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リブランディングで競合に差をつける成功のための実践ステップ

[ ブランド戦略 ]

リブランディングで競合に差をつける|成功のための実践ステップ

リブランディングは、企業や製品、サービスが市場での競争力を保ち、成長を続けるための大切な戦略です。市場環境や消費者ニーズが変わる中で、ブランドが古い印象になったり、メッセージが時代と合わなくなったりすると、見直しが必要になります。また、新たなターゲットや市場への挑戦、企業のビジョン・ミッションの変化に合わせてブランドを更新していくことも欠かせません。適切なタイミングでリブランディングに取り組むことで、ブランドの価値を改めて整理し、顧客からの信頼を取り戻しやすくなります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、リブランディングが必要になる理由やその判断基準、さらに成功へつなげる具体的な進め方について分かりやすく解説します。


■ リブランディングの効果

リブランディングの効果

ブランド価値の向上 】

リブランディングは、単に見た目を整えることではなく、ブランドの存在意義を見直し、社会や顧客との関係性を深めていくプロセスです。その結果、信頼・好感・共感といった無形資産が高まり、市場での価値向上につながります。見た目の統一感だけでなく、メッセージや体験の一貫性が「らしさ」を形づくり、顧客からの支持を強めます。ブランド価値が高まることで、価格競争に巻き込まれにくくなり、長期的なファンづくりや選ばれ続ける力も育っていきます。リブランディングは、未来に向けた前向きな投資です。

詳細記事:ブランド価値とは?高める方法と活用方法

競争優位の確立 】

市場が成熟し、機能や価格だけでは差が出にくくなっている今、自社の独自性を明確にすることが大切です。リブランディングによって「なぜそのブランドを選ぶのか」という理由をつくることができます。つまり、スペックで比べられる競争から、“意味”で選ばれる競争へと軸を移すことができます。ブランドの世界観や哲学がしっかり伝われば、模倣されにくい価値が生まれ、競合に左右されにくい立ち位置を築けます。差別化というより、共感から生まれる優位性こそがリブランディングの大きな成果になっていきます。

顧客体験の改善 】

リブランディングを通じて、顧客との接点を改めて見つめ直すことで、体験全体の質が向上します。広告・店舗・Web・商品など、どの接点でも一貫した想いが伝わると、顧客は安心し、信頼を深めやすくなります。見た目の刷新だけでなく、体験をブランド視点で再設計することがポイントです。ブランドとの出会いから購入、利用、サポートまでの流れを丁寧に整えることで、“買う体験”から“共感する体験”へと変わり、顧客満足度の向上につながります。体験が感情を動かし、その感情がブランドを育てていきます。

詳細記事:ブランドエクスペリエンスの重要性と成功事例

新規顧客獲得 】

リブランディングによってメッセージや表現が現代に合う形へ更新されると、これまで届きづらかった層にも伝わりやすくなります。価値観やライフスタイルの変化に合わせて見せ方・語り方を整えることで、新しい顧客層からの認知が広がります。デザインの刷新やコミュニケーションの見直しは、ブランドを改めて知ってもらうきっかけにもなり、「このブランドが自分に合いそう」と感じてもらいやすくなります。その結果、既存顧客を大切にしながら、新しい市場にも自然とアプローチできるようになります。

社内意識の統一 】

リブランディングの効果は外向きだけではなく、社内にも広がっていきます。理念や価値観を再定義し、言語化して共有することで、社員一人ひとりの判断軸や行動基準がそろい、組織全体に一体感が生まれます。ブランドが社員にとって“自分ごと”として捉えられるようになることで、発信のブレが減り、社内外で一貫したブランド体験が実現しやすくなります。また、表現やメッセージを現代化することで、新しい層からの共感も広がり、新たな顧客との接点が生まれる可能性も高まります。

詳細記事:インナーブランディングとは?その目的と進め方と成功事例

リブランディング成功への実践ステップ

リブランディング成功への実践ステップ

1. 現状分析

リブランディングの出発点は、「今のブランドを正しく理解すること」です。社内での認識、顧客からの評価、市場での立ち位置などを客観的に把握する必要があります。特に、自社が意図して発信しているイメージと、外部が抱いている印象とのギャップを見つけることが重要です。アンケートやインタビュー、SNS分析などを活用し、定量・定性の両面から実態を確認します。ブランドの課題は感覚ではなく「事実」として整理し、何を守り、何を変えるべきかを判断するための土台をつくることが、この段階の役割です。

[ ポイント ]

市場・競合調査
顧客評価の把握
社内ブランド浸透度の確認

詳細記事:ブランディングにリサーチと分析が重要な理由とは?

