世界観を共有するための大切なツールとして扱われます。
[ 画像引用 ] Creative Soupより
■ ブランドガイドラインの目的
1. ブランドの世界観を統一し伝えるため
ブランドガイドラインは、企業が発信するあらゆる表現に一貫した世界観を持たせるためのものです。ブランドの理念や価値観、ビジュアルの方向性を整理し、どの担当者や外部パートナーが関わっても同じイメージで伝えられる状態をつくります。これにより、ブランドの印象がブレることなく、顧客に安心感を与えながら、魅力を長期的に維持・強化することができ、結果としてブランド価値の向上にもつながります。
● ブランドの核となる考え方やストーリーを共有する
● すべての発信で一貫したトーンを維持する
● 顧客に「ブランドらしさ」を感じさせる体験をつくる
➤ 詳細記事：ブランドストーリーとは？重要性や作成方法と成功事例
2. デザインや表現のブレを防ぐため
複数の人が関わるブランド運用では、ロゴや色の扱い方、言葉のトーンにバラつきが出ることがあります。ガイドラインは、それらを具体的なルールとしてまとめ、誰が制作しても同じ品質と印象を保てるようにします。その結果、ブランドの信頼性や専門性を高めることにつながります。また、判断基準が明確になることで作業効率が上がり、チーム全体のアウトプットもより安定します。
● ロゴやカラー、フォントの使用ルールを明確にする
● 表現の統一によってブランドの品質を守る
● デザイン判断の基準を示し、迷いをなくす
➤ 詳細記事：ブランディングデザインとは？目的や重要性を成功事例で解説
3. 社内外でブランドを管理するため
ブランドガイドラインは社内だけでなく、デザイナーや広告代理店などの外部パートナーにも共有されます。これにより、制作や発信の一貫性を保ちつつ、ブランド全体を効率よく運用できます。誰が関わっても同じ方向を向ける「共通言語」として機能し、関係者間の認識のズレを防ぎながら意思決定のスピードを高める役割も担い、ブランド運用の質も安定します。また、長期的な体制づくりにも役立ちます。
● 社内外でブランド理解を統一する
● 外部パートナーへの指示やディレクションを円滑にする
● ガイドラインに基づき、運用・管理を効率化する
➤ 詳細記事：インナーブランディングとアウターブランディングの違いとは？
4. ブランドらしさを保つため
市場や時代が変化しても、ブランドが持つ本質的な魅力を失わないようにするのがガイドラインです。見た目だけでなく、言葉の選び方や顧客との向き合い方まで一貫性を保つことで、長く愛されるブランドが育っていきます。また、変化に合わせて柔軟に調整しながらも、核となる価値を守り続けるための指針としても役立ち、ブランドの安定した成長を支えます。さらに、組織として迷わず判断できる軸にもなります。
● ブランドの核となる価値観を明確にする
● 時代や媒体が変わっても一貫した表現を維持する
● ブランドの「らしさ」を判断できる軸をもつ
5. ブランドの信頼性と価値を高めるため
ガイドラインに基づく一貫した発信は、顧客に安心感と信頼を積み重ねます。それがブランド価値の向上につながり、企業にとって大きな資産になります。信頼されるブランドは選ばれ続ける存在となり、社会的な評価や社員の誇りにもつながります。こうした積み重ねが、ブランドの持続的な成長を支える力となり、長期的な競争力の強化にも貢献していきます。さらに、新規顧客の獲得にも好影響を与えます。
● 一貫した印象が顧客の信頼につながる
● 品質や姿勢の安定感がブランド価値を強める
● 長期的なブランド資産を築くための基礎となる
■ ブランドガイドラインの作り方
[ 参考 ] chibico worksより
1. ブランドのビジョンとミッションを定義する
ブランドガイドラインを作るうえで、最初に取り組むべきなのが企業のビジョンとミッションの明確化です。ビジョンは企業がどんな未来を目指すのかを示し、ミッションはその実現のために何を大切にして活動するのかを定義します。これらは、ブランドが提供する価値や社会で果たす役割を示す根幹となる部分です。ビジョンとミッションがしっかり整理されていると、ブランドメッセージやビジュアルが一貫して伝わりやすくなります。結果として、ブランドの方向性や価値観が消費者に分かりやすく届き、企業の姿勢をより強く印象づけられ、ブランドの軸がぶれにくくなる効果も期待できます。
