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ブランドステートメントの目的と開発事例製薬会社】

[ ブランディングデザイン ]

今なぜ製薬会社にブランドステートメントが必要なのか

製薬会社のブランドステートメントは、企業の使命として「人々の健康と幸福に貢献する」というテーマが中心となります。例えば「革新的な医薬品を通じて、命を守り生活の質を向上させる」というステートメントは、企業の技術力や研究開発への取り組み、社会貢献を強調します。これにより、製薬会社は医療従事者や患者に信頼を提供し、製品の安全性や有効性を保証する姿勢を伝え、企業価値を高めることができます。


製薬会社におけるブランドステートメントとは?

製薬会社のブランドステートメントの目的

製薬会社におけるブランドステートメントとは、企業が社会や患者に対してどのような価値を提供し、どのような使命を果たすのかを明文化した言葉です。医薬品という「命に関わる製品」を扱う特性上、安全性、倫理性、科学的誠実性、患者中心主義などが中核要素となります。単なる広告的メッセージではなく、社員の行動指針としても機能し、企業文化の根幹を形成。市場では差別化や信頼構築の要となり、医療関係者・患者・社会との持続的な関係づくりに貢献します。

▶︎ 詳細記事:ブランドステートメント開発のメリットとは

■ 製薬会社ブランドステートメントの目的

製薬会社ブランドステートメントの目的

1. 信頼構築と企業価値の向上

製薬会社は「人の命」に関わる産業であり、社会からの信頼が事業の根幹を支えます。ブランドステートメントは、安全性・倫理性・科学的誠実性といった価値観を明文化することで、患者・医療関係者・規制当局・株主など多様なステークホルダーからの信頼獲得に貢献します。信頼されるブランドは、長期的な企業価値向上にも直結します。

2. 社員の意識統一と行動指針の明確化

製薬会社はグローバルかつ専門性の高い組織。ブランドステートメントがあることで、全社員が共通の価値観と使命感を持ち、一貫した行動を取るための指針となります。特に研究、開発、製造、営業、マーケティングと多岐にわたる部門間の意識統一が促進され、社内のエンゲージメントも向上します。

3. 市場での差別化とブランドポジション強化

医薬品は高品質・高規制市場で差別化が難しい領域です。ブランドステートメントは、企業がどう社会に貢献しているのか、どんな価値観で医療に取り組んでいるのかを発信する手段となり、価格や製品力以外の「企業姿勢」で差別化を図ることができます。これにより、医療従事者や患者、採用市場でのブランドポジション強化につながります。

■ 製薬会社ブランドステートメントの基本要素

製薬会社ブランドステートメントの基本要素

1. 患者中心主義(Patient Centricity)

製薬会社におけるブランドステートメントの核となるのが「患者中心主義」です。新薬の開発から提供、情報発信に至るすべてのプロセスにおいて、患者の生命と生活の質(QOL)向上を最優先に据えます。この姿勢を明確にすることで、医療従事者や社会からの信頼を高め、単なる利益追求企業ではなく「患者とともに歩む存在」としてブランド価値を強化します。ステートメントには「命に寄り添う」「ともに未来を創る」といった表現が多く見られます。

2. 科学的誠実性(Scientific Integrity)

科学的誠実性は、製薬会社が信頼を築くうえで不可欠な要素です。臨床試験や研究開発の各段階において、透明性を確保し、科学的根拠に基づいた正確な情報を発信する姿勢が求められます。虚偽や誇張を排除し、医療関係者や社会と真摯に向き合うことがブランドステートメントでも強調されます。「真実を語る」「科学に忠実である」といった理念は、企業の信用度向上に直結する重要なメッセージとなります。

3. 安全性と倫理性

「安全性と倫理性」は、製薬業界におけるブランドステートメントの不可欠な柱です。医薬品は人々の生命に直結するため、安全性を最優先に設計・製造・供給することが企業の責任です。また、倫理的な事業運営と透明な情報公開も求められます。ブランドステートメントには「安全の追求」「倫理的な企業文化の醸成」といった価値観が明確に打ち出され、企業活動全体に一貫性をもたらします。

4. イノベーションへの挑戦

イノベーションは製薬会社の成長と社会貢献の原動力です。ブランドステートメントにおいては、常に新たな治療法や技術を追求し、未充足の医療ニーズに応える姿勢が示されます。研究開発への継続的な投資やオープンイノベーションの推進など、挑戦的な姿勢がブランドの差別化になります。「未来の医療を創る」「革新を止めない」といったメッセージが、先進性と社会的価値を同時に強調する役割を果たします。

■ ブランドステートメントの成功事例

中外製薬グループ | 創造で、想像を超える。

中外製薬グループ | 創造で、想像を超える。

中外製薬グループのブランドステートメント「創造で、想像を超える。」は、革新的な医薬品と医療ソリューションを通じて、医療の枠を超えた価値創出を目指す姿勢を表現しています。科学的探究心と創造力を駆使し、従来の常識にとらわれず、未解決の医療課題に挑戦。患者中心主義のもと、より良い治療法の提供と社会全体への貢献を強調しています。未来志向の姿勢と挑戦する企業文化が、この言葉に凝縮されています。