2. 課題と目的の明確化

現状を把握したあとは、「何のためにリブランディングを行うのか」を明確にします。単に“古く感じるから変える”という理由ではなく、どんな成果を求めるのかを定義しておくことが大切です。売上拡大、採用強化、顧客層の見直し、ブランドイメージの統一など、目的によって戦略は変わります。また、課題と目的を同時に整理することで、社内の意思決定がしやすくなります。リブランディングは手段であり、目的ではありません。ブランドを変える「理由」が見えているほど、ブレの少ない戦略につながります。

[ ポイント ]

具体的な課題を特定
達成すべき目的を数値化
成果指標(KPI)を設定

3. ブランド戦略の再構築

ブランド戦略の再構築では、理念・ビジョン・価値提供の再定義が中心になります。まず「自社がどんな存在意義を持ち、どんな課題を解決したいのか」を言語化し、ブランドを明確にします。そのうえで、どのように発信し、どう体現するのかを整理します。ロゴやデザインより先に、ブランドの“ストーリー”を整えることがポイントです。ここで固まった方向性が、今後のコミュニケーションやデザインの基準になります。戦略は「きれいな理念」ではなく、「行動を導く指針」に落とし込むことが大切です。

[ ポイント ]

ビジョン・ミッション再設定
差別化ポイントの整理
提供価値とターゲットの明確化

詳細記事:ブランド戦略とデザインの密接な関係について

4. VI(ビジュアル・アイデンティティ)開発

VI開発は、ブランドの思想や個性を「見える形」にする工程です。ロゴ、カラー、フォント、写真、グラフィックなど、あらゆる要素が一貫した世界観を伝える役割を担います。ここで大切なのは、単なるデザインの刷新ではなく、ブランド戦略で定義した価値やトーンを視覚的に翻訳することです。“誠実さ”や“革新性”といった言葉を、具体的にどう表現するかを丁寧に設計していきます。社内外で統一して使えるガイドラインを整えることで、長期的に安定したブランド運用がしやすくなります。

[ ポイント ]

ロゴ・カラー・フォント設計
トーン&マナーの定義
ブランドストーリーの表現化

詳細記事:VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?効果と成功事例
詳細記事:トーン&マナーとは?目的と成功事例
詳細記事:ブランドストーリーとは?重要性・作成方法と成功事例5選

■ リブランディングのメリット

リブランディングのメリット

差別化の強化 】

市場の成熟や競合の増加により、製品やサービスの機能や価格だけでは差がつきにくくなっています。リブランディングは、“何を提供するか”ではなく、“なぜそれを提供するのか”という思想を軸に差別化を図るための取り組みです。ブランドの価値観や存在意義を再定義し、それを言葉とデザインで一貫して伝えていくことで、「このブランドを選びたい」と感じてもらえる理由が生まれます。模倣されにくい独自の世界観を育てることが、リブランディングの大きな意味であり、企業の持続的な競争力にもつながります。

時代への適応 】

社会の価値観や顧客の判断基準は、デジタル化・多様化によって大きく変化しています。リブランディングに取り組むことで、古くなった印象や過去のメッセージを見直し、今の時代に合った表現や体験へ更新するきっかけになります。これは単なるデザイン変更ではなく、ブランドが社会とどう関わり、どんな意義を持つのかを改めて整理するプロセスでもあります。時代に寄り添うブランドは新鮮さや共感を得やすく、長く支持される存在になりやすくなります。変化に向き合う姿勢そのものが、信頼につながる要素になります。

顧客体験の改善 】

リブランディングでは、顧客がブランドに触れるさまざまな接点を見直すことになります。広告・店舗・商品・サポートなど、それぞれが一貫した体験を届けられているかを検証し、改善につなげる工程です。ブランドの想いが体験として自然に伝わることで、顧客は「心地よさ」や「信頼感」を感じやすくなります。見た目やメッセージだけでなく、サービスや接客といった実際の体験を含めてブランドを磨くことが、顧客満足度の向上やファンづくりに直結します。体験の質こそが、ブランドの価値を決める大きな要素です。

