
[ ブランド戦略 ]
リブランディングのタイミングはいつ?6つのサイン・判断基準・始める時期と事例
リブランディングは、「ブランドが古くなったから」「売上が落ちたから」という理由だけで始めるものではありません。検討すべきなのは、事業、顧客、市場、組織、経営方針などが変化し、現在のブランドとの間にズレが生まれたときです。
一方で、必要性を感じたからといって、すぐにロゴやWEBサイトを変えるべきでもありません。重要なのは、「検討する時期」「実際に着手する時期」「社会へ公開する時期」を分け、それぞれを経営や事業の変化と結びつけて判断することです。
本記事では、リブランディングを検討すべきサイン、今取り組むべきかの判断基準、始める前に整理すべきこと、変更範囲、準備の考え方、進め方、事例まで体系的に解説します。株式会社チビコ代表取締役/ブランディングディレクターの今田佳司が、実務経験から詳しく解説します。
CONTENTS | 目次
■ リブランディングのタイミングは「検討・着手・公開」の3段階で判断する

研究から見るリブランディングのタイミング
リブランディングに「何年ごと」という共通基準はありません。Muzellec & Lambkin(2006)の166社研究では、M&Aなど企業構造の変化が主な契機とされ、Sangroya et al.(2026)のレビューでも、ブランド刷新に加え企業アイデンティティや企業価値まで対象が広がっています。
つまり、リブランディングの時期は経過年数だけで決めるのではなく、事業構造、経営、市場、顧客、組織などの変化によって、現在のブランドと企業の実態にズレが生じているかを確認して判断することが重要です。CHIBICOでも、この考えを実務に置き換え、「検討」「着手」「公開」の3段階を分けて判断しています。
1. 検討するタイミング
検討を始めるのは、事業や組織に変化が見えた段階です。新規事業、顧客層の変化、海外進出、事業承継などを契機に、現在の事業とブランドが合うか、未来像まで表せるかを確認します。
2. 着手するタイミング
着手するのは、「なぜ変えるのか」を経営課題として説明でき、企業像が見えた段階です。事業が安定し、次の成長を議論できる時期ほど、中長期の視点でブランドを考えやすくなります。
3. 公開するタイミング
公開は、周年、社名変更、中計、新事業、組織再編、海外進出など、企業の変化を示す機会と結びつけます。節目だから変えるのではなく、必要な変更を定め、公開機会として活用します。
[ CHIBICOのリブランディング・タイミングの判断基準 ]
リブランディングは年数で判断するのではなく、「現在の事業」「社会から見えているブランド」「これから目指す企業像」の間に生じたズレから判断します。そのうえで、「検討」「着手」「公開」を分け、経営課題、社内体制、公開予定日を踏まえて実施時期を決めます。 [ 出典 ]:株式会社チビコ
■ リブランディングを検討すべき6つのタイミング