➤ 詳細記事：ブランドビジョン開発のポイントとは？
➤ 詳細記事：ブランドミッションとは何か？定義と開発事例
2. ブランドメッセージとトーン＆マナーを設定する
ブランドメッセージとトーン＆マナーは、ブランドがどんな姿勢で、どんな言葉でコミュニケーションを行うかを決める重要な要素です。ブランドメッセージは提供価値をシンプルに表現し、トーン＆マナーはその伝え方の温度感や言葉遣いを定めます。たとえば、若い世代向けならカジュアルで軽やかな声のトーンが向きますし、高級ブランドであれば落ち着いて洗練された表現が求められます。これは広告、SNS、ウェブサイト、接客など、すべての接点で統一されるべきものです。同じ基準で表現されることで、消費者にぶれない印象を届けられ、ブランドのアイデンティティをより強く築くことにつながります。
3. ビジュアルスタイルや写真ガイドラインを設定する
ブランドの視覚的な一貫性を保つためには、ビジュアルスタイルや写真のガイドラインが欠かせません。写真やイラストの雰囲気、色合い、構図、被写体の基準などを明確にすることで、ブランドの印象を安定して伝えられます。例えば、明るく温かい印象を大切にするブランドなら、光の使い方や色味にも共通のルールをもたせる必要があります。イラストやグラフィック要素を使う場合も同様で、統一感があるかどうかが重要です。これにより、広告、カタログ、WEBなどどの媒体でも同じ世界観で表現でき、ブランドの印象が自然と定着していきます。消費者はこの一貫性によってブランドを直感的に認識しやすくなります。
4. ロゴの適用範囲や使用禁止例を設定する
ブランドガイドラインには、ロゴの扱い方に関する具体的なルールも欠かせません。ロゴの配置や最小サイズ、余白のとり方、背景色との関係といった基本的なルールを明文化しておくことで、不適切な使われ方を防げます。また、変形や不自然な色変更、読みづらい背景に重ねるなどの禁止例も示し、誤用によるブランドイメージの損失を避けることが大切です。ルールが共有されていれば、社内外の誰が扱ってもロゴが正しく運用され、一貫した印象を保ちやすくなります。その結果、ブランドの存在感を強めることにつながり、長期的な価値向上にも寄与し、安定したブランド運用の基盤にもなります。
■ ブランドガイドラインの主な構成内容
[ 画像引用 ] Creative Soupより
1. ロゴの使用方法
ロゴはブランドの象徴であり、その適切な使用はブランドの認知度と一貫性を保つために重要です。ブランドガイドラインでは、ロゴのサイズや配置、余白、カラーのバリエーションを明確に定義し、どのような場面でどのバージョンを使用すべきかを示します。また、ロゴの変形や色の変更、背景との不自然な組み合わせなど、避けるべき使い方も整理されます。これにより、ロゴがどんなメディアでも正しく扱われ、一貫した印象を保ちやすくなり、ブランドの信頼性や価値の向上にもつながります。
2. ブランドカラーの設定
ブランドカラーは、視覚的なアイデンティティをつくるうえで欠かせない要素です。ブランドガイドラインでは、メインカラー、サブカラー、アクセントカラーを設定し、RGB、CMYK、特色指定など、印刷やデジタルに対応したカラーモデルを明確にします。こうした定義により、ブランドカラーが正確に再現され、どの媒体でも同じブランドイメージを届けられます。適切に整理されたカラーパレットは、ブランドの視認性と統一感を高め、ブランド体験の質をさらに底上げします。
➤ 詳細記事：ブランドカラーとは？設定方法とロゴの配色について
3. フォントやタイポグラフィの使用ルール
タイポグラフィは、文章の見せ方を整え、視覚的な一貫性を保つために重要です。ブランドガイドラインでは、タイトルや本文で使うメインフォントとサブフォントを指定し、フォントサイズ、行間、字間などの細かなルールも定めます。メディア別の使用例などを共有しておくことで、不適切なフォント選びや変形を防ぎ、場面にふさわしい表現がしやすくなります。これにより、ブランドの個性や信頼性がより自然に伝わり、情報の受け取りやすさにもつながる大切な基盤になります。
4. ビジュアルスタイルや写真のガイドライン
