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ブランドステートメントの目的と開発事例食品会社

[ ブランディングデザイン ]

【必見】食品会社10社のブランドステートメント事例と作り方

食品会社のブランドステートメントでは、品質、健康、安全性、持続可能性が重視されます。たとえば「高品質で安全な食品を通じて、健康で持続可能な未来を提供する」というステートメントは、厳格な品質管理や環境に配慮した生産プロセス、消費者の健康を重視する姿勢を示します。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ブランドステートメントが、消費者に安心感と信頼性を与え、企業の社会的責任や持続可能な取り組みがアピールできることについて解説させていただきます。


■ ブランドステートメントとは? 食品会社での重要性

ブランドステートメントとは? 食品会社での重要性

なぜ今、食品会社にブランドステートメントが必要なのか

ブランドステートメントとは、企業が社会に対して「何のために存在するのか」「どんな価値を届けたいのか」を明確にし言語化したものです。特に食品会社では、安心・安全・品質といった価値だけではなく、健康志向や持続可能性、地域性や文化的価値など、多様な期待に応える必要があります。情報過多の現代において、ブランドステートメントがなければ企業の理念や価値が市場に埋もれ、価格競争に巻き込まれるリスクが高まります。明確なブランドステートメントは、顧客にとって選択の基準となり、信頼や共感を育むことになります。また社内にとっても理念共有やブランド活動の指針となり、社員の一体感やブランド価値の一貫性を高める重要な役割を果たします。

▶︎ 詳細記事:ブランドステートメント開発のメリットとは

■ 食品会社10社のブランドステートメント事例

アサヒビール : その感動を、わかちあう。

アサヒビール : その感動を、わかちあう。

アサヒビールのブランドステートメント「その感動を、わかちあう。」は、飲料を通じて生まれる感動や喜びを、多くの人々と分かち合いたいという企業の思いを表現しています。商品そのものの美味しさや品質はもちろん、飲むシーンや体験そのものを大切にし、豊かな時間や人とのつながりを創出することを目指しています。また、持続可能な社会づくりや環境配慮、地域貢献にも力を入れ、企業活動全体で「感動」を社会に広げていく姿勢を強調。この言葉は、社員の行動指針としても浸透しています。

[ 出典 ] アサヒビールグループ公式サイトより

キリンホールディングス : よろこびがつなぐ世界へ

キリンホールディングス : よろこびがつなぐ世界へ

キリンホールディングスのブランドステートメント「よろこびがつなぐ世界へ」は、飲料や医薬、健康関連事業を通じて人々の生活に喜びと豊かさを提供し、それを社会全体へ広げていくという理念を表現しています。商品を通じた味わいや楽しさだけでなく、健康やウェルビーイングの向上、持続可能な社会づくりへの貢献も重要な柱としています。この言葉は、多様な事業領域を超えて「人と人」「人と社会」をポジティブにつなぐキリンの企業姿勢を端的に伝え、ブランドの一貫性と社会的価値を強化しています。

[ 出典 ] キリン・企業方針より

サントリーグループ : 水と生きる

サントリーグループ : 水と生きる

サントリーグループのブランドステートメント「水と生きる」は、企業活動の根幹に「水」という自然資源への深い敬意と共生の姿勢を据えていることを示しています。飲料事業を中心に、安心・安全で高品質な製品を提供する一方、水資源の保全や森林育成活動など環境保護にも積極的に取り組んでいます。また、「水」を象徴としたこの言葉には、企業の持続可能な成長と社会貢献への強い意志が込められており、社内外に対する行動指針としても重要な役割を果たしています。

[ 出典 ] サントリーグループ・企業情報より

カゴメ : 自然を、おいしく、楽しく。

カゴメ : 自然を、おいしく、楽しく。

カゴメのブランドステートメント「自然を、おいしく、楽しく。」は、自然の恵みを活かした商品づくりを通じて、人々の食生活に楽しさと健康を届けるという理念を表現しています。野菜や果物の持つ本来の美味しさと栄養価を大切にし、ジュースやソース、加工食品など多彩な商品で提案。さらに、食育や環境保全活動にも積極的に取り組み、自然との共生と持続可能な社会の実現を目指しています。この言葉は、カゴメの企業姿勢やブランド価値をシンプルかつ親しみやすく伝える象徴的なメッセージとなっています。

