
[ ブランド戦略 ]
【必見】リブランディングのタイミング逃してませんか?
企業活動を続けていると、いつしかブランドの鮮度が落ち、市場や顧客の変化に対応できなくなることがあります。そのまま放置してしまうと、徐々に存在感を失い、売上減少や顧客離れを引き起こしかねません。そんな状況を打破するカギが「リブランディング」です。リブランディングは、単なるデザイン変更ではなく、企業の価値やポジショニングを見直し、再び市場に強く訴求するための大きなチャンスです。しかし、適切なタイミングを逃すと、手遅れになるリスクもあります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、リブランディングの最適なタイミングと成功させるためのポイントを実例を交えてついて詳しく解説します。
■ リブランディングが必要となる3つのタイミング

売上や認知度が伸び悩んでいるとき
長年の営業活動や広告展開にも関わらず、売上が停滞し、認知度が思うように伸びない。そんなときこそ、リブランディングを検討すべきタイミングです。顧客や市場のニーズが変わったにもかかわらず、ブランドが昔のままであれば、メッセージや価値が届きづらくなっている可能性があります。市場調査を行い、現在のブランドが抱えるギャップや課題を明確にすることで、リブランディングによる成長戦略を描くことができるでしょう。停滞は、変化のチャンスでもあるのです。
事業内容やターゲットが変化したとき
企業は成長とともに事業内容やターゲットが変わるものです。最初は特定の商品やサービスだけを扱っていた企業が、次第に新しい市場や業界へと進出することも少なくありません。しかし、ブランドが古いイメージのままだと、新しい顧客に響かないことがあります。たとえば、BtoBからBtoCへ転換する場合や、地域密着から全国・海外展開へ広げる場合は、ブランドも進化させる必要があります。新しいターゲットに合ったメッセージやデザインに見直すことで、事業成長を加速させることができます。
競合との差別化が難しくなってきたとき
市場に同業他社が増え、似たような商品・サービスが溢れている状況では、ブランドの「違い」を明確に打ち出すことが重要です。競合との差別化が難しくなってきたと感じたら、リブランディングを通じて、企業独自の価値や魅力を再定義しましょう。例えば、ストーリー性を強化したり、ビジュアルデザインを一新することで、他社にはない個性をアピールできます。価格や機能だけでなく、ブランドそのものが選ばれる理由になるように整えることが、次の成長ステージへの鍵となります。
■ 成功するリブランディングの進め方

現状分析と市場調査の重要性
リブランディングを成功させるためには、まず現状を正しく把握することが欠かせません。自社ブランドの強み・弱み、顧客の評価、競合状況などをしっかり分析しましょう。また、既存顧客だけでなく、潜在顧客や新しい市場のニーズも調査し、どんなブランドが求められているのかを見極めることが重要です。感覚や思い込みで進めるのではなく、データに基づいた戦略を立てることで、確実性の高いリブランディングが実現できます。
社内外の意識統一と共感形成
リブランディングは、経営陣だけでなく、全社員が一体となって取り組むべきプロジェクトです。現場が新しいブランドを理解し、共感し、行動に移せなければ、顧客への浸透は難しくなります。まずは社内向けにビジョンやブランドストーリーをしっかり伝え、共通認識を持つことが大切です。そのうえで、顧客やパートナーに対しても、変更の意図や価値をわかりやすく発信し、ファンを巻き込んだリブランディングを目指しましょう。
段階的な発信でファンを巻き込む戦略
リブランディングは、一気に変えるよりも、段階的に情報発信しながらファンや顧客を巻き込んでいく方が効果的です。新しいロゴやメッセージ、ストーリーを小出しに発表し、SNSやイベントで反応を見ながら浸透を図りましょう。顧客の声を取り入れたり、参加型のキャンペーンを実施することで、ブランドへの愛着を育てることができます。変化を「押し付ける」のではなく、「一緒に作る」姿勢が、ファンづくりのポイントです。
■ リブランディングのメリットとリスク

