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ブランドステートメント開発のメリットとは

[ ブランド戦略 ]

ブランドステートメント開発のメリットとは

ブランドステートメントは、企業やブランドが何を目指し、どのような価値を提供するのかを明確に表現する短い宣言文です。このステートメントは、ブランドの核心を一貫して伝える役割を果たし、社内外でブランドの方向性を共有するための指針となります。ステートメントを開発することで、企業は自社のビジョンやミッションを明確にし、チーム全体が同じ目標に向かって進むための基盤を築くことができます。また、消費者に対しても、ブランドの本質や独自性をわかりやすく伝えることができ、信頼性やロイヤルティの向上に寄与します。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ブランドステートメント開発のメリットと、その作成プロセスが企業のブランディングにどのような効果をもたらすかを詳しく解説します。


■ ブランドステートメントとは?

ブランドステートメントとは?

“企業らしさ”を簡潔に文章化したもの

ブランドステートメントは、企業や製品・サービスのブランドイメージを伝えるために用いられる、簡潔でわかりやすい文章やフレーズのことを指します。ブランドの使命やビジョン、顧客への提供価値、特徴や差別化ポイントなどを伝えることで、ブランドのアイデンティティを確立し、顧客にアピールする役割を果たします。ブランドステートメントは、企業のウェブサイトや広告、マーケティングツールなどで使用されることが一般的で、魅力的なブランドイメージを作り上げる上で重要な要素の一つです。

ブランドステートメント開発の5つのポイント

ブランドステートメント開発の5つのポイント1
ブランドステートメント開発の5つのポイント2

1. ターゲットを理解すること

ブランドステートメントは、誰に向けたものなのかを明確にする必要があります。まずは、ターゲットオーディエンスについて深く理解することが大切です。ターゲットオーディエンスの年齢層、性別、関心分野、ライフスタイルなどを把握し、その人たちに何を提供するかを考えます。

2. ブランドの強みを明確にすること

ブランドステートメントは、そのブランドがどのような価値を提供するかを明確に表現するものです。ブランドの強み、優位性、独自性を特定し、それを伝えることが重要です。強みを特定するために、SWOT分析や競合分析を行うことが有効です。

3. シンプルで明確な言葉を使うこと

ブランドステートメントは、シンプルで明確な言葉で表現することが大切です。短く簡潔な言葉を使い、誰にでも理解できるように心がけましょう。また、ブランドステートメントには、そのブランドのパーソナリティやトーンも表現されるため、そのブランドの雰囲気に合った言葉選びをすることが大切です。

4. ブランドのビジョンを示すこと

ブランドステートメントは、そのブランドのビジョンを示すものでもあります。ブランドが目指す未来の姿、そのブランドが果たしたい役割や社会的な意義を表現することが重要です。また、そのビジョンを達成するために、そのブランドがどのような取り組みを行っていくのかも明確にする必要があります。

5. 定期的な見直しと改善を行うこと

ブランドステートメントは、そのブランドのアイデンティティを表現するものであるため、定期的な見直しと改善が必要です。市場環境や消費者のニーズが変化した場合には、ブランドステートメントも変化する必要があります。定期的な見直しを行い、必要に応じて改善することで、ブランドの価値を高めることができます。

■ ブランドステートメントを開発するメリット

ブランドステートメントを開発するメリット

【 細やかなニュアンスを伝え理解が得られる 】

ブランドステートメントがブランドスローガンとセットで語られることがありますが、ブランドスローガンは、キャッチーさを追求することでより記憶に残りやすいことが重要視されることもあり、2〜3行のリードテキストが付随されていたとしても、真意のすべてが伝えられるかといえば少なからず疑問が残ります。そのような場合に大きな効果を発揮するのがブランドステートメントです。キャッチーなスローガンを受けて、企業としての想いや志、こだわりや世界観などについて企業のらしさを充分に発揮しながら表現することは、ブランディングの観点から考えると多大な効果が期待できると言えるでしょう。

また、企業ブランドの評価者である一般の生活者や顧客から見ても、単発的に発信された解釈の幅が広すぎるワンフレーズよりも、共感・共鳴できる内容が記されている文章であるほうが、胸をうつメッセージ性を感じることができ、企業やブランドとの深い関係づくりに繋がるはずです。しかしながら、WebサイトやSNSなどスペースが無限にある媒体では特に、冗長で一方的、情報過多なステートメントが出来あがりやすく留意が必要です。ブランドステートメントはあくまでも端的であることが大切です

