[ ブランド戦略 ]
企業ブランドと商品ブランドの関係性がもたらす効果とは?
ブランド戦略を考える上で、企業ブランドと商品ブランドの関係は大きな意味を持っています。企業ブランドには、その組織が持つ価値観や信頼性、目指す未来が込められています。一方の商品ブランドは、それぞれの製品やサービスならではの特長やメリットを、お客様に分かりやすく伝える役割を担っています。これら2つのブランドが相乗効果を生むと、企業の信頼性や知名度が商品の価値を高め、商品の成功につながります。また、ヒット商品が生まれることで、企業全体の評価も上がり、お客様との絆も深まっていくのです。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、企業ブランドと商品ブランドがどのように影響し合い、会社の成長を後押ししているのかについてついて詳しく解説します。
■ 企業ブランドと商品ブランドの関係性
企業ブランドと商品ブランドは、それぞれ異なる意味合いと役割を担っています。企業ブランドは、会社そのものが持つイメージ、大切にしている考え方、築き上げてきた信頼感を表現します。商品ブランドは、その企業が作り出す製品やサービスを分かりやすく示すためのものです。お客様は企業ブランドを通じて会社全体への印象を形づくり、その企業の信頼性や価値観を基準に商品選びをすることができます。また、商品ブランドによって、提供される製品やサービスへの具体的なイメージが生まれ、購入を決める際の重要な判断材料となっているのです。
■ 企業ブランドが商品ブランドに与える5つの効果
1. 品質や信頼性を高める
強固な企業ブランドが築かれていると、その会社から生み出される商品やサービスへの評価も自然と高まっていきます。例えば、トヨタやソニーのように、常に高い品質の製品を市場に送り出してきた企業では、新しい商品ブランドを展開する際も、自然と「品質が良い」「安心できる」といった評価が受け継がれていきます。このため、お客様は新商品を選ぶ時も安心感を持って購入を決めることができ、企業ブランドが持つ信頼性が、商品選びの重要な判断基準として機能するのです。
2. ブランドイメージを共有する
企業ブランドが持つ独自のイメージは、その会社が市場に送り出すすべての商品ブランドに自然と浸透していきます。例えば、Appleという企業が持つ「革新的」「洗練された美しさ」といった特徴は、iPhoneやMacといった個々の商品にも確実に受け継がれ、お客様の心の中で一貫したイメージとして定着します。このように企業と商品が同じ価値観を共有することで、企業全体への信頼感が深まり、新たな商品のブランド構築にも良い影響をもたらすのです。
3. 競合との差別化を図る
企業ブランドは、他社との明確な違いを作り出す重要な要素となっています。たとえば、ナイキの「Just Do It」というメッセージや、レッドブルが表現する「エネルギー」という世界観は、それぞれの商品にも深く根付いており、競合他社との違いを鮮明に打ち出しています。お客様は商品の中にその企業らしさを感じ取るため、強い企業ブランドを持つ会社は、似たような商品が多く並ぶ市場でも、自社製品を選んでもらいやすい優位性を確保できるのです。
4. 商品ラインナップの拡大を促進する
確固たる企業ブランドを持つ会社は、新商品を生み出す際も、そのブランドが築いてきた信頼感や大切にしている価値観を活かすことができ、より幅広い商品展開が可能になります。例えば、ディズニーは映画からテーマパーク、おもちゃまで、様々な形で商品やサービスを広げながら、お客様が望む新しい体験や商品を次々と生み出しています。このような展開が成功を収めることで、企業ブランドそのものも、より豊かな広がりを見せていくのです。
5. マーケティング効果を高める
強い企業ブランドを持っているほど、商品ブランドの宣伝活動もより効果的になります。企業が築き上げてきた知名度やイメージは、個々の商品の広告やプロモーションにも自然と活かされ、効率的な宣伝活動を実現できます。たとえば、ユニクロのヒートテックやエアリズムは、ユニクロというブランドへの信頼感や確かな品質というイメージに支えられて、お客様の心に深く浸透しています。これは企業ブランドの力が、商品の市場での成功に直接つながった良い例と言えます。
■ 商品ブランドが企業ブランドに与える5つの効果
1. 企業ブランドの価値向上
ヒット商品が生まれると、その商品が持つ魅力は企業全体のブランド価値も高めていきます。例えば、iPhoneの圧倒的な支持がAppleという企業の価値をさらに引き上げたように、個々の商品ブランドへの評価は、その企業自体への信頼にもつながっていくのです。商品が持つユニークな価値は、やがて企業全体の強みとして認められるようになり、他社との違いをより鮮明に打ち出せるようになります。これにより、企業はさらに価値の高いブランドを築き上げることができるのです。
2. 企業ブランドのイメージ形成
商品ブランドが持つイメージは、その企業全体のブランドイメージづくりにも大きく影響します。具体例として、トヨタの「プリウス」が象徴する環境への高い意識は、トヨタという企業自体にも「環境を大切にする会社」というイメージをもたらしています。このように、個々の商品が持つ独特の魅力や特徴は、その企業の個性や目指す方向性を表現する要素として、お客様の心に響きます。そのため、企業全体のイメージがより分かりやすく、身近に感じられるものになっていきます。
【 詳細記事 】ブランドイメージを高めるためのデザインとは?