リブランディングを検討すべきタイミングは、事業領域、顧客・市場、競合、組織、経営体制、企業の節目に大きな変化が起きたときです。重要なのは変化そのものではなく、現在のブランドが企業の実態や未来像を正しく表せなくなったかです。6つの代表的な変化から見極めます。
➤ 関連記事:リブランディングが必要になる5つのサインと判断基準
1. 事業内容・事業領域が変わったとき
- 新規事業が主力事業へ成長した
- 商品中心からサービス中心へ変化した
- 従来とは異なる業界へ参入した
企業が成長し、事業内容や提供価値が変化すると、以前の社名やメッセージ、ロゴでは現在の企業像を正しく伝えられません。事業の実態と社会に伝わる姿のズレが見直しの判断基準です。
➤ 詳細記事:社名・ブランド名は本当に変えるべきか?名称変更の判断基準
2. 顧客や市場が変わったとき
- 法人中心から個人へ顧客を広げる
- 国内中心から海外市場へ進出する
- 高価格帯・プレミアム市場へ進出する
商品やサービスが同じでも、顧客や市場が変わればブランドの伝わり方も変化します。理念や価値は守りながら、表現や接点を見直し、新しい顧客とのズレを整えることが重要な基準です。
3. 競合との違いが伝わらなくなったとき
- WEBサイトを見ても競合との違いが分からない
- 最終的に価格だけで比較される
- 「なぜこの会社を選ぶのか」が説明できない
市場が成熟すると、商品やサービスだけでは競合との差を伝えにくくなります。自社ならではの価値や強みを整理し、競合との違いや選ばれる理由を明確にすることが見直しの判断軸です。
4. 組織拡大で社内認識にズレが生まれたとき
- 経営者と社員で会社の強みに対する認識が違う
- 営業と採用で企業の説明が違う
- グループ会社ごとにブランド表現が異なる
社員や部署、拠点が増えると、会社の強みや目指す方向への認識が分かれやすくなります。営業や採用、広報の発信にばらつきが出たら、社内認識を整える重要な見直しが必要になります。
5. 経営者交代・事業承継・M&Aが起きたとき
- 新しい社長が就任する
- M&Aによって企業を統合する
- グループ企業を再編する
経営体制が変わると、企業が大切にする価値や目指す方向も変化します。歴史やブランド資産を整理し、残すものと変えるものを見極め、次の経営へつなぐことが重要です。
6. 周年・IPO・海外進出など節目を迎えるとき
- 創業10周年・50周年・100周年
- IPO・株式上場
- 海外市場への進出
周年やIPO、海外進出などの節目は、歩みを振り返り、これから目指す企業像を示す機会です。節目だから変えるのではなく、現在のブランドが今後も十分に機能するのかを見極めます。
■ 今リブランディングをやるべきか判断する4つの基準

今取り組むべきかは、変更理由を経営課題として説明できるか、未来の企業像が見えているか、残す資産と変える要素を判断できるか、社内で実行・運用する体制があるかの4点で判断します。条件が不足している場合には、その整理自体も、着手前の重要な検討課題として捉えます。
┃ CHIBICOでは、次の4点を確認し、実施すること自体を目的にはしません。
1. 経営課題として説明できるか
- 事業領域が広がり、現在のブランドと合わなくなった
- 新しい顧客へ自社の価値や強みが伝わっていない
- 事業承継や組織拡大によって理念の共有が必要になった
リブランディングは、見た目を変えるためではなく、経営や事業の課題を解決するために行うものです。「なぜ今変えるのか」を経営課題として明確に説明できることが重要な判断軸です。
2. これからの企業像が見えているか
- これからどの事業を伸ばしていくのか
- 誰に、どのような価値を届けていくのか
- どのような企業として認識されたいのか
リブランディングでは、現在だけでなく未来の企業像から逆算してブランドを考えます。今後伸ばす事業や届ける価値、社会からどう認識されたいかという方向性を定めることが重要です。
3. 残すものと変えるものを判断できるか
- 未来にも残す価値
- 現在に合わせて更新する価値
- 今後は役割を終える価値
企業には、理念や社名、技術、歴史、顧客からの信頼など多くのブランド資産があります。すべてを変えるのではなく、未来へ残すもの、更新するもの、役割を終えるものまで見極めます。
4. 公開後まで運用できる体制があるか
- 経営と各部門がブランドの目的を共有する
- WEB、採用、商品など各接点へ展開する
- 公開後も継続してブランドを運用していく
リブランディングは、戦略やロゴをつくって終わりではありません。経営、広報、営業、人事が目的を共有し、WEBや採用、商品など各接点で継続運用する体制を整えることが重要です。
■ CHIBICOのリブランディング判断基準

