[ ブランド戦略 ]
【必読】リブランディングが必要な5つの理由
リブランディングは、企業やブランドが成長し続けるために欠かせない戦略です。市場環境や消費者のニーズが変化する中、ブランドのメッセージやビジュアルが古く見えたり、競合他社との差別化が難しくなったりすることがあります。こうした状況に対応するためには、ブランドの再定義や刷新が必要です。リブランディングを通じて、企業は新たな価値を提供し、ブランドの魅力を再発見することができます。さらに、顧客との関係を強化し、競争の激しい市場での存在感を高める効果もあります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、リブランディングの必要性とその重要性について解説し、ブランドを進化させるための具体的な理由とメリットについて詳しく解説します。
■ リブランディングの必要性
リブランディングは、企業が市場の変化に対応し、ブランドを進化させるために不可欠なプロセスです。時代の流れや消費者の嗜好、競合の動向が変わる中、ブランドのメッセージやビジュアルが古く感じられるようになることがあります。こうした状況では、リブランディングによって企業の価値や目的を再定義し、現代のニーズに合った形でブランドを再構築することが必要です。
また、リブランディングは競争力の強化にもつながります。競合が増え、差別化が難しくなる中で、ブランドを刷新することで独自のポジションを確立し、消費者に新たな魅力を提供することができます。特に、新たな市場やターゲット層への進出を考える際には、リブランディングが不可欠です。既存顧客への再アプローチや、新しい顧客層の獲得を狙う際にも効果的な手段となります。さらに、リブランディングは企業内部でも、従業員のモチベーション向上や一体感の醸成を促進し、組織全体の成長を支える力となります。
■ リブランディングが必要な5つの理由
1. 競合の成長と環境の変化
競合企業が成長し、新しい技術や革新を取り入れると、市場全体の基準が上がり、企業はその波に乗る必要があります。自社のブランドが競合に対して見劣りするようになると、消費者からの評価が下がり、売上や市場シェアに悪影響が及びます。競合が新しいアプローチやメッセージを打ち出している場合、リブランディングを通じて、企業は競争力を再構築し、自社の強みを再アピールすることが必要です。市場環境が変われば、企業も変化に応じてブランドを進化させることが成功の鍵となります。
2. 新技術の登場による陳腐化
テクノロジーは常に進化しており、最新技術を採用しないブランドは、陳腐化のリスクがあります。新しい技術やプラットフォームが登場すると、消費者はより便利で効率的なサービスを求めるようになります。企業が古い技術に固執していると、競争力を失い、ブランドが時代遅れの印象を与える可能性があります。リブランディングは、新しい技術を取り入れ、ブランドを現代の消費者ニーズに合わせるための重要な手段です。これにより、ブランドはより革新的で最新のイメージを保つことができます。
3. 新ジャンルの登場による衰退
市場に新たなジャンルやカテゴリーが登場すると、従来の製品やサービスが衰退することがあります。顧客の興味が新しい選択肢に向かい、既存のブランドが埋もれてしまう可能性が高まります。こうした状況では、リブランディングを行い、ブランドが新しいジャンルに適応したり、新たな価値提案を行うことが求められます。新たなトレンドや市場のニーズをキャッチアップし、これに対応する形でブランドを進化させることで、衰退のリスクを回避し、新しいチャンスをつかむことが可能です。
4. 時代や価値観の変化
社会や消費者の価値観は時代とともに大きく変化します。たとえば、持続可能性や社会的責任が重要視される現在、これに対応できないブランドは、消費者からの支持を失う可能性があります。リブランディングは、ブランドが時代の価値観に応じて適応するための手段です。企業が従来のメッセージやビジョンを見直し、新たな価値観に沿ったメッセージや製品を提供することで、ブランドは現代の消費者に響くようになります。これにより、ブランドの信頼性や共感を高め、消費者との長期的な関係を築くことができます。
5. 社会構造の変化
グローバル化やデジタル化など、社会構造の変化はブランドに大きな影響を与えます。たとえば、都市化や人口動態の変化により、消費者の購買行動やライフスタイルが変わると、従来のアプローチでは効果が薄れる可能性があります。リブランディングは、こうした社会的な変化に適応し、ターゲット市場の変化に対応するための戦略です。新しい社会構造に合わせてブランドを再定義することで、企業は消費者の心を捉え、変化するニーズに応えることができるようになります。
■ リブランディングに必要な「Re」
【 Research|リサーチ 】
