
[ ブランディングデザイン ]
【必読】ネーミング開発のポイントと表現方法
ネーミング開発において商品ブランド名を考える際には、いくつかの重要なポイントと効果的な表現方法があります。まず、ブランドの特長やメッセージを伝えるシンプルで覚えやすい名前を選ぶことが大切です。例えば、短く親しみやすい名前は消費者にすぐに記憶され、商品を選ぶ際にも強く意識されやすくなります。また、製品の特長やコンセプトに関連するキーワードを組み込むことで、商品が何を提供するのかが一目で分かりやすくなります。響きや語感も重要で、心地よく発音しやすい名前は消費者に好印象を与えます。さらに、競合他社と差別化を図り、独自性を出すことも大切です。本日は、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、商品ブランドにおけるネーミング開発の具体的なポイントと、表現方法について詳しく解説します。
CONTENTS | 目次
■ ネーミング開発と表現方法について

ネーミング開発と表現方法は、ブランドの印象を形づくる両輪です。ネーミング開発では、ブランドの価値や想いを一言で表す言葉を探します。発音のしやすさ、覚えやすさ、独自性、そして法的な安全性を意識しながら、感覚とロジックの両面から検討を重ねます。単なる名前づけではなく、「ブランドの人格を言葉で表す作業」と考えることが大切です。一方の表現方法は、その名前をどのように見せ、どう伝えていくかを設計する工程です。フォントや色、レイアウトなどのデザイン要素と調和させ、ネーミングが持つ個性をより引き出します。どちらもブランド体験全体の印象を左右する、密接に結びついたプロセスです。
【 ネーミング開発 】
ネーミング開発は、ブランドの価値や想いを「ひとつの言葉」にまとめるプロセスです。まず、ブランドが大切にしている考え方や目指す方向を丁寧に整理し、どんな印象を届けたいのかを明確にします。そのうえで、ターゲット層や市場の状況を踏まえながら、言葉のアイデアを広げていきます。初期段階では、良し悪しを判断せずに自由に発想することが大切です。次に、候補を整理し、発音しやすさ、覚えやすさ、独自性、法的な安全性などを基準に絞り込みます。残った案は、実際に声に出してみたり、ロゴやデザインと組み合わせて確認しながら検証します。感覚的な響きと論理的な根拠の両面から検討を重ね、最終的に「ブランドらしさ」が自然に伝わる名前にたどり着く。この流れが、ネーミング開発の本質です。
【 表現方法 】
表現方法とは、決まったネーミングをどのように見せ、どう伝えるかを考える段階です。ネーミングの良し悪しだけでなく、見せ方や使い方によって印象は大きく変わります。フォント、色など視覚的な要素を通じてネーミングの個性を引き出すことが重要です。たとえば、柔らかく親しみのあるブランドなら丸みのある書体を、信頼性や上質さを重視するブランドなら落ち着いたトーンの文字組みを選ぶなど、言葉とデザインを調和させます。また、コピーやSNSでの使われ方も考慮し、どのメディアでも一貫した印象になるように整えます。見た目だけでなく、発音や響きも含めて確認すると効果的です。表現方法は、ネーミングの魅力を最大限に引き出し、ブランドの世界観をより伝えるための大切な工程です。
■ ネーミング開発の4つのポイント

