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[ ブランド戦略 ]

行動指針(プリンシプル)の参考にしたい開発事例

企業ブランディング活動における行動指針(プリンシプル)は、その運用を考えると、企業と従業員との関係性について表すものとして捉えられます。企業側から見ると「自社の従業員としての自律性や要件のようなもの」であり、従業員から見ると「日々の業務でそれを貫くことにより企業が目指すゴールの達成につながる規範」のようなものであると言えます。しかし、いざ自社で指針をつくるとなると、中々難しいと思われることもあるのではないでしょうか。今回は、実際にはどのようなことが、どのような言葉で、どう定められているのかなどについて、ブランドバリューやミッションなどとの関係性も踏まえながらご説明させていただきます。


行動指針(プリンシプル)の目的とは?

企業ブランディングを体系的に捉えると、行動指針はブランドビジョンやブランドミッション、ブランドバリューを支える台座として位置づけられます。では、この行動指針は従業員にはどう映るでしょうか。多くの場合、「素晴らしい内容ではあるが、だから???」という感想になるのではないでしょうか。企業のブランディング活動を実行するのは、従業員一人ひとりに他なりません。自社のビジョンやミッションが、どこか他人事になってしまっている状態では、ブランドビジョンの実現は到底難しいでしょう。このようなことからも、行動指針を定める目的は、ブランドビジョンをはじめとした企業としての考え方を、社内の隅々まで浸透させていくためのものと捉えるべきでしょう。

行動指針(プリンシプル)の開発事例

有名企業では、どのような行動指針を定めているのか事例をまじえながらご説明させていただきます。以下の行動指針の事例の通り、会社によって何に価値を置いているかが大きく異なっている事がわかります。一人一人の性格が違うように、会社の個性も異なるという言い方ができるかもしれません。

[ 株式会社ニコン ]

[ 出典 ] ニコン 企業理念・ビジョンより
https://www.nikon.co.jp/corporate/philosophy/

⎮ 優しく語る“語句+補足文”は、丁寧な企業イメージを感じさせる

ニコン社の行動指針は、社の企業理念・ビジョンの中で「心掛け」として掲げられています。大きく3つ。『好奇心』、『親和力』、『伝える力』です。それぞれに1センテンスの補文が添えられています。例えば、好奇心には、「常に変化を楽しみ、広く興味を持つことで、新しい発想を生み出します」といった具合です。この1文を解読してみると、宣誓する形式をとりながら、従業員に変化や行動など自らアクションをとることを促していることがわかります。また、こうした毎日の先に、「経営ビジョン」として定められてる“Unlock the future with the power of light”があり、さらに励行していくことによって「企業理念」として定められている“信頼と創造”が実現していくというシナリオであることが分かります。この一連の展開には無理がなく、他の2つの心掛けについても同様のことが言えます。行動指針とはせず、あえて“心掛け”としているところも、伝統ある光学メーカーとしての「らしさ」が出ていると見るべきではないでしょうか。

[ ニッポンハムグループ ]

[ 出典 ] ニッポンハムグループ 企業理念より
https://www.nipponham.co.jp/group/vision/ci.html

⎮ 箇条書きで言い切る文体は、強い意志を感じさせる

ニッポンハムグループは、グループ共通のブランド体系を敷いています。行動指針は、企業理念の中で「行動指針」として5つのことが定められています。それぞれをまとめると、「顧客主義」「誠実・正義さ」「先駆・挑戦」「熱意・創意」「切磋琢磨・協調」ということになりそうです。ニッポンハムグループでは、ブランドミッション(企業使命)にあたるものとして「経営理念」が、こちらも5つのことをもって語られています。ニッポンハムグループでも行動指針と経営理念や企業理念との関係性は明らかで、行動指針に不履行があればいずれかの理念が不達成となってしまうと読み解くことができます。また、ニッポンハムグループの行動指針はすべて、「〜する」という結びでつくられていることにも注目したいところです(他の2つの理念も同様)。企業として宣誓をする文体です。宣誓とは、約束です。理念の中で語られていますが、ニッポンハムグループが文字通り“不退転の意志”をもってグループの企業理念体系を実践する堅い決心があることが現れていると言えます。

[ SGホールディングス株式会社 ]

[ 出典 ] SGホールディングス 企業理念より
http://www.sg-hldgs.co.jp/company/philosophy.html

⎮ 「行動憲章」を行動面へ移していることを明示

佐川急便を傘下とする持株会社であるSGホールディングス社は、グループのものとして企業理念を策定しています。行動規範は、その中で「倫理・行動規範」として4つの文言で定められています。それぞれは分野が異なり、お客さまとの関係、従業員同士の関係、地域社会との関係、ステークホルダーとの関係を通して互いに成長していこうという意志を表明しています。この、顧客・社内・社会・ステークホルダーになぞらえていくのは、行動指針としてはとてもバランスが良く、同グループが全方向的に配慮していることが分かります。また、この倫理・行動規範は、「SGホールディンググループ行動憲章」を具体的に表現したものであることが明記されています。この行動憲章には“社会の信頼と共感を得るための宣言”の見出しが付けられており、その関係性を保って開発されたものであることが分かります。公共のために尽力していくというグループの姿勢が、徹頭徹尾で貫かれており、信頼の獲得に重きを置く企業としての戦略が垣間見られる気がします。

