CHIBICO BLOG

サブブランド戦略のメリットとデメリットとは

[ ブランド戦略 ]

サブブランド戦略のメリットとデメリットとは?

サブブランド戦略は、企業が新たな市場やターゲット層にアプローチするための手法です。メインブランドの価値を活かしつつ、異なる市場や製品ラインに特化したブランドを展開することで、企業全体のブランド力を強化し、新規顧客の獲得を目指します。しかし、サブブランド戦略には多くのメリットがある一方で、デメリットやリスクも存在します。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、サブブランド戦略の定義、メリットとデメリットを解説し、成功事例を紹介しながら、実行時の注意点について詳しく解説します。

■ サブブランド戦略とは?

サブブランド戦略とは?

【 サブブランド戦略の定義 】

サブブランド戦略とは、企業がメインブランドの下に位置するブランドを複数展開し、それぞれのブランドが独自の製品や市場に焦点を当てる手法です。これにより、企業はメインブランドの信頼性や価値を維持しつつ、新たなターゲット市場や顧客層にアプローチできます。サブブランドは、メインブランドの基盤を活かして新たな分野で差別化した価値を提供することで、企業の製品やサービスラインを多角化し、市場での競争力を高める役割を果たします。例えば、トヨタのレクサスやナイキのジョーダンブランドなどが、親ブランドの知名度を活かしながら高級市場や特定の消費者ニーズに応えています。サブブランドは、メインブランドに対する顧客の信頼を基盤に、柔軟に独自のポジショニングを確立し、新しい価値を創造する重要な役割を担います。

[ 関連記事 ] サブブランドとは何か?戦略と事例について

【 サブブランド戦略が企業に与える役割 】

サブブランド戦略は、企業にとって多くの役割があります。まず、特定の市場セグメントに応じた製品やサービスを提供することで、顧客層を広げる役割を担います。これにより、企業は異なるニーズや消費者のライフスタイルに柔軟に対応でき、より広範な市場での競争力を確保できます。また、サブブランド戦略は、メインブランドの強みを活かしつつ、新たなブランドイメージを構築することで、顧客の多様な期待に応えることが可能です。さらに、サブブランドは企業のリスク分散にも寄与します。複数のブランドを展開することで、特定のブランドや市場での失敗が企業全体に与える影響を抑えることができるため、事業の安定性が向上します。結果として、サブブランド戦略は企業の持続的な成長を促進し、長期的な競争優位性を維持するための重要な手段となります。

■ サブブランド戦略3つのメリット

サブブランド戦略3つのメリット

1. ターゲットの細分化と新規顧客の獲得

ブランドイメージを高めるための1つの方法は、ターゲットの細分化です。市場を細分化することで、異なる顧客セグメントごとに特化した商品やサービスを提供でき、より的確にニーズを満たすことができます。これにより、新規顧客の獲得が可能になりブランド全体の認知度とイメージが向上します。特に、サブブランドを展開することで、各セグメント毎に対応した独自のメッセージが発信でき、ブランド全体としての幅広い消費者のニーズに応えられます。細分化によってブランドがより親しみやすくなるため、ブランドイメージの強化につながります。

2. メインブランドの価値向上と相乗効果

サブブランド戦略を用いることで、メインブランドの価値をさらに高めることができます。サブブランドは、メインブランドの信頼性や認知度を活かしながら独自の市場で成功するため、結果的にメインブランドの知名度や価値が向上します。また、メインブランドとサブブランドが相互に補完し合うことで、ブランド全体の競争力が強化されます。たとえば、レクサスがトヨタに、ジョーダンがナイキに与えた影響のように、サブブランドが成功することで、メインブランドに対する消費者の信頼やロイヤルティがさらに高まります。