社員のモチベーション向上

リブランディングは外向けだけでなく、社内への影響も大きい取り組みです。ブランドの理念や価値を再定義し共有することで、社員が「何のために働いているのか」を改めて理解しやすくなります。共通のビジョンやメッセージがあることで、判断や行動に軸が生まれ、組織としての一体感も強まります。ブランドを自分ごととして語れる社員が増えるほど、社内のエネルギーが高まり、外部への発信力にも良い影響が出ます。内側の熱量が、ブランドの推進力になるといえます。

価格競争からの脱却

ブランドの価値が整理され、共感される存在になると、価格だけで選ばれる状況から抜け出しやすくなります。リブランディングによって「なぜこのブランドに価値があるのか」が伝わることで、顧客はコスト比較ではなく、体験や信頼といった情緒的価値を基準に判断するようになります。その結果、安売りではなく“納得して選ばれるブランド”へと変わっていきます。強いブランドは価格競争に巻き込まれにくく、安定した利益構造を築きやすくなります。こうした信頼が、長期的な成長の支えにもなっていきます。

■ リブランディングのタイミング

リブランディングのタイミング

リブランディングは思いつきで行うものではありません。企業の成長や外部環境の変化に応じて、適切なタイミングで実施することが大切です。タイミングを誤ると「早すぎて効果が出にくい」あるいは「遅すぎて手遅れになる」といったリスクもあります。ここでは、多くの企業がリブランディングを進める際によく見られるタイミングと、その背景をご紹介します。ぜひ、自社の状況と照らし合わせてみてください。

事業拡大期 】

事業が拡大し、新しい市場や顧客層へ向かうタイミングは、リブランディングを検討しやすい場面です。既存のブランドイメージが新市場に合わない場合、ブランドが成長の妨げになることがあります。事業規模や提供価値が変化する中で、ブランドのメッセージやビジュアル、トーンを一貫した形に整えることが求められます。新しい顧客層にも自社の魅力をしっかり伝えるために、ブランドの再構築が役立ちます。

[ 理由 ]

ブランドイメージが新市場と合わない場合、成長の足かせになる可能性がある。
ブランドが提供できる体験の一貫性が崩れやすくなる。
スケールに合わせブランドアセットを再整理すると、共通認識が生まれやすい。

[ 典型例 ]

地域密着から全国展開・海外進出へ移行するタイミング
製品ライン追加による多角化が進むタイミング

組織再編・経営陣交代 】

組織再編や経営陣交代は、企業の方向性が変化しやすい場面で、リブランディングの必要性が生まれやすい状況です。新しい経営方針や価値観をブランドに反映し、社内外にわかりやすく伝えることが求められます。従来のブランドのままではギャップが生じ、社員や顧客に混乱が生まれることもあります。ブランドの再構築は、組織の一体感を高め、新しい方向性を共有するうえで役立ちます。

[ 理由 ]

新方針や価値観をブランドとして整理し直す必要がある。
組織変化にブランドが追いつかないと、エンゲージメント低下につながる。

[ 典型例 ]

M&A後の統合ブランドづくり
創業者交代・新体制への移行期

新市場展開 】

新しい市場(国・地域・セグメント)に進出する場合、その市場特有の文化や価値観に合わせたブランド設計が必要になります。既存市場と同じ表現やメッセージでは届きにくいことも多く、ブランドの核は守りながらローカライズする柔軟性が求められます。リブランディングによって新市場での受け入れられやすさを高め、一貫性と適応性のバランスを整えることができます。

[ 理由 ]

国内ブランドが海外市場へ進出する場面
言語・文化・競争環境に合わせた調整が必要になる。

[ 典型例 ]

国内成功ブランドがアジア・欧米市場に進出する場合
BtoB企業が一般消費者向けへ展開する場面

売上低迷・ブランド価値毀損の兆候が見えた時 】

売上の停滞やブランド調査でネガティブな声が増えた時は、ブランドの再評価が必要になります。市場や顧客との間にズレが生じている可能性が高く、そのままにすると信頼性の低下につながります。プロモーションだけでは解決できないケースも多く、ブランドのポジショニングやメッセージ、ビジュアルの一貫性を見直すことが求められます。リブランディングは停滞を立て直し、再成長へ向かうきっかけになります。

[ 理由 ]

市場との「ズレ」が蓄積されている可能性が高い。
ネガティブな印象は放置すると改善が難しくなる。

[ 典型例 ]