1. 読みやすく語感が良いこと
読みやすさは、名前が自然に広まるための前提になります。誰が見ても同じ読み方ができること、そして声に出したときに心地よく感じられることが大切です。あまりに長かったり、難しい綴りだったりすると、印象に残りにくくなります。母音と子音のバランスや、リズムのある音の並びを意識すると、口に出したときの流れが良くなります。目安としては3〜4音節ほどの長さが覚えやすいでしょう。表記も印象を左右します。ひらがな、カタカナ、ローマ字など、どの形で見せるかによって雰囲気が変わるので、使われる場面を想定して検討します。実際に声に出したり、人に読んでもらったりして、読みやすさや印象を確認することが大切です。語感は「伝わりやすさ」と同じくらい、「感じのよさ」を生む要素でもあります。
● 読み間違いが起きにくい
● 口にしたとき自然に響く
● 短くシンプルで記憶しやすい
2. 個性的で独自性があること
多くの名前が並ぶ市場の中で印象を残すには、独自性が欠かせません。ただし、それは奇抜さを狙うという意味ではありません。そのブランドにしか似合わない“らしさ”が感じられることが本当の独自性です。まずは競合ブランドの名前を調べ、似た音や構成を避けることから始めます。そこから、造語や意外な言葉の組み合わせなどを試すと、印象的な響きが見つかることがあります。独自性を出すには「差を作る」のではなく、「本質から生まれる個性を言葉にする」意識が大切です。印象的で覚えやすいこと、そしてブランドの方向性と無理なくつながること。その両方が揃っていると、自然な強さを持つネーミングになります。複数の案を比べながら、どれが最も“そのブランドらしい”かを丁寧に見極めていくと良いでしょう。
● 競合と被らない独自の響き
● 他では見ない新鮮な表現
● ブランドの個性を直接反映
3. 語感がよく意味が伝わること
ネーミングは「意味」と「音の印象」が重なって伝わるものです。どちらかに偏ると魅力が半減します。説明的すぎると平凡に聞こえ、抽象的すぎると何のブランドか伝わらなくなります。ちょうどよいバランスを見つけることがポイントです。ブランドの特徴や大切にしている価値を一言で表せる言葉を探し、その中から自然な響きを持つものを選びます。たとえば、安心感を出したいなら柔らかい音を、スピード感を出したいなら歯切れのいい音を使うなど、音と感情の関係を意識すると効果的です。また、意味を詰め込みすぎず、少し想像の余地を残すと、受け手の中でイメージが広がります。言葉の響きと意味が無理なくつながっているか、口に出して確かめながら磨いていくことが大切です。
● 響きが心地よい+意味が直感的
● コンセプトや価値を表す
● 記憶と感情に結びつきやすい
4. ストレートな表現であること
伝わりやすさを重視するなら、シンプルでストレートな表現が効果的です。複雑な言葉や比喩的なネーミングよりも、誰が見てもすぐ理解できる名前の方が、初期の浸透には向いています。特に新しいサービスやブランドを立ち上げる場合は、何をしている会社なのかが一瞬で伝わることが大きな強みになります。ただし、シンプルすぎると平凡になりがちなので、言葉の順序や音の組み合わせで少しだけ個性を添えるとよいでしょう。余計な修飾を省き、核心となる言葉を前に置くだけでも印象は大きく変わります。直球の言葉ほど説得力があり、長く使っても古びにくいものです。ストレートな表現は、ブランドが何を信じ、どうありたいかを素直に語る姿勢そのものでもあります。飾らずに伝える誠実さが信頼を生むのです。
● 意図が一目で伝わる
● 過度な比喩や回りくどさを避ける
● 誠実さや信頼感を演出
■ ネーミング開発の3つの分類

1. 連結型
連結型のネーミングは、複数の単語や単語の一部を組み合わせて新しい言葉を作る方法です。これにより、製品の特長や目的をより具体的に伝えることができます。たとえば、「YouTube」は「You(あなた)」と「Tube(映像)」を組み合わせたもので、個人が簡単に動画を公開できるプラットフォームという意図が伝わります。連結型の利点は、シンプルな言葉では表現できない新しい意味を含ませやすい点にあります。この方法により、製品の特徴やブランドのメッセージがネーミングに組み込まれるため、消費者にとっての認知度と記憶度が向上しやすくなります。
[ 開発のポイント ]
● 複数の単語や語の一部を組み合わせて構成
新しい造語を生み出す手法。
● 製品の特長や目的を具体的に表現可能
ネーミング自体に意味や機能を内包できる。
● 独自性のある名称が作りやすい
既存の単語に依存しないため、他社と差別化しやすい。
● 記憶に残りやすく話題性も高まる
ユニークな造語は印象に残りやすく拡散されやすい。
● ブランドメッセージを伝えられる
意味を持たせることで、ブランドの意図が明確になる。
[ 連結型ネーミングの事例 ]
● Microsoft(Microcomputer + Software)
連結+短縮の混合。技術的でありながら覚えやすく、業界を象徴する名前に。
● Snapchat(Snap + Chat)
連結+感覚的語感。直感的で軽快な響きが若年層にフィット。
● Instagram(Instant + Telegram)
連結+略語的構成。リアルタイム性とコミュニケーションの要素を両立。
● Pinterest(Pin + Interest)
連結+比喩。興味を「ピンで留める」という行為を新しい文化として表現。
● Salesforce(Sales + Force)
連結+象徴性。営業の力を具現化し、シンプルかつ力強い印象を持たせている。