■ ブランドステートメントの参考事例

株式会社ニチイ学館のブランドステートメント

【 株式会社ニチイ学館|ブランドステートメント 】

オーソドックな構成だが企業としての姿勢が良く分かる

ニチイ学館のブランドステートメントは、「学びを、未来へ。」です。このステートメントは、ニチイ学館が提供する教育サービスが、単なる知識やスキルの習得だけでなく、人生を豊かにする未来への投資であることを表しています。また、ニチイ学館は「学ぶことは生きること」という信念を持ち、生涯学習を通じて、個人の可能性を広げることを目指しています。このブランドステートメントは、そのようなニチイ学館の哲学や使命を表現しており、同時に顧客に向けても「学び」の価値を提供することを示しています。

[ 引用 ] ニチイ学館公式サイトより

ライオン株式会社のブランドステートメント

【 ライオン株式会社|コーポレートメッセージ 】

メッセージ性の強い仕立てとなっている

ライオン株式会社のコーポレートメッセージは、「今日を愛する。」というスローガンを補完するものとして、ブランドステートメントとして設定されています。このコーポレートメッセージは、文字量が多い部類に属しますが、逆に言えば、新聞の片面1ページでの企業広告や、駅貼りポスターや屋外サイネージ、ラジオの60秒広告などの音声メディアなどへも、いつでも出稿できるようなクオリティであると言えます。「今日を愛する。」というスローガンを掲げ続けるために、企業としてどうあるべきか、また、それを実行できることの誇りについて伝えることで、より可能性に満ちた未来と世界に向けて貢献していくことを読み取ることができます。わずか7文字のスローガンだけでは、その中身が無限に広がってしまうところですが、ブランドステートメントを開発することにより、その真意を具体的に伝えられます。生活者や顧客と歩幅を合わせた価値観の共有が可能となることもステートメントが担う役割のひとつでしょう。

[ 引用 ] ライオン公式サイトより

株式会社ニチレイのブランドステートメント

【 株式会社ニチレイ|ブランドステートメント 】

インナーブランディングを意識した構成である

株式会社ニチレイは、持株会社として4つの事業会社を傘下に持ち、グループ全体のブランド設定を行っています。同社のWebサイトによれば、ブランドステートメントはコミュニケーションメッセージとは別に扱われており、「おいしさ」と「新鮮」をネットワークすることを強調しています。同社のブランドステートメントは、4つの事業会社のシナジーを通じてコミュニケーションメッセージを実現することを目的としており、独立して役割を果たすことができるとされています。

[ 引用 ] ニチレイ公式サイトより

コクヨ株式会社のブランドステートメント

【 コクヨ株式会社|Campusブランドステートメント 】

“ノートに手書き”という演出で文具メーカーらしさが表現されている

企業のブランドステートメントは、商品やサービスのブランドにおいても同様に重要な役割を果たします。例えば、コクヨ株式会社は、主力製品である「Campus(キャンパス)」のブランドに、「ノートの進化を止めるな。」というブランドステートメントを設定しています。このようなブランドステートメントは、紙文化が衰退している現代においても、コクヨ株式会社の老舗ブランドが進化を止めずに成長し続ける決意を示すものとして、ブランドの信頼性や期待度を高める役割を果たしています。ブランドが定着している場合でも、ブランドステートメントを設定することで、商品やサービスのコンセプトや目指す姿を明確にすることができ、さらにそのブランドの地位を強固なものとして確立することができます。

[ 引用 ] コクヨCampus公式サイトより

■ まとめ

ブランドステートメントを、その意味やメリットなどの面から考察してみました。ブランドステートメント開発の最大のメリットは、企業としての個性や特徴・らしさといったものを存分に表現できるというところにあります。仮にブランドスローガンや企業メッセージと似たようなフレーズがあったとしても、自社ならではの技術や価値観、企業背景などを用いることにより、唯一無二として全く異なる印象を与えることができるでしょう。ブランドステートメントにまで目を通し、自社について知ろうとしてくれる人々こそ、企業は本当に大切にしなければならないはずです。齟齬のない意思疎通を図るため、ブランドステートメントはブランドスローガンと共に大きな役割りを果たします。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

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