[ ブランディングデザイン ]
【必読】ネーミング開発のポイントと表現方法
ネーミング開発において商品ブランド名を考える際には、いくつかの重要なポイントと効果的な表現方法があります。まず、ブランドの特長やメッセージを伝えるシンプルで覚えやすい名前を選ぶことが大切です。例えば、短く親しみやすい名前は消費者にすぐに記憶され、商品を選ぶ際にも強く意識されやすくなります。また、製品の特長やコンセプトに関連するキーワードを組み込むことで、商品が何を提供するのかが一目で分かりやすくなります。響きや語感も重要で、心地よく発音しやすい名前は消費者に好印象を与えます。さらに、競合他社と差別化を図り、独自性を出すことも大切です。本日は、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、商品ブランドにおけるネーミング開発の具体的なポイントと、表現方法について詳しく解説します。
■ ネーミング開発と表現方法について
顧客は商品やサービスを選ぶ際に何を見ているのでしょうか?商品が少なく選択肢がなかった時代とは違い、今では山のようにさまざまな商品があふれていています。その中から顧客は気に入った商品を探し出し購入します。では、さまざまな商品の中から選んでもらうには一体どうすればいいのでしょうか。その手がかりの1つとなっているのがネーミングなのです。ネーミングは、商品の特性を一言で表したり、感覚的に良い商品と思わせる効果があります。つまり、商品価値を端的に顧客に伝える重要な要素なのです。
【 ネーミング開発 】
ネーミング開発は、ターゲット市場に適した名称を生み出す重要なプロセスです。ブランドや製品の価値を正確に反映するネーミングを目指し、メッセージや市場での役割を定義し、競合との差別化を図ります。アイデア出しの段階では、リサーチやブレインストーミングを通じて多様な候補を集め、その後、対象顧客のニーズや期待に合致するかを検討しながら、覚えやすさや親しみやすさ、発音のしやすさなどの観点から絞り込みます。最後に、商標やドメインの利用可能性を確認し、登録可能な候補に絞ることで、ネーミングの開発が完了します。
【 表現方法 】
ネーミングを表現する際は、視覚的な一貫性がブランド認知を高めるために重要です。ロゴやカラーと調和させ、キャッチフレーズやタグラインとも統一感を持たせることで、名前自体がブランドの価値観や特性を想起させます。消費者がブランドや製品の特長を瞬時に理解できるよう、シンプルで強いメッセージ性が求められます。また、WEBや広告などのデジタルやリアルのタッチポイント全体で、同じトーンとメッセージを保つことで、ブランドに対する信頼感と一貫性が生まれ、ネーミングの効果が最大化されます。
■ ネーミング開発のポイント
1. 読みやすく語感が良いこと
ネーミングが読みやすく語感が良いと、消費者に親しみを感じてもらいやすくなります。例えば、アップルの「iPhone」は簡潔で読みやすく、語感もスムーズなため、誰もがすぐに発音でき、覚えやすいネーミングです。このシンプルさが認知度を高め、ブランドのアイデンティティを消費者に深く浸透させる一因となりました。また、語感の良さは、広告や口コミでも消費者に浸透しやすくなるため、ブランド名が口語で繰り返され、自然に広がりやすいです。言葉の響きが良いネーミングは、コミュニケーションの場で話題にしやすく、ブランドの認知向上に繋がります。
2. 個性的で独自性があること
個性的なネーミングは、競合との違いを際立たせ、消費者に強い印象を与えます。例えば、スポーツブランドの「Adidas(アディダス)」は、創業者の名前に由来しており、造語として独自の響きを持っています。この独自性が、他のスポーツブランドとは異なる強い印象を生み出し、消費者にブランドを特別なものと感じさせています。さらに、個性的な名前は消費者にとってユニークな記憶として残りやすく、購買時に無意識の選択要因となります。市場に同じような製品が溢れる中で、個性が強調されたブランドは差別化しやすく、ブランドへの好感度を高める効果も期待できます。
3. 語感がよく意味が伝わること
ネーミングが語感良く、意味も分かりやすい場合、消費者に即座に製品のイメージが伝わります。たとえば、「Facebook」は、友人や知人と「Face-to-Face(顔と顔を合わせる)」で繋がることを表現しており、シンプルでわかりやすいネーミングです。この語感と意味の両立により、SNSの目的を明確に伝え、多くのユーザーに親しまれています。また、意味が分かりやすいことで消費者は安心して使いやすくなり、使用シーンが直感的に理解されます。語感と意味が合わさったネーミングは、商品がどんな価値を提供するかを瞬時に伝える効果があります。
4. ストレートな表現であること
シンプルでストレートな名前は、商品が提供する価値や用途をそのまま伝えるため、消費者にとって分かりやすいです。例えば、検索エンジンの「Google」は、膨大な情報量を意味する数学用語「googol」に由来しており、「すべてを見つけられる検索サイト」というメッセージが含まれています。この直接的な表現が、ブランドの目的と価値をわかりやすく伝え、結果的にブランド力を強化しました。また、ストレートな名前は長期的な使用にも適しており、ブランドとしての一貫性を保つ役割も果たします。直接的でありながらも記憶に残るため、消費者に馴染みやすく、多様なシーンで使われやすい点が魅力です。
