CHIBICO BLOG

ブランド力を高めるための5つの基本ステップ

[ ブランド戦略 ]

エモーショナルブランディングとは[ 感情に訴える手法 ]

エモーショナルブランディングとは、消費者の感情に訴えかけることで、ブランドと顧客の深い結びつきを生み出す手法です。単なる製品やサービスの機能的価値を超えて、ブランドが持つ物語や理念、価値観を通じて、消費者に共感や愛着を抱かせることが目的です。感情に訴えることで、顧客は単なる消費者ではなく、ブランドの支持者やファンとなり、長期的な関係を築くことが可能になります。成功するエモーショナルブランディングは、顧客の心を動かし、競争の激しい市場で差別化を図るための強力なツールです。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、エモーショナルブランディングの具体的な手法と、その効果を高めるためのポイントについて詳しく解説します。


■ エモーショナルブランディング

エモーショナルブランディング

【 エモーショナルブランディングとは?】

エモーショナルブランディングとは、製品やサービスの機能的価値を超えて、消費者の感情に訴えかけることでブランドの魅力を高める戦略です。この手法は、ブランドと消費者との間に感情的なつながりを築くことを目指し、信頼や共感を生み出します。例えば、消費者がブランドを通じて自分の価値観やアイデンティティを表現できると感じると、そのブランドへのロイヤルティが高まります。エモーショナルブランディングは、消費者にとってブランドが単なる製品提供者以上の存在となり、ライフスタイルや価値観を共有するパートナーとして認識されるよう促します。このアプローチは、ブランドが市場で差別化を図り、長期的な成功を収めるための重要な要素です。

【 ブランディングにおける感情とは?】

エモーショナルブランディングにおいて、感情は消費者との深い結びつきを築くために重要な役割を果たします。消費者は、製品やサービスの選択において、しばしば感情に基づいて判断します。感情は、ブランドに対する好意や信頼、さらには共感を生み出し、それが購入決定に大きな影響を与えます。ブランドが消費者の感情に訴えかけることで、単なる機能的な価値を超えて、消費者にとっての個人的な価値や意味を持つようになります。たとえば、あるブランドが消費者の価値観やライフスタイルと一致していると感じると、そのブランドに対するロイヤルティが強まり、長期的な支持を得ることができます。

■ エモーショナルブランディング3つの手法

エモーショナルブランディング3つの手法

【 1.ストーリーテリング 】

エモーショナルブランディングにおけるストーリーテリングは、ブランドと消費者との感情的なつながりを深めるための強力な手法です。ストーリーテリングを通じて、ブランドは自社の価値観やビジョン、背景を物語として伝えることで、消費者の共感を呼び起こします。これにより、製品やサービスが単なる機能的価値を超え、消費者にとって個人的で意味のある存在となります。たとえば、ブランドが創業者の情熱や困難を乗り越えたストーリーを共有することで、消費者はブランドの成長を自分の物語の一部として感じられるようになります。このような感情的な結びつきは、ブランドロイヤルティを高め、消費者がブランドを選び続ける理由となります。

【 2.ビジュアルと感覚の訴求 】

エモーショナルブランディングにおけるビジュアルと感覚の訴求は、視覚や感覚に訴えることで、消費者の感情に直接働きかける手法です。強力なビジュアルデザインや感覚的な要素(色彩、形状、質感、音楽、香りなど)を活用することで、ブランドは消費者に対して瞬時に強い印象を与えることができます。例えば、特定の色やデザインは、安心感や高揚感といった特定の感情を呼び起こし、ブランドのメッセージを効果的に伝えます。また、香りや音楽といった感覚的要素を通じて、ブランドは記憶に残る体験を提供し、消費者との感情的なつながりを深めます。これにより、消費者はブランドに対してポジティブな感情を抱き、ロイヤルティが高まります。

【 2.コミュニティの形成 】

エモーショナルブランディングにおけるコミュニティの形成は、ブランドが消費者との深い感情的つながりを築くための重要な手法です。コミュニティを形成することで、消費者はブランドを中心とした共通の価値観や興味を持つ人々とつながり、ブランドへの帰属意識を強めます。ブランドがコミュニティを構築する際には、消費者同士の交流を促進するプラットフォームやイベントを提供し、共通の体験や目標を共有できる場を作ります。これにより、消費者はブランドを単なる製品やサービス提供者ではなく、生活の一部として捉え、ブランドロイヤルティが高まります。たとえば、Nikeの「Nike+」コミュニティは、ランニング愛好者が互いに励まし合い、目標を達成する場を提供し、ブランドとの絆を強化しています。

■ エモーショナルブランディングの成功事例

NIKEエモーショナルブランディング

【 Nikeの成功事例 】

Nikeは2018年に、元NFL選手コリン・キャパニックを起用した「Believe in something. Even if it means sacrificing everything.(何かを信じるなら、それが全てを犠牲にすることを意味していても)」というメッセージを掲げたキャンペーンを展開しました。キャパニックは、警察の暴力や人種差別に対する抗議活動の象徴的存在であり、このキャンペーンを通じてNikeは強い社会的メッセージを打ち出しました。このキャンペーンは賛否両論を巻き起こしましたが、Nikeは自社のブランド価値を強く支持する消費者との結びつきを深め、エモーショナルブランディングの効果を示しました。

