
[ ブランド戦略 ]
周年ブランディングの重要性と成功事例
周年ブランディングは、企業やブランドにとって大切な節目を祝うだけでなく、これまでの歩みを振り返りながら次のステージへ進むきっかけにもなります。企業の歴史や成長を伝え、顧客や取引先へ感謝の気持ちを届けることで、ブランドへの信頼や共感をさらに深めることができます。また、このタイミングを活かして新商品やキャンペーンを展開すれば、企業の存在感を高め、新しいファンとのつながりを生み出すことも可能です。周年ブランディングを成功させるためには、一貫したメッセージ設計と、心に残るクリエイティブ表現、そして社内外に向けた積極的なコミュニケーションが欠かせません。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、周年ブランディングを成果につなげるための考え方や実践的なポイント、事例をもとに、その効果を高める方法を紹介します。
CONTENTS | 目次
■ 周年ブランディングとは?
周年ブランディングとは、企業やブランドが創業や設立といった節目を「記念行事」として終わらせるのではなく、ブランドの価値を見つめ直し、これからの信頼と共感を育てていくための戦略的な取り組みです。周年という特別なタイミングは、過去の歩みを振り返るだけでなく、社会や社員、顧客に対して「これからどうありたいか」を発信できる機会でもあります。単発のキャンペーンやイベントではなく、理念や歴史、ビジョンを改めて整理し、それをデザインやコミュニケーション、体験として表現していくことがポイントです。周年ブランディングを成功させるための鍵は、“感謝”と“未来志向”のバランスにあります。これまで支えてくれた人への敬意と、これから共に進む未来への意志を一貫したメッセージで伝えることで、組織のアイデンティティをより強くし、次の成長へつなげる長期的なブランディング施策になります。
■ 周年ブランディングの重要性

周年を祝うことは、企業やブランドにとって重要であり、その達成を記念することで、ブランドイメージの向上や顧客との結びつきの強化など、様々な利益が得られます。例えば、企業が創業50周年を迎えた場合、その50年間に蓄積された実績や歴史、ブランドの信頼性を再確認する機会となります。また、周年記念のイベントやキャンペーンを実施することで、新しい顧客の獲得や既存顧客のリテンションにつながり、ブランド価値の向上に繋がることが期待されます。
1. ブランドの原点を再確認できる
周年は、企業にとって「なぜこのブランドは存在しているのか」を改めて考える大切な機会です。創業当初の想い、顧客への姿勢、社会に果たす役割を見直すことで、ブランドの“根幹”を強くできます。日々の業務の中で見失いがちな「ブランドの本質」を言葉にして整理し直すことで、今後の方向性に一貫性が生まれます。周年ブランディングは、ブランドの過去と未来をつなぐ大切なプロセスと言えます。
● 創業理念や使命を見直し、ブランドの原点を明確にする
●「何を守り、何を変えていくか」の軸を再構築する
● 歴史を整理し、未来へ続くブランド哲学を言語化する
2. 社員の意識統一とエンゲージメントを高める
周年は、社員が自社の歴史や価値を改めて理解する良いきっかけになります。経営層だけでなく全社員がブランドの歩みを共有することで、組織全体の一体感が生まれます。自分たちの仕事が企業の歴史の延長線上にあることを感じられると、誇りや責任感が育ち、働く意欲や目的意識も高まります。周年ブランディングは、社内文化を再構築するための社内ブランディングでもあります。
● 社員がブランドの理念や歴史を自分ごととして理解する
● 一体感と誇りを育み、企業文化を再形成する
● 経営理念と日々の業務を結びつけるきっかけにする
3. 顧客や社会との関係を再構築する機会になる
周年は、企業と顧客・社会との関係を見直し、つながりを深める大切なチャンスです。これまで支えてくれた顧客やパートナーへの感謝を伝えるとともに、新しい層へブランドの想いを届けるきっかけにもなります。過去の成果を伝えるだけでなく、「これからどう進んでいくのか」を示すことで、共感と信頼を育むことができます。周年を通して、“つながりの再定義”を行うことが大切です。
● 顧客や社会への感謝を形にして伝える
● 既存顧客との絆を深め、新しいファン層を広げる
● 「これまでの歩み」と「これからの約束」をバランスよく発信する
4. 社会的信頼とブランド価値を高める
