
[ ブランディングデザイン ]
VI(ビジュアル・アイデンティティ)の進化とトレンド
VI(ビジュアル・アイデンティティ)は、企業やブランドの個性を視覚的に表現する重要な手段であり、その役割は時代とともに進化しています。消費者の価値観やデジタル技術の進化に伴い、ブランドは新たなデザイン要素や表現方法を取り入れ、常に変化する市場に対応しています。シンプルでミニマルなデザインのトレンドから、エモーショナルなつながりを強調するビジュアルの採用まで、VI(ビジュアル・アイデンティティ)の進化はブランドの戦略と深く結びついています。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、VIの進化の背景を探り、最新のトレンドを解説するとともに、企業がどのように時代に合わせて進化させているかについて詳しく解説します。
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)の基本概念

【 VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か? 】
VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは、ブランドが視覚的に表現される要素の総称です。これには、ロゴ、カラー、フォント、レイアウト、グラフィック要素などが含まれブランドのメッセージや価値観を視覚的に伝える役割を担っています。VI(ビジュアル・アイデンティティ)はブランドの個性を表現し、顧客に一貫した印象を与えるために設計されています。
[ 関連記事 ] VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?
【 ブランドにおけるVI(ビジュアル・アイデンティティ)の役割 】
VI(ビジュアル・アイデンティティ)は、ブランドの認知度を高め、顧客とのつながりを築くために不可欠です。統一されたVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、ブランドがどのチャネルを通じてコミュニケーションを図るかに関わらず、顧客に一貫したメッセージを伝えることができます。これにより、ブランドの信頼性やロイヤルティが向上し、長期的な成功に繋がります。
【 成功するVI(ビジュアル・アイデンティティ)の要素 】
成功するVI(ビジュアル・アイデンティティ)には、いくつかの共通した要素があります。シンプルで覚えやすいデザインであること、次にブランドのコアバリューを反映していること。さらに、さまざまなメディアやプラットフォームに適応できる柔軟性も重要です。VI(ビジュアル・アイデンティティ)は視覚的に魅力的であるだけでなく、ブランドのストーリーやメッセージを効果的に伝えるものでなければなりません。
[ 出典 ] Uber公式サイトより
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)の進化:過去から現在まで
【 伝統的なVI(ビジュアル・アイデンティティ)の変遷 】
VI(ビジュアル・アイデンティティ)の歴史は長く、時代とともにそのデザインや役割も変化してきました。20世紀初頭のVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、企業のロゴやスローガンに焦点を当て、主に印刷物で使用されていました。これらのデザインは、企業の信頼性や質の高さを視覚的に表現するために作られました。時間が経つにつれ、VI(ビジュアル・アイデンティティ)は広告やパッケージングなど、さまざまなメディアに広がりを見せるようになりました。
【 デジタル時代におけるVI(ビジュアル・アイデンティティ)革新 】
デジタル技術の発展により、VI(ビジュアル・アイデンティティ)は新たな進化を遂げました。WEBやソーシャルメディア、モバイルアプリなど、オンラインでのプレゼンスが重要視されるようになるにつれ、デジタル環境に適応したVI(ビジュアル・アイデンティティ)のデザインが求められるようになりました。特にアニメーションやインタラクティブな要素を取り入れたデザインがブランドの視覚的な表現に新たな価値をもたらしています。
【 近年のビジュアル・アイデンティティVI(ビジュアル・アイデンティティ)と事例 】
近年では、ミニマリズムがVI(ビジュアル・アイデンティティ)デザインの主要なトレンドとして注目されています。シンプルで洗練されたデザインがブランドのクリーンでモダンなイメージを強調しています。また、手書き風のフォントやイラストを用いたデザインが親しみやすさを演出するために使用されています。これらのトレンドを採用することでブランドの差別化を図り、顧客の注目を集めることができます。
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)のトレンド

