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シンボルデザインの変更が進む自動車ブランド

[ ブランディングデザイン ]

シンボルデザインの変更が進む自動車ブランド

自動車ブランドにとって、シンボルのデザインはとても重要な存在です。その理由は、自動車の外観だけではブランドが判別できなくても、エンブレムを見ればどの自動車ブランドなのか、すぐに判別することができるからです。他業種よりも特に視認性や記憶性を求められるのが自動車ブランドのシンボルなのです。特徴として、ブランド名の頭文字が使われていたり、動物モチーフなどが多く、デザインがシンプルで瞬時に記憶に残るデザインなのが特徴です。そんな自動車ブランドのシンボルについて社会背景や時流などを踏まえながらご紹介させていただきます。


■ クルマの未来とデザイン

クルマ社会の未来を示す言葉「CASE」

変革の時代を迎えている自動車産業の動向を象徴するキーワードであり、
ハード面における自動車の物理的変化とともに異業種を交えたモビリティサービスの重要性。

● Connected(コネクティッド)
● Autonomous (自動運転)
● Shared & Services(シェアリングとサービス)
● Electric(電動化)

クルマの新しい使い方を意味する「MaaS」

自動車が「CASE」を進化させた先にあるもの。それが「MaaS」です。
「MaaS」とは「Mobility as a Service」の略で、直訳すると「モビリティはサービスと同じ」。
意味合いは “移動”すること自体をサービスとしてとらえるという考えです。

■ ブランドシンボルのフラットデザイン化

フラットデザインと呼ばれるデザインの台頭はWEBに限らずグラフィックデザインにおいても同様の兆しがありました。特に時代性を表すCI(コーポレート・アイデンティティ)の分野においては、この傾向はより強く見られ、フラットなCI(コーポレート・アイデンティティ)を導入するケースが増えてきました。その理由は、様々なデバイスでのデジタル表示に対応できるよう、様々な画面サイズ、解像度に瞬時に対応できるデータの作り方が求められるようなったからです。フラットな2次元デザインは、よりクリアでムダのないデザインで、柔軟に適用されることを意図しており、またデジタルメディアにも適するようにデザインされています。

■ ブランドシンボルの変更

BMW新シンボルデザイン
新シンボルはWEBや印刷物中心での使用

【 BMW|新シンボルデザイン 】

[ 2次元で透明な新シンボル ]

新しいシンボルは、新たなブランドアイデンティティを表現するもの。シンプルな2次元デザインとし、開放性と明快さを伝える。また、新しいエンブレムには透過バージョンも導入されました。BMWが、自動車の世界を中心とした企業から、テクノロジーやコネクティビティを重視した企業へ移行することを表現しているということを示しています。

[ 新シンボルはWEBや印刷物中心での使用 ]

BMWが発表した内容によれば、新しいシンボルはWEBサイトや雑誌広告、ポスター、イベントなどにおいての使用が中心で、車両やディーラーの看板、ディーラー内の表示においてはこれまでと変更なし。ただし、今回のi4のようなコンセプトカーについては新シンボルを使用する。つまりは2つのロゴが併用されるということになりますが、以前のシンボルを残すことはコストの問題だと思われます。ディーラーで使用するロゴを変更するとなると、店舗の外にある看板、店内のプラーク、封筒、書類、名刺などすべてを変更する必要があります。そうなると「相当なコスト」が生じることになり、おそらくBMWはこれを避けたいのでしょう。

[ BMWのブランドシンボルの歴史 ]

本国公式サイトで1917年から始まるBMWブランドのロゴの歴史を紹介
[ 出典 ] www.bmw.com/de/automotive-life/bmw-logo-bedeutung-geschichte1.html

[ 画像引用 ] BMW・i4より [ 出典記事 ] Life in the FAST LANE.より

VOLKS WAGEN新シンボルデザイン-1
VOLKS WAGEN新シンボルデザイン-2

【 VOLKS WAGEN|新シンボルデザイン 】

[ 新シンボルはよりシンプルに ]