[ 関連記事 ] メインブランドとは何か?戦略と事例について

3. リスク分散による企業の柔軟性向上

サブブランド戦略は、リスク分散の観点でも企業に大きなメリットをもたらします。サブブランドを複数展開することで、企業は異なる市場や消費者ニーズに対応でき、特定の市場や製品カテゴリでの失敗が企業全体に与える影響を軽減できます。また、異なるブランドが異なる戦略を展開することで、事業の柔軟性も向上し、外部環境の変化に迅速に対応できます。結果として、企業は長期的に安定した成長を続けることが可能となり、ブランド全体のイメージ向上にもつながります。

■ サブブランド戦略3つのデメリット

サブブランド戦略3つのデメリット

1. ブランドイメージの希薄化と混乱リスク

サブブランド戦略には、ブランドイメージの希薄化や混乱のリスクがあります。複数のサブブランドを展開すると、それぞれのブランドが異なるメッセージやポジショニングを持つため、消費者がどのブランドを選ぶべきか混乱する可能性があります。また、サブブランドが増えすぎると、メインブランド全体の統一感が失われ、ブランドの強みや信頼性が薄れてしまうリスクがあります。この結果、ブランド全体のイメージがぼやけ、消費者にとって魅力が低下する可能性があります。

[ 関連記事 ] ブランドイメージを高めるためのデザインとは?

2. ブランド管理コストの増加

サブブランド戦略は、ブランド管理にかかるコストが増加する点もデメリットです。各サブブランドには、独自のマーケティング、広告戦略、製品開発が必要となり、その分の人材や資金が必要です。また、複数のサブブランドを展開することで、全体のブランド戦略を統一するための管理が複雑化します。これにより、企業の運営コストが膨らみ、全体的な収益性に影響を与える可能性があります。適切なリソース配分が求められるため、企業の戦略的な判断が重要です。

3. 自社ブランド間での競合リスク

サブブランドを複数展開する場合、自社ブランド同士が競合するリスクがあります。特に、ターゲット市場が重なる場合、サブブランドがメインブランドや他のサブブランドと市場を奪い合い、結果として売上が分散してしまう可能性があります。この現象が発生すると、全体のブランド力が弱まり、企業全体の利益を損なうことになります。そのため、サブブランド展開時には、明確な市場セグメントや差別化戦略を設定することが重要です。

■ サブブランド戦略の成功事例

PANASONICとTECHNICSのブランド関係

【 PANASONICとTECHNICSのサブブランド戦略 】

Panasonic(パナソニック)は、家電や電子機器の総合ブランドとして幅広い製品を展開していますが、Technics(テクニクス)はその中でも特にオーディオ機器に特化した高級サブブランドです。Technicsは、特にレコードプレーヤーやアンプ、スピーカーなどの高品質なオーディオ製品で知られており、音響マニアやプロフェッショナルから高い評価を受けています。1970年代に高級オーディオブランドとして設立されたTechnicsは、一時期活動を休止していたものの、近年復活し、再びオーディオ市場での地位を確立しました。Panasonicは、日常的な家電製品に信頼を置く顧客層に加え、オーディオ愛好者やプロフェッショナルなユーザーをTechnicsでターゲットにすることで、異なる市場をカバーし、ブランド全体の価値を高めています。このサブブランド戦略は、メインブランドの認知度を活かしつつ、専門的な分野での差別化を実現しています。

サブブランド戦略の成功ポイント

⚫︎明確なターゲット層の区分
Panasonicは一般向け、Technicsは音響にこだわる愛好者向けの位置付け。
⚫︎独自のブランド価値の構築
Technicsが高音質と専門性のイメージを強調し、プレミアム感を確立。
⚫︎一貫したブランドビジョン
両ブランドとも信頼性と品質を軸にしており、顧客ニーズに合わせた製品を展開。