ブランド力を高め新規顧客を獲得するメリット
リブランディングによって、企業イメージを刷新し、今までリーチできていなかった新しい顧客層へアプローチすることが可能になります。時代やトレンドに合ったデザインやメッセージを発信することで、企業の存在感を再び高めることができます。特に、若年層や新市場への展開を考えている企業にとって、リブランディングは大きな武器になります。新しいブランドが話題性を生み、メディアやSNSで拡散されれば、広告以上の効果を生むこともあります。イメージ刷新は成長の起爆剤になり得るのです。
既存顧客を失うリスクとその対策
一方で、リブランディングには既存顧客が離れてしまうリスクも伴います。特に長年親しまれてきたブランドを大きく変える場合、従来のファンから「変わりすぎて違和感がある」「昔の方が良かった」と感じられることがあります。これを防ぐためには、変更理由や企業として大切にしている価値は変わらないことを、しっかりと説明・共有するコミュニケーションが不可欠です。顧客を置き去りにせず、リブランディングのプロセスに巻き込むことで、信頼を守りながら変革を進めることができます。
■ 成功事例から学ぶリブランディングのポイント

【 Meta(Facebook2021年リブランディング) 】
[ リブランディングの背景 ]
Facebookは、SNS業界で世界最大級の地位を築いた一方、個人情報流出やフェイクニュース問題への批判が相次ぎ、ブランドイメージが大きく傷ついていました。その中で、同社はVR・AR・AIなどの最先端技術を活用した「メタバース事業」に本格参入する方針を決定。SNS企業という枠を超え、次世代のテクノロジープラットフォーム企業へ進化する決意を明確にするため、2021年に社名を「Meta」に変更し、リブランディングを実施しました。
[ リブランディングの施策 ]
2021年、社名を「Meta」に変更。無限大(∞)を象徴する新ロゴと、メタバース事業を前面に押し出すビジョンを発表。Facebook、Instagram、WhatsAppなど既存サービスはそのまま「Meta傘下ブランド」と位置づけることで、企業としての成長領域拡大を明確化。企業文化も「ソーシャルメディア企業」から「次世代インターネット企業」への転換を目指しました。
[ リブランディングの狙い ]
Facebookブランドに対するネガティブイメージをリセットし、メタバース、AI、VR、ARなど未来技術のリーダーとして再定義すること。株主や投資家への成長アピール、優秀な人材獲得、事業ポートフォリオの多角化を狙いました。
[ リブランディングの効果 ]
賛否はあったものの、メディア露出や話題性は圧倒的。メタバース事業への注目度が高まり、Meta Questシリーズ(VR)の販売も好調に推移。企業として「未来への投資をリードする姿勢」を世界中に強く印象づけることに成功しました。

【 Uber(2016年・2018年リブランディング) 】
[ リブランディングの背景 ]
Uberは「配車アプリ」のイメージが強い一方で、企業文化や法規制、ドライバーとのトラブルなどの課題が表面化し、信頼低下やブランドイメージの劣化が深刻化していました。さらに、Uber Eatsや物流事業など事業拡大が進む中で、ブランド認知が「移動サービス」に限定されていたことも課題でした。これらを受け、配車アプリだけでなく「モビリティプラットフォーム」としての新たな価値を明確化し、失われた信頼を取り戻すためのリブランディングが必要とされたのです。
[ リブランディングの施策 ]
2016年にテクノロジー感を強調したロゴへ刷新。しかし、「わかりにくい」と批判され、2018年にはシンプルな「Uber」文字ロゴへ再変更。アプリUI、広告、車両ステッカー、Webサイトなどすべてのビジュアルを一貫化し、使いやすさと信頼感を強化。黒と白を基調としたミニマルデザインを徹底し、どの国・都市でも同じブランド体験を提供する戦略を打ち出しました。
[ リブランディングの狙い ]
単なる配車アプリから、フードデリバリーや物流、都市モビリティ全般を担う「生活インフラブランド」への転換を狙い、ブランドの統一性と信頼性を高めることが目的でした。
[ リブランディングの効果 ]
リブランディングによってUber Eatsを含むサービス全体の認知向上に成功。モビリティだけでなく「Uber=生活を便利にするプラットフォーム」というイメージを定着させ、都市生活者にとって欠かせないブランドとしてグローバル展開をさらに加速させました。

