
[ ブランディングデザイン ]
ロゴデザインに重要なフォントとリニューアル事例
ロゴデザインにおいて、フォントはブランドのイメージを左右する重要な要素です。フォントは、ブランドの個性を視覚的に表現し消費者に伝えます。例えば、太字のサンセリフフォントは力強さやモダンさを表現し、手書き風のフォントは親しみや温かさを感じさせます。フォント選びが適切であれば、ロゴデザインがブランドのアイデンティティを強調し印象的なものとなります。さらに、企業が成長や方向転換を行う際には、ロゴデザインのリニューアルが行われます。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ロゴデザインにおけるフォントの役割や、成功したリニューアル事例を通して、適切なフォント選びのポイントについて詳しく解説します。
■ ロゴデザインに見るフォントの現状
これまでアパレルブランドのロゴといえば歴史のあるブランドであればあるほどセリフ体のロゴが多かったのですが、ここ数年で多くのブランドがサンセリフ体にリニューアルしています。その理由のひとつが「オンラインへの対応」だと考えられます。ジバンシィの元デザイナーで現在はバーバリーのデザイナーを務めるリカルド・ティッシは「現代的効用」としてサンセリフ体を支持しています。バーバリーのロゴはデザイナーのピーター・サヴィルにより一新されました。
この件について『The Business of Fashion』は「清潔で読みやすくさまざまなメディアに対応できる。特にオンラインで機能する」と記載しています。また、オフホワイトのデザイナーで現在ルイ・ヴィトンのデザイナーを務めるヴァージル・アブローは「新しいルネッサンスの夜明け」と表現しこうした流れを評価しています。黒人デザイナーであるヴァージル・アブローは「インターネット、新しいメディアの登場で、これまでの歴史を再考されている」と述べている。セリフ体は「権威主義」のもので、人種差別的だという見方もあるのだという。
[ 引用 ] The Business of Fashionより
■ フォントには「セリフ体」と「サンセリフ体」がある
フォントはセリフ(ひげ)と呼ばれる飾りがついている「セリフ体」と、飾りがついていない「サンセリフ体」の2種類に大きく分類されます。サンセリフ体の”サン”とは、フランス語で「ない」という意味で先端の飾りがないという意味です。セリフ体/明朝体は文字が細く、読み手に負担を与えないのが最大の特長です。読みやすさを重視したい場合は、こちらを選択するといいでしょう。一方でサンセリフ体/ゴシック体は視認性を重視する場合には有効です。例えば重要な単語や見出しなど、文字を目立たせたい場合などにはに向いています。

【 セリフ体の特徴 】
「格調高い」「高級な」「伝統的な」といったイメージや印象があります。古代イタリアの石刻文字が起源ともいわれており、長文でも読みやすいという特徴があります。英字新聞などはセリフ体で構成されていることが多く、和文フォントでは明朝体がこれにあたります。

【 サンセリフ体の特徴 】
「モダン」「カジュアル」「シンプル」といったイメージや印象があります。
サンセリフ体は特に視認性に長けているのが特徴です。例えば、Appleの指定書体としてMyriad Proも一時期採用されていました。和文フォントではゴシック体ががこれにあたります。
■ ハイブランドに見るロゴデザインのリニューアル事例
ブランドのロゴは、そのブランドの個性や特徴を最も象徴しています。富裕層をターゲットとしているハイブランドにとって、プレミアム感やゴージャスなイメージを表すための重要な役割があります。また、長く愛され親しまれてきたロゴをリニューアルすることは、ブランドイメージを刷新することにもつながります。一見すると新旧のロゴが似通っているようにも感じますが、時代に合わせたリブランディングとして捉えると有効なのかも知れません。

【 BALENCIAGAロゴデザインのリニューアル 】
旧ロゴは白地に横長に伸びたフォルムなのに対して、新ロゴはグレー地に縦長なフォルムで、シンプルでより洗練されたデザインになっています。

【 CELINEロゴデザインのリニューアル 】
旧ロゴは「E」の文字の上に「’」特徴的なアクセントがありましたが、新ロゴはアクセントを削除し、文字間を狭めウエイトも重いデザインになっています。

【 BURBERRYロゴデザインのリニューアル 】
旧ロゴはセリフ体で馬のシンボルが目立ちます。新ロゴは馬のシンボルを削除し、シンプルなサンセリフ体で視認性の高いデザインになっています。
■ ブランドとしての独自性とは