ビジュアルスタイルは、ブランドがどんな雰囲気で見えるかを統一するための要素です。写真やグラフィック、アイコンのスタイル、色調、フィルターなどを定義し、どんなタイプの画像を使うべきかを示します。また、ブランドイメージに合わない写真や避けたい表現もあわせて整理します。こうした基準があることで、カタログや広告、WEBなどあらゆる接点で一貫した表現を維持でき、ブランドのイメージが自然と浸透しやすくなり、視覚的な信頼感もより安定して伝わります。
5. コミュニケーションにおけるトーン＆ボイス
トーン＆ボイスは、ブランドがどんな口調でコミュニケーションを行うのかを定める要素です。親しみやすいカジュアルな表現が良いのか、落ち着いたフォーマルな表現が良いのかなどを明確にし、媒体に応じた適切な言葉遣いの基準を設けます。これにより、顧客とのコミュニケーションが安定し、ブランドのメッセージが伝わりやすくなります。さらに、担当者が変わっても印象がブレにくくなるため、顧客体験の質が安定し、結果としてブランド価値の向上にもつながります。
6. 使用禁止事項
ブランドガイドラインには、正しい運用を守るための「禁止事項」も含まれます。ロゴの変形や色の変更など、ブランドの一貫性を乱す行為を具体例とともに示し、避けるべき表現を明確にします。こうした項目があることで誤用を防ぎ、ブランドのアイデンティティを保つことができます。関係者がガイドラインに沿って制作できれば、ブランド表現の精度が安定し、結果として価値向上にもつながります。さらに、制作物のクオリティを均一に保つ基盤となり、長期的な信頼構築にも寄与します。
7. アプリケーションデザインの展開事例
レイアウトやグリッドシステムは、コンテンツを見やすく整理するために役立つ要素です。ブランドガイドラインでは、会社案内、WEBサイト、パンフレットなどを想定し、推奨されるレイアウトやグリッドの使い方を示します。余白の取り方やテキスト・画像の配置基準も明確にし、整ったデザインを実現します。統一されたレイアウトを使うことで、ブランドの視覚的な整合性が保たれ、より洗練された印象を与えることができます。さらに、誰が制作しても品質が安定し、ブランド全体の表現力を高めやすくなります。
■ ブランドガイドラインの成功事例
【 STARBUCKS | ブランドガイドラインの成功事例 】
「STARBUCKS」のブランドガイドラインは、ブランドアイデンティティを一貫して伝えるための指針として整理されています。ロゴ、カラー、タイポグラフィ、トーン＆ボイスなど、主要なデザイン要素やコミュニケーション方法が丁寧に定義されています。特に、緑と白を基調としたカラーパレットやサイレンロゴの扱い方は明確にルール化されており、店舗デザインから広告、パッケージまで統一感のある表現につながっています。また、トーン＆ボイスでは、フレンドリーでありながら洗練されたコミュニケーションを重視しており、温かさと親しみやすさをブランド全体で共有しています。こうしたガイドラインによって、スターバックスは世界中で一貫したブランド体験を提供し、顧客に安心感と信頼感を与えています。
[ 成功ポイント ]
● 一貫したビジュアルアイデンティティ
ロゴ・フォント・カラーを統一し、安定したブランドイメージを形成。
● 柔軟なデザイン適応
地域性や店舗ごとの個性を取り入れつつ、ブランドの軸は崩さない工夫。
● シンプルで明確なメッセージ
視覚表現や文面を通して、温かさや品質への姿勢をわかりやすく提示。
● デジタルでの統一感
SNSやアプリでもビジュアルをそろえ、オンラインでも同じ体験を提供。
[ 出典 ] Starbucks Creative Expressionより
【 NETFLIX | ブランドガイドラインの成功事例 】
「NETFLIX」のブランドガイドラインは、世界中で一貫したブランドイメージを届けるために設計されています。ロゴ、カラー、タイポグラフィ、トーン＆ボイスといった視覚・言語の各要素が細かく整理され、どの媒体でも同じ印象を与えられるように工夫されています。中でも、シンプルで存在感のある「N」ロゴや、赤と黒を基調としたカラールールは厳密に定められており、デジタルから広告まで幅広い場面で統一感を保っています。フォントには独自開発の「Netflix Sans」が採用され、視認性とブランドらしさを両立しています。トーン＆ボイスでは、エンターテインメントの革新を目指す姿勢を反映し、親しみやすく知的で、コンテンツへの情熱が感じられるコミュニケーションを重視しています。これらのガイドラインにより、Netflixはグローバル市場で安定したブランドイメージを維持しています。