[ 出典 ] パナソニック株式会社公式サイトより
[ 出典 ] Technics公式サイトより

ROLEXとTOUDERのブランド関係

【 RolexとTouderのサブブランド戦略 】

Rolex(ロレックス)は高級時計の代名詞として知られていますが、Tudor(チューダー)はそのサブブランドとして展開されています。Tudorは、Rolexの技術的な信頼性とデザイン要素を活かしつつ、より手頃な価格帯で提供されているのが特徴です。1926年に誕生したTudorは、ロレックスの高級感や品質を継承しながらも、若年層や新しい顧客層をターゲットにしており、堅牢さやスポーティーなデザインが評価されています。このサブブランド戦略により、Rolexは高級時計市場におけるプレミアムなポジションを維持しながら、Tudorで新規顧客の獲得を図っています。特に、Tudorは冒険家やスポーツ愛好者向けに強化され、機能性とデザイン性を両立させており、結果としてRolex全体のブランド価値を下支えしつつ、異なるターゲット層にアプローチしています。

サブブランド戦略の成功ポイント

⚫︎異なるターゲット層の明確化
Rolexは高級市場を狙い、Tudorは低価格帯で若年層や新規顧客をターゲットに設定。
⚫︎独自のブランドアイデンティティ
Tudorは実用性と高性能を強調し、Rolexの信頼性を引き継いだブランド価値を提供。
⚫︎デザインと技術の差別化
Rolexと異なるデザイン機能を取り入れつつ、Rolexと一貫性のある高品質基準を維持。

[ 出典 ] ロレックス公式サイトより
[ 出典 ] チューダー公式サイトより

星野リゾートとリゾナーレのブランド関係

【 星野リゾートとリゾナーレのサブブランド戦略

星野リゾートは日本の高級リゾート施設の運営で広く知られていますが、リゾナーレはそのサブブランドとして展開されています。星野リゾート全体は、高級感と地域の特色を活かしたユニークな宿泊体験を提供することで定評がありますが、リゾナーレは特に家族連れやアクティビティを楽しむ旅行者に特化しています。リゾナーレは、親しみやすいデザインや充実したアクティビティプログラムを用意し、リゾート施設としての利便性と高級感を両立させています。このサブブランドは、星野リゾートが持つ高級感やサービスの質を維持しながら、家族向けのリラックスできる空間を提供することで、異なる顧客層にアプローチしています。星野リゾート全体のブランドイメージを損なうことなく、リゾナーレは新しい顧客層をターゲットにし、星野グループ全体の成功に寄与しています。

サブブランド戦略の成功ポイント

⚫︎異なる体験価値の提供
星野リゾートは自然と調和した高級感を、リゾナーレは家族やグループ旅行者向けのリゾート体験を提供。
⚫︎ターゲット層の明確な区分
星野リゾートは高級志向の顧客に、リゾナーレはファミリー層やアウトドア志向に特化。
⚫︎一貫したブランドメッセージ
どちらも特別な体験を軸にしつつ、それぞれの特徴を強調して顧客に訴求。

[ 出典 ] 星野リゾート公式サイトより
[ 出典 ] リゾナーレ公式サイトより

Docomoとahamoのブランド関係

【 Docomoとahamoのサブブランド戦略

Docomo(ドコモ)は日本最大級の通信事業者として知られていますが、ahamo(アハモ)はそのサブブランドとして2020年に誕生しました。ahamoは、デジタルネイティブ世代やコストパフォーマンスを重視するユーザーをターゲットにした低価格な通信プランを提供しています。従来のドコモは、幅広い年齢層やニーズに応じた総合的なサービスを提供していましたが、ahamoはオンライン専用のシンプルなプランで、若年層やスマートフォン利用者に特化した展開を行っています。これにより、ドコモは競争の激しい通信市場での競合他社との差別化を図り、特定の顧客層を効率的に取り込むことが可能になりました。このサブブランド戦略は、メインブランドの信頼性を維持しつつ、コスト効率を重視する新世代のユーザー層にアプローチし、全体のブランド力を強化しています。

