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ブランドステートメントの目的と開発事例建設会社

[ ブランディングデザイン ]

建設会社のブランドステートメント|定義・作り方・成功事例

品質はどこも同じ、差別化が難しい。そんな悩みを抱える建設会社が、取り組むべきなのがブランドステートメントの開発です。価格競争に巻き込まれる、安全性や持続可能性をどう打ち出せばよいかわからない。こうした状況は、ブランド自体が曖昧なサインです。ブランドステートメントは、単なるスローガンではなく、企業の信念や社会に対する責任を明確に伝えるためのものです。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターを務める筆者が、建設会社がブランドをどう言語化し、信頼を築くブランドステートメントを作り上げていくべきかを具体的な事例とともに分かりやすく解説していきます。


■ 建設会社のブランドステートメントの目的

建設会社のブランドステートメントの目的

建設会社のブランドステートメントとは、企業が社会や顧客に対して「どんな価値を提供し、何を約束するのか」を明文化したメッセージです。安全性、品質、持続可能性といった要素が中心となり、自社の信念や姿勢を端的に示します。たとえば「高品質な建築と持続可能な未来を実現する」といった言葉には、卓越した施工技術、環境への配慮、地域社会への貢献といった意図が込められます。明確なブランドステートメントは、競合との差別化を図り、顧客やパートナー、社員からの信頼獲得に直結します。言語化することで、企業の一貫した行動指針ともなり、ブランディングの基盤を強化します。

▶︎ 詳細記事:ブランドステートメント開発のメリットとは

■ 今なぜ建設会社にブランドステートメントが必要なのか?

建設会社は今、価格競争や労働力不足、環境対応といった課題に直面しています。こうした時代にこそ、自社の信念や価値を明確に示すブランドステートメントが不可欠です。安全性・品質・持続可能性への姿勢を言語化することで、顧客やパートナーからの信頼を築き、優秀な人材の採用や社内の意識統一にもつながります。ブランドの軸が明確な企業こそ、選ばれる存在となれるのです。

建設会社がブランドステートメントを開発するメリット

建設業がブランドステートメントを開発するメリット

1. 顧客・社会からの信頼向上

安全性、品質、持続可能性などの価値観を明文化することで、
ブランドへの信頼と共感が高まり、選ばれる理由が明確になる。

2. 社員の意識統一とエンゲージメント向上

企業の使命や理念を共有することで、社員のモチベーションや誇りが醸成され、
現場力と組織力の強化につながる。

3. 価格以外の差別化と採用力強化

技術力や社会的意義を言語化することで、価格競争以外の優位性を築き、
採用市場でも企業の魅力を明確に打ち出せる。

建設会社でブランドステートメントを開発することは、企業の競争力と信頼性を高める大きな武器となります。まず、安全性・品質・持続可能性といった社会的価値を明確に発信することで、顧客や地域社会からの信頼を獲得しやすくなります。また、理念や使命が言語化されることで、社員の意識統一や誇りを育む効果もあります。採用活動でも「どんな会社なのか」が明確になり、優秀な人材の獲得に寄与。さらに価格以外の差別化要素が生まれ、長期的なブランド価値向上に直結します。持続可能な経営基盤を築くために不可欠な取り組みといえるでしょう。

■ ブランドステートメントの開発ステップ

ブランドステートメントの開発ステップ

1. 企業理念と価値観の明確化

まずは自社の理念や価値観を見直します。建設会社では「安全第一」「品質重視」「地域社会への貢献」といった理念が中心となることが多いです。なぜ自社がこの事業に取り組むのか、どんな社会的使命を担っているのかを掘り下げて言語化しましょう。経営陣だけでなく、現場で働く社員の声も反映することで、現実味と説得力のあるブランドステートメントになります。

2. 顧客や社会からの期待を把握する

建設会社に対する顧客や社会の期待は年々多様化しています。高い施工品質はもちろん、災害に強い建物づくり、環境への配慮、地域への貢献などが求められています。こうした期待を把握するには、顧客インタビューや業界動向の分析が有効です。外部視点を取り入れることで、独りよがりなステートメントではなく、共感と信頼を生む言葉が見えてきます。

3. 言葉選びと表現の洗練

理念と期待を整理したら、これらを端的で力強い言葉にまとめます。建設会社では「信頼」「未来」「安心」「誠実」「持続可能性」といったキーワードがよく響きます。しかし他社と差別化するためには、自社ならではの歴史や技術力、地域密着型の姿勢なども盛り込むことが重要です。汎用的な表現に陥らず、自社の本質が伝わる言葉選びを徹底しましょう。