CHIBICOでは、リブランディングの必要性を「CURRENT BUSINESS」「CURRENT BRAND」「FUTURE VISION」の3つの関係から確認します。重要なのは個別の変化ではなく、現在の事業、社会から見えるブランド、未来像の間に生じたズレを捉え、見直す時期と範囲を判断することです。
1. CURRENT BUSINESS|現在の事業
現在の事業や顧客、提供価値、強み、課題、競争環境、今後事業計画を整理します。新規事業では構想や市場機会も確認し、ブランドの出発点となる事業の現在地と可能性を明確にします。
2. CURRENT BRAND|現在の立ち位置
顧客、市場、競合との関係を確認し、自社や事業がどのように見られているかを整理します。新規ブランドでは市場機会や競合との差も捉え、将来築くべき独自の立ち位置を明確にします。
3. FUTURE VISION|未来のビジョン
これからどの領域へ進み、誰にどのような価値を届け、どのような企業や事業、ブランドを目指すのかを整理します。新規・既存問わず、ブランドが目指す未来像と方向性を明確にします。
【 CHIBICOの初期相談では何を確認するのか? 】
初期相談では、経営課題、事業構造、既存のブランド資産、顧客や社会からの認識、これから目指す企業像、公開後の運用体制を確認します。そのうえで、全面的なリブランディングが必要なのか、CIやVIの一部を見直すことで十分なのかを整理し、課題に応じた適切な開発範囲を判断します。最初から社名やロゴの変更を前提にはしません。
■ リブランディングでは、どこまで変えるべきか?

見直す範囲が広くなるほど、社内での判断や合意形成、商標確認、各媒体への展開などに必要な準備期間も長くなります。色や書体などのVI調整であれば比較的短期間で進められますが、CIや社名、事業ブランドまで見直す場合は、経営判断を含めて早い段階から準備することが重要です。詳細な変更範囲や進め方は「CI変更」の記事で解説しています。
➤ 詳細記事:CI変更の5つの理由|見直すタイミング・範囲・進め方・事例
➤ 詳細記事:CI戦略の成否は、最初の依頼で決まる|戦略とデザインをつなぐ判断基準
■ リブランディングはいつから準備を始めるべきか

公開日が決まっている場合は、ロゴやWEBサイトの制作期間だけでなく、調査、戦略、言葉、VI、商標、社内共有、各媒体への移行まで含めて逆算します。周年や社名変更の直前に始めるのではなく、意思決定と検証に必要な時間を確保できる時点から準備をすることが重要です。
1. 公開日から逆算して準備する
公開日から逆算する場合は、必要な工程と判断事項を整理します。調査、戦略、言葉、VI、商標、媒体制作、社内説明、データ配布まで洗い出し、無理のない着手と進行計画を決めます。
2. 周年・社名変更・事業承継は早い段階から確認する
周年、社名変更、事業承継、新社長就任、中期経営計画など、実施日が明確な節目は早めに確認します。制作に加え、方向性や変更範囲を議論する時間も含め、余裕ある準備を確保します。
3. 商標・ドメイン・社内共有・切り替え期間も含めて考える
商標、ドメイン、社内共有、切り替え期間も含めて考えます。社名やロゴ変更では、WEB、名刺、会社案内、営業資料、サイン、各種アカウントなどを洗い出し、変更時期を整理します。
4. 変更範囲によって必要な準備期間は変わる
準備期間は、見直す範囲によって変わります。ロゴやVIの刷新は短期間で進められますが、CIや社名まで見直す場合は、商標や社内調整も含め、公開日から逆算して着手時期を決める。
■ CHIBICOの事例から、タイミングについて何が分かるのか?
CHIBICOの事例では、事業領域の拡大、企業が担う社会的役割の明確化、複数事業の多角化など、それぞれ異なる変化が見直しの起点になりました。ここでは「なぜその時だったのか」に焦点を当て、変化のきっかけ、ブランドとのズレ、判断、残した資産、変えた資産、移行まで3つの実例から紹介します。