[ 成功ポイント ]
● シンプルでインパクトのあるロゴ
赤と黒を基調にした視認性の高いロゴを全媒体で統一。
● コンテンツ重視のビジュアル
作品の魅力を引き立てるシンプルで整理された構成。
● グローバルな適応性
地域の文化や好みに合わせつつ、ブランドの軸は崩さない工夫。
● 柔軟でモダンなフォントを使用
独自フォント「Netflix Sans」で印象に残るデジタル体験を提供。
[ 出典 ] Netflix Brand Assets Logos より
【 SPOTIFY | ブランドガイドラインの成功事例 】
「SPOTIFY」のブランドガイドラインは、視覚と言葉の両面で一貫したブランドイメージを届けるために整えられています。ロゴ、カラー、タイポグラフィ、写真表現など、ブランドに関わる主要な要素が丁寧に整理され、あらゆる媒体で統一した表現ができるように設計されています。特徴的な緑のロゴはシンプルでクリーンなデザインが基盤となっており、背景との組み合わせや使用条件が明確に定められています。ブランドカラーのSpotify Greenに加え、サポートカラーのパレットも規定されているため、表現の幅を持たせつつ統一感を保てます。タイポグラフィには「Gotham」を採用し、モダンで軽やかな印象を維持しています。トーン＆ボイスでは、ユーザーを中心にしたフレンドリーで開かれた姿勢を重視し、音楽への親しみや楽しさを自然に伝えるコミュニケーションが求められています。
[ 成功ポイント ]
● 一貫したカラーとビジュアルアイデンティティ
Spotify Greenを軸に、シンプルで力のある配色で統一。
● 柔軟なロゴ使用法
背景色や素材に応じて調整でき、一貫性と使いやすさを両立。
● ユーザー中心のメッセージ
音楽を楽しむ体験に寄り添い、発見や共感を促す表現を採用。
● クリエイターとの協調
多様な個性を尊重しつつ、プラットフォームとしての統一感も維持。
[ 出典 ] Spotify for Developersより
【 VISA | ブランドガイドラインの成功事例 】
「VISA」のブランドガイドラインは、信頼性やセキュリティ、そして世界中で利用できる安心感を届けるために整えられています。ロゴはシンプルでありながら存在感があり、青と金のカラーパレットは誠実さや信頼感を視覚的に伝えます。ガイドラインでは、ロゴの扱い方、余白、最小サイズ、カラーの組み合わせといった基本ルールが細かく定義され、どこで使われても同じ印象になるよう配慮されています。フォントには専用の「Visa Sans」が採用され、すっきりとした見やすい表現が統一されています。トーン＆ボイスでは、世界共通の「安心して使えるブランド」であることを伝える姿勢が求められ、ユーザーに一貫した信頼感を届けることを大切にしています。こうしたガイドラインによって、VISAはあらゆるタッチポイントで安定したブランド体験を提供し、認知度と信頼を確かなものにしています。
[ 成功ポイント ]
● 信頼性と安心感の強調
ロゴやカラーで、安全性や信頼感をわかりやすく表現。
● グローバルでの一貫性
どの地域でも同じ印象を届け、ブランド認知を安定して維持。
● シンプルで効果的なデザイン
複雑な金融領域でも視認しやすく、ブランドの存在感を確保。
● パートナーとの連携強化
ガイドラインの活用で、一貫したブランド運用を実現。
[ 出典 ] Visa Digital Brand Guidelinesより
【 AUDI | ブランドガイドラインの成功事例 】
「AUDI」のブランドガイドラインは、高級感と先進性を無理なく伝えながら、一貫したブランド表現を実現するために整えられています。象徴的な4つのリングのロゴはシンプルで洗練されており、背景色、サイズ、配置などの細かなルールが明確に定められています。あわせて、Audiらしさを形づくるシルバー、ブラック、ホワイトのカラーパレットが使われ、プレミアムブランドとしての印象に深みを持たせています。タイポグラフィには専用フォント「Audi Type」が採用され、モダンで読みやすい表現を維持しています。さらに、写真やビジュアルでは、躍動感や革新性が感じられる表現を推奨し、車両の技術力や精巧さが自然と伝わるよう配慮されています。トーン＆ボイスはシンプルかつ控えめで、ブランドのエレガンスを損なわずに伝える姿勢が一貫しています。