[ 出典 ] カゴメ・企業方針より

ニチレイグループ :「おいしさ」と「新鮮」をネットワークする。

ニチレイグループ : 「おいしさ」と「新鮮」をネットワークする。

ニチレイグループのブランドステートメント「『おいしさ』と『新鮮』をネットワークする。」は、食品の美味しさと鮮度を高品質の物流・技術力を駆使してつなぎ、社会全体に届けるという企業の使命を示しています。冷凍食品をはじめとする事業領域で培った独自のコールドチェーン網を活かし、国内外に新鮮で安全な食を安定供給。さらに、環境配慮や食品ロス削減にも取り組み、持続可能な食の未来づくりにも貢献しています。この言葉は、製造から流通、消費者の食卓まで一貫した価値提供の姿勢を象徴しています。

[ 出典 ] ニチレイグループ・企業方針より

永谷園 : 味ひとすじ

永谷園 : 味ひとすじ

永谷園のブランドステートメント「味ひとすじ」は、創業以来一貫して「美味しさ」への飽くなき探求を追求してきた姿勢を端的に表現しています。日本の家庭の食卓に寄り添い、手軽さと本格的な味わいを両立させる商品づくりを続ける中で、変わらぬ価値観と職人精神を守り抜いています。また、この言葉は品質や素材へのこだわりだけでなく、時代やニーズに柔軟に対応しながらも「おいしさ」を軸とした企業姿勢の象徴として社内外に強く浸透しており、ブランドの信頼感と独自性を高めています。

[ 出典 ] 永谷園・会社情報より

ニッポンハムグループ : 人輝く、食の未来

ニッポンハムグループ : 人輝く、食の未来

ニッポンハムグループのブランドステートメント「人輝く、食の未来」は、食の力を通じて人々の生活を豊かにし、一人ひとりがいきいきと輝ける社会づくりを目指す意志を表現しています。安全・安心で高品質な食の提供にとどまらず、多様な食文化やライフスタイルに寄り添う商品開発を推進。また、環境配慮や持続可能な社会への貢献も重視しており、食の未来を切り拓く革新と挑戦の精神が込められています。この言葉は、社員やパートナーとの共通価値観の指針としても機能しています。

[ 出典 ] ニッポンハムグループ・企業情報より

味の素 : Eat Well,Live Well.

味の素 : Eat Well,Live Well.

味の素のブランドステートメント「Eat Well, Live Well.」は、「より良く食べることが、より良く生きることにつながる」という哲学を端的に表現しています。単に美味しさを提供するだけでなく、栄養バランスや健康促進、生活の質向上を目指す企業姿勢が込められています。世界中で食品やアミノ酸事業を展開する味の素グループは、この言葉を通じて、地域や文化を超えて「食」を通じた社会貢献に取り組んでいます。また、持続可能な地球環境への配慮や、食を通じた多様な価値創出にも積極的に挑戦しています。

[ 出典 ] 味の素公式サイトより

明治 : 明日をもっとおいしく

明治 : 明日をもっとおいしく

明治のブランドステートメント「明日をもっとおいしく」は、日々の食卓に「おいしさ」と「楽しさ」を届けるだけでなく、健康や安心を含めた豊かな未来づくりへの貢献意欲を示しています。乳製品やチョコレートをはじめとする幅広い製品群を通じて、人々の暮らしを支え、次世代に向けた新しい価値創造を目指す姿勢が込められています。この言葉は、おいしさの探求にとどまらず、社会全体のウェルビーイングや持続可能な成長にも貢献していくという企業の理念を象徴しています。

[ 出典 ] 明治公式サイトより

日清食品グループ : おいしい、の その先 へ。

日清食品グループ : おいしい、の その先 へ。

日清食品グループのブランドステートメント「おいしい、の その先 へ。」は、単なる美味しさの提供にとどまらず、食を通じて新たな価値を創出し、社会や未来に貢献するという強い意志を表しています。これまでの即席麺の枠を超え、健康、環境配慮、持続可能な開発など、食の可能性を広げる姿勢が明確に打ち出されています。また、この言葉は革新と挑戦を続ける企業文化を象徴し、社員やステークホルダーに向けた未来志向のメッセージとしても機能しています。

