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ブランドポジショニング

[ ブランド戦略 ]

ブランドポジショニングから始めるブランディング

企業や商品、サービスについてのブランディングをしたいが、どこから手を付けたらよいか分からない。こうしたお悩みを抱えている方は案外多いのではないでしょうか。ブランディングには、さまざまな考え方やアプローチが存在し、そのすべてに理があると言えるでしょう。しかし、どの手法・どの戦略を採るにしても、まずは明確にしておいて無駄にならないものがあります。それが『ブランドポジショニング』です。ブランドポジショニングの正しい理解は、ブランディング活動はもとより、その後の具体的施策となるマーケティングや広告・SP活動にも役立ちます。今回は、ブランディングの初期にして、その成功を左右する重要な要素とも言えるブランドポジショニングについて紐解いていきます。


■ ブランドポジショニングとは?

生活者は自社のブランドをすぐに思い浮かべてくれるか?

生活者は自社のブランドをすぐに思い浮かべてくれるか?

『ブランドポジショニング』とは、市場や生活者の意識下におけるブランドの“立ち位置”を可視化することです。「◯◯といえば□□□(ブランド名)。」と顧客や生活者に根ざしているブランドは、戦略的なブランドポジショニングが上手くいっていると言えるでしょう。このことを少しだけ専門的に言い換えるなら“ブランドに固有のポジティブなイメージを認識してもらいながら、その価値についても独創的であると評価されている状態”と表すことができます。これは競合ブランドとの差別化が図れていることや、相当程度の市場を占めていることを示しており、ブランディング活動の最終的な目的とも重なります。現状でブランディングについて具体的な方針が見い出せていない場合は、このブランドポジションの開発から始めることが有用です。ブランドポジショニングから始めるブランディングは、「顧客や生活者に、替えの効かない唯一のものとして意識され、比較検討されることなく継続的に支持される」というブランディングの本質とも言えることに最短で到達することに繋がります。

■ 今の立ち位置を顕在化する「現況ポジショニング」

ブランドとして、どんなことを武器にして戦っていくのか

ブランドとして、どんなことを武器にして戦っていくのか

ブランドポジショニングを図るには、マーケティングフレームの一つであるSTP(Segment,Target,Positioning)分析などが挙げられますが、はじめてブランディングを行う方にはハードルが高いものとなっています。そこでお薦めをしたいのが、ブランドの現在を2軸でマッピングする現況ポジショニングです。注意点は可能な限り恣意的な見解を排除し、顧客・生活者視点で作図をすることです。「こうイメージされているはずだ」、「こう評価されていたい」、「我々のブランドは、こう標榜している」などの考えは捨て去ることが必要です。また、競合となっているブランドや、現在は競合していなくても将来その恐れがあるブランドなども同じマップ上に配置してみることも有益です。競合ブランドとのオーバーラップがあれば、そこからの脱却が必要です。ポツンと離れたところに位置しながらブランドの価値が順調に上昇していないなら、顧客ターゲットや価格・サービス内容・コミュニケーションの方法などに是正が必要だと考えられます。現況のポジショニングを顕にするだけでも、ブランディングのきっかけは見えてきます。

■ 理想の立ち位置を定める「未来ポジショニング」

ブランドの未来(理想)の姿を共有することも大切

ブランドの未来(理想)の姿を共有することも大切

現況のポジショニングを客観的に認識してみることだけでブランドポジショニングは終わりません。むしろ“ブランドとして、どうありたいか”という、ブランドとしてのゴールを定めることが、ブランドポジショニングの本懐と言ってもいいでしょう。ポジションマップに落とし込んだ時、現況との距離が離れていれば離れているほど、ブランドとしては大きな変容を遂げることになります。また、時間的・経済的なコストに関しても、大きな投入が必要となります。これは、時間的・経済的なコストを無尽蔵につぎ込まなければならい、ということを意味するものではありません。むしろコストの管理は必須の事項です。重要なのは、ブランドとしての理想の姿をしっかりと決め、社内での共有を図ることです。未来ポジショニングは、現況には近すぎては意味がありません。遠すぎても、絵に描いた餅となってしまいます。適切な距離をすぐさま定めることは難しいかもしれません。そうした場合はタイムラインをフェーズで切り、例えば年単位で、ブランド価値の移行を計画していくことも検討できるでしょう。 