■ ネーミング開発3つの分類
1. 連結型
連結型のネーミングは、複数の単語や単語の一部を組み合わせて新しい言葉を作る方法です。これにより、製品の特長や目的をより具体的に伝えることができます。たとえば、「YouTube」は「You(あなた)」と「Tube(映像)」を組み合わせたもので、個人が簡単に動画を公開できるプラットフォームという意図が伝わります。連結型の利点は、シンプルな言葉では表現できない新しい意味を含ませやすい点にあります。この方法により、製品の特徴やブランドのメッセージがネーミングに組み込まれるため、消費者にとっての認知度と記憶度が向上しやすくなります。
2. 混合型
混合型のネーミングは、異なる言語や分野の単語を組み合わせて、新しい意味を持つ言葉を作る方法です。たとえば、「Sony Walkman」は、英語の「Walk(歩く)」と人を表す「-man」を組み合わせており、持ち運べる音楽プレーヤーとしてのコンセプトがわかりやすく伝わります。異なる要素を混合させることで、製品が持つ特長や使用シーンを強調でき、消費者に新鮮な印象を与えます。この方法は、ブランドや商品に親しみやすい印象を持たせつつ、特別な存在感を消費者に感じさせることができます。
3. 切抜型
切抜型のネーミングは、単語の一部を切り取り、簡潔にしたり、省略した形で表現する方法です。たとえば、「FedEx」は「Federal Express」の略で、元の意味を保ちつつシンプルで覚えやすくしています。切抜型は、長い名前や複雑な単語を短くすることで、消費者にとっての記憶しやすさが向上し、ネーミングとしてのインパクトも強くなります。この方法は、ブランドが簡潔に伝わり、かつ印象に残りやすい効果を持つため、さまざまな企業で広く採用されています。
■ ネーミング表現方法3つの分類
1. 機能重視型
機能重視型のネーミングは、商品やサービスの主要な機能や特徴を直接的に表現する方法です。たとえば、「QuickBooks」は会計ソフトウェアであり、迅速に会計業務を処理できるという機能を表現しています。このタイプのネーミングは、製品の用途や目的を一目で理解させることができ、特に新規市場や消費者に対しての説明が不要となる利点があります。機能重視型は、消費者にとって製品を選ぶ際の判断基準となり、商品特性が明確に伝わるため、信頼性も高まりやすいです。
2. イメージ重視型
イメージ重視型のネーミングは、製品やサービスの雰囲気や使用感、ブランドの個性を視覚や感覚に訴える表現で伝える方法です。たとえば、「Forever 21」は、若々しさやファッションの楽しさを表現し、若い世代に強い共感を呼び起こしています。イメージ重視型は、製品そのものの機能だけでなく、消費者がブランドから得られる価値や感情を伝えるのに適しています。この方法でネーミングをすることで、消費者の感覚や価値観に訴え、購買意欲を刺激する効果が期待されます。
3. オノマトペ型
オノマトペ型のネーミングは、音やリズムを利用して、製品の特性や使用シーンを直感的に伝える手法です。たとえば、「Snapchat」は、「Snap(撮影)」と「Chat(会話)」を組み合わせ、短時間でメッセージを交換する感覚を音として伝えています。このように、オノマトペ型は消費者に言葉の響きで製品のイメージを想起させる効果があり、直感的に理解しやすい特徴を持ちます。音を通じたインパクトが強いため、消費者が覚えやすく、友人や家族との会話で自然に話題にされることも増えます。
【 その他 】
その他のネーミング開発には、造語型や暗示型、韻律型などがあります。造語型は完全に新しい言葉を作り出し、他にない独自性を持たせることで、ブランドを特別なものとして認識させます。たとえば、「Kodak」は完全な造語で、シンプルで記憶に残りやすいです。暗示型は直接的な意味を持たず、製品に関連するイメージや感覚を間接的に表現するもので、聞き手に考えさせる効果があるため、印象に残りやすいです。また、韻律型は、言葉のリズムや音の連続性で覚えやすくする方法で、「Coca-Cola」などがその例です。
■ まとめ
ネーミングは“名前”としての単純な機能だけではなく、その商品や企業のコンセプトやビジョンなどを感じさせるという大切な機能も持っています。このことを踏まえた上で、インパクトやリズム、親しみやすさ、覚えやすさなどのテクニックが必要となってくるのです。「i」をつけるネーミングで独自のブランドを確立したApple社や、ネーミングでも徹底した機能訴求することを続ける小林製薬社など、企業の特色・社風のようなものが現れやすいのがネーミングです。もしも、特に意味はなく語感を重視した、従業員アンケートで選んだ、というようなネーミングを施している場合は、今一度ネーミングについて再度検討してみてはいかがでしょうか。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
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