100年続く企業が少なくなっている今、周年を迎えること自体が社会的な信頼の証です。その節目を通して、企業の誠実さや持続的な姿勢を発信することで、ブランドの信用力を高めることができます。周年ブランディングは単なるキャンペーンではなく、“存在への信頼”を社会に示す場でもあります。積み重ねてきた年月を「価値」として可視化することで、ブランドの格が自然と上がります。
● 長年の実績と誠実な姿勢を社会に伝える
● “続くブランド”としての信頼と安心感を育む
● 歴史をブランドの信用資産として再評価する
5. 未来へのビジョンを明確に示せる
周年は「これまで」を振り返るだけでなく、「これから」を語る絶好の機会でもあります。次の10年、50年をどう歩むのかを、社会や社員に向けて発信することが重要です。未来へのビジョンを打ち出すことで、ブランドの方向性が共有され、共感と期待を生み出します。周年を“未来への宣言”として位置づけることで、ブランドは新たな信頼とエネルギーを得ることができます。
● 節目を“未来への出発点”として活かす
● 社員・顧客・社会に向けて次世代ビジョンを示す
●「過去の感謝」と「未来への約束」を一貫したメッセージで伝える
6. ブランドストーリーの深化と発信力の強化
周年は、企業の歴史を「ストーリー」として再構築する良い機会です。ブランドの歩みを物語として整理し、社会に発信することで、感情的な共感を生み出します。ストーリーは、数字や実績だけでは伝えられない“人や想い”を可視化し、ブランドの温度や人間らしさを伝える力になります。周年ブランディングは、企業の過去を「語る力」に変える大切なプロセスなのです。
● 歴史や理念を“ストーリー化”して共感を生む発信へつなげる
● 情緒的な価値を通じてブランドの温度を伝える
● ストーリーをブランドの“記憶資産”として育てていく
➤ 詳細記事:ブランドストーリーとは?重要性や作成方法と成功事例
■ 周年ブランディング成功への3つのポイント

1. 独自性とエンゲージメントの追求
周年ブランディングを成功させるためには、他社と差別化された「独自の意味づけ」と「共感を生む体験設計」が欠かせません。単なる“◯周年キャンペーン”ではなく、ブランドの個性や考え方を体現する表現が大切です。そのうえで、社員や顧客を巻き込む仕掛けをつくり、「自分たちもその歴史の一部だ」と感じられるようにすることが重要です。周年は祝ってもらうものではなく、“一緒に創るもの”。体験を通してブランドと人との関係を深めていくことが、本当のエンゲージメントにつながります。
● ブランドの歴史や理念から独自のテーマを導き出す
● 社員・顧客を巻き込む「参加型」の体験を設計する
● 周年を“共創の場”として関係性を見直す
2. ブランドストーリーテリングの重視
周年は、ブランドの歩みを“物語”として社会に伝える絶好の機会です。過去の出来事を年表のように並べるだけでなく、「どんな想いで乗り越え、何を大切にしてきたのか」を語ることで、人々の共感や信頼を得ることができます。ストーリーテリングは、企業が積み重ねてきた“感情の資産”を形にするプロセスでもあります。映像、冊子、ウェブなどさまざまなメディアを通じて、「ブランドの人となり」を感じてもらえる発信を行うことが、周年ブランディングをより深いコミュニケーションへと導きます。
● 年表ではなく“想いの物語”としてブランドの歩みを伝える
● 創業者や社員、顧客の声をストーリーの一部にする
● メディアを横断して「感情で伝わる」発信を設計する
➤ 詳細記事:売れるブランドに共通する“ブランドストーリー”の作り方
3. ファンや顧客への感謝の表現
周年は、支えてくれた人々への「感謝を形にして伝える場」です。感謝を“言葉”だけでなく“体験”として届けることで、ファンや顧客とのつながりをより深めることができます。たとえば、限定イベントや記念プロダクト、メッセージムービーなど、心に残る形で表現することが大切です。また、顧客だけでなく社員や地域社会にも感謝を広げることで、ブランドが社会とともに歩んでいる姿をより自然に示すことができます。感謝の表現は、ブランドの“あたたかさ”を伝える最も効果的な手段です。
● 感謝を「体験」として届ける(イベント・ギフト・発信)
● ファン・社員・地域など、多層的に感謝を伝える
● 「ありがとう」をブランドのメッセージとして明確に伝える
■ 周年ブランディングのコンセプト開発

周年にふさわしいコンセプトを設定することで、企業やブランドの印象を高めたり、認知度を広げたりすることにつながります。コンセプトを考える際は、周年の目的や意義、企業やブランドの歴史や伝統、そしてターゲット層を意識しながら、独自性のあるテーマをつくり上げることが大切です。周年を祝ううえで、特別な意味を持つコンセプトを設定することは、ブランドの存在価値を再確認するきっかけにもなります。