2. 混合型
混合型のネーミングは、異なる言語や分野の単語を組み合わせて、新しい意味を持つ言葉を作る方法です。たとえば、「Sony Walkman」は、英語の「Walk(歩く)」と人を表す「-man」を組み合わせており、持ち運べる音楽プレーヤーとしてのコンセプトがわかりやすく伝わります。異なる要素を混合させることで、製品が持つ特長や使用シーンを強調でき、消費者に新鮮な印象を与えます。この方法は、ブランドや商品に親しみやすい印象を持たせつつ、特別な存在感を消費者に感じさせることができます。
[ 開発のポイント ]
● 異なる言語や分野の言葉を組み合わせる
文化やジャンルを越えた印象を生み出せる。
● 製品の特長や使用シーンを強調可能
組み合わせによりイメージを想起させやすい。
● 親しみやすさと個性の両立
身近な要素を含みつつ、独自性のあるネーミングが可能。
● 消費者に新鮮でユニークな印象を与える
意外性や意図のある違和感が記憶に残る。
● ブランドの世界観を拡張
文化的・言語的を取り込むことで、ブランドを構築できる。
[ 連結型ネーミングの事例 ]
● Facebook(Face + Book)
「人の顔」と「名簿」を組み合わせた言葉。人と人をつなぐSNSの本質を端的に表現。
● PayPal(Pay + Pal)
「支払う」と「仲間」を組み合わせ、安心してお金をやり取りできる親しみやすさを表現。
● Netflix(Net + Flicks)
「ネット」と映画の俗称「Flicks」を組み合わせ、ネットで映画を見るサービスを伝える。
● Microsoft(Microcomputer + Software)
小型コンピュータ向けのソフトウェアを開発する企業であることを示した。
● Spotify(Spot + Identify)
「発見する」と「特定する」を掛け合わせ、音楽を見つける喜びを表現している。

3. 切抜型
切抜型のネーミングは、単語の一部を切り取り、簡潔にしたり、省略した形で表現する方法です。たとえば、「FedEx」は「Federal Express」の略で、元の意味を保ちつつシンプルで覚えやすくしています。切抜型は、長い名前や複雑な単語を短くすることで、消費者にとっての記憶しやすさが向上し、ネーミングとしてのインパクトも強くなります。この方法は、ブランドが簡潔に伝わり、かつ印象に残りやすい効果を持つため、さまざまな企業で広く採用されています。
[ 開発のポイント ]
● 長い名称や複雑な語を省略・短縮して構成
簡潔さとスピード感を演出できる手法。
● 記憶に残りやすく、口にしやすい
短くリズムの良い名前は、日常会話でも使いやすい。
● 元の意味や文脈を維持しやすい
「FedEx」のように略語でも意図や背景が伝わる。
● ブランドとしてのインパクトが強化される
短く力強い名前は、視覚的・聴覚的印象が鮮明。
● 多くの企業で採用されている実績ある手法
シンプルで機能的なネーミング戦略として汎用性が高い。
[ 切抜型ネーミングの事例 ]
● Intel(Integrated Electronics)
技術的な意味を残しつつ、シンプルで記憶に残る形に切り抜いた例。
● Pixar(Pixel + Artの切抜+連結)
複合的な要素を持ちながら、短く響きのよい形でブランド化。
● Accenture(Accent on the Futureの切抜)
「Accent」と「Future」を組み合わせ、ポジティブで前向きな印象を付与。
● Cisco(San Franciscoの切抜)
サンフランシスコから一部を取り、都市的でスマートな印象を持たせた。
● Nabisco(National Biscuit Companyの切抜)
略称でありながら親しみやすく、世代を超えて定着した成功例。
■ ネーミング開発の進め方