ブランドにとって独自性はとても重要なはずです。このように似たようなロゴばかりでいいのでしょうか?上記のロゴ一覧で比較してみると、どれも似たようなフォントに見えます。海外の考え方は「フォントは完成されたもの」であり、選んだフォントをそのまま使うことも多いため、似たようなロゴが存在しているようです。
■ 視認性重視のロゴデザインの現状
ハイブランドがなぜブランドのロゴをリニューアルするのか?それは時代とともに移りゆくメディアが関係しています。今までは消費者が情報を得る手段として「紙」が主流でした。そして紙面で見るフォントとしては、「セリフ体が視認性が高く、ロゴも伝わりやすかったので多く使用されてきました。しかし、現在の情報を得る手段は「モバイル」が主流です。スマートフォンで小さな表記でも視認性が高いのが「サンセリフ体」だからです。実際、新しいブランドや人気のブランドはシンプルなサンセリフ体のロゴが多いのも事実なのです。
■ 動画時代に対応するためのロゴデザイン
YouTubeなどは解像度の関係でセリフ体のひげ部分などはつぶれて消えてしまいます。例えば動画のサムネイルにサンセリフ体や明朝体を使用しているのを見たことがありますか?また、動画のテロップ、映画の字幕なども細い文字は映像と同化しやすかったりするため、太く可読性の高いフォントが求められます。その結果、サンセリフ体(ゴシック体)などが人気になったのも当然なのでしょう。こうしたフォントの時流はいつの時代も起こることなのです。

■ ロゴデザインとフォントに関するよくある質問
【 よくある質問① 】
⚫︎ フォント選びはロゴにどんな影響を与えるのですか?
→ フォントにはブランドの個性や印象が直結します。太字のサンセリフ体は「力強さ」や「モダンさ」を表現し、手書き風フォントは「親しみ」や「温かさ」を感じさせる効果があります。適切な選択はアイデンティティを強調し、視覚的な訴求力を高めます。
【 よくある質問② 】
⚫︎ セリフ体とサンセリフ体、どちらがロゴに向いていますか?
→ 一長一短ですが、セリフ体は「格式高い」「伝統的な」印象を持ち、明朝体を含めて長文でも可読性があります。一方、サンセリフ体は「視認性」が高く、特にスマホやオンラインでの表示に強く、「現代的効用」が期待できるため、最近はリニューアルにも多く採用されています。
【 よくある質問③ 】
⚫︎ ロゴをリニューアルする際のフォントの役割とは?
→ フォントはロゴ刷新において時代に適応した見た目にするための鍵。たとえば、歴史あるブランドがサンセリフ体に変更することで、オンライン対応と視認性の強化を同時に果たすなどの事例が増えています。
【 よくある質問④ 】
⚫︎ 認知やクリーンさを意識したいなら、どんなフォントがいいですか?
→ 読みやすさと意思を明確に伝えるためには、見出しやロゴに視認性の高いサンセリフ体の採用が適しています。オンラインメディアでの視認性確保に特に有効です。
【 よくある質問⑤ 】
⚫︎ ブランドごとにフォント選びで意識すべきポイントは?
→ ブランドの性格やターゲット層、使用環境に応じて選ぶのが必須です。たとえば歴史や高級感を重視するならセリフ体、成長性や現代性を打ち出したいならサンセリフ体が効果的です。オンライン対応との親和性も考慮しましょう。

■ ロゴデザインのリニューアルに関するチェックリスト
【 ブランドコンセプトとの整合性チェック 】
⬜︎ ブランドの核である価値観と理念を、リニューアルデザインで明確に反映できているか?
⬜︎ 新しいデザインが事業戦略やターゲット層の変化に沿っているか?
【 フォント選択と印象のチェック 】
⬜︎ 使用フォントが、信頼性・モダン・親しみといったブランドに必要な印象を適切に表現できているか?
⬜︎ セリフ体・サンセリフ体のどちらがブランドに合致しているか選定理由が明確になっているか?
⬜︎ Web表示や印刷など、各種媒体での可読性や視認性を確認しているか?
【 デザインの鮮度と差別化のチェック 】
⬜︎ 従来のブランド資産(ロゴ、色、フォント)をうまく継承または刷新しているか?
⬜︎ 新フォントやデザインが競合と明確に区別できる独自性を持っているか?
【 運用整備と変更管理のチェック 】
⬜︎ 新ロゴとフォントの使用ルールをガイドライン化し、関係者への共有ができているか?
⬜︎ リニューアル後のブランド効果のKPIを設定し、評価スキームを構築しているか?

■ まとめ
ロゴデザインにおけるフォント選びは、ブランドの印象や個性を左右する要です。太字のサンセリフ体は「力強さ」「モダンさ」を、手書き風フォントは「親しみ」や「温かさ」を演出できます。特に歴史あるブランドのロゴでは一時的にセリフ体が多用されましたが、近年ではオンライン対応の観点から見直しが進み、サンセリフ体へ移行する流れが顕著です。バーバリーのロゴリニューアルにおいては「清潔で読みやすく各種メディアに対応できる」と評価されており、デザイナーのヴァージル・アブローも「新しいルネッサンスの夜明け」と表現しています。つまり、フォント選びは単なる視覚の好みに留まらず、時代に即した機能性や価値観の反映であり、ブランドの進化を支える重要な戦略的要素と言えます。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
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