3. 企業ブランドの信頼性向上
商品の品質が高く、信頼できると評価されることは、その企業そのものへの信頼も深めていきます。例えば、パナソニックの家電製品が持つ確かな信頼性は、パナソニックという会社全体への信頼感をより強固なものにしています。このように、商品がお客様の期待に応え続けることで、その企業全体が「安心して任せられるブランド」として認識されるようになり、新しく発売される製品やサービスにも、自然と期待が集まるようになります。
4. 企業ブランドの認知度向上
人気商品のブランド認知が広がることは、その企業全体の知名度アップにもつながっていきます。例えば、ナイキのスニーカーが多くの注目を集めることで、ナイキという会社自体の存在感や企業としてのイメージも一層高まっています。こうして商品ブランドが世界中で親しまれるようになると、企業名も自然とお客様の目に触れる機会が増えていき、会社としての認知度が向上します。これが、さらなる企業成長への重要な足がかりとなります。
5. 企業ブランドの支持者増加
個々の商品が多くのお客様から愛されることは、その企業全体のファンを増やすことにもつながります。例えば、コカ・コーラの飲料製品が広く親しまれていることで、コカ・コーラという会社そのものへの支持も広がり、ブランドへの深い信頼関係も築かれています。このように、商品を通じてお客様との絆を深めることで、企業は長く支持され続けることができ、新商品の開発や事業の拡大にも積極的に挑戦できる基盤が整います。
■ 企業ブランドと商品ブランドの関係性を考慮した戦略の重要性
企業のブランドと個々の商品のブランドは、お互いに良い影響を与え合う関係を築いています。商品のブランドは企業への信頼感や知名度を高め、一方で企業のブランドは商品のイメージづくりに貢献します。そのため、企業と商品、両方のブランドを一体的に考えながら戦略を組み立てていくことが、成功への重要な鍵となるのです。
【 企業ブランドと商品ブランドの統合戦略 】
企業ブランドと商品ブランドの統合戦略とは、企業が持つ複数の商品ブランドを、一つの企業ブランドの下に統合することで、統一感を出し、ブランド価値を高める戦略のことを指します。例えば、アップルは、iPhone、iPad、Macなどの商品ブランドを、アップルの企業ブランドの下で統合し、一つのアップルの世界観を作り出しました。企業ブランドと商品ブランドを統合することで、商品ブランドが相互に補完し合い、顧客が企業ブランドに対して抱く信頼感が高まり、ブランドイメージを一層向上させることができます。また、商品ブランドを統合することで、企業ブランドのイメージが広がり、多様な商品を提供できる企業イメージを構築することができます。
これにより、新しい商品を投入する際にも、既存の商品ブランドから独立した新しいブランドを作る必要がなく、企業ブランドの下に位置づけることで、商品開発にかかる費用を抑えることができます。しかし、企業ブランドと商品ブランドの統合は、失敗することもあります。商品ブランド同士が重複している場合や、消費者の嗜好に合わない商品ブランドを含んでいる場合、企業ブランドの信頼感を損なうことがあります。また、商品ブランドが強い個性を持っている場合、統合することでその個性を失い、消費者からの支持を失う可能性があります。企業ブランドと商品ブランドを統合する場合は、企業のビジョンや戦略、商品ラインナップを考慮し、統合のメリットとデメリットをよく分析し適切な戦略を立てることが重要です。
【 企業ブランドと商品ブランドの分離戦略 】
企業ブランドと商品ブランドの分離戦略とは、企業が商品ブランドと企業ブランドを切り離し、それぞれを独立したブランドとして扱う戦略のことです。つまり、企業が複数の商品ブランドを所有している場合に、それらの商品ブランドを個別のブランドとして独立させ、企業ブランドとは別にマーケティングを行うことを指します。分離戦略は、企業ブランドが商品ブランドに与える影響を最小限に抑えることができます。企業ブランドが商品ブランドのイメージを乗っ取ってしまうと、商品ブランドが独自のブランドイメージを確立することが難しくなります。