【 Peugeot(2021年リブランディング) 】
[ リブランディングの背景 ]
プジョーは、長年「手頃な大衆車ブランド」として親しまれてきましたが、近年の自動車業界では電動化や高級志向が加速し、従来のイメージから脱却する必要性が高まっていました。特に欧州市場では、環境性能や先進技術への期待が高まる中、より洗練されたデザインやプレミアムなブランド体験を打ち出すことが求められていました。そのため2021年、ブランド価値向上と未来志向の戦略強化を目指し、歴史あるライオンエンブレムを刷新し、新たなブランドアイデンティティを掲げるリブランディングに踏み切りました。
[ リブランディングの施策 ]
2021年、ライオンの横顔をモチーフにした新エンブレムを導入。過去の伝統的な盾型エンブレムを現代的にアレンジし、ラグジュアリー感を強調。車両デザインも内外装ともに上質さを追求し、店舗デザインや販促物も高級感あるトーンに統一。ロゴ変更に伴い、Web・広告・ディーラー体験まで一貫したブランド刷新を実施。
[ リブランディングの狙い ]
電動化時代にふさわしい次世代自動車ブランドとして、環境性能・先進技術・高級感を両立したイメージを顧客に伝えることが目的でした。
[ リブランディングの効果 ]
ブランド評価が向上し、特にEVモデル「Peugeot e-208」などで若年層や環境意識の高い顧客層を獲得。従来の「手頃な欧州車」から「洗練された次世代ブランド」へのポジション確立に成功しました。

【 Pfizer(2021年リブランディング) 】
[ リブランディングの背景 ]
ファイザーは、アメリカに本社を置く世界的な製薬企業として、長年グローバルヘルスケアをリードしてきました。しかし、2020年のパンデミックをきっかけに状況が一変。世界初となる新型コロナワクチンの実用化を成功させ、医療業界だけでなく一般社会からも大きな注目を集める存在となりました。一方で、長年使われてきた「青いカプセル形状のロゴ」は、伝統的な製薬会社というイメージが強く、次世代のバイオテクノロジーリーダーとして進化するにはやや古く見えていました。また、科学技術への革新力や社会貢献活動を、より現代的に伝える必要性が高まっていたことが、リブランディングの背景にありました。
[ リブランディングの施策 ]
2021年、DNAの二重らせん構造をイメージした新ロゴを発表。「科学の力で未来を変える」というメッセージを前面に打ち出し、Webサイト・広告・パッケージデザインなども一新。サイエンス×人間中心のストーリーテリングを展開しました。
[ リブランディングの狙い ]
従来の「製薬メーカー」から「未来を切り拓く科学技術リーダー」へブランドポジションを再定義し、企業価値や採用力、グローバル認知を高めること。
[ リブランディングの効果 ]
ワクチン開発の実績と相まって、革新的なバイオ医療企業としてのブランド認知が向上。医療従事者・投資家・求職者からの支持も高まり、次世代医療リーダーとしての地位を確立しました。

【 Burberry(2018年・2023年リブランディング) 】
[ リブランディングの背景 ]
バーバリーは英国を代表する老舗ラグジュアリーブランドとして長年愛されてきましたが、2010年代後半に「伝統的すぎる」「保守的すぎる」と若年層やグローバル市場から距離を置かれつつあるという課題に直面していました。特に、高級ブランド市場では「新しい感性」「若々しさ」「デジタル対応力」が求められる中、ブランドの古いイメージやデジタル展開の弱さが競争力低下につながり始めていました。そこでバーバリーは、大胆なリブランディングに踏み切り、伝統×革新の両立を目指しました。
[ リブランディングの施策 ]
2018年、リカルド・ティッシを起用し、ロゴと「TBモノグラム」を発表。ストリートファッション要素を取り入れ、若者向けの広告・SNS展開を強化。2023年にはクラシックなエレガンス回帰として、新たなエレガントロゴを導入し、ラグジュアリー感とモダンさのバランスを追求。
[ リブランディングの狙い ]
若年層から富裕層まで、幅広いターゲットに支持される「伝統×革新」を両立するブランドへの進化を目指しました。
[ リブランディングの効果 ]
モノグラムコレクションや限定キャンペーンが話題を集め、売上やブランド好感度が向上。伝統とモダンを両立する「進化するラグジュアリーブランド」として、新たなファン層を獲得しました。
■ まとめ
リブランディングは、企業が次の成長ステージへ進むための重要なチャンスです。しかし、タイミングを逃すと、取り返しのつかない停滞を招く恐れもあります。現状に課題を感じた時こそ、ブランドを見直す絶好の機会です。成功するためには、データに基づく分析、社内外の共感づくり、段階的な発信が欠かせません。変化を恐れず、顧客とともに新しいブランドを育てる姿勢こそが、リブランディング成功のカギとなるのです。あなたの企業は、そのタイミングを逃していませんか?

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

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