認知は高いが好意度・購入意向が落ちている状況
SNSで否定的な言及が増えている状況

社会環境・価値観の大きな変化 】

社会全体の価値観が変化する場面では、ブランドもそのままでよいとは限りません。SDGsやサステナビリティ、ダイバーシティなどが重要視されるようになり、過去のメッセージが時代と合わなくなる場合があります。企業の姿勢や社会的責任がブランド評価と結びつく今、ブランドの在り方を見直し、新しい価値観に合わせて発信することが必要です。これは信頼を守り、共感を得るための調整でもあります。

[ 理由 ]

サステナビリティや多様性など、新しい価値観が重視されている。
企業の社会的意義を言語化し直す必要がある。

[ 典型例 ]

SDGs対応をブランド戦略に組み込む場面
時代と合わない表現・広告を見直す場面

■ リブランディングが必要な3つの理由

リブランディングが必要な3つの理由

1. 市場や消費者ニーズの変化

現代はデジタル化の進展によって、消費者の購買行動が大きく変わっています。オンラインショッピングやSNSの普及で、ブランドの比較・評価はこれまで以上にスピーディーに行われるようになりました。また、サステナビリティや多様性といった価値観が重視される中、従来の発信では共感が得られにくい場面も増えています。さらに、口コミやSNSの評価がブランドイメージに直結する時代では、一貫したメッセージと体験の提供が欠かせません。こうした変化に対応できなければ、競争力を落とすリスクが高まります。リブランディングは、市場と顧客の変化に合わせてブランドを更新するための有効な手段です。

[ ポイント ]

デジタル化による購買行動の変化
サステナビリティ・多様性といった新しい価値観の台頭
口コミやSNSがブランド評価に与える影響の拡大

2. 競合環境の激化

市場には似たような商品やサービスが増え、競合環境はさらに厳しくなっています。比較サイトやSNSにより、消費者は一瞬で複数ブランドを比較できるようになり、「機能」や「価格」だけでの差別化は難しくなりました。その結果、価格競争に巻き込まれ、ブランド価値が下がるリスクも高まります。こうした状況では、「何を売るか」よりも「なぜそのブランドなのか」を示すことが重要です。リブランディングを通じて独自の価値を整理し、機能や価格以外の魅力を丁寧に伝えることで、選ばれる理由が生まれます。競合環境を踏まえたブランド戦略が、優位性をつくる確かな基盤になります。

[ ポイント ]

類似商品・サービスの増加
比較サイトやSNSで一瞬で競合と並べられる時代
機能や価格だけでは差別化が難しい現実

3. 社内外でのブランド認識のズレ

社内のメンバーごとにブランドの捉え方が異なると、発信されるメッセージに一貫性がなくなり、顧客が受け取る印象もばらつきが出ます。また、顧客が感じているイメージと、企業が伝えたい価値が一致していない場合、信頼の低下につながることもあります。この状況を放置すると、競合との差別化がより難しくなり、顧客ロイヤルティが下がる可能性も高まります。リブランディングでは、ブランドの軸を再整理し、社内外で共有できるガイドラインを整えることが大切です。一貫性のあるブランドは、信頼を積み重ね、選ばれ続ける力を持つようになります。共通言語を持つことが、組織の強さにつながります。

[ ポイント ]

社内でブランドの定義が統一されていない
顧客のイメージと企業の意図がずれている
一貫性不足により顧客体験が分断される

■ リブランディングにおける5つの課題

リブランディングにおける5つの課題

1. 市場変化に追いつけていない

市場や生活者の価値観は、想像以上のスピードで変化しています。デジタル技術やSNSの普及によって、情報の広がり方や購買の動機も大きく変わりました。かつては通用していた強みやメッセージが、今の時代には届きにくくなっているケースも珍しくありません。リブランディングでは、こうした変化を踏まえてブランドの「存在理由」を改めて見直すことが欠かせません。単なる見た目の更新ではなく、今の時代に合った新しい意味づけを行うことが、次の成長への第一歩になります。変化に応じる姿勢が未来をつくります。

2. ブランドイメージが古い

ブランドが長く続くほど、当初の世界観や表現が今の時代感とズレてくることがあります。創業時には新鮮だったデザインや言葉も、今見ると少し古く感じられることがあるでしょう。特に若い世代や新しい市場を狙う場合、この印象のズレは大きな障害になります。リブランディングは、これまで築いてきた信頼を大切にしながらも、今の感覚に合う見せ方や語り方へ整えていくプロセスです。過去を否定するのではなく、今の視点で捉え直す姿勢が求められます。進化こそ、伝統を生かす力になります。