このため、商品ブランドが独自のブランドイメージを構築し、消費者から認知されやすくするために、分離戦略が採用されることがあります。一方で、分離戦略によって、企業ブランドと商品ブランドのシナジー効果が低下するという問題があります。企業ブランドと商品ブランドが同じ名前であれば、企業ブランドの知名度が高いことが商品ブランドにもプラスに働くことがあります。また、商品ブランドの成功によって、企業ブランドにも良い影響が及ぶことがあります。このため、分離戦略を採用する場合は、注意が必要です。
■ 企業ブランドと商品ブランドの成功事例
【 TOYOTA|企業ブランドと商品ブランド 】
[ 商品ブランド・一部抜粋 ]
⚫︎ CROWN
⚫︎ COROLLA
⚫︎ PRIUS
⚫︎ LAND CRUISER
トヨタ自動車は、企業ブランドとして「品質、信頼性、革新性、環境保全」を掲げ、製品ブランドとして「カローラ」「プリウス」「レクサス」など多くの車種を展開しています。これらのブランド戦略により、トヨタは自動車業界での成功を収めています。
トヨタは、企業ブランドとして長年にわたって品質の高さをアピールしてきました。そのため、トヨタ車は「信頼性が高く、故障が少ない」というイメージを持つことが一般的であり、企業ブランドとしての信頼性を確立しています。また、トヨタはエコカーの先駆者として、環境保護にも力を入れています。トヨタの製品ブランドの中には、燃費が良く、排出ガスが少ない「プリウス」や、水素燃料電池車「ミライ」など、環境に優しい車種があります。これらの商品ブランドを展開することで、トヨタは環境保護に取り組む企業としてのイメージを構築しました。
また、トヨタは製品ブランドの1つである「レクサス」において、高級車市場に進出しました。レクサスは、高品質でありながら、上質で洗練されたデザインを持ち合わせています。これにより、トヨタは高級車市場においても成功を収め、企業ブランドの範疇を超えて、トップクラスの自動車メーカーとして認知されています。トヨタは、企業ブランドと製品ブランドの両方に注力することで、世界的な自動車メーカーとしての地位を確立し、成功を収めました。
[ 企業ブランドと商品ブランドの成功ポイント ]
⚫︎信頼性と品質の一貫性
トヨタは長年にわたり高品質な製品を提供し続け、消費者の信頼を築いています。特に「トヨタ生産方式」に代表される効率的な生産と品質管理により、世界中で信頼されるブランドとしての地位を確立しています。この品質へのこだわりが、ブランドの信頼性を高め、顧客満足度の向上につながっています。
⚫︎革新と技術力の強化
トヨタはハイブリッド技術や電気自動車など、環境に配慮した技術革新を積極的に進めています。特に「プリウス」や「MIRAI」などの車両は、先進的な技術を具現化した製品として高い評価を受けています。これにより、革新的で持続可能な企業としてのブランドイメージが強化されています。
⚫︎グローバルブランド戦略
トヨタは各地域ごとのニーズに対応した商品展開を行い、ローカライズされたマーケティング戦略を採用しています。これにより、各国・地域の消費者に密着した製品を提供し、ブランド力を高めています。
⚫︎企業の社会的責任(CSR)活動
トヨタは環境保護や地域社会への貢献を重視し、CSR活動に積極的に取り組んでいます。これにより、企業の社会的責任を果たすブランドとして評価を高め、企業イメージをさらに向上させています。
[ 出典 ] TOYOTAグローバルサイトより
【 SAMSUNG|企業ブランドと商品ブランド 】
[ 商品ブランド・一部抜粋 ]
⚫︎ GALAXY
⚫︎ GALAXY NOTE
⚫︎ GALAXY BOOK
⚫︎ SMART THINGS
Samsungは、韓国の多国籍企業であり、電子製品、家電製品、半導体、通信機器など多岐にわたる製品を手がける企業である。同社は、企業ブランドと製品ブランドの両方において成功した例とされている。まず、企業ブランドについては、Samsungは「Innovation」というブランド価値を持っていることが知られている。同社は革新的であり、技術の進歩をリードすることで知られている。このブランド価値は、多様な製品ラインナップを通じて表現されており、テレビ、スマートフォン、タブレットなど、多くの分野で革新的な製品を生み出している。