1. 企業やブランドの歴史や伝統、理念などを反映させる
周年ブランディングのコンセプトを考えるうえで、企業の歴史や伝統、理念を反映することはとても重要です。長年にわたって築いてきた価値観や創業時の想いをコンセプトに込めることで、ブランドの一貫したアイデンティティが際立ち、顧客に信頼感や共感を与えられます。ブランドがどんな道を歩み、どのように進化してきたのか、変わらない信念は何かを伝えることで、「ブランドらしさ」がより明確になります。こうした歴史や伝統の表現は、周年ブランディングに深みを与え、他ブランドとの差別化にもつながります。
2. ターゲット層に合わせたコンセプトを設定する
周年ブランディングでは、ターゲット層の価値観や関心を反映したコンセプトを設定することが大切です。顧客の年齢層やライフスタイル、時代の気分に合ったテーマを盛り込むことで、ブランドがより身近に感じられ、共感を得やすくなります。ターゲットに寄り添った姿勢は、「自分たちを理解してくれているブランド」という印象を与え、愛着を深めるきっかけにもなります。こうした視点で設計された周年コンセプトは、プロモーション効果を高めるだけでなく、ブランドの魅力を自然に引き立てます。
3. コンセプトに合わせたイベントやキャンペーンを企画する
周年ブランディングでは、設定したコンセプトを軸にしたイベントやキャンペーンの企画が重要です。周年の意義を実感してもらうために、体験型イベントや限定商品、記念キャンペーンなどを通して、ブランドの魅力を直接感じてもらう工夫が効果的です。また、SNSや広告などを活用して周年の取り組みを発信することで、ブランドの存在をより多くの人に届けることができます。コンセプトに沿った企画は、記憶に残りやすく、ブランドへの共感や信頼を自然に育てていく要素になります。
➤ 詳細記事:ブランディング成功のためのキャンペーンと成功事例
■ 周年ブランディングの成功事例

【 ルイ・ヴィトン創立160周年記念 】
フランスを代表する高級ブランド、ルイ・ヴィトンは創立160周年を迎えた際、特別な記念イベントやキャンペーンを実施しました。この節目に合わせ、創業者ルイ・ヴィトンが手掛けた「トランク」を現代的に再解釈したコレクションを発表。モノグラム・キャンバスをベースにしたバッグや小物が新たなデザインで登場しました。また、オリジナルのトランクを復刻・展示する特別展を開催するなど、ブランドの歴史と伝統に敬意を表しました。さらに、創業当時から続くモノグラム・キャンバスのデザインを復刻し、限定商品として販売。ルイ・ヴィトンは、自らのルーツを大切にしながら、革新性をもって160周年を祝いました。
[ 周年ブランディングの成功ポイント ]
●「アイコニック・モノグラム」プロジェクト
160周年の節目に発表された「アイコニック・モノグラム」プロジェクトでは、ブランドの象徴であるモノグラムパターンを世界的デザイナーやアーティストと共に再解釈。
● 著名デザイナー・アーティストとのコラボレーション
カール・ラガーフェルド、クリスチャン・ルブタン、シンディ・シャーマン、川久保玲など、名だたるクリエイターが参加。それぞれの個性を活かしながら、モノグラムをテーマにデザインしました。
● 限定アイテムの発売
コラボレーションによる限定アイテムが発表され、各アーティストの独自のスタイルとルイ・ヴィトンの伝統が融合。ファッション業界だけでなく、世界中のファンから大きな注目を集めました。
● ブランドの伝統と革新の融合
160周年という節目を、ブランドの歴史と新たな挑戦を象徴するプロジェクトとして位置づけ、ルイ・ヴィトンが時代とともに進化し続ける姿勢を明確に打ち出しました。
●「ルイ・ヴィトン160年の歴史」展示イベント
記念イベントでは、ブランドの軌跡や職人技を紹介する展示が世界各地で開催され、ルイ・ヴィトンの歩みとものづくりの精神を多くの人に伝えました。
● グローバルなPRキャンペーン
SNSや広告を活用したグローバルキャンペーンを展開。モノグラムと新しいデザインを軸に、ブランドのメッセージを世界へと発信しました。
● 記念書籍の出版
160周年を記念した書籍では、ブランドの歴史やプロジェクトの裏側を紹介。ルイ・ヴィトンの伝統と革新の歩みが記録され、ファンにとって貴重な資料となりました。
[ 出典 ] Pixelisteより
[ 出典 ] RETOY’Sより

【 ロレックス創立100周年 】
