[ ブランド戦略 ]
地域ブランディングの強みを引き出す方法と成功事例
地域ブランディングは、その地域特有の魅力や資源を活かして地域の価値を高め、内外からの認知度を向上させる戦略です。成功する地域ブランディングは、地域が持つ歴史、文化、自然資源、人々の暮らしなど、固有の強みを見つけ出し、それを効果的に伝えることで成り立ちます。地域全体の活性化を目指し、観光、ビジネス、地域住民の誇りを育むことにもつながります。地域の強みを引き出すためには、住民や企業、行政が一体となり、ブランドメッセージやデザインを統一することが重要です。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、地域ブランディングの強みを最大限に引き出すための具体的な手法と、実際に成功した事例を紹介し、効果的な地域ブランディングの秘訣について詳しく解説します。
■ 地域ブランディングの重要性
地域ブランディングが重要なのは、地域の独自性を明確に打ち出すことで、他の地域との競争に勝つ力を持てるからです。特に、観光客だけでなく、住民や企業にとっても魅力的な地域であることが求められます。ブランド力の高い地域は、訪問者や移住者、そしてビジネスの誘致にも成功します当然、長期的な地域の発展を支えます。ブランディングを行うことで、地域の価値が再認識され、外部からの投資や注目を高めることができます。
■ 地域の強みを引き出す3つの方法
【 1.地域の独自性を発見する 】
地域の独自性を発見することは、ブランディング成功の鍵です。 他にない歴史的建造物、特産品、伝統文化のユニークさ、自然景観など、その地域の要素を深掘りすることで、観光客やたとえば、富士山や北海道の 広大な自然など、地域特有の要素がある場所はもちろん、注目した観光資源が少ない地域でも、知られざる魅力を掘り起こすことができる地元の職人や住民の愛情インタビュー、地域の隠れたストーリーを見つけることも効果的です。
【 2.ターゲットを絞る 】
地域ブランディングでは、ターゲットを明確にすることが重要です。すべての層に向けたプロモーションは効果が低く、特定の層に向けてメッセージが伝わりやすくなります。例えば、アクティブな若者をターゲットにする場合は、シニア自然やアウトドア体験を中心にブランディングを行い、層には文化的な歴史や落ち着いた観光資源をアピールするなど、目標に合わせた前向きが求められます。魅力を訴求することができ、結果として観光や地域活性化につながります。
【 3.ストーリーで魅力を伝える 】
ブランディングの成功には、感情に訴えかける「ストーリー」が重要です。地域の歴史や文化に基づく物語を織り交ぜることで、訪問者に深い印象を残すことができます。例えば、地元の特産品どのように作られているのか、その先にある人々の努力や伝統を紹介することで、単なる商品ではなく「体験」としての価値を提供できます。独自の地域のストーリーが、観光客にとっての記憶に残るエピソードとなり、リピーターやレビューによる集客につながることが多いです。
■ 成功事例に学ぶ秘訣
【 地域資源の活用法 】
地域ブランディングにおいて、地域資源の活用は最も基本的でありながら重要な戦略です。 自然景観、歴史的遺産、伝統工芸など、地域に根付いた資源を最大限に活かすことで、外部からの注目を集める地域資源の活用方法は、その価値を伝えるだけでなく、どう体験として提供するかがポイントです。例えば、伝統的な農作業を体験できるツアーや、地元の職人と一緒に工芸品を作るワークショップなど、観光客に参加型の体験を提供することで、地域の魅力がより深く浸透します。
【 住民との連携 】
地域ブランディングの成功には、地元住民の協力が必要です。住民が地域の魅力を捉え、自らその価値を発信することで、ブランディングの効果は倍増参加します。 、住民が一体となって観光客を迎える姿勢が、外部からの評価を高めます。地域内外の連携を強化するためには、住民への意識啓発や、地域の未来に向けたワークショップなどを実施し、住民が自らブランディングに貢献する意識を高めることが重要です。