また、製品ブランドについても、Samsungは成功した例として挙げられる。Samsungは、製品ごとにブランドを設定しており、スマートフォンではGalaxy、タブレットではGalaxy Tab、テレビではQLED、OLEDなど、それぞれの製品ラインナップごとにブランドを設けている。このブランド戦略は、消費者が製品を識別しやすくするだけでなく、それぞれの製品に特化したブランディングを行うことで、競合他社との差別化を図っている。以上のように、Samsungは、企業ブランドと製品ブランドの両方において成功した例である。同社は、技術の進歩をリードし、消費者が識別しやすい製品ラインナップを提供することで、強いブランドイメージを築いている。
[ 企業ブランドと商品ブランドの成功ポイント ]
⚫︎革新技術と多様な製品展開
SAMSUNGは、スマートフォン、家電、半導体など多岐にわたる製品を提供し、技術革新を通じてブランド価値を高めています。特に「Galaxy」シリーズなどのハイエンドスマートフォンで市場を牽引し、最新技術の採用による差別化を図っています。
⚫︎グローバル市場でのプレゼンス
SAMSUNGは世界中で強力なプレゼンスを確立しており、各国のニーズに合わせた製品を展開。地域ごとのマーケティング戦略も取り入れることで、幅広い顧客層にリーチしています。
⚫︎ブランド認知度の強化
積極的なマーケティングキャンペーンや広告投資により、SAMSUNGは強力なブランド認知度を構築。特にスポーツイベントへのスポンサーシップやコラボレーションにより、消費者との接点を増やし、親近感を醸成しています。
⚫︎エコフレンドリーな取り組み
環境への配慮も重視しており、持続可能な製品やリサイクル技術を採用。これにより、サステナビリティの観点でも信頼されるブランドとして評価されています。
[ 出典 ] SAMSUNG公式サイトより
【 Procter & Gamble|企業ブランドと商品ブランド 】
[ 商品ブランド・一部抜粋 ]
⚫︎ DOWNY
⚫︎ FEBREZE
⚫︎ GILLETTE
⚫︎ PAMPERS
Procter & Gamble (P&G)は、世界中の家庭で利用される多くのハウスホールド製品を提供するグローバル企業です。P&Gは、企業ブランドと商品ブランドをうまく統合することで、強力なブランドポートフォリオを構築しました。P&Gは、企業ブランドとしての「Procter & Gamble」の下で、多様な商品ブランドを展開しています。P&Gの商品ブランドの中でも、特に有名なブランドとしては、Tide、Pampers、Gillette、Crest、そしてBountyがあります。それぞれのブランドは、単独でも有名であり、ブランドロイヤルティが非常に高いとされています。
P&Gは、商品ブランドごとに異なるマーケティング戦略を採用し、消費者に商品の違いを訴求しています。また、P&Gは企業ブランドの一部であることを積極的にアピールし、商品ブランドが企業ブランドの信頼性や品質に基づいていることを示唆することで、消費者に安心感を与えています。さらに、P&Gは商品ブランドごとに異なる価値観を強調することで、商品ブランドをより鮮明にし、消費者に訴求しています。たとえば、Pampersは子育てに対する情熱を表し、Tideは洗濯に対する情熱を表します。これらのブランドは、消費者に強い共感を呼び起こし、商品ブランドとしてのロイヤルティを高めることにつながっています。P&Gは、商品ブランドの構築に力を入れることで、企業ブランドの強化につながり、顧客ロイヤルティの向上や市場シェアの拡大に成功しました。
[ 企業ブランドと商品ブランドの成功ポイント ]
⚫︎製品品質と信頼性の維持
P&Gは、消費者に信頼される高品質な製品を長年提供してきました。洗剤やヘアケア製品などの消費財を中心に、優れた効果を実感できる製品を開発することで、強力なブランドロイヤルティを築いています。
⚫︎複数ブランドによる市場シェアの確保