[ 成功ポイント ]
● エレガンスと先進性の強調
洗練されたデザインで、高級感と革新性を自然に表現。
● 一貫したロゴの使用とブランドカラー
4つのリングとシルバーカラーで、どこでもブレのない統一感を維持。
● デジタルおよびグローバル展開
世界中で同じイメージを届け、デジタルでも安定したブランド体験を提供。
● サステナビリティの強調
環境配慮を意識したメッセージやビジュアルを取り入れ、時代に合った姿勢を示す。
[ 出典 ] Audi Styleguideより
【 IBM | ブランドガイドラインの成功事例 】
「IBM」のブランドガイドラインは、同社が大切にしている革新性と信頼性を、視覚と言葉の両面で安定して伝えるために細かく整えられています。ストライプで構成されたブルーの「IBM」ロゴは非常に象徴的で、ガイドラインでは配置、サイズ、余白、カラーの扱いなどが丁寧に規定されています。ブランドカラーであるIBMブルーは、信頼感と技術への姿勢を表す色として位置づけられ、補助カラーと組み合わせることで一貫したビジュアルをつくります。タイポグラフィは独自フォント「Plex」を採用し、モダンで読みやすい印象を保つことを重視。トーン＆ボイスでは、プロフェッショナルで誠実なコミュニケーションを基本とし、技術革新のリーダーとしての姿勢を、押しつけず自然に感じられるよう配慮されています。こうした体系的なガイドラインにより、IBMは世界のどこでも同じ品質のブランド体験を届けています。
[ 成功ポイント ]
● 革新と信頼の強調
シンプルでモダンなデザインで、IBMの信頼性と技術革新をわかりやすく表現。
● 青と白の一貫したカラー使用
コーポレートカラーを統一することで、視認性とブランド認知を安定して向上。
● 柔軟で多様なロゴ展開
さまざまなメディアや用途で使いやすいロゴバリエーションを整備。
● 人間中心のメッセージング
技術力だけでなく、人や社会への姿勢も丁寧に伝えるコミュニケーションを重視。
[ 出典 ] IBM Design Languageより
■ ブランドガイドラインの運用と管理
【 社内外への理解浸透 】
ブランドガイドラインは作るだけでは十分ではなく、その内容を社内外にしっかり浸透させてこそ力を発揮します。まずは社内の従業員がガイドラインを理解し、日々の業務で自然に使える状態をつくることが大切です。研修や説明会を行い、ガイドラインの目的や重要性を共有することで理解が深まります。また、外部パートナーやデザイナー、広告代理店などにもガイドラインを提供し、統一された表現ができる環境を整えます。特に大規模な企業やグローバル展開している企業では、言語や文化の違いを越えてガイドラインを徹底することが重要になります。これにより、どの地域でも共通したブランドイメージが伝わり、信頼感とブランド価値の向上につながり、継続的な発信力も高まります。
【 活動を推進する仕組みづくり 】
ブランドガイドラインをきちんと運用するには、守りやすい仕組みづくりが欠かせません。ガイドラインに沿って活動できるよう、定期的なチェックやフィードバックの場をつくることが有効です。たとえば、社内で制作物をつくる際には、ガイドライン担当部門が確認プロセスを設け、適切に運用されているかを確認します。また、外部パートナーとの契約にガイドライン遵守の項目を加えることで、誤用を防ぎやすくなります。違反時の対処や、適切な使用例を共有することも有効です。さらに、ガイドラインをデジタル化し、オンラインで誰でもすぐに確認できるようにすることで、日常的な運用がスムーズになります。こうした仕組みが整うことで、ブランドイメージの統一が保たれ、長期的な成長につながります。
【 更新頻度とプロセス 】
ブランドガイドラインは、一度つくったら終わりではなく、企業の変化や市場の動きに合わせて定期的に見直す必要があります。新しい商品やサービスの追加、トレンドの変化、競合環境の変化などに応じてガイドラインをアップデートし、常に現状に合ったものにしておくことが大切です。更新プロセスとしては、まず現行ガイドラインが問題なく機能しているか定期的に確認し、改善が必要な部分を把握します。その上で、デザイン部門やマーケティング部門、外部デザインパートナーと協力し、新たな要素や修正点を反映します。更新した内容はすぐに社内外へ共有し、全員が最新の基準で活動できる状態を整えます。これにより、一貫性を保ちながらも時代にフィットした柔軟なブランド運用が実現します。