[ 出典 ] 日清食品グループ・スローガンより

■ ブランドステートメント開発の3ステップ

ブランドステートメント開発の3ステップ

1. ブランド価値の明文化(企業使命の言語化)

ブランドステートメント作成の第一歩は、自社が「何のために存在するのか」という企業使命を明確に言語化することです。単なるスローガンではなく、創業の想いや事業の本質、社会に対する貢献意識を深掘り、ブランドの核となる価値観を整理します。その際、自社の強み・弱み・市場の期待などを客観的に分析し、経営陣と現場の視点を一致させることが重要です。曖昧な理念ではなく、社員一人ひとりが腹落ちする「言葉」としてまとめることが次のステップの土台になります。

2. 消費者が共感するフレーズ化(具体・リアルさ)

明文化した価値を、消費者が共感しやすいフレーズに落とし込むのが次のステップです。ここで重要なのは、「企業が言いたいこと」ではなく、「生活者が受け取りたい価値」に翻訳する視点。具体的でリアルな言葉選びが求められます。抽象的な理念や美辞麗句ではなく、ブランドがどんな場面で、どんな体験を届けるのかを想像させる表現を目指しましょう。生活文脈に沿った言い回しや、競合との差別化が感じられるオリジナリティある表現が理想的です。

3. 社内浸透と情報発信(社員・パートナーの理解)

ステートメントは作成して終わりではありません。社内外への浸透と一貫した発信設計が不可欠です。まずは社員やパートナーがその価値観を理解し、自らの言葉で語れる状態を目指します。研修やワークショップ、日常のコミュニケーションに取り入れ、行動指針として実感を伴わせることがポイント。また、広告や商品パッケージ、SNSなどの発信チャネルごとにステートメントのトーン&マナーを整え、ブランドの世界観がブレない発信設計を行いましょう。

■ 食品業界ならではの注意点/よくある失敗

食品業界ならではの注意点とよくある失敗

1. 綺麗すぎて実態と乖離するケース

食品業界では「安全・安心・おいしさ」といった綺麗な言葉を並べがちですが、実態と乖離した表現は逆効果です。消費者は品質や取り組みの裏付けを求めており、言葉だけが先行すると信頼を損ないます。たとえば「世界最高品質」など過剰な表現は疑念を生む可能性も。重要なのは、自社の取り組みや実績を裏付けとともに語り、言葉と行動が一致していることを示すことです。誠実で具体的な言語化がブランド信頼の礎になります。

2. 曖昧な語句による理解不能なケース

「こだわり」「真心」「おいしさの追求」といった曖昧な語句だけで構成されたブランドステートメントは、消費者の心に響きません。言葉が抽象的だと、何を約束しているのかが伝わらず、ブランドの差別化要素もぼやけてしまいます。具体的な行動・姿勢・価値を盛り込み、生活者が自分事として理解しやすい言い回しにすることが大切です。「どのように」「なぜ」「どんな影響を与えるのか」まで明確に語ることで、信頼と共感を得られます。

3. バラつきがあり一貫性がないケース

ブランドステートメントが社内外で一貫して共有されていないケースは非常に多く見受けられます。たとえば広告、営業資料、商品パッケージなどで異なるメッセージが発信されると、消費者や取引先に混乱を与え、ブランド価値が損なわれます。社内教育やガイドラインを通じて、言葉だけでなくブランドの「語り方」やトーン&マナーも揃えることが重要です。社員が自信を持って一貫したメッセージを語れる状態をつくることが、ブランド強化の鍵となります。

■ まとめ

食品業界におけるブランドステートメントは、単なるスローガンではなく、企業の価値観や社会への姿勢を言語化し、消費者との信頼関係を築く重要な要素です。「安全性」「健康」「持続可能性」という共通軸に自社らしさを加え、具体的かつ誠実に伝えることが求められます。一方で、実態と乖離した表現や曖昧な語句、一貫性の欠如はブランド価値を損なう要因になります。作成後は社内外への浸透と一貫した発信に注力し、ブランドの未来を支える礎として活用していきましょう。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

株式会社チビコ

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