【 概要 】
現在のVI(ビジュアル・アイデンティティ)のトレンドは、シンプルでクリーンなデザイン、ミニマリズム、デジタルファーストのアプローチ、そして持続可能性を重視したデザインが主流です。これらのトレンドは、ブランドのメッセージを効果的に伝えるとともに、デジタル環境やグローバル市場での認知度を高めるために進化してきました。さらに、消費者の価値観の変化に対応し、ブランドが社会的責任を果たすことを強調するデザイン要素も取り入れられています。
TOYOTA|VI(ビジュアル・アイデンティティ)
[ Visual Identity System ]
トヨタビジュアル・アイデンティティ・システム(VIS)は、トヨタブランドとその製品のコミュニケーションを統一された方法で導くための包括的なツールです。VI(ビジュアル・アイデンティティ)を構成するさまざまなデザイン要素に関する情報とガイダンスを見つけることができます。
[ 一貫性を通じて認識を構築する ]
正確で統一されたブランド表現を維持することで、トヨタブランドとその製品を一貫して提示し、市場での認知度とブランドへのロイヤルティを促進します。認知度や評価が高ければ高いほど、顧客が当社の製品やサービスを選ぶ可能性が高くなります。
[ デザインの構成要素 ]
トヨタのビジュアル・アイデンティティ・システム(VIS)の中心にあるのは、TOYOTAロゴです。ステージングプラットフォームに配置されることで視認性が向上しブランドと製品を統一するのに役立ちます。タイポグラフィは、すべてのコミュニケーションにおいて一貫したブランドを伝えるための強力で統一的な要素です。高い可読性とモバイルデバイスに対応するためにカスタムデザインされた「トヨタ・タイプ」は、近づきやすく人間味があり、技術的に高度で、細部にまでこだわりがある、特徴的で現代的なサンセリフ体です。レイアウトフレームワークは、ビジュアル・アイデンティティ・システム(VIS)の要素を統一し、すべてが読みやすく明確にトヨタであることを保証します。
[ 出典 ] TOYOTA公式サイトより
■ 未来のビジュアル・アイデンティティ(VI)トレンド

【 概要 】
未来のVI(ビジュアル・アイデンティティ)のトレンドは、技術の進化と社会の変化に伴い、よりインタラクティブでパーソナライズされた体験を提供する方向へ進むと予測されています。AIや拡張現実(AR)、仮想現実(VR)の普及により、VI(ビジュアル・アイデンティティ)は静的なデザインから動的で体験型のものへとシフトしていくでしょう。また、持続可能性とエシカルデザインの重要性がさらに高まり、環境に配慮したデザインが標準となると考えられます。加えて、グローバル市場における多様性と包摂性の強化が求められ、文化的に敏感で柔軟なVI(ビジュアル・アイデンティティ)が求められるようになるでしょう。
【ミニマリズムからポストモダンへ 】
今後、VI(ビジュアル・アイデンティティ)のデザインはミニマリズムからさらに進化し、ポストモダン的な要素を取り入れたデザインが主流になると予測されます。これは、伝統的なデザインルールを破り、より大胆でクリエイティブな表現を目指す動きです。個性的でユニークなデザインが、ブランドの独自性を際立たせる手段として重要になるでしょう。
【 インタラクティブなVI(ビジュアル・アイデンティティ)とデジタルエクスペリエンス 】
未来のVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、インタラクティブ性を持つデザインが主流となるでしょう。ユーザーがロゴやグラフィック要素と直接対話できるインタラクティブVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、ブランド体験をよりパーソナルで魅力的なものにします。これにより、顧客はブランドとのエンゲージメントを深め、より強い感情的なつながりを感じることができます。
【 AIとデータドリブンなビジュアル・アイデンティティ(VI)デザイン 】
AI技術の進化に伴い、VI(ビジュアル・アイデンティティ)デザインもデータドリブンなアプローチを取り入れるようになるでしょう。AIを活用することで顧客の嗜好や行動データを基に個別に最適化されたVI(ビジュアル・アイデンティティ)が自動生成される可能性があります。このようなパーソナライズされたデザインは、顧客一人ひとりに合わせたブランド体験を提供しブランドの競争力を高めることが期待されます。
■ VI(ビジュアル・アイデンティティ)の進化