【 デジタルの力を活かす 】
現代のブランディングには、デジタルツールの活用が不可欠です。SNS、ウェブサイト、オンライン広告などを活用することで、効率的に地域の魅力を発信できます。特にInstagramやYouTubeは、視覚的に地域の美しさや体験を伝えるのに最適なツールです。また、インフルエンサーを通じたプロモーションや口コミキャンペーンを展開することで、狭い層にリーチし、当面で注目を集めることが可能です。 、低コストで効果的なブランディング戦略を展開する手段として有用です。
■ 地域ブランド調査結果
図:地域ブランド調査2023
「地域ブランド調査」とは、株式会社ブランド総合研究所が毎年行っている調査で、1,047の地域(1,000市区町村およびび47都道府県)を調査対象とし、全国3万人が各地域のブランド力を評価する日本最大規模の消費者調査。
調査対象となる1047地域に対して、「認知(地域が知られているか)」「魅力(地域がどのように評価されているか)」という大きく分けて二つの指標、89項目を設定。「魅力度」では、その地域が魅力的かどうかを問い、さらにその魅力が何に起因するかを、居住意欲度、観光意欲度、食品想起率、また情報接触度といった様々な項目が設けられています。
■ 成功事例に学ぶ秘訣
[ 観光地の成功事例 ]
観光地の成功事例としては、京都や奈良が挙げられます。これらの都市は、歴史価値を最大限に活用し、観光地としての地位を確立しました。中心に据えた戦略観光は、非圏からの訪問者を惹きつけ続けています。 成功の秘訣は、観光資源を維持・保護しつつ、現代の観光ニーズに対応したサービスや体験を提供することですこれにより、古い歴史と新しい魅力が融合し、幅広い層からサポートされています。
【 京都市 】
京都市は、歴史的な寺社仏閣伝統文化を最大限に活かした戦略的観光で成功しています。 清水寺や金閣寺、伏見稲荷大社などの観光名所に加え、四季折々の美しい景観も魅力の一つさらに、京都の古くから続く伝統工芸や茶道、舞妓体験など、訪問者が地域文化を体験できるプログラムが人気です。文化遺産を守りつつ、現代の観光客のニーズに応えたサービスを提供しますそれで、国内から年間を通して多くの観光客を惹きつけています。 特に、インバウンド観光に強く、海外からの旅行者も多いのが特徴です。
[ 出典 ] 京都市公式サイトより
[ 出典 ] そうだ京都行こう。公式サイトよ
【 金沢市(石川県) 】
金沢市は、加賀百万石の歴史と伝統工芸を観光の柱にしたブランディングに成功しました。兼六園や金沢城といった歴史的な建造物に加え、金沢21世紀美術館などの現代アートも観光資源となり、伝統とモダンの融合が魅力です。また、金箔や九谷焼のような工芸品、加賀料理を楽しむことができる点も、観光客にとっての大きな魅力となっています。街全体が歩いて回れる規模であり、観光客はゆっくりと町の風情を楽しむことができるため、屋内からの人気が年々高いのが特徴です。
[ 出典 ] 金沢旅物語サイトより
[ 出典 ] 星野リゾート公式サイトより
[ 出典 ] 金沢21世紀美術館公式サイトより
【 奈良市 】
奈良市は、日本の古都として、世界遺産に登録されている東大寺や興福寺、春日大社といった歴史的な建造物を中心に、観光地としてのブランドを確立しています。鹿が自由に歩き回り、観光客との触れ合いが人気です。 奈良は、日本文化の源流に触れられる場所として評価され、特に歴史や文化に関心の高い屋内の観光客に支持されています。京都や大阪からのアクセス観光が良いため、関西エリアのお客様が気軽に訪れることができる点も強みです。
【 箱根町(神奈川県) 】