詳細記事:ブランドイメージを高めるデザインの重要性と一貫性

3. 競合との差別化が難しい

多くの市場で製品やサービスの機能・価格が似通い、「どこも同じ」に感じられやすい状況が増えています。そんな中で鍵になるのは、スペックではなくブランドの姿勢や価値観といった“内側の魅力”で差をつくることです。リブランディングでは、自社の想いや文化を見つめ直し、「らしさ」を言葉とデザインでどう表現するかを改めて整理します。差別化は機能ではなく、共感を生む物語の中にあります。そこにこそ、ブランドの未来が宿ります。物語が共感を呼び、共感が価値につながります。

4. 顧客接点のズレ

ブランドの理念やメッセージが、実際の顧客体験と噛み合っていないケースは意外と多く見られます。広告では魅力的に見えても、店舗や営業、サポートといった現場で印象が一致しなければ、ブランドへの信頼は育ちません。リブランディングの本質は、表現を変えることではなく、「どの接点でも同じ想いが伝わる体験」を整えることにあります。言葉だけでなく、体験を通じてブランドを感じてもらうことが大切です。その一貫性こそが、信頼の基盤になります。体験が、ブランドの本当の姿を示します。

5. 新たなターゲットに響かない

成長の段階で新しい顧客層や市場へ広げようとすると、これまでのメッセージが届かなくなることがあります。価値観やライフスタイルが変われば、共感が生まれるポイントも変わります。リブランディングでは、年齢や属性ではなく「どんな考え方や生き方に共鳴してほしいのか」を丁寧に見定めることが大切です。新しいターゲットに響かない理由は、伝え方よりも「誰に向けて語っているのか」が曖昧になっているケースが多いのです。その解像度の差が、共感の深さを左右します。共感が未来をひらきます。

■ リブランディングの成功事例

インスタグラムのリブランディング成功事例

Instagram|リブランディングの成功事例

Instagramは2016年に大規模なリブランディングを行い、アイコンやインターフェースのデザインを刷新しました。レトロなカメラのアイコンから、シンプルでカラフルなデザインへと変更し、より現代的で視覚的に洗練された印象を打ち出しています。この背景には、Instagramが写真共有アプリから、動画・ストーリー・ライブ配信など多様なコンテンツを扱うプラットフォームへと変化した流れがあります。新しいロゴやデザインは、この進化を反映し、幅広いユーザーに親しまれるブランドへと成長する後押しになりました。リブランディングをきっかけに、Instagramは活気ある現代的なブランドイメージを確立し、世界的SNSとしての存在感をさらに強めています。

[ リブランディングが成功した理由 ]

新しいアイデンティティで視覚的魅力を強化
新しいロゴと色彩表現を導入したことで、視覚的な印象が鮮明になりました。一貫したビジュアルアイデンティティにより、アプリ全体の印象が統一され、使いやすさとブランドのわかりやすさが高まりました。

シンプルさとインターフェースの改善
シンプルでフラットなデザインを採用し、直感的に操作できるインターフェースへと改善しました。機能が増えても使いやすさが損なわれず、幅広いユーザーに受け入れられる要因になっています。

ブランドのモダンさを明確化
新しいビジュアルは、モダンでシンプルな方向性を明確に示し、デジタル世代にも自然に受け止められるデザインとなりました。時代に合わせて進化し続ける姿勢が、ブランドへの新鮮さと親近感を生んでいます。

アイコンとビジュアルの一貫性を強化
アイコンとアプリ内デザインのトーンを統一することで、視覚的な安定感が生まれ、ブランドとしての信頼性も高まりました。一貫した表現は、ユーザーが安心して利用できる要素として機能しています。

グローバルで受け入れられる普遍性の向上
シンプルでわかりやすいデザインになったことで、文化や言語が異なるユーザーにも伝わりやすくなりました。この普遍性が国境を越えた認知向上を促し、多様なユーザーに響くブランドへとつながっています。

[ 画像出典 ] Meta公式サイトGingersauceより

スラックのリブランディング成功事例

Slack|リブランディングの成功事例

Slackは2019年にロゴを中心とした大きなリブランディングを実施しました。それまでのマルチカラーのハッシュタグ型ロゴから、よりシンプルでモダンなデザインへと刷新し、視認性と汎用性を高めています。この背景には、サービスの成長や国際展開に伴い、さまざまな場面で安定して使えるブランド表現が必要になったことがあります。新しいロゴによってビジュアルの一貫性が強まり、テクノロジー企業としての信頼感や先進性をより明確に示せるようになりました。このリブランディングはユーザーからも前向きに受け入れられ、Slackの市場での存在感をさらに確かなものにしています。

