[ ブランド戦略 ]
ブランディング会社の「選び方」と「頼み方」
ブランディング会社は、企業や商品などのブランド価値を最大限に引き出し、競争力を高めるための重要なパートナーです。ブランドの認知度を高め、顧客との信頼関係を構築するためには、適切なブランディング会社を選ぶことがとても重要です。しかし、市場には多くのブランディング会社が存在し、それぞれが異なるアプローチを提供しています。そのため、自社に最適なブランディング会社を選ぶには、いくつかのポイントや注意点を押さえておく必要があります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ブランディング会社を選ぶための基準や、具体的な依頼方法について詳しく解説していきます。
■ ブランディング会社の選び方
【 サービス内容が充実しているか 】
ブランディング会社を選ぶ際、まず注目すべきは提供するサービスの充実度です。企業のブランド戦略は多岐にわたるため、単にロゴやデザインだけでなく、マーケティング、リサーチ、コンテンツ戦略など包括的に対応できるかが重要となります。例えば、デザインに特化した会社でも、戦略部分が欠けていると、実際のブランド力向上にはつながらない場合があります。幅広いサービスを提供している会社は、一貫したブランド体験を提供するための体制が整っており、長期的な支援を期待できるため、まずはサービス範囲をしっかり確認しましょう。
【 具体的な実績があるか 】
ブランディング会社を選ぶ際に、その会社が過去にどのような実績を上げてきたかを確認することが重要です。実績のある会社は、特定の業界や規模に応じたブランディングのノウハウを持っており、同様の課題に対処した経験が豊富です。特に、自社と同じ業界や規模の企業をクライアントとしている場合、その業界特有のトレンドや顧客層に合わせた効果的なアプローチが期待できます。実績を確認する際は、具体的なプロジェクトの成功事例や成果物の質をチェックすることがポイントです。
【 一気通貫で対応してくれるか 】
ブランディングは戦略立案から実行、さらにはその後の運用に至るまで、長期にわたって取り組むべきプロジェクトです。ですから、部分的な作業だけではなく、プロジェクト全体を一気通貫でサポートしてくれる会社を選ぶことが重要です。例えば、戦略部分だけを自社で実施し、デザイン制作は別の会社に任せると、一貫性が欠けてしまう可能性があります。ブランディングの全体像を把握し、一貫した方向性で進めるためにも、最初から最後まで伴走してくれる会社を選ぶことが望ましいです。
【 デザインと戦略のバランスがとれているか 】
デザインの美しさだけでなく、戦略的な視点がしっかりと組み込まれているかも重要なポイントです。ブランドイメージの構築には、視覚的な要素が大きな役割を果たしますが、それだけでは十分ではありません。企業の目標や市場のニーズを反映した戦略がなければ、デザインがどれだけ優れていても、ビジネスの成長には結びつきません。戦略とデザインのバランスが取れているかどうかを見極めるためには、ブランディング会社がどのように戦略とデザインを統合して提案しているかを確認することが大切です。
■ ブランディング会社を選ぶ際の注意点
【 自社のニーズと合致しているか確認する 】
ブランディング会社を選ぶ際に、まず確認すべきは自社のニーズとその会社が提供するサービスが合致しているかです。どんなに優れたブランディング会社でも、自社の目標や目的に対応できないのであれば、期待した効果は得られません。事前に自社の課題を明確にし、その解決に向けて適切なアプローチを提供してくれるかを確認することが、プロジェクトの成功につながります。
【 コミュニケーションの相性を確認する 】
ブランディングは、会社とクライアントの密なコミュニケーションが求められるプロジェクトです。プロジェクトを成功に導くためには、コミュニケーションの相性が非常に重要です。依頼者が自社のビジョンや要望を正確に伝え、相手がそれを正しく理解することができる関係性が必要です。また、フィードバックを素早く共有できる体制が整っているかどうかも、会社選びの際の重要な要素です。
【 納期とプロジェクト管理に注意する】
ブランディングプロジェクトの成功には、納期管理とプロジェクト進行が重要な要素です。特に、大規模なプロジェクトでは進行が複雑化しやすく、納期が遅れるリスクも高くなります。ブランディング会社がどのようにプロジェクト管理を行っているか、スケジュールの管理体制や進捗報告の頻度を事前に確認しておくことで、スムーズな進行を確保できます。明確なマイルストーンが設定され、各フェーズでチェックポイントがあると、問題が発生した際にも早期に対処できるため安心です。
【 契約内容を細かく確認する】
ブランディング会社と契約を結ぶ際は、契約内容を詳細に確認することが不可欠です。料金体系や追加費用の発生条件、納品物の権利関係、アフターサポートの有無などをしっかり把握しておく必要があります。契約書に記載されていない部分については、口頭での確認だけに頼らず、書面に残すようにしましょう。また、長期プロジェクトの場合、途中での解約条件や変更が発生する際の対応についてもあらかじめ確認しておくことで、後のトラブルを避けることができます。
【 継続的なブランド支援が可能か確認する】
ブランディングは一度で終わるものではなく、継続的に磨き上げていくものです。そのため、プロジェクトが完了した後も、引き続きサポートを提供してくれるかどうかを確認することが大切です。定期的なブランド評価や改善提案、必要に応じての追加施策など、長期的な視点でブランドを育てていけるかが、会社選びの大きなポイントになります。継続的な支援を提供してくれる会社は、ブランドの成長を見守り、変化に対応しながら最適なアプローチを続けることができるため、信頼関係を築きやすいです。
■ ブランディングが対応可能な会社の分類
【 ブランディング会社 】
⚫︎ 強み