箱根町は、温泉地としての長い歴史を持ち、関東圏からの観光客を中心に高い人気を誇っています。豊かな自然に囲まれたロケーションに加え、富士山を望む温泉宿や美術館、遊覧船箱根登山鉄道やケーブルカーなどを利用した移動も観光の一部となっており、来場者に新たな魅力を発見できる地域です。芦ノ湖など、スポーツイベントや自然景観も観光客を引き寄せるの一つです。
【 白馬村(長野県) 】
また、白馬村は美しい山岳風景や温泉など、自然の魅力を最大限に活用した観光資源の充実も特徴です。 長野オリンピックの遺産として、施設や設備が整っており、屋内のスポーツイベントも頻繁にさらに、外国人観光客の施設やサービスが充実しており、英語対応の宿泊施設やレストラン、ガイドツアーなどが整備されています。これにより、リピーターも多く白馬村は、地域資源を踏まえつつ、インバウンド観光にも対応した柔軟な観光戦略で成功を収めています。
[ 出典 ] 白馬村公式観光サイトより
[ 出典 ] 白馬マウンテンリゾートサイトより
[ 出典 ] PR TIMESサイトより
[ 特産品の成功事例 ]
特産品をブランディングの中心に据えた成功例として、北海道のメロンや青森のりんごが挙げられます。これらの地域は、特産品の品質向上に力を入れ、ブランド化に成功しました。観光資源と結ぶことで、観光客にとって「その場所で手にしか入らない価値」として認知されるようになりました。また、地元の農家や生産者との協力体制を強化し、品質管理や子育て活動、地域の特産品を全国区のブランドに育て上げました。
【 讃岐うどん(香川県) 】
香川県は「うどん県」としてのブランディングに成功し、讃岐うどんを全国特産品として定着させました。体験や、セルフ形式のうどん店観光資源としても活用されています。また、香川県は讃岐うどんをテーマにしたPR活動やイベントを積極的に展開し、地元の食文化を観光客にアピールし「うどん巡り」として国内を巡る観光客も多く、讃岐うどんは地域の象徴として強固なブランドとなっています。
[ 出典 ] 香川県公式サイトより
[ 出典 ] うどん県旅ネット公式サイトより
【 松阪牛(三重県) 】
松阪牛は、日本を代表する高級和牛の一つとして世界的に知られています。 三重県では、松阪牛の品質管理に徹底的に取り組んで、その柔らかさと風味の豊かさが高く評価されています地域のレストランや宿泊施設では、松阪牛を使った料理が提供され、観光客に贅沢な食体験を提供しています。また、「松阪牛まつり」などのイベント、ブランドの認知度を高める努力も行われています。松阪牛は高級和牛ブランドとして全国から観光客を集め、地域経済を支える重要な特産品となっています。
【 博多明太子(福岡県) 】
博多明太子は、福岡を代表する特産品として全国的に知られています。 朝鮮半島からこだわった唐辛子で魚卵を日本の風の味に合わせて改良したものです。明太子は、地元のお土産店や飲食店で販売されるだけでなく、観光客が作る体験型プログラムも展開されています。また、明太子を使った創作料理や、ラーメンなどの地元グルメとの融合も博多明太子は、地域の食文化を強化し、観光業を支える大きな課題となっています。
[ 出典 ] 博多の魅力サイトより
[ 出典 ] 霧島酒造株式会社公式サイトより
【 静岡茶(静岡県) 】
静岡県は、日本一の茶産地として知られ、静岡茶はその品質の高さで海外からも評価されています。 緑茶は日本の伝統的な飲み物として根強い人気があり、静岡茶はその風味が人気です。観光客は、茶畑見学や茶摘み体験、さらにはお茶を使ったスイーツを楽しむことができ、茶文化を学びながら地域の魅力に触れることができます。茶産業を中心とした観光ツーリズムは、静岡の地域経済にも大きく貢献しており、静岡茶はその象徴として重要な役割を果たしています。
【 淡路島タマネギ(兵庫県) 】