ロレックスは1905年にスイスで創業し、2005年に創立100周年を迎えました。この節目の年には、特別な記念モデルを発表し、世界中のロレックスファンから注目を集めました。記念モデルには「GMT-Master II」「Submariner」「Day-Date」「Datejust」「Explorer」などの人気シリーズが含まれ、それぞれに特別なカラーリングやデザインが採用されました。限定生産や特別仕様といった展開により、ファンの熱量をさらに高めることに成功しました。また、ロレックスは自社の歴史や製品開発を紹介する展示会を開催し、社史や記念誌も出版。さらに、社員や関係者に向けた記念品も用意するなど、企業としての一体感を育む取り組みも行いました。100周年という節目を通じて、ロレックスはこれまでの歩みを振り返りつつ、次の時代に向けた新たなスタートを切りました。
[ 周年ブランディングの成功ポイント ]
● 創立100周年を記念した特別モデルの発表
ロレックスを象徴する「オイスター」や「デイトジャスト」、「サブマリーナ」などの人気モデルをベースにした限定デザインを発表。高い完成度と特別感がファンやコレクターの関心を集めました。
● ブランドの歴史と進化を振り返る特別イベント
世界各国で100周年記念の展示会を開催。ロレックスの技術革新や代表的モデルの変遷を紹介し、ブランドが積み上げてきた価値と進化を改めて発信しました。
● ロレックスのイノベーションを祝うメディアキャンペーン
オイスターケースやパーペチュアルムーブメントなど、ロレックスを象徴する技術をテーマにしたキャンペーンを展開。ブランドが築いてきた精度と信頼を広く伝えました。
●「エクスプローラー」としてのイメージ強化
探検家や冒険家に愛されてきた背景をもとに、「エクスプローラー」などのモデルを通して、タフで信頼できるブランドイメージを再確認。挑戦と探求の精神を強調しました。
● 限定記念書籍の発行
創立100周年を記念して、創業者ハンス・ウィルスドルフの理念やブランドの歴史、名作モデルの変遷をまとめた記念書籍を出版。ロレックスの歩みを体系的に振り返る内容となりました。
● CSR活動の強化と発表
100周年を機に、環境保護や探検家支援などの社会貢献活動を拡大。海洋保護団体や冒険プロジェクトとの協働を通じて、社会的責任を果たすブランドとしての姿勢を明確にしました。
● 時計製造技術のイノベーション強調
創業以来続く精密さと耐久性へのこだわりを軸に、100年の技術革新の歩みを紹介。職人技と最先端技術の融合によって築かれた品質の高さを改めて印象づけました。
[ 出典 ] ロレックス社100周年記念モデルより

【 マクドナルド日本での創業50周年 】
マクドナルド日本の創業50周年は、1971年に日本で最初の店舗がオープンしてから50年の節目を迎えたことを記念して行われたイベントです。この特別な年に、マクドナルド日本はさまざまなキャンペーンや限定商品を展開し、多くのファンやお客様に感謝の気持ちを届けました。メイン企画として実施された「50年目のトリビュート」キャンペーンでは、定番メニュー「ビッグマック」をアレンジした特別メニューが登場。さらに、マスコットキャラクター「ロナルド・マクドナルド」のフィギュアや記念グッズなども販売されました。また、日本全国の店舗で「マクドナルド・フェスティバル」を開催し、来店者が楽しめるアクティビティやイベントを展開。多くの人がブランドの歴史を楽しみながら体感できる機会となりました。
[ 周年ブランディングの成功ポイント ]
● 限定メニューの登場
50周年を記念して、過去に人気だったメニューの復刻版や新しい限定メニューを展開。懐かしさと新しさを両立した内容で話題を呼び、幅広い層にアプローチしました。
● 特別キャンペーンの実施
「50年分の無料クーポン」などの大型プレゼント企画を実施し、SNSを活用したプロモーションで大きな話題に。デジタルとリアルを組み合わせた発信で、多くの人の参加を促しました。
● 50周年記念グッズの販売
ロゴや人気メニューをモチーフにした記念グッズを販売。バッグやフィギュア、ステッカーなど、コレクション性の高いアイテムが登場し、ファンにとって特別な記念となりました。
● 感謝の意を込めた広告キャンペーン
50年にわたり支えてくれたお客様への感謝を込め、「いつもありがとう」というメッセージを中心にした広告を展開。テレビCMや屋外広告など、全国的なキャンペーンで感謝の思いを伝えました。
● 店舗での記念イベント