■ ブランドガイドラインに関するよくある質問
ブランドガイドラインについては、作成の必要性から浸透方法、更新の考え方まで多くの疑問が寄せられます。ここでは、実務で特に押さえておきたいポイントをよくある質問形式でまとめました。
[ よくある質問① ]
Q ：ブランドガイドラインは、そもそも必要ですか？
A ：必要です。ブランドイメージをあらゆるチャネルで一貫して伝え、信頼と認知を高めるために不可欠です。特にグローバル展開では、地域ごとの文化や表現に合わせつつも、統一されたブランド体験を維持するための重要な指針として機能します。
[ よくある質問② ]
Q ：ガイドラインに絶対含めるべき内容は何ですか？
A ： 以下の項目は必須です。
・ビジョン／ミッションの明確化
・ブランドメッセージとトーン＆ボイス(トーン＆マナー）
・ビジュアルスタイルの定義
・ロゴ使用ルール(適用範囲・禁止事項）
・ブランドカラー／フォント指定
・レイアウトや使用制限の明示
これらが揃うことで、ブランドの「見た目」と「言葉」の両面が一貫して伝わります。
[ よくある質問③ ]
Q ：社内外への浸透はどうすればいい？
A ：社内では研修やワークショップを通じて理解を深め、社外パートナーには契約条件として遵守を明記します。実際の制作・運用の現場でガイドラインが自然に活用されるよう、教育とチェックの両輪で定着を図ることが重要です。
[ よくある質問④ ]
Q ：一度作ったら終わり？更新は必要？
A ：はい、継続的な見直しが必要です。
事業戦略や市場環境、デザイン潮流の変化に応じて定期的に評価・改訂し、最新版を社内外へ迅速に共有できる体制を整えましょう。ガイドラインは“静的な資料”ではなく、“進化するブランドマネジメントツール”として運用するのが理想です。
■ ブランドガイドラインに関するチェックリスト
ブランドガイドラインは作って終わりではなく、適切に整備し運用してこそ力を発揮します。ここでは、ガイドラインが機能しているかを確認するための実践的なチェックポイントをまとめました。
[ ブランドの方向性・基盤のチェック ]
⬜︎ ビジョン・ミッションが明確に定義され、ガイドラインの中心として機能しているか？
⬜︎ ブランドメッセージとトーン＆マナーが策定され各チャネルで一貫して運用されているか？
[ ビジュアル／デザイン要素のチェック ]
⬜︎ ロゴ使用ルールが明確に定義され、誰でも正しく運用できる状態になっているか？
⬜︎ ブランドカラー、フォントなどのデザイン要素が、具体的な数値や仕様として文書化されているか？
[ ガイドライン全体の構成と共有のチェック ]
⬜︎ ガイドラインに、理念・ビジョン、ビジュアル規定、トーン＆マナーが統合されているか？
⬜︎ 社内と社外の関係者にガイドラインを共有し、意図と運用ルールを理解・遵守してもらえているか？
[ 定期レビューと改善のチェック ]
⬜︎ 事業展開、環境変化に応じて、ガイドラインのレビュー・改定のスケジュールが組まれているか？
⬜︎ 成功事例や他社のベストプラクティスを定期的に参照し、自社ガイドラインの改善に活かしているか？
■ まとめ
ブランドガイドラインは、単なるデザインのまとめではなく、ブランドが「何を／どのように」伝えるかを整理するための大切な仕組みです。まずはブランドの核となるビジョンとミッションを明確にし、それを起点にメッセージ、トーン＆ボイス、ビジュアルスタイルを整えていきます。さらに、ロゴの使い方や禁止事項を示しておくことで、ブランドの統一性と信頼性を支える基盤がつくれます。そして、ガイドラインをしっかり機能させるには、社内外での浸透と、実際の運用での丁寧なルール遵守が欠かせません。成功企業の事例が示すように、ブランドを育てるには「変えない核を守りつつ、必要な変化に柔軟に対応する姿勢」が重要です。ガイドラインを「縛り」ではなく、「ブランドらしさを発揮するための支え」と捉え、運用体制を整えていきたいところです。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
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