P&Gは多様な商品ブランドを展開し、複数の市場セグメントに対応しています。これにより、消費者のニーズに幅広く応え、各ブランドが異なる顧客層にリーチすることで、競争力を強化しています。
⚫︎革新的なマーケティング戦略
P&Gは、積極的に広告やプロモーションを行い、消費者とのエンゲージメントを高めています。デジタルマーケティングやインフルエンサーとの協力を通じて、現代の消費者に訴求しやすい戦略を採用しています。
⚫︎サステナビリティの推進
P&Gは環境保護を重視し、サステナブルな商品開発に注力しています。再生可能な材料の使用やエネルギー効率の高い製造プロセスを取り入れることで、持続可能なブランドとしての地位を確立しています。
[ 出典 ] Procter & Gambleグローバルサイトより
【 NESTLE|企業ブランドと商品ブランド 】
[ 商品ブランド・一部抜粋 ]
⚫︎ KITKAT
⚫︎ NESCAFE
⚫︎ AERO
⚫︎ Häagen-Dazs
ネスレ(Nestle)は、スイスに本社を置く総合食品・飲料メーカーであり、コーヒー、水、チョコレート、乳製品、健康食品などの製品を展開しています。ネスレのブランド戦略は、強力な企業ブランドと、その下に広がる多数の商品ブランドからなります。ネスレの企業ブランドは、高品質・信頼性・安全性の象徴として認知されており、企業ブランドとしての価値を高めることで、多数の商品ブランドの信頼性を確立しています。一方、商品ブランド戦略は、カテゴリーや市場ごとに特化し、地域に密着したマーケティングを展開することで、顧客のニーズに合わせた製品を提供しています。
また、ネスレは多様な商品ラインナップとともに、継続的なブランド戦略の改善に力を注いでおり、商品ブランドのポートフォリオを定期的に見直すことで、市場の変化に対応しています。例えば、日本市場においては、子ども向けのジュースブランド「キッズモード」や、カフェインレスコーヒーブランド「ネスカフェ デカフェ」を展開し、消費者の健康志向に合わせた製品ラインナップを拡大しました。ネスレの成功には、企業ブランドと商品ブランドのバランスの良い統合が大きく寄与しています。企業ブランドの価値を高めることで、商品ブランドの信頼性を確立し、地域に密着したマーケティングを通じて、市場のニーズに合わせた製品を提供することで、顧客の信頼を獲得しています。
[ 企業ブランドと商品ブランドの成功ポイント ]
⚫︎多様な製品ラインナップと革新
Nestleは、食品・飲料からヘルスケアまで多様な製品ラインを展開し、消費者の幅広いニーズに応えています。新しい製品の導入や既存製品の改良を通じ、消費者に常に新しい価値を提供し、ブランドの革新性を維持しています。
⚫︎グローバルブランド戦略とローカライゼーション
Nestleは世界中でブランドの認知度を高めるため、各地域の文化やニーズに合わせた商品展開を行っています。現地市場に合わせたマーケティング戦略と製品開発により、グローバル市場で成功しています。
⚫︎サステナビリティへの取り組み
Nestleは、持続可能な発展を目指し、環境保護や社会貢献に積極的に取り組んでいます。原材料の調達から製品パッケージングに至るまで、エコフレンドリーなプロセスを取り入れることで、消費者に責任あるブランドとしてのイメージを強くアピールしています。
⚫︎消費者とのエンゲージメント強化
Nestleは、デジタルマーケティングやSNSを活用し、消費者との双方向コミュニケーションを強化しています。これにより、消費者のフィードバックを取り入れ、ブランド体験を向上させると同時に、長期的なブランドロイヤルティを築いています。
[ 出典 ] NESTLEグローバルサイトより
【 UNILEVER|企業ブランドと商品ブランド 】
[ 商品ブランド・一部抜粋 ]