全国の店舗で記念イベントを開催。家族連れや常連客に向けた特別な体験を提供し、店内装飾やスタッフの衣装も50周年仕様に変更。店舗全体でお祝いムードを演出しました。
● 社会貢献活動の強化
50周年をきっかけに、地域社会への貢献をさらに推進。フードバンク支援や子ども向けの食育活動などを通じて、地域に根ざしたブランドとしての信頼を深めました。
● 日本での歴史を振り返るコンテンツの配信
マクドナルド日本の50年の歴史を紹介する動画や記事をオンラインで発信。創業から現在までの成長の軌跡を振り返り、ブランドの価値と理念を改めて伝えました。
● 記念メニューの価格割引
人気メニューを特別価格で提供するキャンペーンを実施。感謝の気持ちを込めた手頃な価格設定で、多くのお客様に楽しんでもらう取り組みとなりました。
[ 出典 ] 日本マクドナルド50年の歴史より

【 資生堂150周年 】
資生堂は創業150周年を迎えるにあたり、新たなブランドステートメント「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」を発表しました。これは、「美容の力でより良い世界をつくる」という資生堂のビジョンを表現したものです。併せて、新しいブランドマークとブランドカラーを導入し、世界各国で展開しました。この新しいマークは「人々の多様性を受け入れ、美しさを生み出す」という理念をもとにデザインされ、花をモチーフにした従来のマークから刷新。カラーは、透明感を象徴するシルバーと、感性を表すブルーを組み合わせ、ブランドの新しい姿勢を象徴しています。150周年という節目に、資生堂は改めて自らの使命を世界に発信し、未来への意志を示しました。
[ 周年ブランディングの成功ポイント ]
● 150周年記念ロゴとスローガンの発表
「Beauty Innovations for a Better World(美しさの力でより良い世界へ)」というスローガンと特別な記念ロゴを発表し、資生堂の使命とこれからのビジョンを分かりやすく伝えました。
● 限定商品や復刻アイテムの発売
歴代の名品や人気スキンケア・メイクアイテムを復刻した限定商品を発売。150周年を記念した特別パッケージで、ブランドの伝統と革新を感じられるラインナップを展開しました。
● グローバルPRキャンペーンの実施
オンライン・オフラインの両軸で世界規模のPRキャンペーンを展開。SNSを通じて、150年の歩みやブランドストーリー、記念ムービーを配信し、幅広い層に資生堂の歴史と価値を伝えました。
● アートとテクノロジーの融合プロジェクト
「美と革新」をテーマに、アートインスタレーションやデジタル展示を実施。最先端のテクノロジーを取り入れながら、美の新しい形を提案し、資生堂のクリエイティブ精神を表現しました。
● 記念イベントとポップアップストアの開催
150年の歴史を振り返る展示や、ブランド体験ができるポップアップストアを東京や海外で開催。実際に商品や世界観に触れられる体験を通じて、顧客とのつながりを強化しました。
● 150周年記念の特別ウェブサイトの開設
ブランドの歩みや名品、創業者の想いなどをまとめた特設サイトを公開。資生堂の150年にわたる挑戦と進化を一つのストーリーとして発信しました。
● 記念ドキュメンタリーの制作と公開
資生堂の歴史や哲学、未来へのビジョンを紹介するドキュメンタリーを制作。映像を通じてブランドの価値を視覚的に伝え、ファンや社員に深い共感を生みました。
● 社員やパートナーへの感謝イベント
長年ブランドを支えてきた社員やパートナーへの感謝を込めたイベントを開催。関係者が資生堂の一員であることへの誇りを共有し、次の時代へ向けた結束を強めました。
[ 出典 ] 資生堂150周年スペシャル企業サイトより
[ 出典 ] 未来へのメッセージ「美ししあわせは、人のしあわせを願うこと」より

【 ディズニーランド60周年記念 】
ディズニーランドの60周年記念イベントは、2015年に開催されました。テーマは「ダイヤモンド・セレブレーション」。パークの象徴である“眠れる森の美女の城”を中心に、華やかな装飾とさまざまなエンターテインメントが展開されました。たとえば、パレード「ディズニー・オン・パレード60」では、キャラクターたちが大きなダイヤモンドを掲げて行進し、ディズニーランドの歴史を振り返る演出が行われました。ショー「ディズニー・フォーエバー」では、映像や花火、音楽を組み合わせて城を美しく照らし出し、来場者に感動的な体験を届けました。また、限定フードやグッズの販売も行われ、多くのファンが記念イベントに熱狂しました。60周年を祝うこの取り組みを通じて、ディズニーランドはその世界観をさらに進化させ、世界中から愛されるテーマパークとしての存在を改めて確立しました。