1. 目的とコンセプト定義
ネーミング開発の最初のステップは、「なぜこの名前を作るのか」という目的を明確にすることです。目的が曖昧なままでは、方向性の定まらない言葉が並ぶだけになってしまいます。ブランドやプロジェクトの存在意義、提供価値、どんな印象を届けたいのかを整理し、その本質を一言で表せる“核となるコンセプト”を定義します。この段階では、マーケティング的な視点(差別化や市場ポジション)と感性的な視点(世界観やトーン)を両立させることが大切です。言葉はブランドの人格を象徴する要素でもあるため、内部の意志と外部への伝わり方の両方を見据えて設計する必要があります。コンセプトが明確であるほど、後の発想や評価の基準がぶれずに進められます。
● 目的を「なぜ」「誰に」「何を伝えるか」の3軸で整理する
● 企業理念・ブランドビジョンと整合性を確認する
● 感覚的印象と論理的メッセージの両面から定義する
2. ターゲットの明確化
ネーミングは、誰に向けて言葉を届けるのかによって選ぶべき表現が変わります。ターゲットを明確にすることは、共感されるネーミングを導く上で欠かせません。性別や年齢、職業などのデモグラフィック情報だけでなく、価値観・感性・ライフスタイルなど心理的な側面も掘り下げます。たとえば、若い世代に向けるならリズミカルで軽やかな響きが合い、信頼感を重視する層には落ち着いた印象の語感が適しています。また、BtoBとBtoCでは言葉のアプローチも異なります。ターゲット像があいまいだと、結果的に誰にも強く響かない名前になるリスクがあります。明確に描いたターゲットの「感情のツボ」を捉えることが、効果的なネーミングの基盤になります。
● デモグラフィックだけでなく心理的・文化的側面も把握する
● ターゲットが共感する言葉・音の傾向を探る
● ペルソナ設定を行い、感情の動きを具体的にイメージする
3. ネーミング要件の設定
次に、ネーミング開発における“判断基準”を明確に設定します。これは、後のアイデア整理や評価の段階で迷いを防ぐための重要な準備です。ブランドの方向性や事業戦略に基づき、「どんなトーンで」「どんな印象を与えるか」を整理します。たとえば、“高級感・信頼性・革新性・親しみやすさ”といった軸を明文化しておくことで、アイデアを比較検討しやすくなります。また、発音・覚えやすさ・独自性・商標登録の観点からの実務的な条件も併せて設定しておきます。さらに、将来の拡張性やグローバル展開の可能性も視野に入れると、長期的に使える名前に育てやすくなります。
● 感性面(印象・語感)と機能面(法務・市場)の両方を要件化する
● 優先順位を明確にし、評価基準の軸をそろえる
● 事業成長や海外展開など将来を見据えた柔軟性を持たせる
4. インスピレーション収集
発想に入る前に、幅広い視点で情報を集め、創造の土台をつくります。ここで大切なのは「調べすぎて固まらないこと」。目的に沿いながらも、ジャンルを超えてインスピレーションを取り入れる柔軟さが求められます。具体的には、関連業界のネーミング傾向を調査したり、言葉の語源・外国語の意味・自然界や神話など象徴的な概念から連想を広げたりします。デザインや音楽、文学作品など異分野の要素からも刺激を得ると、独自の方向性が見つかりやすくなります。収集した素材は、後のブレーンストーミングで「言葉の源」として機能します。インプットの質と量が、アウトプットの広がりを決定づけます。
● 同業・異業種のネーミング事例を幅広くリサーチする
● 言葉の語源や文化的背景を探り、意味の広がりを意識する
● ビジュアル・音・感情など五感的な要素からも刺激を得る
5. アイデア発想(ブレーンストーミング)