リブランディングの第一歩は、徹底したリサーチです。市場環境、競合状況、消費者のニーズや価値観を深く理解することが、成功するリブランディングの基盤となります。リサーチを通じて、自社ブランドがどのように認識されているか、何が機会であり課題であるかを明確にします。また、現在の市場でどのようなポジショニングが最も効果的かを見極め、新たなブランド戦略を立てるための情報を収集します。消費者や業界の変化を正確に把握し、その結果に基づいて適切な方向性を導き出すことがリブランディングの成功につながります。
【 Rebrand|リブランド 】
リブランドの段階では、リサーチに基づいた新しいブランドのアイデンティティやメッセージを定義し直します。これには、ロゴやスローガン、ビジュアルデザインだけでなく、ブランドのコアメッセージや価値提案も含まれます。ブランドがどのように進化し、どのような新しい価値を提供するのかを明確にし、競合他社と差別化を図ります。この過程では、一貫性を保ちながらも、消費者に新しい印象を与えることが重要です。リブランドは、ブランド全体を刷新し、ターゲット層に効果的に訴求できる戦略を構築するための中心的なプロセスです。
【 Release|リリース 】
リブランディングの最後のステップは、新しいブランドイメージを市場にリリースし、消費者に発信することです。これは単に新しいロゴや広告を展開するだけでなく、ブランドの新たなメッセージや価値を顧客に浸透させるための包括的なキャンペーンを実施することが求められます。SNS、ウェブサイト、広告、イベントなど、あらゆるチャネルを活用して一貫したブランド体験を提供し、リブランディングの成果を消費者に効果的に伝えます。リリース後のフィードバックを受け、必要に応じて戦略を微調整し、ブランドイメージの定着を図ることも重要です。
■ リブランディングの成功事例
虎屋グループのリブランディング
虎屋グループは、室町時代に創業した和菓子の老舗であり、日本文化を象徴するブランドとして長年にわたり愛され続けています。しかし、時代の変化とともに、消費者ニーズの多様化やライフスタイルの変化に対応するため、虎屋もリブランディングに取り組んできました。特に、伝統を守りつつ、現代的な感覚を取り入れた商品開発や店舗デザインの刷新に力を入れています。例えば、伝統的な羊羹に加え、若年層や海外の顧客にも訴求できるような新しいフレーバーやパッケージデザインを採用するなど、ブランドの進化を図っています。また、店舗デザインにもモダンな要素を取り入れ、従来の和菓子店のイメージを超えた体験型の空間づくりに注力しています。これにより、虎屋は新たな顧客層を獲得しつつ、長年のファンにも支持されるブランドとしての地位を維持しています。リブランディングを通じて、虎屋は伝統と革新のバランスを巧みに保ちながら、持続的な成長を続けています。
出典:「 虎屋グループ」「 SAN N・AD」 「丹青社」より
[ ロゴデザインの変更 ]
従来の「虎屋」のロゴを一新し、新しいシンボルマークを制定しました。このシンボルマークは、「和」をモチーフにしたものでありながら、新しさと洗練さも感じさせるデザインに仕上がっています。
[ ブランドアイデンティティの再構築 ]
まず、虎屋グループのブランドアイデンティティを再構築しました。これにより、従来のイメージを一新し、新しいコンセプトやストーリーを持ったブランドに生まれ変わりました。
[ 商品のリニューアル ]
新しいブランドコンセプトに合わせ、商品のラインナップやパッケージデザインも一新しました。特に、若い世代を中心とした新しい顧客層にアピールするために、新しいフレーバーやパッケージデザインを導入しました。
以上が、虎屋グループのリブランディングの取り組みです。成功の要因としては、従来のイメージを一新し、新しいコンセプトやストーリーを持ったブランドに生まれ変わったこと、若い世代を中心とした新しい顧客層にアピールするための取り組みを行ったこと、そして新しい商品やパッケージデザインを導入することで、顧客の関心を引き、ブランドの価値を高めたことが挙げられます。また、リブランディングの成功には、ブランドの長年の歴史と伝統を継承しつつ、新しいアイデアや取り組みを積極的に取り入れたことが大きな要因となったと言えます。一方で、リブランディングによって一部の顧客層から支持を失った可能性もあります。伝統的な和菓子を求める顧客層からは、新しい商品やパッケージデザインに違和感を覚える場合があるかもしれません。しかし、虎屋グループは、新しい顧客層の獲得に重点を置き、長期的な視野での事業拡大を目指した取り組みと言えます。
■ リブランディングは好調なうちに
リブランディングは、ブランドが不調になってから行うものと思われがちですが、望ましいタイミングは「好調なとき」です。売上が減少し何かテコ入れが必要だとなる前に少し先の未来を見据えて新しいものに挑戦するということもリブランディングの動機として重要なことです。リブランディングを必要になった原因から「ブランドの理想像」を導き出し、その実現のための戦略こそがリブランディングなのです。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
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