[ リブランディングが成功した理由 ]

ブランドのシンプルなデザイン統一
シンプルで扱いやすいデザインに統一したことで、あらゆる媒体やサイズで見やすくなり、ブランドの認知が安定しました。一貫した見え方が信頼感につながっています。

アイコンデザインの再構築
旧ロゴの複雑さを解消し、よりモダンで認識しやすい形へと進化。Slack内の多様なツール群とも親和性が高まり、ユーザーにとって分かりやすいアイコンになりました。

カラーパレットの改善
多色使いを見直し、より整理された配色に統一。視覚的なまとまりが生まれ、プロダクト全体がすっきりとした印象になりました。

多用途に適したブランド要素の設計
ロゴやシンボルがどのデバイスやフォーマットでも使いやすいよう調整され、モバイル・デスクトップ双方で安定したブランド体験を提供できるようになりました。

ブランドメッセージの再定義
シンプルで現代的なメッセージへと整理したことで、Slackが何を大切にしているかが直感的に伝わるようになり、ユーザーの共感や愛着がより深まりました。

[ 画像出典 ] Slack公式サイトより

レゴのリブランディング成功事例

LEGO|リブランディングの成功事例

LEGOは1990年代に経営危機に直面しましたが、ブランドを根本から見直すことで大きな復活を遂げました。伝統的なブロック玩具の枠を超え、デジタルエンタメ、映画、テーマパークなど多面的な展開へと広げたことが大きな転換点です。ブランドメッセージも「遊びを通じて学ぶ」という理念に軸足を置き、創造性や教育的価値をより明確に示しました。映画『LEGO ムービー』をはじめとするメディア展開は新たな世代にも響き、幅広い層にブランドを再認識させることになりました。こうした取り組みは、LEGOが単なるおもちゃメーカーから世界的なエンターテインメントブランドへと成長し、業績も大きく改善しています。

[ リブランディングが成功した理由 ]

教育的価値と遊びの再強調
LEGOは「遊びながら学ぶ」という価値を再整理し、教育的な側面をより明確に打ち出しました。親や教育関係者にも受け入れられ、学びのツールとしての位置づけが強まりました。

ターゲット拡大と多世代の支持
子ども向けだけでなく、大人が楽しめるシリーズやプロジェクトを展開。結果的に幅広い年代が参加できるブランドへと広がりました。

デジタルコンテンツと連携
ゲームや動画などオンライン領域との連携を進め、デジタルとリアルを横断する体験を提供。デジタル世代へのアプローチが進み、ブランド価値がさらに広がりました。

多様なキャラクターとのコラボレーション
「スター・ウォーズ」「ハリー・ポッター」などとのコラボが大きな後押しとなり、世界観の広がりとファン層の拡大につながりました。

ブランドの持続可能性への取り組み
環境配慮型素材の導入や、持続可能な生産への転換が評価され、社会的責任を果たすブランドとして信頼を得ています。

[ 画像出典 ] Lego公式サイトより

マクドナルドのリブランディング成功事例

McDonald’s|リブランディングの成功事例

McDonald’sは、健康志向の高まりやファストフード業界の競争激化を背景に、2000年代に大きなリブランディングを行いました。これまでの「ジャンクフード」という印象から離れるため、サラダや低カロリーメニューを追加し、より健やかな選択肢を示しました。さらに、店舗デザインを大幅に見直し、落ち着いたカフェ風の空間を採用することで、これまでとは異なる新しい体験を提供しました。これらの取り組みを通じて、McDonald’sは新規顧客層の獲得と既存顧客の再評価を得ることに成功し、時代のニーズに寄り添ったブランドへと進化しています。

[ リブランディングが成功した理由 ]

健康志向メニューの導入
健康を意識したメニューを加えることで、これまで届きにくかった層にもアプローチできました。選択肢が広がったことで、ブランドの印象も柔らかくなりました。

店舗デザインの刷新
カフェのように落ち着ける空間へと内装を再設計し、どの世代でも過ごしやすい雰囲気をつくりました。店舗体験の変化がブランドイメージの更新につながっています。