この段階では、発想を自由に広げることが最も重要です。完成度を求めず、思いつくままに書き出すことで、新しい発想が生まれやすくなります。キーワード連想法、語源探索、比喩や造語など、複数のアプローチを組み合わせると効果的です。チームでブレーンストーミングを行う場合は、評価や否定を一切せず、数を出すことに集中します。数が増えるほど、意外な組み合わせや新しい方向性が見えてくるものです。また、音の響きやリズムを意識して、実際に声に出して確認することで、感覚的な発見も得られます。この段階は、理性より感性を優先するフェーズです。
● 「質より量」を意識して発想を広げる
● 複数の発想法(連想・語源・造語など)を組み合わせる
● 音の響きやリズムを実際に声に出して確認する
6. 整理・絞り込み
大量に出したアイデアを整理し、現実的な観点から絞り込みます。この段階では、ブランドの方向性、発音のしやすさ、独自性、意味のわかりやすさ、記憶に残るかなどの観点から評価します。まず似た印象の名前をグループ化し、重複や曖昧なものを除外します。そのうえで、法的リスク(商標や既存ブランドの類似)やデジタル上の使用可否(ドメイン、SNSアカウント)も確認しておくと後がスムーズです。チームで意見を出し合いながら客観的に検討することで、主観に偏らない判断が可能になります。最終的に3〜5案程度に絞り込むのが一般的です。
● 客観的な基準で評価し、感覚だけに頼らない
● グループ化で重複・類似案を整理する
● 商標・ドメイン・SNSの確認を早期に行う
7. 評価と検証
候補を絞り込んだら、実際に人に聞いて印象を確かめます。社内スタッフや想定ターゲットに「どんな印象を受けるか」「覚えやすいか」などをヒアリングします。客観的な意見を得ることで、制作者の思い込みを外すことができます。ただし、好みの多数決ではなく、「ブランドとしてふさわしいか」を基準に判断することが大切です。ロゴ案やデザインと並べて視覚的な印象も確認し、音としての響きも検証します。この検証段階を丁寧に行うことで、最終決定に納得感を持てるようになります。
● 実際のターゲット層に意見を聞いて客観的に確認する
● 見た印象・聞いた印象の両面をチェックする
● 「好き嫌い」ではなく「ブランド適合性」で評価する
8. 最終選定と合意形成
最終候補から1案を選ぶ段階では、感覚とロジックの両立が求められます。ブランドの目的や戦略、長期的な展開を踏まえて、どのネーミングが最もブランドの方向性を支えられるかを検討します。ここで重要なのは、経営層・開発チーム・デザイナーなど関係者間の合意形成です。複数の視点から確認し、リスクや懸念点を共有しながら意思決定を行います。選定後は、法務チェック(商標出願など)を速やかに進めると安心です。最終決定はゴールではなく、ブランドのスタート地点でもあります。
● 戦略的観点から最終候補を比較・検討する
● 関係者全員が納得できる合意形成を重視する
● 決定後は法務・実務面をすぐに整備する
9. ネーミングのストーリー化
最終的に決まった名前には、“なぜその言葉にしたのか”という背景を明確にすることが大切です。ネーミングの意図や意味をチームや関係者に共有することで、ブランド全体の発信に一貫性が生まれます。ネーミングは単なる「名付け」ではなく、ブランドの哲学や想いを伝えるメッセージでもあります。発表時には、名前の響きや意味だけでなく、その中に込められた考えやビジョンを合わせて伝えると、より深く受け止めてもらえます。また、使われていく中で意味が広がるよう、長く育てる意識も重要です。
● ネーミングの意図や背景を言語化し共有する
● ブランド全体のストーリーと一貫性を持たせる
● 名前の成長を前提に、継続的に意味を育てていく
■ ネーミングの表現方法