【 NetflixのVI(ビジュアル・アイデンティティ)進化 】
概要
ストリーミングサービスとして成功を収める中、VI(ビジュアル・アイデンティティ)も大きく進化してきました。NetflixのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、企業の成長とともに進化し洗練されたデザイン、象徴的なロゴで強力なブランド認知を確立しました。この進化は企業の価値やサービスの変化に対応しグローバルな視認性とデジタル環境での適応性を高めるために行われました。
● 初期のロゴ(1997年〜2000年代前半)
[ レンタルサービス時代 ]
1997年当初はDVDの宅配レンタルサービスとしてスタートしました。この時期のロゴは、映画の楽しさを強調するために映画フィルムを象徴する要素やレトロなデザインが取り入れられていました。赤と黒の配色が特徴でヴィンテージ感のあるタイポグラフィが使用されていました。
[ ビジュアルの特徴 ]
ロゴには映画フィルムの要素が含まれ、視覚的に映画との関連を強調していましたが、全体的には少し複雑で時代感があるデザインでした。
● 初期ストリーミング時代(2007年〜2014年)
[ ストリーミングサービスの導入 ]
2007年にストリーミングサービスが開始されると、NetflixのVI(ビジュアル・アイデンティティ)も徐々に進化し、デジタルプラットフォームに対応するためのシンプルでモダンなデザインへと移行しました。ロゴはよりフラットで、鮮明な赤と白のカラーを強調するデザインに改められました。
[ 新しいロゴ ]
この時期のロゴは、従来の映画フィルムの要素を排除し、Netflixの文字をシンプルかつ明確に表現するものになりました。これにより、ブランドのデジタル転換が視覚的にも明確に示されました。
● グローバル拡大とデザインの洗練(2014年〜2016年)
[ グローバル市場への進出 ]
Netflixが国際的に拡大する中で、VI(ビジュアル・アイデンティティ)はさらに洗練され、グローバル市場での視認性を強化するためにデザインが簡素化されました。ロゴのフォントが太くなり、フラットでモダンなデザインが採用されました。
[ 2014年のロゴ改訂 ]
2014年には、ロゴが再度改訂され、Netflixの文字がシンプルで力強いものになり、視認性が向上しました。赤い背景に白い文字が中央に配置され、強いブランドアイデンティティが確立されました。
● Nアイコンの導入と現在のVI(ビジュアル・アイデンティティ)(2016年〜現在)
[ Nアイコン ]
2016年、Netflixは新しいVI(ビジュアル・アイデンティティ)の一環として「N」アイコンを導入しました。このアイコンは、モバイルアプリやソーシャルメディアでの使用を念頭に置いてデザインされシンプルでモダンなアプローチが取られています。この「N」アイコンは、折り重なる線によって構成され3D効果がありNetflixのブランドを象徴する強力なビジュアルシンボルとなっています。
[ デジタルファースト ]
このアイコンは、デジタルプラットフォームでの小さいサイズでも高い視認性を持ち、Netflixのグローバルなプレゼンスをさらに強化しました。
● 現在のVI(ビジュアル・アイデンティティ)と未来への展望
[ 一貫性と柔軟性 ]
現在、NetflixのVI(ビジュアル・アイデンティティ)はシンプルで一貫性を保ちながら、さまざまなプラットフォームでの柔軟な適用が可能なデザインとなっています。ブランドの認知度は高く、世界中で親しまれるVI(ビジュアルアイデンティティ)確立されています。
[ 没入型デザイン ]
Netflixは今後、視覚的なエクスペリエンスをさらに強化し、ユーザーがコンテンツにより深く没入できるようなデザイン要素を取り入れていく可能性があります。
[ 引用 ] Ntetflix-Aboutより