淡路島は、甘くて柔らかいタマネギの産地として有名です。 特にその糖度が高いことが特徴で、全国的に「淡路島タマネギ」のブランドが確立されています。 地元の飲食店では、このタマネギを使った料理また、タマネギ収穫体験や、タマネギをテーマにしたイベントが行われることで、観光資源としても活用されています。地元農産物のブランディングに成功し、観光客に地域の魅力を感じさせる特産品として重要な役割を担っています。
[ イベントの成功事例 ]
地域イベントを活用した成功例としては、青森の「ねぶた祭り」や徳島の「阿波踊り」があります。これらのイベントは、地域の伝統文化を観光資源として昇華させ、多くの観光客をお待ちしております成功しています。観光客だけでなく、地域住民が一体となって参加することで、地域全体が盛り上がり、観光の活性化にも取り組んでいます。していることが成功の限界です。
【 ねぶた祭り(青森県) 】
青森県のねぶた祭りは、東北を代表する夏の伝統行事として知られています。 毎年8月初旬に開催されるこの祭りでは、巨大な「ねぶた」と呼ばれる武者人形や歴史上の人物を描いたものです。約300万人もの観光客が訪れ、地元経済にも大きな貢献をしています。伝統と地域の文化を観光資源として融合。現地の職人たちが作る迫力のあるねぶたは特に、国の重要無形文化財に指定されたことで、国内外からの観光誘致に成功しています。
【 札幌雪まつり(北海道) 】
札幌雪まつりは、北海道の冬の一大イベントで、毎年2月に開催されます。大通公園を中心に、巨大な雪像や氷像が展示され、屋内から約200万人以上の観光客雪や氷を使ったアート作品の美しさが注目を集め、札幌市の冬の観光資源として大きな役割を果たしています。また、国際的な雪像コンテストや様々な催し物が行われますそのため、地域経済への成功効果も大きく、雪冬の魅力を世界に発信する事例となっています。
【 三社祭(東京都) 】
東京浅草で開催される三社祭は、毎年5月に行われる浅草神社の例大祭で、江戸の伝統文化を色濃く残す祭りです。が一体となるこの祭りは、社内から約150万人もの人々が訪れます。 特に、浅草の歴史の背景を話しながら、地域の連携や文化の発信に成功しており、東京の観光資源として江戸時代から続く伝統行事が、観光誘致と地域活性化の一翼を担っています。
【 大阪天神祭(大阪府) 】
大阪天神祭は、日本三大祭りの一つとして知られ、毎年7月に大阪天満宮で行われます。1000年以上の歴史を持ち、花火や船渡御などの華やかな行事が要項です。彩る船渡御は、夜空に打ち上げられる花火とともに観光客を魅了し、年間100万人以上が訪れます。地域の商業や観光業を盛り上げるだけでなく、歴史と現代の都市風景が融合したユニークなイベントお祭りとして、大阪の文化と観光が強く注目されています。
【 大曲の花火大会(秋田県) 】
大曲の花火大会は、全国の花火師が腕を競う「競技花火大会」として、毎年8月に秋田県で開催されます。この大会は、技術の高さと美しさで全国的に知られており、約80万人の観客が集まります。昼花火や音楽とシンクロした花火など、他の大会にはない特徴があり、秋田県の観光資源として大きな役割を果たしています。全国の花火ファンが集まるため、地元経済にも大きな影響を与えています。また、地域住民との連携により、イベント運営も円滑に進められています。
■ まとめ
成功する地域ブランディングには、地域の独自性を引き出し、それを効果的に伝えることが重要です。目標を明確にし、地域資源を最大限に活用する戦略が鍵となります。やデジタルツールの活用も、現代のブランディングには欠かせない要素です。観光地、特産品、イベントの成功事例に学びながら、自分たちの地域に合った戦略を展開することで、地域の未来を輝けることができます。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
【 株式会社チビコ 】
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