[ サッポロビール株式会社 ]

[ 出典 ] サッポロビール 企業理念体系より
https://www.sapporobeer.jp/company/rinen/

⎮ 企業の「らしさ」を上手く活かしながら、柔らかく表現

サッポロビール社では、行動指針を「行動規範」として掲げています。それに並び、ブランドミッションにあたるものを「ビジョン」として、ブランドビジョンを「経営理念」として設定しています。“規範”とされていますが、表記を含め、内容についてはとても柔らかいものとなっていることが分かります。『カイタクしよう』というキーワードの下、4つの分野「心を動かすアイデアを」「お酒の次の未来を」「深く愛されるブランドを」「社会との共鳴を」明記されています。ビジョンとの関係性もスムーズです。4つの分野を突き詰めた先には、ビジョンの達成が容易に予想できます。開拓が何故カタカナ表記なのかは言明されていませんが、「開拓」という語句は、数あるビール会社の中でもサッポロビール社にこそ相応しいものと言えるでしょう。企業のルーツを想起させ、かつ、受け継いでいくべきスピリットを上手く織り込んだものとなっており、ビジョンのフレーズと合わせて、企業としての個性を醸成させている例として大いに参考となりそうです。

[ 株式会社野村総合研究所 ]

[ 出典 ] 野村総合研究所 企業理念より
https://www.nri.com/jp/company/c_philosophy

⎮ 自由度の高い行動指針は、同社のレベルをも知らしめる

言わずと知れた日本のシンクタンク最王手の野村総合研究所社ですが、その企業理念体系はシンプルです。中でも、行動指針は「真のプロフェッショナルとしての誇りを胸に、あくなき挑戦を続ける」という一文のみとなっています。コンサルタントである従業員に対し、そのスキルなどについては一切触れられていないというところにも特筆すべきものがあります。業務内容を考えれば、未来志向で、グローバルな視野で、牽引力をもって、、、と具体的なことを並べてしまいそうなところではないでしょうか。野村総合研究所社が、従業員であるコンサルタントに全幅の信頼を置いていることがわかると同時に、どのコンサルタントも細かなことを書く必要のない高いレベルにあるということを知らしめているようにも感じます。反面、各コンサルタントにとっては、自由度の高い行動指針は、より一層の不断の努力を求めるものとして映ることでしょう。行動指針で細かい設定をせずとも、従業員の自律を喚起することはできるという格好の事例と言えるでしょう。

[ ヒューマンホールディングス株式会社 ]

[ 出典 ] ヒューマンホールディングス株式会社より
https://www.athuman.com/profile/shishin.asp

⎮ 漢文調の行動指針は、企業理念「為世為人」との関係性によるもの

教育事業を幅広く手掛けるヒューマンホールディングス社は、しっかりとしたボリュームの企業理念体系をもっていることでも知られています。その一つである行動指針には、「日々是素直」、「生涯是勉学」、「万事是陽想」の3つと、それぞれを補足する1行の文章が添えられています。同社ではブランドビジョンも(企業理念)に相当するものとして、“為世為人”という「経営理念」が定められており(それを補う文章も設定されています)、行動指針が漢文のようなスタイルをとっていることの理由がここにあることが分かります。また、同社の行動指針は、常に自己を省みることのできる、先に挙げた3つからなる「行動指針」と、それをより具体的にわかりやすい形にしたという“Look”、“Speak”、“Act”の3点からなる「ヒューマングループのコーポレートビヘイビア(行動・振る舞い)」とで構成されています。企業として、また、教育という事業分野として価値の高い信頼性を大切にしながら、それを周知・理解してもらうための努力を惜しまないという姿勢が見られるように思います。

まとめ

様々な形式・形態をとる行動指針ですが、特徴的と思われる事例を他要素との関係を交えて考察をしてみました。行動指針は、語尾の使い方や、文調、詳細に語るか否か、英語か日本語かなどにより、企業の個性・“らしさ”や、職場・現場の雰囲気などを感じさせます。また、行動指針は企業側が従業員に対して求めるものやことが一方的な表現で出てしまいがちです。自社では情熱的として捉えられている言い回しも、事情を知らないステークホルダーには単に高圧的なものとして読めてしまうこともあります。理解してもらいたい企業姿勢を正しくイメージしてもらうためにも、その開示の可否を含め、行動指針には熟思された戦略が必要です。

【 おすすめ記事 】 行動指針(プリンシプル)の目的と効果とは
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【 おすすめ記事 】 クレドの必要性と効果とは何か?
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