[ 周年ブランディングの成功ポイント ]
●「ダイヤモンド・セレブレーション」としてのテーマ設定
「ダイヤモンド」をテーマに、パーク全体を特別な装飾で彩り、祝祭ムードを演出。特に眠れる森の美女の城やメインストリートは、ダイヤモンドをイメージしたデコレーションで華やかに輝きました。
● 新しいナイトショー「ペイント・ザ・ナイト」の実施
LEDライトを使った夜のパレード「ペイント・ザ・ナイト」が登場。光と音楽を融合させた演出で、キャラクターやフロートが鮮やかに輝き、従来のパレードとは一線を画す体験を提供しました。
● 花火ショー「ディズニーランド・フォーエバー」の導入
花火とプロジェクションマッピングを組み合わせ、城や建物を舞台にした立体的な演出を実現。60周年のために制作された特別なショーとして、多くの来場者の記憶に残りました。
● アトラクションのアップグレード
人気アトラクションを中心にリニューアルを実施。新技術を導入した「マッターホルン・ボブスレー」や「スペース・マウンテン」が新たな体験を生み出し、来園者の満足度を高めました。
● 特別限定グッズの販売
60周年を記念したダイヤモンドモチーフの限定グッズを販売。ミッキーイヤーハットやピンバッジなどの人気アイテムがファンの間で話題となり、記念アイテムとして高い人気を集めました。
● 特別なフォトスポットの設置
パーク内の各所に60周年のロゴやダイヤモンドをモチーフにしたフォトスポットを設置。来場者が記念撮影を楽しめるよう工夫され、SNSでの拡散も促進しました。
● 全体的なパーク装飾とスタッフの衣装変更
パーク全体をテーマに合わせて装飾し、キャストも60周年仕様の衣装で来場者を迎えました。細部まで統一された演出が特別な雰囲気を作り出しました。
● SNSやメディアでの大規模なプロモーション
SNSやテレビCM、特別番組を通じて世界的に発信。ディズニーらしい夢と感動の世界観を多面的に伝え、60周年の祝祭感を世界中に広げました。
[ 出典 ] カリフォルニア・ディズニーランド60周年公式発表より
[ 出典 ] Disney Parks Blogより
■ 周年ブランディングのイベントを開催する

【 イベントの目的を明確にする 】
周年イベントを企画する際は、まず目的をはっきりさせることが重要です。たとえば、新商品の発表、既存商品の販促、顧客との交流など、目的によって企画の方向性は変わります。目的が明確になることで、イベントの内容や進め方を具体的に設計でき、全体の成果を高めやすくなります。さらに、目的を共有することでチーム全体の意識が統一され、ブランディング効果もより大きくなります。
【 イベントの内容を工夫する 】
周年イベントは、商品やサービスの魅力を伝えるだけでなく、顧客と直接つながる貴重な機会でもあります。来場者が楽しめる体験や共感できる演出を取り入れることで、ブランドへの親近感を深めることができます。単に「見せる」だけでなく、「一緒に楽しむ」ことを意識することがポイントです。さらに、参加者がSNSなどで共有したくなる工夫を加えることで、イベントの拡散力やブランド認知にもつながります。
【 イベントの告知をしっかり行う 】
周年イベントを成功させるためには、事前の告知が欠かせません。広告やSNS、メール配信などを活用して、イベントの目的や内容をわかりやすく伝えることが大切です。できるだけ早い段階で情報を発信し、日時や申込方法などの詳細を案内することで、より多くの人に参加してもらいやすくなります。さらに、告知のデザインやトーンにも統一感を持たせることで、ブランドらしさを感じてもらう効果も高まります。
【 イベント後のフォローアップを行う 】
イベントが終わった後も、そのままにせずフォローアップを行うことが大切です。参加者からの感想や意見を集めて今後の改善に活かすほか、参加者に向けた特典やキャンペーンを展開することで、ブランドとの関係を継続的に築いていけます。イベントは一度きりのものではなく、その後のコミュニケーションにつなげることがポイントです。さらに、フォローアップを通じてより良い体験づくりへと発展させられます。

■ 周年ブランディングに関するよくある質問
周年ブランディングを検討する際によく寄せられる質問をまとめました。目的や効果、社内外への影響など、実施前に知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
【 よくある質問① 】
Q :周年ブランディングの目的は何ですか?