NIHON MOBILITY SERVICE |事業領域と社名のズレが生まれたタイミング
[ 変化のきっかけ ]
企業の事業領域と将来の可能性が、従来の「JAPAN OIL SERVICE」という社名が示す範囲を超えて広がり始めていました。特定の商品カテゴリーである「OIL」だけでは、これから企業が目指す事業領域や提供価値まで十分に表現することが難しくなったことが、見直しの起点です。
[ 生まれていたズレ ]
現在の事業とこれから目指す企業像が変化する一方、社名には従来の事業認識が強く残っていました。企業としての可能性は広がっているのに、社会からは「OIL」を中心とした会社として認識される。このCURRENT BUSINESS、CURRENT BRAND、FUTURE VISIONのズレを整理する必要がありました。
[ 判 断 ]
ロゴだけを変更しても、企業を表す「JAPAN OIL SERVICE」という名称そのものが将来像と合わなければ、根本的な解決にはなりません。そこで、現在何をしている会社かではなく、「これから何の会社になろうとしているのか」から逆算し、社名を含めたCI全体を見直すタイミングだと判断しました。
[ 残したブランド資産 ]
これまでの事業活動によって培ってきた企業としての基盤や価値まで否定して、新しい企業へ生まれ変わることを目的にはしていません。既存事業の蓄積を土台としながら、その価値を「OIL」という限定された領域から、より広い「MOBILITY」という企業像へつなげています。
[ 変えたブランド資産 ]
社名をJAPAN OIL SERVICEからNIHON MOBILITY SERVICEへ変更し、企業を捉える視点そのものを「OIL」から「MOBILITY」へ広げました。「新しい移動と技術の進化。モノを超えたサービスとしてのあり方。」をブランドコンセプトとし、新しい企業像を言葉と視覚の両面から表現しました。
[ 開発範囲 ]
社名/ブランドコンセプト/ブランドシンボル/コーポレートロゴタイプ/ブランドスローガン「MOBILITY IS POSSIBILITY.」/名刺/ロゴガイドラインなど、社名変更を起点にCI・VIを一貫して開発しました。
[ CHIBICOが実際に判断したタイミング ]
旧社名が将来の事業領域を十分に表しきれなくなり、モビリティ領域への展開を明確にする必要が生じた段階を、CI見直しのタイミングと判断しました。社名変更を起点に、理念・名称・ロゴ・スローガンまで一貫して再構築することで、成長にも対応できる企業像へ更新し、社内外の認識統一を図りました。
➤ CHIBICO WORKS | NIHON MOBILITY SERVICEより

RENEWABLE JAPAN|事業の社会的な意味まで伝える必要が生まれたタイミング
[ 変化のきっかけ ]
再生可能エネルギー事業を展開する中で、「何をしている会社なのか」という事業内容だけではなく、その事業を通じて社会にどのような価値を生み出し、どのような未来を目指す企業なのかまで明確に伝える必要性が高まっていました。企業の役割をより大きな視点から捉え直したことが起点です。
[ 生まれていたズレ ]
「再生可能エネルギーを扱う企業」という事業内容は説明できても、「なぜその事業を行うのか」「社会の中でどのような役割を担うのか」までは十分にブランドとして表現されていませんでした。事業の機能と、企業が社会へ届けたい意味との間にあるズレを整理する必要がありました。
[ 判 断 ]
事業内容を分かりやすく伝えるだけでは、将来に向けた企業ブランドとして十分ではないと判断しました。そこで、ロゴなどの視覚表現から始めるのではなく、事業の社会的な意味、企業として目指す姿、顧客や社会へ提供する価値から整理し、ブランド戦略とCIへつなげる必要があると判断しました。
[ 残したブランド資産 ]
再生可能エネルギーを通じて社会へ価値を提供するという事業の軸は変えず、その意味をさらに明確にしました。既存事業を別のものへ変えるのではなく、事業が持つ価値を掘り下げ、企業が社会の中で担う役割として言葉とデザインへ展開しています。
[ 変えたブランド資産 ]
事業内容を説明するだけの企業像から、「すべての人を、エネルギーの主人公に。」という考え方を核とした企業ブランドへ整理しました。「主人公」という言葉を通じて、エネルギーづくりを企業だけの活動ではなく、一人ひとりが主体となる社会へつなげる企業姿勢を明確にしています。
[ 開発範囲 ]
ブランド戦略/ブランドコンセプト/ブランドシンボル/ロゴタイプ/ブランドステートメント/名刺/封筒/ロゴガイドラインまで、企業の考え方からブランド接点まで一貫して開発しました。
[ CHIBICOが実際に判断したタイミング ]
再生可能エネルギー事業の拡大により、従来の企業イメージだけでは将来の事業領域や社会的役割を十分に伝えにくくなった段階を、見直しのタイミングと判断しました。事業成長と市場変化を踏まえ、理念、ブランドメッセージ、VIを含むCI全体を再整理し、将来の展開にも対応できる状態を整えました。
※ 2026年4月1日付で「株式会社リエネ・エナジー」へ社名変更しています。
➤ CHIBICO WORKS | RENEWABLE JAPANより