4. 社内外への浸透と活用

完成したブランドステートメントは、経営陣のスピーチや社内研修、安全大会、現場の朝礼など、建設業特有の場面で積極的に発信しましょう。また、ホームページや会社案内、採用サイトにも明記し、企業姿勢を可視化することが大切です。日常業務の中にブランドの言葉が自然に息づく状態をつくることで、社員の意識統一と外部への信頼構築が加速します。

■ 建設会社ブランドステートメントの開発事例

清水建設 : 子どもたちに誇れるしごとを。

清水建設 : 子どもたちに誇れるしごとを。

清水建設のブランドステートメント「子どもたちに誇れるしごとを。」は、単なる企業スローガンではなく、社会に対する責任と未来への約束を表現しています。安全で高品質な建築を提供するだけでなく、環境負荷の低減や持続可能なまちづくりにも貢献する姿勢を示しています。社員一人ひとりが「未来の世代に誇れる仕事か」を問いながら行動することで、企業文化にも深く浸透。顧客や社会から信頼される建設会社としての存在感を確立しています。

[出典]清水建設/企業情報より

鹿島建設 : 100年をつくる会社

鹿島建設 : 100年をつくる会社

鹿島建設のブランドステートメント「100年をつくる会社」は、単なる建造物の提供にとどまらず、時代を超えて価値を持つ社会基盤や建築を創出する姿勢を明確にしています。耐久性・品質・先進技術を追求し、次世代に誇れる構造物を残すという長期的な視野が込められています。また、環境配慮や地域社会との共生も重視し、持続可能な社会づくりへの貢献も強調。時間を超えて信頼され続けるブランドづくりの核となるステートメントです。

[出典]鹿島建設・CSRより

大成建設 : For a Lively World

大成建設 : For a Lively World

大成建設のブランドステートメント「For a Lively World」には、人と社会が活き活きと豊かに暮らせる環境づくりへの強い意志が込められています。建築や土木事業を通じて、単なるインフラ整備にとどまらず、街や空間に活力や新しい価値を生み出すことを目指しています。また、環境配慮や先進技術の導入、災害に強い都市づくりにも注力し、未来志向の社会貢献を推進。世界中の人々の生活の質向上に寄与する姿勢が明確に打ち出されたステートメントです。

[出典]大成建設・理念体系より

大林組: 時をつくる こころで創る

大林組: 時をつくる こころで創る

大林組のブランドステートメント「時をつくる こころで創る」は、単なる建物の構築ではなく、時代を超えて価値を持つ空間や文化を創造する姿勢を示しています。「時をつくる」は、持続性や歴史に耐える品質へのこだわりを、「こころで創る」は、使う人々の心に響く豊かな空間づくりを表現しています。技術力と感性を融合させ、社会や地域の未来に貢献する建設を追求。人と社会に深く寄り添う姿勢がこの言葉に凝縮されています。

[出典]大林組・企業情報より

長谷工 : 住まいと暮らしの創造企業グループ

長谷工 : 住まいと暮らしの創造企業グループ

長谷工のブランドステートメント「住まいと暮らしの創造企業グループ」は、単に住宅を提供するだけでなく、そこに暮らす人々の豊かな生活環境そのものを創り出す姿勢を表しています。マンションを中心に、企画・設計・施工・管理まで一貫して手がける事業構造を活かし、快適で安心な住まいを提供。さらに、防災・環境配慮・地域コミュニティづくりにも注力し、「住まい」と「暮らし」の両面から価値を高め、長期的な顧客満足と社会貢献を目指しています。

[出典]長谷工・長谷工グループ理念より

■ まとめ

中堅ゼネコンや大手住宅メーカーの倒産は,建設会社が本格的な競争・淘汰の時代を迎えたことを示しています。大手といえども会社の存続に関わる深刻な事態に陥りかねないことを改めて認識させられました。技術力や品質の違いによる他社との差別化が難しくなり、コストダウンによる差別化ももはや限界に近づいた今、企業における優位性は『強いブランド力』があるかどうかになっているのではないでしょうか?ブランド力を高めることは、マーケットシェアの拡大と利益に繋がり、強いブランド力を持つ企業のみが,この先行き不透明な競争・淘汰の時代を勝ち抜いていけるのです。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

株式会社チビコ

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