A :企業の歴史と成長を祝うだけでなく、信頼性やブランド価値の再確認、顧客や関係者への感謝を伝える絶好の機会です。
【 よくある質問② 】
Q :周年を効果的に活かす方法は?
A :一貫したメッセージと創造的なクリエイティブを通じてブランドストーリーを伝え、記念商品やキャンペーンで新規顧客の獲得やリテンションにもつなげることです。
【 よくある質問③ 】
Q :社内への効果はありますか?
A : 社員の誇りやエンゲージメント向上につながります。周年を通じて企業文化を再確認し、組織の一体感を強化できます。
【 よくある質問④ 】
Q :周年ブランディングがもたらす具体的な効果は?
A :ブランド認知や信頼性の向上、既存顧客との絆強化、新規顧客の獲得に効果があり、結果としてブランド価値を高めることにつながります。
【 よくある質問⑤ 】
Q :年度後にも効果を持続させるためには?
A :周年の盛り上がりを単発で終わらせず、その成果を継続的なブランド戦略や次の成長施策につなげることが重要です。

■ 周年ブランディングためのチェックリスト
周年ブランディングを成功させるためには、目的設定から実施後の活用まで一貫した準備が欠かせません。以下のチェックリストを活用し、戦略性と効果の高い周年企画を整えましょう。
【 周年企画の目的・戦略のチェック 】
⬜︎ 周年ブランディングの目的が明確になっているか?
⬜︎ 周年のテーマやコンセプトがブランド戦略と一貫しているか?
⬜︎ 顧客・社員・ステークホルダーへのメッセージが整理されているか?
【 社内体制・共有のチェック 】
⬜︎ 周年プロジェクトを推進するための専任チームや責任者が設定されているか?
⬜︎ 社員全員に周年の意義や目的が共有されているか?
⬜︎ 周年をきっかけに社内の一体感を高める施策を設計しているか?
【 ブランド資産・クリエイティブのチェック 】
⬜︎ 周年ロゴ、スローガン、ビジュアルなどがブランドイメージと統一されているか?
⬜︎ 記念商品の企画や周年キャンペーンがブランド価値を高める設計になっているか?
⬜︎ Web・SNS・広告など全チャネルでメッセージが統一されているか?
【 効果測定と次への活用のチェック 】
⬜︎ 周年施策の効果を測定するためのKPIを設定しているか?
⬜︎ 周年イベント後のブランド資産を次年度以降に活用する計画があるか?
⬜︎ 周年を単発ではなく、中長期のブランド戦略につなげる設計ができているか?

■ まとめ
周年ブランディングを成功させるには、「独自性の追求」「エンゲージメントの強化」「ブランドストーリーテリングの活用」、そして「ファンや顧客への感謝の表現」が欠かせません。独自性は他社との差別化を生み、顧客の関心を引きつけます。エンゲージメントは顧客との信頼関係を深め、ブランドへの愛着を育てます。ブランドストーリーテリングは、共感を呼ぶストーリーを通じて心に残る印象をつくり、ブランドの世界観を伝えます。そして周年という節目は、支えてくれた人々に感謝を伝える絶好の機会でもあります。特典や特別な体験、心のこもったメッセージを通じて感謝の気持ちを届けましょう。これらのポイントを意識して取り組むことで、ブランド価値を高めながら、顧客とのつながりを強くしていくことができます。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
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