デジタル体験の強化
アプリ注文やセルフオーダー端末の導入により、利用のしやすさが向上。デジタル接点を整えることで、利便性と満足度を高める結果につながりました。

地域特化型メニューの展開
地域ごとの文化や好みに合わせた限定メニューを用意し、ローカル市場への理解を深める戦略を展開。地域の声を取り入れる姿勢が支持を集めています。

持続可能性への取り組み
環境配慮型の素材や食品ロス削減などを進め、社会的責任を意識したブランドへとシフト。持続可能性を重視する姿勢が評価され、信頼につながっています。

[ 画像出典 ] RomanMcDonald’s Cyprusより

ナイキのリブランディング成功事例

Nike|リブランディングの成功事例

Nikeは長い歴史のなかで何度もブランドを進化させてきましたが、その中でも象徴的なのが、1980年代後半に「Just Do It」を中心に据えたリブランディングです。当時、競合のReebokに押され気味だった状況を、このシンプルで背中を押すメッセージが一変させました。「誰もが挑戦できる」という普遍的な価値観を示し、Nikeは幅広い世代のアスリートに届くブランドとして再び存在感を強めます。その後も、社会的メッセージの発信やサステナビリティへの取り組みを続け、スポーツウェアの枠を超えたブランドへと成長しました。Nikeは今も、時代に合わせて進化し続ける姿勢を示しています。

[ リブランディングが成功した理由 ]

強力なブランドメッセージ「Just Do It」
挑戦を後押しするこの言葉は、誰にでも響く普遍的なメッセージとして世界中に浸透しました。短い言葉でブランドの姿勢を明確に伝えた点が大きな強みとなっています。

社会問題への積極的な取り組み
人種差別や平等をテーマにした取り組みを通じて、Nikeは社会課題に向き合うブランドとしての立ち位置を明確にしました。カーペニックを起用した広告は大きな議論を呼びましたが、多くの支持も集めました。

デジタルプラットフォームの活用
Nike+やNike Run Clubなどを通じてユーザーとの継続的な接点をつくり、個別の体験価値を提供。こうしたデジタル施策がロイヤルティ強化に役立っています。

持続可能な商品開発への取り組み
環境配慮型の素材や製品を積極的に展開し、環境意識の高い層にも支持が広がりました。サステナビリティはNikeの重要な軸として定着しています。

限定商品やコラボによる希少価値の提供
アーティストやアスリートとのコラボを通じて、常に新しい魅力を発信。希少性とクリエイティビティが相まって、ファッションブランドとしての存在感も高めています。

[ 画像出典 ] Nike公式サイトSBNationより

■ リブランディングの弊社実績

株式会社チビコは、ブランドの核となる価値を再整理し、次の成長につながるリブランディングを数多く支援してきました。理念の再定義からVI開発まで一貫し、ブランドの魅力を最大限に引き出します。

LANDPIAのリブランディング

[ LANDPIA ]
LANDPIAは、不動産の有効利用を通じて活力ある経済社会の実現に貢献するブランドです。日本には、まだまだ未開拓の土地や、価値を見出されていない土地が多く残されています。それらを発見、有効活用することで、社会全体が潤う仕組みを作ることを掲げています。

[ 詳細 ] chobico WORKS | LANDPIAより

RENEWABLE JAPANのリブランディング

[ RENEWABLE JAPAN ]
すべての人を、エネルギーの主人公に。主人公という言葉には、同じ時代を生きる一人ひとりにエネルギーづくりの主体となって活躍していただける社会を実現したいというブランドの想いを込めています。そして、共にエネルギーについて考え行動し、社会の創生に寄与していく企業ブランドの姿勢を表しています。

[ 詳細 ] chobico WORKS | RENEWABLE JAPANより

I’ROM GROUPのリブランディング

[ I’ROM GROUP ]
希望と安⼼に満ちた健やかな未来を、すべての⼈へ。アイロムグループは「憂いなき未来のために。」のブランドプロミスのもと、人々の未来が希望と安心そして健康で満ちあふれたものとなるように先端医療事業、SMO事業、CRO事業、メディカルサポート事業の4つの事業でブランドを展開しています。

[ 詳細 ] chobico WORKS | I’ROM GROUPより

NIHONN MOBILITY SERVICEのリブランディング

[ NIHONN MOBILITY SERVICE ]
NIHONN OIL SERVICEからNIHONN MOBILITY SERVICEへの社名変更に伴うコーポレートアイディンティティ開発。新ブランドのコンセプトは、「新しい移動と技術の進化。モノを超えたサービスとしてのあり方。」モビリティには無限の可能性があることを表現しています。