Unileverは、多数のブランドを有する世界的な企業であり、世界中で数十億人の消費者に製品を提供しています。同社は、企業ブランドと商品ブランドの統合戦略を採用し、世界中で数多くの成功を収めています。Unileverの主要な商品ブランドの1つである「Dove」は、長年にわたり女性向けの美容製品として認知されていました。しかし、同社は、より多様な視点から美しさを見つめ直すことを目指し、2017年に「Dove Real Beauty」というキャンペーンを開始しました。このキャンペーンでは、標準的な美の定義を拡張するため、様々なボディタイプ、肌の色、年齢の女性が登場し、それらを受け入れることを呼びかけました。このキャンペーンは、社会的メディア上で話題となり、多くの肯定的な反応を呼び起こしました。Unileverは、企業ブランドと商品ブランドの統合を促進するために、企業ブランドである「Unilever」の名前を使用し、「Unilever Dove」のように使用することもあります。
また、Unileverは、企業ブランドと商品ブランドの分離戦略を採用することもあります。同社の「Knorr」ブランドは、多様な調味料やスープ製品を展開していますが、そのマーケティング戦略は、個々の商品ブランドに焦点を当てることにあります。Knorrは、消費者に向けた個別のキャンペーンを展開し、個々の商品によって異なるバリュープロポジションを提供しています。これにより、Knorrは、多様な消費者に対して、さまざまな美味しさの選択肢を提供しています。Unileverは、企業ブランドと商品ブランドの統合戦略と分離戦略の両方を採用しており、それぞれのブランド戦略が異なるブランドのニーズを満たすように調整されています。この柔軟性のあるブランド戦略は、同社が世界的な市場で競争力を維持するのに役立っています。
[ 企業ブランドと商品ブランドの成功ポイント ]
⚫︎多様なブランドポートフォリオ
Unileverは、消費財市場において幅広いブランドを展開し、それぞれ異なるターゲット層にアプローチしています。食品から日用品、パーソナルケア製品まで、多彩な商品ポートフォリオを持つことで、様々なニーズに応えると同時に、各ブランドがユニークな価値を提供することが可能です。
⚫︎サステナビリティと社会的責任の強調
Unileverは、企業としての社会的責任を重要視しており、サステナビリティに力を入れたブランド活動を展開しています。「持続可能なビジネスの成長」というビジョンを掲げ、環境保護やコミュニティ支援に取り組むことで、消費者に信頼されるブランドイメージを構築しています。
⚫︎ブランドイノベーション
Unileverは、消費者の変化するニーズに対応するため、絶えずイノベーションを行っています。新しい製品ラインの投入や、既存ブランドの再定義を通じて、ブランド価値を向上させ、マーケットでの競争力を強化しています。
⚫︎デジタルマーケティングと消費者のエンゲージメント強化
Unileverは、デジタルチャネルを駆使し、消費者との関係性を強化しています。SNSやオンライン広告を活用してターゲット層にアプローチし、ブランドのメッセージを効果的に伝えることで、ブランドロイヤルティの向上を図っています。
[ 出典 ] Unileverグローバルサイトより
■ まとめ
企業ブランドと商品ブランドは、互いに深く結びつき、影響を与え合う不可欠な要素です。企業ブランドの力は商品への信頼感と認知度を高め、商品ブランドの成功は企業全体のイメージと価値を向上させます。そのため、両者を総合的に捉えたブランド戦略の構築が重要となってきます。この二つのブランドを一体化させることで、統一された印象を作り出せる一方、必要に応じて分けることで、事業の多角化にも柔軟に対応できるのです。
成功企業の例からは、ブランドの一貫性と明確なコンセプトの重要性が浮かび上がってきます。これからの時代は、グローバル化やデジタルシフト、サステナビリティへの対応など、より戦略的なブランド展開が求められます。お客様のニーズに寄り添ったブランドづくりを進めることで、長期的な支持を獲得し、市場での競争力を確保することができます。このように企業ブランドと商品ブランドを効果的に組み合わせることで、明確な戦略のもと、市場競争を勝ち抜くための強みを築くことができるのです。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
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