■ ギャップを可視化するポジションマップの作り方

現況と未来のギャップから明確になることもある

2軸の要素は、現況と未来のギャップから明確になることもある

ポジションマップはどう作っていけばよいのでしょうか。早速ですが、ポイントは「縦軸」と「横軸」の設定です。軸の設定には幾つかの要素から考えられますが、大切なのは「生活者視点で考える」ということです。『顧客の支持(購買・共感)を得られる』、『ブランドの強みを活かせる』の2つの要素を勘案しながら、なるべく離れた要素を軸として選定します。両軸を据えたときに“No.1になれる市場がある”、“新しい市場をつくり出している”、“新しい価値観を提示できる”などが達成できていれば機能するポジションマップが作れていると言えるでしょう。しかしマーケッターとしての実務経験がなければ、これらは一筋縄ではいかないことも事実です。そのような場合は、ブランドの未来ポジショニングを念頭に入れて検討するのも一つの方法です。現況を踏まえ、将来的にどうありたいのか、どのポジションへ行くべきなのか。それらをきっかけにすることで、ポジションマップの軸を決めていくこともできます。また、そうしているうちに、未来ポジショニングにも変容が生じてくるかもしれませんが、それは間違いではありません。未来ポジショニングやポジションマップは、その作成を目的とするものではなく、ブランドを正しい姿へと導いていくことが本来の目的だからです。ブランドの新たな一面が見えたなら、それはまた一つブランドの価値が増えたということなのです。

■ ブランドポジションニングの事例

【 スノーピーク 】

https://www.snowpeak.co.jp

スノーピークのブランドポジショニング

どれだけ占有できるか、独自でいられるか、付加価値を提供できるか

スノーピークといえばアウトドア商品のハイブランドとして知られています。同社の特長の一つとして、自社ブランド商品について高価格帯でも正価での販売を基本としていることが挙げられます。量販店でも専用の売り場を設けるなど、ほとんど値引きをしていません。こうした点からは、価格について「エクスペンシブ←→リーズナブル」の軸が見えてきます。またユーザーは大都市圏に住むアイテム一式を揃える長年の愛好者が多いことも特色で、さらに30代〜40代のアウトドアに憧れをもつ層からの支持も厚くブランド価値の下支えをしています。こうした点からは、ユーザー性向である「オーソドックス←→カジュアル」の軸が見えてきます。初心者にも認知があることを前提とすると、この2軸のブランドマップでは一部類似と見えるブランドもありますが、ユーザーと交わすコミュニケーションのあり方や、ユーザーのメンバーシップの方法、アウトドア市場の振興への姿勢などを合わせ考えれば、ブランドとしてのスノーピークは独自の立ち位置を獲得していると言えるでしょう。

【 QB HOUSE 】

https://www.qbhouse.co.jp

QBハウスのブランドポジショニング

新しい市場を創出しながら、後発ブランドにも負けない仕組みづくり

QB HOUSEはキュービーネット社が手掛ける、いわゆる「10分カット/1,000円カット」と言われる低価格カット専門店の先駆者ともいうべきブランドです(2021年現在の料金は1,200円)。2021年現在では国内で560以上もの店舗を展開し、海外でも同等のビジネスを展開しています。QB HOUSEの特色は、何と言っても一般的な理髪店で行われているカット以外のサービスを文字通り“カット”し、顧客の手間やを省き、顧客の切りたい時に、確かな品質でサービスを提供することに専念し、独自の立ち位置を獲得したところにあります。カットの設備さえあればよいため、家賃の低い狭小なスペースに積極的に出店できるところも強みです。追随した競合他社に対しても、スタイリストを自社育成するなど優位性を保ち続けています。このことは特に、節約思考の強い多くの男性会社員層に支持され、昼休みや仕事帰りに髪を切るという新しい行動を創出することになりました。生活者の行動心理を上手に拾うことで新しい市場を創造し、その一番手となるという、ブランドポジショニングの参考にもなる良い一例と言えます。 

【 資生堂|シーブリーズ 】

https://www.seabreezeweb.com

シーブリーズのブランドポジショニング

的確なブランドポジショニングの開発が大きな成功につながる

シーブリーズはデオドラントローションなどで知られる資生堂社のボディケア商品です。2006年ごろまでは、海水浴やサーフィンなどでの日焼け後のスキンローションとして、20代〜30代の男性をメインとした市場の獲得に乗り出していました。しかしその後の海へ行く若者の減少や美白ブームなどの到来により、その支持と市場の占有を失っていきます。そこで2007年ごろからブランドポジショニングを一新し、日常シーンのどこでも(学校でも街でも)使えるデオドラントローションとして、10代(女子高生)をメインユーザーに持つブランドの立ち位置を獲得するという大きな転換を図りました。この勇気のある目論見は大成功し、低迷時の約8倍の売上を達成することにもなったそうです。このブランドポジショニングは2021年においても引き継がれており、シーブリーズは現況を客観的に分析し、未来ポジショニングへと一気に移動することで活性化に成功した好例といえるでしょう。。 

■ まとめ

ブランディングにおけるポジショニングの重要性と効果的な作成の方法について、事例を交えながら考察してみました。広告やセールスプロモーションが「買ってもらう」プッシュ型のアプローチであるとするなら、ブランディングは「買いに来てもらう」プル型のアプローチであるとよく言われます。ブランドポジショニングを開発することは、その最たる例なのかも知れません。自社ブランドの現在を知り、将来をはかる。そして細やかなコミュニケーションによって顧客からの信頼を獲得していくことが、強いブランドづくりには欠かせないように思えてきます。

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