[ 出典 ] 中外製薬・企業理念より

第一三共 | イノベーションに情熱を。ひとに思いやりを。

第一三共 | イノベーションに情熱を。ひとに思いやりを。

第一三共のブランドステートメント「イノベーションに情熱を。ひとに思いやりを。」は、科学技術の進歩と人間性の両立を企業活動の核に据える姿勢を表しています。革新的な医薬品の開発に情熱を注ぎつつ、常に患者や医療従事者への思いやりを忘れない姿勢が強調されています。科学的誠実性と患者中心主義を両輪とし、がん領域をはじめとした高い未充足医療ニーズに挑戦。技術力と倫理観の調和がこのメッセージに込められています。

[ 出典 ] 第一三共・企業理念より

アステラス製薬 | 明日は変えられる。

アステラス製薬 | 明日は変えられる。

アステラス製薬のブランドステートメント「明日は変えられる。」は、医療の未来に対する前向きな挑戦意欲と社会貢献への意志を端的に表現しています。科学的探究心と柔軟な発想をもとに、医療の未充足領域に果敢に挑み、患者の生活をより良いものへと変えていく姿勢を強調。変革を恐れず、革新的な治療法や価値ある医療ソリューションを提供することで、患者・医療関係者・社会との信頼を築き続けています。このシンプルな言葉に未来志向の企業文化が凝縮されています。

[ 出典 ] アステラス製薬・アステラスについてより

塩野義製薬 | SONG for you !

塩野義製薬 | SONG for you !

塩野義製薬のブランドスローガン「SONG for you !」は、「Shionogi Group for you」の頭文字を取りつつ、「歌=心に響く思い」を届けるという想いが込められています。医薬品やヘルスケアサービスを通じて、一人ひとりの生活の質向上に貢献する姿勢を表現。患者中心主義とともに、親しみやすさと温かみを感じさせるブランドイメージを築いています。科学的誠実性と人間的な思いやりが調和した企業文化が、この言葉に端的に示されています。

[ 出典 ] 塩野義製薬・会社情報より

エーザイ | ヒューマン・へルスケア

エーザイ | ヒューマン・へルスケア

エーザイのブランド哲学「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」は、「患者とその家族のQOL向上を最優先に考える」という理念を中心に据えたものです。医薬品の提供にとどまらず、患者一人ひとりの視点に立った価値創出を目指しています。社員全員が年間1%の時間を患者と直接触れ合う活動に費やす「hhc活動」も特徴的。科学的誠実性と患者中心主義が深く根付いた企業文化が、このシンプルかつ力強い言葉に凝縮されています。

[ 出典 ] エーザイ・hhcとはより

常盤薬品 | カラダ・ココロ"トキメキ"創造企業

常盤薬品 | カラダ・ココロ”トキメキ”創造企業

常盤薬品のブランドステートメント「カラダ・ココロ“トキメキ”創造企業」は、健康と美容の両面から人々の生活を豊かに彩る企業姿勢を表現しています。医薬品、健康食品、化粧品と多角的な事業を通じて、単なる不調の改善ではなく、心身ともに前向きで“ときめき”を感じられる価値提供を目指しています。生活者一人ひとりに寄り添い、日々の暮らしに彩りと活力を与える姿勢がこの言葉に凝縮。企業の柔軟性と親しみやすさも際立たせています。

[ 出典 ] 常盤薬品・企業情報より

ロート製薬 | NEVER SAY NEVER

ロート製薬 | NEVER SAY NEVER

ロート製薬のブランドスローガン「NEVER SAY NEVER」は、「できないと言わない」「限界を設けない」という挑戦の精神を端的に表現しています。医薬品やスキンケアなど幅広い領域で、既成概念にとらわれず新たな価値を創造し続ける姿勢がこの言葉に込められています。研究開発はもちろん、ヘルスケア全般において社会課題の解決に挑み、柔軟な発想と行動力で変化を恐れず前進。社員一人ひとりのマインドセットにも強く根付いたブランド哲学です。

[ 出典 ] ロート製薬・企業情報より

■ まとめ

製薬会社のブランドステートメントは、企業が社会に示す価値観や使命を明確に伝える重要なメッセージです。患者中心主義や科学的誠実性、安全性・倫理性、イノベーション志向など、業界特有の基本要素が強く求められます。各社はそれぞれの強みや理念を反映した言葉を掲げ、社会との信頼関係構築や社員の意識統一に活用しています。今後も規制や社会の期待が高まる中、ブランドステートメントは製薬企業が市場での差別化と持続的成長を実現するための不可欠な戦略ツールとなるでしょう。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

株式会社チビコ

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