[ ブランド戦略 ]
ブランドビジョン開発のポイントとは?
企業ブランディングの最もわかりやすいものの一つが「ブランドビジョン(企業理念)」です。人に個性があるように、掲げられている企業のブランドビジョンも様々です。ブランドビジョンは広い視点で語ることが少なくなく、ベンチマークとしている競合他社と似てきてしまうという悩みを抱える企業は案外と多いものです。また、個性を重視するあまり過剰な表現方法をとってしまい、真意の伝わらないものとなってしまっているケースも見受けられます。では、そうしたことを避けるためにはどうすれば良いのか。企業のブランドビジョン開発においての重要点についてまとめてみます。
■ ブランドビジョンとは?
図:ブランド構造の概念図
ブランドビジョンは、広い視野と未来志向が必要
ブランドビジョンを端的に整理をすると、「企業としての志、存在意義、見据える将来、理想的な在りかた」などということになるでしょうか。言い換えると、企業としての独自性をもって“究極的なゴール”を明示したものとも言えるかも知れません。既に現実となっている事柄の中で語るのか、近い将来に実現したいと考えていることで語るかは問われることはありません。大切なのは、観念的な内容となっていたとしても、その礎となるファクトを挙げられるかどうかです。例えば、原料生産者とフェアトレードを行っているコーヒー会社などであれば「コーヒーで世界中を幸せにする」というブランドビジョンは、ファクトとの相乗効果によって大きな説得力をもつものになるでしょう。ファクトが伴わない場合は、素晴らしいことを言ってるようでも誰にも響かず理解を得られないまま、当然のごとく極めて表層的な企業であるという印象を与えてしまうことになります。
■ ブランドビジョンの2つの役割
図: ビジョンの伝達イメージ
社内と社外への効果を踏まえたものであること
⚫︎ 顧客や生活者に向けて
顧客あるいは生活者に対して、企業としての考えかたの根幹部分や、企業哲学(フィロソフィ)、理想とする企業としての立ち位置などについてコミュニケーションできるということです。企業としての考えかたに共感していただけるということは、長きに渡りお付き合いいただける可能性が高まるということになります。新しい商品やサービスを展開する折りにも、好意的な期待を寄せていただけることになるでしょう。
⚫︎ 従業員や社内に向けて
従業員など社内に向けて、企業として目指している行き先・行く末について共有することができるということです。ブランドビジョンは従業員のモチベーションに直結します。エンゲージメントやロイヤルティにも影響していきます。人材採用においてもミスマッチの減少にもなるでしょう。ブランドビジョンの開発には、確かな戦略が必要です。
■ ブランドビジョン開発のポイント
1. 強い意志はあるか
⚫︎ ビジョンの共有と強いリーダーシップが必要
ブランドビジョンの開発においては、「企業としての大志・社会的な大義」という要素は欠かすことができません。企業が設立された背景には創業者やメンバー陣の熱い想いがあったことでしょう。そして現在の経営陣にも叶えたい理想や、目指したい企業としての在りかた、実現したい未来図があるはずです。それらを集約しながら発展させていくことは、そのまま企業としての唯一無二の個性を顕在化することにつながります。企業のブランディングは、企業を率いる人たちの強い想いとリーダーシップがなければできません。誰かの案をジャッジするのではなく、今一度、個々の考えかたを自由に語り合い検討していくことが大切です。プロジェクトのメンバーはブランドビジョンの中心部分を共有していくことができ、それは日々の業務にも活かされていくことでしょう。
2. 社会との接点はあるか
⚫︎ 企業の独りよがりであってはならない
ブランドビジョンの開発は、熱い想いだけでは完成させることはできません。情熱をいくら感じられたとしても、ブランドビジョンに企業や創業者のエゴを感じるようなものではあっては意味をなしません。企業による自分勝手な自らの肯定は、顧客や生活者の共感を得られることにはならず、従業員の人心すらも失っていくことでしょう。社会とのタッチポイントが欠けているブランドビジョンには、誰も想いを重ねることができないからです。創業者や社長のカリスマ性によって企業のブランディングが可能だった時代は、既に終わっています。企業活動に社会との同調・協調性をどう見い出していくかが、ブランドビジョン開発のキーとなっています。
3. 具体性はあるか
⚫︎ 机上の空論にならないための意志と実態が必要
理想の将来像や、叶えたい世界について明文化していこうとすると、どうしても抽象的なものとなってしまいがちです。それは、企業を取り巻くすべてのステークホルダーに対して八方美人であろうとすることにあろうとすることが原因です。全員と笑顔を交わしたいと思うあまり、あるいは誰も傷つけたくないと思うがあまり、“最大公約数”を探してしまうために起こります。「世界の人々を幸せにする」、「暮らしをもっと便利に」、「よりよい明日をつくる」。どれも悪い案ではありませんが、ブランドビジョンとしては不十分だと言わざるを得ません。どのような事業をしていても、どのような企業規模でも掲げることができてしまうからです。自社の「らしさ」を具体的に織り込むことは、他社を圧倒するブランドビジョンづくりにつながります。
4. 優先度はあるか
⚫︎ 伝えるべき内容の選定は最も重要
ブランドビジョンを開発するにあたり、他社のものを参考にされることもあるのではないでしょうか。中には様々な内容を一度に入れている企業の例を見受けることがあるかと想いますが、おそらく上手く機能していないことが予測できるはずです。自社のどの部分を最大の特長として認識し、それを踏まえ、これからはどの部分を武器として戦い、成長していこうとするのか。自社の強みをタイムラインで考えていくことは、ブランドビジョンを開発するうえで大切な要素となります。企業のブランディングは、ブランドビジョンをはじめとした色々な要素によって体系的に創り出すことにつながります。言うべきことの精査と磨き上げは、ブランドビジョンに力強さをもたらします。
5. 連動性はあるか
⚫︎ 連動性がなければ説得力が無い
ブランドビジョンの開発は、今回のブログではその詳細について割愛いたしますが「ブランドミッション(企業使命)」との連動性についても考えていかなければなりません。ブランドミッションとは、ブランドビジョンを実現するために企業として行わなければならないこととされていますが、重要点3で挙げた具体性を解決するものの一つとも考えることができるでしょう。両輪の関係とも言えるため、どちらを先に開発し始めるかはケースによって異なりますが、両者にはブレのない筋の通った関係性が必要です。一般的に主従の関係で見られることが多いのですが、実際は相互の存在があって初めて意味を成すものであるという認識の方が正しいように考えられます。
■ まとめ
ブランドビジョンの開発を成功させるためには、押さえておくべき幾つかの重要なポイントについてお分かりいただけたでしょうか。企業の代表が、あるいは経営の主要メンバーが時間をかけて現状を正しく認識し、可能性について整理をし、来たる社会を見据え、理想の未来について語り合うことがなければ、機能するブランドビジョンをつくるこはできないでしょう。ブランドビジョンは、企業と生活者や顧客、従業員といったすべてのステークホルダーとの架け橋となる、企業として最も大切なコミュニケーションツールの1つです。主観的に、そして客観的に。その最適なバランスが、ブランドミッション開発を成功へと導くものとなっていきます。
引用:ブランド研究における近年の展開
引用:デジタル時代におけるブランド構築
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