[ 出典 ] Nike公式サイトより
[ 出典 ] Forbesより

doveエモーショナルブランディング

【 Doveの成功事例 】

Doveの「Real Beauty」キャンペーンは、エモーショナルブランディングの成功例として非常に有名です。このキャンペーンは、従来の美の基準に挑戦し、あらゆる女性が持つ「本当の美」を称えるものでした。リアルな女性をモデルに起用し、体型や年齢を問わず、全ての女性が美しいというメッセージを発信しました。このアプローチは、特に女性消費者の間で強い共感を呼び起こし、Doveを自己肯定感や自然体の美しさを支持するブランドとして確立させました。

[ 出典 ] Dove公式サイトより
[ 出典 ] PR Weekより

patagoniaエモーショナルブランディング

【 Patagoniaの成功事例 】

Patagoniaは環境保護に強くコミットしたエモーショナルブランディングを展開しています。同社の「Don’t Buy This Jacket」キャンペーンは、消費者に対して環境への影響を考えるよう促すものでした。Patagoniaは、消費者に製品を長く使い続けることやリサイクルを奨励し、自社の製品が環境に与える影響を最小限に抑える取り組みを行っています。このアプローチにより、Patagoniaはサステナビリティに共感する消費者の心を掴み、ロイヤルティを高めています。

[ 出典 ] Patagonia公式サイトより
[ 出典 ] SMOより

starbucksエモーショナルブランディング

【 Starbucksの成功事例 】

Starbucksは「サードプレイス(Third Place)」という概念を中心にブランディングを行っています。家庭と職場の間にある「第三の場所」として、消費者がリラックスしコミュニティとのつながりを感じられる空間を提供することを目指しています。このアプローチにより、Starbucksは単なるコーヒーショップ以上の存在となり、消費者にとって居心地の良い空間として認識されています。このコンセプトは、顧客ロイヤルティを高める要因となりStarbucksがグローバルな成功を収める原動力となっています。

[ 出典 ] Starbucks公式サイトより
[ 出典 ] Starbucks Storiesより

airbnbエモーショナルブランディング

【 Airbnbの成功事例 】

Airbnbは「Belong Anywhere(どこでも居場所がある)」というメッセージを中心にブランディングを行っています。このメッセージは、消費者が旅先でも自宅のように感じられる場所を提供するというコンセプトを反映しています。Airbnbは、旅行が単なる移動手段ではなく、異文化との交流や新しい体験を通じて自己を発見する機会であることを強調しました。このエモーショナルブランディングにより、Airbnbは旅行業界で大きな成功を収めています。

[ 出典 ] Airbnb公式サイトより
[ 出典 ] Ueber-Brandsより

harleyエモーショナルブランディング

【 Harley-Davidsonの成功事例 】

Harley-Davidsonは、バイクそのものの性能やデザインだけでなく、自由や冒険、反骨精神といった価値観を強く訴求するエモーショナルブランディングを展開しています。バイク愛好者にとって、Harley-Davidsonは単なる移動手段ではなく、ライフスタイルや生き方の象徴となっています。この感情的なつながりにより、Harley-Davidsonは非常に強いブランドロイヤルティを築いており、顧客はブランドを支持し続けるだけでなく、そのコミュニティの一員であることに誇りを感じています。

[ 出典 ] Harley-Davidson公式サイトより

ben-jerrysエモーショナルブランディング

【 Ben & Jerry’sの成功事例 】

Ben & Jerry’sはアイスクリームの美味しさだけでなく、社会的正義や環境保護に対する強いコミットメントを掲げエモーショナルブランディングを展開しています。彼らは、フェアトレード、環境保護、社会的平等を積極的にサポートしており、消費者にもこれらの価値観を共有しています。このブランドの姿勢は、製品の品質だけでなく、ブランドの理念に共感する消費者のロイヤルティを高める結果となっています。

[ 出典 ] Ben & Jerry’s公式サイトより
[ 出典 ] abc NEWSより

LUSHエモーショナルブランディング

【 Lushの成功事例 】

Lushは、手作りの化粧品と倫理的なビジネス慣行を組み合わせたブランドとして知られています。彼らは、動物実験反対、環境保護、フェアトレードなど、様々な社会的問題に対して強い立場をとっています。このような姿勢に共感する消費者に向けたエモーショナルブランディングにより、Lushは倫理的な消費を重視する市場で大きな成功を収めています。

[ 出典 ] Lush公式サイトより
[ 出典 ] Emo miuより

■ まとめ

エモーショナルブランディングは、消費者の感情に訴えかけることで、ブランドとの深いつながりを築くための強力なマーケティング手法です。ストーリーテリング、ビジュアルと感覚の訴求、コミュニティの形成を通じて、感情的なつながりを強化しブランドロイヤルティを高めることができます。エモーショナルブランディングを成功させるためには感情的なつながりの評価と継続的な改善が必要です。成功事例から学び、自社のブランディング戦略に取り入れることで、感情に訴える効果的なマーケティングを実現しましょう。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

株式会社チビコ

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