
[ ブランディングデザイン ]
トーン&マナーの重要性と目的
ブランディングにとってのデザインとは、ブランドの世界観を構築し伝えることです。すなわち「らしさ」を表現することなのです。そのためには、名刺や封筒、広告や販促物、WEBや空間などのクリエイティブ表現全体が一貫していなければなりません。では、どうすれば統一した世界観が構築できるのでしょうか?その手法としてトーン&マナーの設定があります。今回は、このトーン&マナーとデザインについてお話させていただきます。
■ トーン&マナーの概念とは

トーン&マナーの概念図
ブランディングデザインにおけるトーン&マナーとは、「らしさ」や「世界観」の考え方の根底にあるものです。人は、モノを目で見ているようで実際には今までの知識や経験から頭でイメージを作りあげているのです。それは、「良いイメージ」の場合もあれば「悪いイメージ」の場合もあるのです。すなわち頭の中にある潜在意識なのです。そして、もともと人が持っている「知覚情報」は、あまり変えることができません。なのでその「知覚情報」を計算して、人に伝えるために「視覚情報」としてトーン&マナーが有効なのです。簡単に言うと伝えたい印象を計算し意図的にデザインすることで顧客の価値観や潜在意識に入り込むということなのです。
■ トーン&マナーの重要性
左図 : × 統一感のない世界観 右図 : ◯ 一貫性のある世界観
トーン&マナーとは、ブランディングにおいて、ブランドの世界観(らしさ)を表現する役割があります。意図したイメージを一貫性をもって印象付けることでブランドを伝えることができるからです。具体的な手法として、ブランドのカラーやフォントなどを設定し、ユーザーが理解しやすいよう構成やデザインを統一することです。また、トーン&マナーを意識することは、開発チーム全体で共通した認識を持つことにつながるので、無駄なデザイン案を立案することも無くなり、結果的に効率化とコスト削減につながります。
■ トーン&マナーの目的
「情報」と「感性」で人に伝える
トーン&マナーを正しく設定し、繰り返し発信することで、少しずつブランド価値を高め信頼や安心を醸成することができます。トーン&マナーが整ったデザインは資産であると同時に未来への投資でもあります。商品やサービスを発信するデザインは会社の顔となる部分です。デザインのイメージから消費者は商品やサービスを理解します。間違ったデザインで訴求すると間違った認識だけでなく、会社全体の信頼やイメージを損なうことにも繋がります。
カラーによるコミュニケーション
カラーには、イメージやメッセージを伝える力があります。ブランドカラーは、ユーザーがブランドを見た際の印象に大きく影響します。また、数多くの競合ブランドから独自性を発揮させる役割もあります。
左 : ブランドカラー 右 : カラーが与える印象
イラストによるコミュニケーション
イラストによるコミュニケーションの目的の1つは「難しいこと」を「分かりやすく」瞬時に伝えられることです。もう1つは、写真では表現できない「タッチ」や「デフォルメ」といった誇張表現が可能なことです。
左 : 手描きイラスト 右 : 3Dイラスト
写真によるコミュニケーション
写真特有のメッセージ力として「情報量と精度」があげられます。写真というよりリアルな訴求方法は、言葉やイラストといったコミュニケーションとは大きく異なります。より密度が高く直接的な伝達ができるのです。
左 : ライフスタイルを表現 右 : 技術力を表現
■ 成功しているブランドにはトーン&マナーがある
[ 出典 ] BEHANCEサイトより
私たちが認識しているブランドのほとんどは、トーン&マナーが存在しています。つまり、ブランドを深く知らなくても「らしさ」を感じているのです。逆に印象やイメージが無いブランドには、トーン&マナーが存在しないのです。
■ ブランディングデザインへの時代のシフト
マス広告、つまりテレビや新聞などの旧メディアの衰退は、デザインの業界にも大きな影響を及ぼしています。CMなどの広告では「モノ」が売れないという時代、そして広告費の削減といった現状は、デザインの価値基準に大きな変化をもたらしています。古き良き時代の旧デザインは衰退していますが、戦略としてのブランディングデザインはむしろ熱い注目を浴びています。ブランディングやマーケティングの視点で考えれば、デザインへの期待と効果は年々大きくなってきています。
■ まとめ
ただ単にカッコ良いだけのデザインをすることや統一感のないデザインをすることは、ブランディングにとって何の効果もありません。そのためには、戦略的にトーン&マナーを設定し上手くコントロールすることで高い効果が得られるのです。トーン&マナーを構築ことは、決して簡単ではありません。しかし、成功すればブランドにとって有益な効果をもたらすはずなのです。
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