【 機能重視型 】
機能重視型のネーミングは、商品やサービスの主要な機能や特徴を直接的に表現する方法です。たとえば、「QuickBooks」は会計ソフトウェアであり、迅速に会計業務を処理できるという機能を表現しています。このタイプのネーミングは、製品の用途や目的を一目で理解させることができ、特に新規市場や消費者に対しての説明が不要となる利点があります。機能重視型は、消費者にとって製品を選ぶ際の判断基準となり、商品特性が明確に伝わるため、信頼性も高まりやすいです。
[ 表現のポイント ]
● 商品の機能や特徴をストレートに伝える:何ができる製品かを一目で理解させるネーミング。
● 新規顧客への説明が不要になる:用途や目的が明確で、瞬時に製品価値が伝わる。
● 購買判断の基準として機能する:消費者が自分に合った商品かどうかを即座に判断しやすい。
● 信頼感を与えやすい:誇張や比喩がないため、誠実で堅実なブランド印象を形成できる。
● 実用性重視の市場やBtoB領域で効果的:機能性や効率が重視される場面で強い訴求力を持つ。

【 イメージ重視型 】
イメージ重視型のネーミングは、製品やサービスの雰囲気や使用感、ブランドの個性を視覚や感覚に訴える表現で伝える方法です。たとえば、「Forever 21」は、若々しさやファッションの楽しさを表現し、若い世代に強い共感を呼び起こしています。イメージ重視型は、製品そのものの機能だけでなく、消費者がブランドから得られる価値や感情を伝えるのに適しています。この方法でネーミングをすることで、消費者の感覚や価値観に訴え、購買意欲を刺激する効果が期待されます。
[ 表現のポイント ]
● ブランドの雰囲気や世界観を感覚的に表現:視覚・感情に訴える言葉で印象を形成。
● 消費者の共感や憧れを喚起しやすい:「なりたい姿」や「感じたい体験」に結びつける。
● 機能よりも感情的価値を重視:製品が与える気分やライフスタイルへの影響を強調。
● ブランドの個性や方向性を明確にできる:抽象的でも印象的なネーミングで独自性を確立。
● 記憶に残りやすく、話題性が生まれやすい:感性に響く名前はシェアや口コミにも繋がる。

【 オノマトペ型 】
オノマトペ型のネーミングは、音やリズムを利用して、製品の特性や使用シーンを直感的に伝える手法です。たとえば、「Snapchat」は、「Snap(撮影)」と「Chat(会話)」を組み合わせ、短時間でメッセージを交換する感覚を音として伝えています。このように、オノマトペ型は消費者に言葉の響きで製品のイメージを想起させる効果があり、直感的に理解しやすい特徴を持ちます。音を通じたインパクトが強いため、消費者が覚えやすく、友人や家族との会話で自然に話題にされることも増えます。
[ 表現のポイント ]
● 音やリズムを活用して直感的に伝える:製品の特徴や使用感を言葉の響きで表現。
● 言葉の響きからイメージを想起させる:視覚よりも聴覚に訴え、印象づけやすい。
● 覚えやすく、口にしやすい:リズミカルで親しみやすい名前は、自然と記憶に残る。
● 話題性や拡散性が高い:軽快な響きが人の会話にのぼりやすく、口コミにもつながる。
● 楽しさや親しみを演出できる:理屈ではなく感覚に訴えるため、ブランドとの距離が縮まる。
■ 弊社のネーミング開発実績
株式会社チビコは、これまで数多くの企業・商品・サービスのネーミング開発を手がけてきました。戦略とクリエイティブの両面から言葉を開発し、単なる「名付け」にとどまらず、ブランドの価値を言葉で可視化することを重視しています。経験に裏づけられた独自の開発プロセスで、記憶に残り、長く愛されるネーミングを生み出します。

[ OPTICO ]
上市前の商品開発に特化したマーケティングリサーチDXのプラットフォーム。多くのマーケティング部署やマーケターが抱えている様々な課題とニーズに具体的に対応します。OPTICOの意は、アイデア(Idea)の 最適化(Optimization)を図るものであるから。Optic(目の)+Consumer(生活者)
[ 詳細 ] chobico WORKS | OPTICOより

[ CONTAINER PLUS ]
CONTAINER PLUSは、可能性を広げる高品質のコンテナ建築モデルのブランドです。コンテナオフィスを起点として、コンテナ店舗、オフィス+ガレージ、店舗+コンテナ倉庫などをラインナップ。コンテナ建築+スペースの有効活用として新しいサービスを提供しています。
[ 詳細 ] chobico WORKS | CONTAINER PLUSより

[ MONOCOTO ]
MONOCOTOは、リアルソーシングを特徴とするソーシャルマニュファクチュアリングサービスです。モノが溢れ余る社会において「モノの先にあるコトの価値」が求められています。単にモノを作るという発想から、その先にあるモノを使う楽しみや経験、人とのコミュニケーションを提案するブランドです。
[ 詳細 ] chobico WORKS | MONOCOTOより

[ JAPANITURE ]
日本発の家具ブランド「JAPANITURE」の海外展開」。JAPANITUREとは、JAPANとFURNITUREの造語に由来し、ブランドコンセプトは「日出ずる国の家具」。日本の伝統と革新的でモダンなデザイン家具を海外に広く発信し新規マーケットを開拓することを目的とするブランドです。
[ 詳細 ] chobico WORKS | JAPANITUREより