【 PatagoniaのVI(ビジュアル・アイデンティティ)進化 】
概要
Patagoniaは、環境保護とサステナビリティを企業理念の中心に据えたアウトドアブランドとして知られています。PatagoniaのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、企業のサステナブルな価値観を強く反映したものです。ブランドのロゴ、カラー、フォント、製品デザインなど、すべてのビジュアル要素が自然との調和や持続可能性を強調しています。Patagoniaは、環境への影響を最小限に抑えるために、リサイクル素材の使用やエコフレンドリーなデザインを積極的に取り入れています。VI(ビジュアル・アイデンティティ)は単にブランドの視覚的な認識を高めるだけでなく、企業の環境保護へのコミットメントを伝える重要な手段となっています。
● 創業期のVIと自然へのリスペクト(1970年代〜1980年代)
[ 創業の背景 ]
Patagoniaは1973年に創業され、当初から自然保護と環境に配慮したビジネスを展開してきました。初期のVI(ビジュアル・アイデンティティ)には、自然とのつながりを強調するためにシンプルで自然志向のデザインが取り入れられていました。
[ ロゴの誕生 ]
Patagoniaの象徴的なロゴは、南米アンデス山脈のフィッツロイ山をモチーフにしており、ブランドのルーツであるアウトドアと自然への愛情を表現しています。このロゴは、冒険精神と自然保護の象徴として広く認知されました。
● サステナビリティへのシフト(1990年代〜2000年代)
[ 環境への取り組み ]
1990年代に入ると、Patagoniaは環境保護への取り組みをさらに強化し、VI(ビジュアル・アイデンティティ)にもその意識が反映され始めました。この時期、製品にはオーガニックコットンやリサイクル素材が使用され、製品デザインにも環境への配慮が組み込まれました。
[ カタログと広告 ]
Patagoniaは、カタログや広告を通じて、環境問題に対するメッセージを発信しました。VI(ビジュアル・アイデンティティ)はこれらのメッセージを視覚的に強調し、ブランドのエシカルなスタンスを支持する顧客を引き付けました。
● リサイクルとサステナブルデザインの推進(2000年代〜2010年代)
[ リサイクル素材の使用 ]
Patagoniaは、リサイクルポリエステルなどの持続可能な素材を製品に使用することで、環境負荷を軽減する取り組みを進めました。これに伴い、VI(ビジュアル・アイデンティティ)も環境に優しいデザインを重視するようになりました。
[ エシカルなVI(ビジュアル・アイデンティティ) ]
ブランドの広告や製品パッケージにおいて、エシカルで環境に配慮したメッセージを一貫して伝えるデザインが採用されました。これにより、PatagoniaのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は単なるブランドの識別ではなく企業の環境保護への姿勢を視覚的に表現する重要な要素となりました。
● Worn Wearプログラムと循環型デザイン(2010年代〜現在)
[ Worn Wearプログラム ]
Patagoniaは「Worn Wear」プログラムを導入し、製品の長寿命化とリサイクルを推進しました。このプログラムのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、製品の再利用や修理を推奨するメッセージを強調し、持続可能なライフスタイルをサポートしています。
[ 循環型デザイン ]
PatagoniaのVI(ビジュアル・アイデンティティ)は、循環型経済の理念を反映したデザインを採用し製品の再利用やリサイクルを促進するためのビジュアル要素を強調しています。消費者に持続可能な選択を促すと同時に、ブランドのエコフレンドリーなイメージをさらに強化しました。
● 未来への展望
[ サステナブルなビジュアル・アイデンティティ(VI)の進化 ]
今後もサステナビリティを重視したVI(ビジュアル・アイデンティティ)を進化させると予測されます。新たな素材や技術の導入により環境負荷をさらに軽減するデザインを追求するでしょう。
[ グローバル展開と文化的配慮 ]
ブランドがグローバル市場でのプレゼンスを拡大する中で、異なる文化や地域の価値観を尊重したローカライズドデザインが求められるようになると考えられます。
[ 引用 ] Patagonia公式サイトより
[ 引用 ] BUSINESS INSIDERより
■ まとめ
ビジュアル・アイデンティティ(VI)は、企業やブランドが市場で認知されるための強力なツールです。ビジュアル・アイデンティティ(VI)の進化の歴史を理解し、現在のトレンドや未来の予測を取り入れることで、ブランドの競争力を高めることができます。ミニマリズムやレスポンシブデザイン、インタラクティブデザインやサステナブルデザインなど、最新のトレンドを積極的に採用し、未来のビジュアル・アイデンティティ(VI)戦略を見据えた取り組みを行いましょう。成功事例から学び、自社のビジュアル・アイデンティティ(VI)を進化させることで、時代の変化に対応し、持続的な成長を遂げることができるでしょう。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
■ おすすめ関連記事

[ おすすめ記事 ] VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?

[ おすすめ記事 ] VI(ビジュアル・アイデンティティ)の目的と開発事例とは