I’ROM GROUP|事業の多角化によって企業全体の共通軸が必要になったタイミング
[ 変化のきっかけ ]
CI開発当時、I’ROM GROUPは先端医療、SMO、CRO、メディカルサポートなど、役割の異なる複数の事業を展開していました。事業が多角化するほど、それぞれの専門性だけでなく、「なぜ一つのグループとしてこれらの事業を行うのか」を共通の考え方で示す必要が生まれていました。
[ 生まれていたズレ ]
個々の事業内容は説明できても、それだけではグループ全体として何を目指し、社会へどのような価値を提供する企業なのかが見えにくくなります。複数の事業が広がる一方、それらを一つにつなぐ企業思想やブランドとしての共通軸を明確にする必要がありました。
[ 判 断 ]
各事業のロゴやコミュニケーションを個別に整えるだけでは、グループ全体としての一貫した企業像は生まれません。そこで、異なる事業に共通する価値や意志を掘り下げ、「なぜI’ROM GROUPがこれらの事業を行うのか」を説明できる上位の企業思想からCIを整理する必要があると判断しました。
[ 残したブランド資産 ]
先端医療、SMO、CRO、メディカルサポートという各事業が持つ専門性や役割はそのまま活かしました。事業の違いをなくして一つに統一するのではなく、それぞれの専門性を残しながら、その根底にある共通の価値を企業ブランドとしてつなぐことを重視しました。
[ 変えたブランド資産 ]
「憂いなき未来のために。」というブランドプロミスを核に、複数事業を横断する共通の企業思想を明確にしました。それぞれの事業を個別に見せるだけではなく、I’ROM GROUP全体として何を目指すのかを、言葉と視覚表現の両面から一貫して伝えられる企業ブランドへ整理しました。
[ 開発範囲 ]
ブランドプロミス/ブランドシンボル/ブランドロゴタイプ/コーポレートロゴタイプ/ブランドステートメント/名刺/封筒/WEBサイト/ロゴガイドラインなど、グループ全体の企業像を支えるCI・VIを一貫して開発しました。
[ CHIBICOが実際に判断したタイミング ]
複数の医療関連事業が広がる一方で、各事業の役割やグループ全体の価値が一つの企業像として伝わりにくくなった段階を、CI見直しのタイミングと判断しました。事業構造と将来像を踏まえ、グループを束ねる考え方と言葉、VIを整理し、統一した企業ブランドへ再構築して認識の共有までを図りました。
➤ CHIBICO WORKS | I’ROM GROUPより
■ 国内外の事例から、リブランディングのタイミングを考える
国内外の事例を見ると、リブランディングのタイミングは年数ではなく、事業、市場、顧客接点、ブランド認知の変化によって決まります。重要なのは、何を変えたかではなく、企業にどのようなズレが生まれ、なぜその時点で見直す必要があったのかを実務視点で読み解くことです。