[ 詳細 ] chobico WORKS | NIHONN MOBILITY SERVICEより

FAQ-よくある質問

リブランディングに関するよくある質問

リブランディングは多くの企業が迷いやすい分野です。ここでは、実務でよく寄せられる質問をまとめ、具体的な考え方や進め方をわかりやすく整理しました。

[ よくある質問① ]

Q :リブランディングが必要になる典型的なケースは何ですか?
A :主に以下の5つです:市場トレンドや価値観の変化へ追随、競合と差異化が困難、ブランドイメージの陳腐化、新規事業やターゲットへの展開、M&A・組織・経営ビジョンの変化へ対応するタイミングです。これらはリブランディングの明確なサインです。

[ よくある質問② ]

Q :リブランディングの進め方はどのようなステップですか?
A :以下のステップで戦略的に進行するのが理想です。

  1. 現状分析(ブランド認知、顧客インサイト、競合/市場環境を含む)
  2. ブランド戦略の再定義(ターゲット、ミッション、提供価値の再設計)
  3. ビジュアル・メッセージの刷新(ロゴやカラー、コピーを含む)
  4. 社内浸透策(研修や浸透用ツールなど)
  5. 市場への再ローンチ(広報、SNS、キャンペーン等)

[ よくある質問③ ]

Q :変更ポイントは「見た目」だけでいいんですか?
A :いいえ。リブランディングとは単なる表層刷新ではありません。「存在意義」を明確化し、その上で「How」「What」を戦略的に再設計する包括的なプロセスです。⎯例えばブランド資産の再定義やメッセージ体系の再構築なども含まれます。

[ よくある質問④ ]

Q :リブランディングを成功させるための注意点は?
・ 顧客との対話を欠かさない(インサイト重視)
・ ブランド資産を丁寧に継承すること
・ ステークホルダー(社員・顧客含む)とのコミュニケーションを密にすることの3点です。

[ よくある質問⑤ ]

Q :リブランディングを短期で成果を上げるための方法は?
A :リブランディングは短期的成果に焦点を置けば失敗の原因になります。信頼・認知・共感を時間をかけて積み上げる長期戦として取り組み、効果を中長期で評価するアプローチこそが成功の鍵です。

checklist-チェックリスト

リブランディングのためのチェックリスト

数多くのリブランディング案件を手がける中で感じるのは「変える勇気」と同時に「守る判断」が重要だということ。ここでは、成功に導くための実践的チェック項目を整理しました。

【 ブランドイメージに関するチェック 】

□ 最後にブランドのロゴやビジュアルを見直したのは5年以上前である。
□ サイトや販促物のデザインが「古い」と社内外から言われたことがある。
□ ブランドのストーリーや理念が時代や顧客層とズレていると感じている。

【 ターゲットと市場の適合性に関するチェック 】

□ 創業当時と現在で主な顧客層が大きく変化している。
□ 顧客から「御社って何を一番得意としているの?」とよく聞かれる。
□ ブランドの伝えている価値が実際の顧客ニーズと合っていないと感じる。

【 競合との差別化に関するチェック 】

□ 自社と競合他社のWebサイトや広告の見た目・メッセージが似てきている。
□ 自社の強み・独自性を短く一言で説明できない。
□ 競合ブランドと比較されたときに「選ばれる理由」が曖昧になっている。

記事のまとめ

■ まとめ

現代では、ブランドは単なる識別マークではなく、「企業の価値観や社会への貢献」を映す存在になっています。そのため、情報過多や購買行動の変化、多様化する価値観に対応できないブランドは、選ばれにくくなっています。特に以下の5つのケースでは、リブランディングが有効です。①市場環境の変化、②競合との差別化の喪失、③ブランドイメージの老朽化、④事業拡大や新商品展開、⑤M&Aなどによる組織やビジョンの転換。これらはブランドにとって課題が表面化しやすい場面であり、再定義と進化のきっかけにもなります。リブランディングを進めるには、まず「現状分析」で課題を整理し(調査/顧客インサイト)、続いて「ブランドストーリーの策定」「視覚表現の刷新」「社内浸透」「市場再ローンチ」といった手順を踏むことが求められます。戦略的かつ包括的にブランドを見直すことで、企業の成長と信頼をもう一度しっかり形にしていくプロセスになります。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

株式会社チビコ

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