ブランディング会社は、ブランド戦略に特化しているため、企業の強みを引き出す独自のノウハウを持っています。市場分析やブランドアイデンティティの構築、ターゲット層への最適なアプローチ方法を提供するため、深い洞察をもとに長期的な戦略を練ることができます。また、ビジュアルデザインと企業の価値観を統合する力が高いのも特徴です。
⚫︎ 弱み
ブランディングに特化しているため、広告運用やPRなど他のマーケティング活動に弱い場合があります。広範なマーケティング戦略を必要とする企業には、他の会社との連携が必要になることもあります。
[ 代表的なブランディング会社 ]
- Interbrand(インターブランド) [画像引用]
- Landor Associates(ランドーアソシエイツ) [画像引用]
- Pentagram(ペンタグラム) [画像引用]
【 コンサルティング会社 】
⚫︎ 強み
コンサルティング会社は、ビジネス全体の戦略に深く関わることができるため、ブランド戦略を企業全体の目標と一致させるアプローチが得意です。財務状況や市場分析、競争分析に基づいた戦略を提供でき、企業の成長とブランディングを一体化させるサポートを行います。
⚫︎ 弱み
デザインやクリエイティブ面でのアプローチには弱いことが多く、ブランディングの実際の表現やクリエイティブな要素に関しては外部のデザイン会社や専門チームに依頼する場合があります。
[ 代表的なコンサルティング会社 ]
- McKinsey & Company (マッキンゼー・アンド・カンパニー)
- The Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)
- Accenture(アクセンチュア) [画像引用]
【 広告代理店 】
⚫︎ 強み
広告代理店は、メディア戦略や広告キャンペーンにおける豊富なノウハウを持ち、ターゲット層に対して効果的にリーチする力を持っています。ブランド認知度を高めるための広告展開やSNS運用など、広報活動を強化するための実行力が高いです。
⚫︎ 弱み
広告の短期的な効果に重きを置くため、ブランドの長期的なビジョンや戦略的アプローチには弱い場合があります。また、クリエイティブな表現は強いですが、ブランド全体の整合性を維持するための一貫したアプローチが不足することがあります。
[ 代表的な広告代理店 ]
【 デザイン会社 】
⚫︎ 強み
デザイン会社は、デザインやビジュアル表現に秀でており、ブランドの魅力を視覚的に引き出す力が強みです。ウェブデザイン、グラフィックデザイン、映像制作など、具体的なクリエイティブを実際に形にする部分において優れた技術を持っています。
⚫︎ 弱み
戦略的なブランディングや市場分析に関しては専門外である場合が多く、ブランド戦略全体を導くことは難しいです。ビジュアル的な表現に特化しているため、ブランドの方向性や価値観と一貫したコンセプトを維持するためには、他の会社との協力が必要になることが多いです。
[ 代表的なデザイン会社 ]
- TSDO(佐藤卓デザイン事務所) [画像引用]
- GKデザイングループ [画像引用]
- グルーヴィジョンズ [画像引用]
■ ブランディング会社への頼み方
【 依頼する目的を明確にする 】
ブランディング会社に依頼する際は、まず依頼する目的を明確にすることが重要です。ブランド認知度を高めたいのか、顧客とのエンゲージメントを向上させたいのか、それとも新しい市場に進出するためのサポートを必要としているのか、目的を具体的に伝えることで、ブランディング会社もより効果的な提案ができます。目的が曖昧なままだと、成果物の方向性も定まらず、期待する結果に結びつかない可能性があります。
【 自社のビジョンやブランドの背景を伝える 】
自社のビジョンや歴史、成り立ちをしっかりと伝えることは、ブランディングの成功において欠かせない要素です。ブランディング会社が企業のアイデンティティを正確に理解し、その上で提案を行うことで、企業の価値観に沿ったブランディングが可能になります。特に、ブランドが持つ独自のストーリーやミッションを共有することで、ブランド全体の一貫性が保たれ、より強い印象を顧客に与えることができます。
【 現状の課題や目標を共有する 】
現在直面している課題や将来的な目標も、しっかりとブランディング会社に伝える必要があります。例えば、ブランド認知が不足している、競合との差別化が難しい、顧客とのエンゲージメントが低いなどの課題を明確に伝えることで、ブランディング会社はその解決に向けた戦略を提案できます。また、長期的な目標や企業の成長ビジョンも共有することで、単なる一時的なブランディング施策ではなく、持続的なブランド価値の向上を目指す取り組みが可能となります。
【 予算とスケジュールを提示する 】
ブランディングプロジェクトは、予算とスケジュールに大きく関係してきます。予算が限られている場合でも、効果的なプランを提案できるよう、事前にしっかりと提示することが重要です。また、希望する納期やプロジェクトの段階ごとの進行スケジュールも明確にしておくことで、スムーズな進行が可能になります。予算とスケジュールの透明性が保たれていると、双方にとって信頼関係が築きやすく、プロジェクトが滞りなく進むことが期待できます。
■ まとめ
ブランディング会社の選び方と依頼方法は、企業の成長やブランド価値向上に大きく影響します。まず、自社のニーズに合ったサービス内容と具体的な実績を持つ会社を選び、デザインと戦略のバランスが取れた一貫したサポートを提供できるか確認することが大切です。また、コミュニケーションの相性やプロジェクト管理、契約内容の細部に注意を払い、長期的なブランド支援が可能かも確認しましょう。依頼時には、目的やビジョン、現状の課題を明確に伝え、予算やスケジュールをしっかり提示することが成功の鍵です。最終的に、競合分析や市場のリサーチを活用しながら、ブランディング会社と連携することで、持続可能なブランド戦略を築くことが可能です。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
【 株式会社チビコ 】
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