新しいシンボルの意図には「クリヤーでシンプル」「フレキシブル」「コントラスト」「使いやすい」があります。シンボルがシンプルなのに対し、この新シンボルを決定するまでのプロセスは非常に複雑で、19のチーム、17の代理店を駆使してシンボルを検討し、候補を絞り込んだそうです。

[ EV-デジタル時代に備えたデザイン ]

最近まで使用していた「立体的で陰影のある」ものからフラットな2Dスタイルへと変更されています。これらは「使いやすい」ことについても配慮しており、スマートフォンなど小さな画面でも視認性が高く、さらに今後は車両に新エンブレムを使用し「光らせる」ことが考えられています。確かに旧シンボルでは光らせるのは難しそうですし、解像度の低いモニターだと完全に表現するのは難しのでしょう。

[ 新シンボルを「サウンドロゴ」と表現 ]

フォルクスワーゲンブランドを、クルマとコミュニケーションにおいて音響的に特徴づけると述べていますが、おそらくは今後様々な場面でこのロゴと「音」とが一緒に使用されることになるのでしょう。(たとえば車両に装備されるインフォテイメントシステムの起動画面など)。確かに最近のTVCMでもロゴと音とを結びつける企業が増えていますが、これによって「その企業・ブランドを人々が記憶する確率が3倍になる」とも言われています。

[ 画像引用 ] Car Watchより [ 出典記事 ] Life in the FAST LANE.より

NISSAN新シンボルデザイン-1
NISSAN新シンボルデザイン-2

【 NISSAN|新シンボルデザイン 】

[ 日産が新エンブレムへの変更 ]

これは、現在の自動車メーカー各社が進めている「2D化」の流れに沿ったもので、主にスマートフォンの画面上であったり、その他様々な端末や媒体で表示する際にも「見えやすく」するためだと思われます。なお、日産の場合は、度重なる不祥事やスキャンダルによって失墜してしまったイメージを回復する必要があり、その決意、そして”変わった”ということを示すという意味もあるのかも知れません。

[ 電気自動車の新型「アリア」から正式採用 ]

厚みのなくなったエンブレムはLEDで光らせることで質感を損なうことを回避しています。
実際に日産アリアのプロモムービーでもLEDで光った新エンブレムが映っています。

[ 画像引用 ] 日産ホームページより [ 出典記事 ] くるまのニュースより

MINI新シンボルデザイン-1
MINI新シンボルデザイン-2

【 MINI|新シンボルデザイン 】

[ よりシンプルになった新シンボル ]

ミニいわく「伝統的価値観と未来に向けた発展を表した」とのこと。現行のウイングエンブレムをベースに「シンプルに」まとめたものとなっています。なお、このロゴは2015年に一旦公開されていたものの、2018年に発売されるモデルから順次使用される。

[ フラットデザインに込めた思い ]

「MINI」の大文字を円で囲み、両翼を付けたモチーフはそのままですが、ブラックとグレーの陰影が付いた立体的なロゴに代わり、「フラットデザイン」と呼ばれる平面的なデザインのロゴになりました。旧ロゴは「ドライブの楽しみ、独特のスタイル、プレミアムな品質」を表象した世界的にも親しまれたロゴでした。このデザインをBMWはあえて一新したのです。BMWは新ロゴについて伝統思考(Tradition-conscious)と未来志向(Future-oriented)の両方を表現したと述べています。伝統思考、かつ未来志向。確かにロゴのモチーフが1959年のロゴを起源としている点で伝統的であり、近年のPCやスマホのユーザーインターフェイスにも使われているフラットデザインは、とても近未来的な印象を与えます。

[ 画像引用 ] MIN公式サイトより

■ まとめ

急速なデジタル化が進み技術的な対応のために「デザインの単純化」が求めれています。デザインの単純化は、シンプルな構成によりロゴの用途が広がり、実用性も向上しています。その結果、ミニマルなデザインは、どのような環境下においても視認性が高くなっています。しかし、個人的には機能性ばかりを追求した結果、独自性が失われ情緒といった味わいや雰囲気は少し失われたように感じます。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

株式会社チビコ

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