[ CLARTE ]
Clarteとは、フランス語で「光」「輝き」を意味する言葉です。いつも感謝すること。楽しみとユーモアをみつけること。身近な人たちの幸せを願うこと。この3つのコンセプトから生まれたブランドです。ショップ5周年を記念しプレゼントとしてアロマキャンドルにメッセージカードを添えて配布しました。
[ 詳細 ] chobico WORKS | CLARTEより

■ ネーミング開発のポイントに関するよくある質問
これまで多くのネーミング開発を進める中で、共通する疑問や悩みに何度も立ち会ってきました。特に語感や独自性、意味のバランスなどは、多くのプロジェクトで議論になるテーマです。ここでは、実際の現場でよく寄せられる質問をもとに、ネーミング開発のポイントを分かりやすく整理しました。
[ よくある質問① ]
Q :ネーミングにおいて「語感の良さ」はなぜ重要ですか?
A :読みやすく語感が良い名前は、消費者に親しみやすさを与え、口語で繰り返されやすいため、自然な拡散と認知向上につながります。
[ よくある質問② ]
Q :個性的で独自性のあるネーミングを作るには?
A :他ブランドと差別化される造語や創業者の名前由来など、ユニークな響きを持たせることで記憶に残りやすくなります。
[ よくある質問③ ]
Q :ネーミングに「語感と意味の両立」はどう生かせますか?
A :語感が心地よく、かつ意味が明快な名称(例:Facebook)は、商品やサービスの内容が直感的に伝わるため、理解と共感を得やすくなります。
[ よくある質問④ ]
Q :なぜ「ストレートな表現」が効果的なのですか?
A :商品やサービスの価値がそのまま伝わる直接的な名前(例Google由来の“googol”の発想)は、消費者の理解を助け、長期的なブランド一貫性の維持にも寄与します。
[ よくある質問⑤ ]
Q :ネーミングにはどんな“型”がありますか?
A :主に「連結型」(例:YouTube)、「混合型」(例:Walkman)、「切抜型」(例:FedEx)などがあり、それぞれ製品特徴やブランドメッセージを効果的に伝える手法です。

■ ネーミング開発に関するチェックリスト
ネーミング開発の現場では、良いと思った案が後のチェックで思わぬ課題に気づくことがあります。私たちも多くのプロジェクトでその重要性を実感してきました。ここでは、実務の中で磨かれた確認項目をまとめています。
[ コンセプト適合性のチェック ]
⬜︎ ブランドのビジョン・コンセプトとネーミングが一貫しているか?
⬜︎ 事業領域や提供価値が名前から直感的に伝わるか?
⬜︎ ブランドの世界観やポジショニングを損なっていないか?
[ 響き・発音性のチェック ]
⬜︎ 発音しやすく、口に出したくなるリズムになっているか?
⬜︎ 3〜4音節以内で覚えやすい長さになっているか?
⬜︎ 日本語だけでなく、海外展開も視野に入れた発音のしやすさを考慮しているか?
[ 差別化・独自性のチェック ]
⬜︎ 競合他社のネーミングと明確に差別化できているか?
⬜︎ 類似した名前や登録商標との重複リスクは回避しているか?
⬜︎ 一度聞いただけで印象に残る独自性があるか?
[ 市場適応性・拡張性のチェック ]
⬜︎ 新しい事業やサービスにも柔軟に対応できる名前になっているか?
⬜︎ SNS・SEO・ドメイン取得などのデジタル環境で適応可能か?
⬜︎ 海外市場でネガティブな意味を持たないかを確認しているか?

■ まとめ
ネーミングはブランドとその価値を一言で伝える“入口”です。響きの良さ・覚えやすさ・語感の意味性を丁寧に設計することで、消費者の記憶に定着し、ブランドに対する第一印象を強化できます。また、展開を見据えたプロセス設計(コンセプト把握→ターゲット分析→要件設定→発想→絞り込み→検証→合意形成→ストーリー共有)を丁寧に進めることで、名前だけでなくブランドとしての一貫性と信頼感も醸成されます。ネーミングはただの「名付け」ではなく、ブランドの世界観をスタートさせる大切な表現です。一緒に「言葉の力」を最大化させ、意味あるブランド化を実現していきましょう。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
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