NTT|事業内容と社名のズレが大きくなったタイミング
NTTは2025年、民営化40年を機に社名を「NTT株式会社」へ変更しました。固定通信からモバイル、IT、不動産、エネルギーへ事業が広がる中、旧社名とのズレを見直し、ダイナミックループを継承しながら、ロゴタイプやカラー、ブランド体系を現在の事業像に合わせて更新しました。
[ タイミング ]
民営化40年・事業領域の拡大・グローバルブランドの統一
[ 学べること ]
長年使ってきた社名やCIでも、現在の事業実態と合わなくなれば見直す必要があります。NTTの事例は、認知や信頼につながる象徴は残しながら、社名や表現、ブランド体系を更新できることを示します。重要なのは過去を否定せず、現在と未来の事業像に合わせ継承と変更を判断することです。
[ 出典 ] NTT公式「NTTグループのCIの刷新について」(2025年5月9日)

富士フイルム|市場構造の変化によって企業像を再定義したタイミング
富士フイルムは写真フィルム市場の縮小と事業領域の拡大を背景に、2006年に持株会社体制へ移行しました。医療、化粧品、高機能材料などへ事業が広がり、「写真フィルム」という従来の企業像では現在の姿を表しにくくなり、事業構造の転換に合わせて企業ブランドの意味を再定義しました。
[ タイミング ]
主力市場の急速な縮小・事業ポートフォリオの転換・持株会社体制への移行
[ 学べること ]
主力市場が縮小し、事業構造や収益の柱が変化したときは、企業の見え方も見直す必要があります。富士フイルムの事例は、過去の主力事業に企業像を固定せず、新事業領域と将来像に合わせてブランドの意味を更新する重要性を示します。事業転換はリブランディングを検討する明確なサインです。
[ 出典 ] 富士フイルムホールディングス「90周年特設ページ(歴史)」「コーポレートブランドロゴ」

Walmart|事業の進化にブランド表現を合わせたタイミング
Walmartは2025年、オムニチャネル化とデジタル接点の拡大に合わせ、ブランド表現を刷新しました。長年親しまれてきたSparkや青を継承しながら、書体や色、デジタルでの見え方を整え、現在の事業実態と将来像に合うブランドへと更新。認知を活かしながら進化させた事例です。
[ タイミング ]
オムニチャネル化・デジタル接点の拡大・企業像の変化
[ 学べること ]
事業や顧客接点が変化しても、認知や信頼につながる資産まで全て変える必要ありません。Walmartの事例は、既存の象徴を残しながら、事業環境に合わない表現を見直し、継承と進化を両立できることを示します。変更範囲は、残す価値と変える必要性を分けて判断することが特に重要です。

Mozilla|現在の活動とブランド認知にズレが生まれたタイミング
Mozillaは2024年、Firefoxの認知に比べ企業ブランドの理解が十分でない状況を背景に、ブランドを刷新しました。オープンインターネットへの姿勢を軸に、ロゴやタイポグラフィなどを見直し、組織全体の活動が伝わるブランドへ更新しています。認知のズレを見直す事例です。
[ タイミング ]
活動領域の拡大・企業認知とのズレ・次の25年への転換
[ 学べること ]
特定の商品やサービスの認知が強すぎると、企業全体の活動や将来像が伝わりにくくなることがあります。Mozillaの事例は、現在の事業や理念と社会からの認識にズレが生じたとき、企業ブランド全体を見直す必要があることを示します。外見より、認識のズレが見直しのサインになります。
[ 出典 ] Mozilla「Reclaim the internet: Mozilla’s rebrand for the next era of tech」(2024年)

■ リブランディングのタイミングに関するよくある質問
リブランディングでは、検討する時期や準備期間、周年との関係、変更範囲など、実際に進める段階で多くの疑問が生まれます。ここでは、企業からよく寄せられる質問を取り上げ、適切なタイミングを判断するための考え方を実務の視点からわかりやすく解説します。
Q1. リブランディングは何年ごとに行うべきですか?
リブランディングに決まった周期はありません。年数ではなく、事業、顧客、市場、組織、方針の変化で判断します。現在のブランドが企業の実態や未来像を表すなら、見直しは不要です。
Q2. 業績が悪くなってからリブランディングを行うべきですか?
リブランディングは業績悪化後に行うものではありません。事業が安定し、次の成長戦略を考えられる時期は中長期で進めやすくなります。経営課題を整理し、必要性を慎重に見極めます。
Q3. 周年はリブランディングに適したタイミングですか?
周年はリブランディングを検討する良い機会です。ただし、周年だけを理由に社名やロゴを変えるのではありません。歴史や資産を振り返り、未来像とのズレを確認し見直しを判断します。
Q4. リブランディングは、いつから準備を始めるべきですか?
リブランディングは公開直前ではなく、十分な検討時間を確保して始めます。ブランド戦略、CI・VI、WEB、社内共有など変更範囲を整理し、公開時期から逆算して工程を組みます。
Q5. 会社全体ではなく、一部分だけ見直すこともできますか?
リブランディングで全社を変える必要はありません。理念やブランド戦略が有効なら残し、VIやWEBだけ見直す方法もあります。事業が大きく変わる場合は社名やCIも対象とします。

■ リブランディングを検討するためのチェックリスト
次の項目は、リブランディングの必要性を点数で判定するものではありません。該当する数ではなく、事業への影響とブランドとのズレの大きさを確認するために使用します。
1. 事業の変化
□ 5年前と比べて、事業領域や主力事業が大きく変わっている
□ 現在の社名や企業イメージでは、新しい事業を説明しにくい
□ 「何をしている会社なのか」を短く説明しにくくなっている
2. 市場・顧客の変化
□ 顧客層や市場が以前と変わっている
□ 競合との違いを価格や機能以外で説明しにくい
□ 新しい顧客へ、自社の価値や強みが十分に伝わっていない
3. 社内認識の変化
□ 経営者と社員で「会社の強み」に対する認識が違う
□ 営業・採用・広報で伝えている企業像が揃っていない
□ 組織拡大や事業承継で、企業理念の共有が難しくなっている
4. 未来像とのズレ
□ 5年後、10年後の企業像をある程度描けている
□ 現在のロゴやメッセージでは、その未来を表現しにくい
□ 周年、M&A、IPO、海外進出など大きな変化を予定している

■ まとめ
リブランディングに決まった周期はありません。重要なのは、企業の変化とブランドの変化が一致しているかどうかです。事業、顧客、市場、経営、未来像が変わっても、ブランドだけが過去を表しているなら、見直しを検討すべきタイミングです。
大切なのは、現在の事業、社会から認識されるブランド、これから目指す企業像の3つを整理し、その間のズレを明らかにすることです。何を残し、何を変えるかを決め、これまで築いた価値を次の時代へつなぎ直す。それが、CHIBICOの考える本質的なリブランディングです。
■ 参考文献・一次情報
本記事は、CHIBICOの実務経験と開発事例に加え、リブランディングに関する研究論文、各企業が公開している公式情報を参照して構成しています。事例の事実関係や変更背景については、可能な限り企業自身が公開する一次情報を確認しています。
研究・論文

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 今動くべきか、まだ待つべきか。初回相談で整理します 】
社名やロゴを変えると決まっていなくても構いません。
現在の事業、社会からの見え方、これから目指す企業像を伺い、
「リブランディングが必要か」「いつ着手し、何から始めるべきか」を整理します。
周年、事業承継、M&A、社名変更など公開時期が決まっている場合は、
そこから逆算した進め方も確認できます。
■ おすすめ関連記事
リブランディングを検討する際は、必要性、始める時期、変更範囲、CI・VIの進め方を分けて考えると整理しやすくなります。以下の記事では各テーマを実務の視点から詳しく解説しています。現在の課題点に近い内容から確認し、自社に必要な見直しの範囲を判断してください。
リブランディングが必要か判断したい方

[ おすすめ記事 ] リブランディングはなぜ必要?必要になる5つのサインと判断方法
リブランディングを成功させるポイントを知りたい方

[ おすすめ記事 ] リブランディングを成功させる6つのポイント|失敗を防ぐ進め方と実例
企業のCIまで見直したい方

[ おすすめ記事 ] CI(コーポレート・アイデンティティ)を変更する5つの理由|見直すタイミングと注意点
VIの見直しを検討している方




