サブブランド戦略の成功ポイント

⚫︎異なる顧客層への訴求
Docomoは幅広い層にサービスを提供し、ahamoは価格志向の顧客層をターゲットに設定。
⚫︎シンプルで低価格なプラン構成
ahamoはシンプルで低価格な料金プランを打ち出し、オンライン完結にすることでコストを削減。。
⚫︎ブランドイメージの分離と親和性
ahamoはDocomoの信頼性を引き継ぎつつ、独自の若々しくミニマルなブランドを確立。

[ 出典 ] NTTドコモ公式サイトよ
[ 出典 ] ahamo公式サイトより

サブブランド戦略の実行時の注意点

トーンオブボイス

【 一貫したブランドメッセージの維持 】

サブブランド戦略を実行する際には、全体の一貫したブランドメッセージを維持することが非常に重要です。複数のサブブランドが展開される場合、それぞれが異なる市場やターゲットにアプローチするため、メッセージやポジショニングが分散しがちです。しかし、メインブランドとの一貫性が欠けると、消費者に混乱を与え、ブランド全体の信頼性が低下するリスクがあります。特に、メインブランドとサブブランドが異なる価値観を発信すると、ブランドイメージが希薄化し、顧客のロイヤルティが損なわれる可能性があります。一貫性を保ちながらも、サブブランドごとの差別化を明確にすることで、全体のブランド力を強化することが求められます。

[ 関連記事 ] 一貫性のあるブランドメッセージを作るためのヒント

ターゲットオーディエンスの理解

【 適切な市場調査とブランドポジショニング

サブブランドの成功には、正確な市場調査と適切なポジショニングが不可欠です。ターゲット市場のニーズを把握し、メインブランドとの競合を避けつつ、差別化された価値を提供することで、サブブランドは市場で強力なポジションを確立できます。市場調査を通じて、消費者の嗜好やトレンドを理解し、メインブランドと競合することなく、独自のターゲット層を狙った商品展開が重要です。また、サブブランドの展開が他の自社ブランドと競合しないような明確なポジショニングを設定することで、カニバリゼーションを防ぎ、全体の売上向上につなげることが可能です。

[ 関連記事 ] ブランドポジショニングから始めるブランディング

メインブランドとサブブランドのバランス管理

サブブランドを成功させるためには、メインブランドとサブブランドのバランスを慎重に管理する必要があります。サブブランドの展開がメインブランドの価値を損なわないように、整合性を保ちながらブランド戦略を展開することが重要です。また、サブブランドがメインブランドを上回るほどの影響力を持つと、企業全体のブランドアイデンティティに影響を与える可能性があります。ブランドポートフォリオ全体を適切に調整し、メインとサブのバランスを常に見直すことが、長期的な成功に繋がります。

■ まとめ

サブブランド戦略は、企業にとって新たな市場を開拓し、メインブランドを補完しながらリスクを分散する強力なツールです。サブブランドの導入により、ターゲット市場を細分化し、新規顧客を獲得する一方で、メインブランドとの相乗効果を生むことが可能です。しかし、ブランドイメージの希薄化や管理コストの増加、ブランド間の競合といったデメリットも存在するため、戦略の実行には慎重な計画と管理が必要です。成功事例を参考にしつつ、一貫したブランドメッセージの維持や市場調査を行い、メインブランドとサブブランドのバランスを保ちながら、適切なポジショニングを設定することが、サブブランド戦略の成功の鍵となります。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

株式会社チビコ

【 株式会社チビコ 】
ブランド戦略とデザインの力でブランド価値を最大化し
永く愛され続けるブランドを支援する会社

ブランディングに関するご相談ご依頼はこちら

■ おすすめ関連記事

メインブランドとサブブランドの違いと役割とは

[ おすすめ記事 ] メインブランドとサブブランドの違いと役割とは

メインブランドとは何か?戦略と事例について

[ おすすめ記事 ] メインブランドとは何か?戦略と事例について

サブブランドとは何か?戦略と事例について

[ おすすめ記事 ] サブブランドとは何か?戦略と事例について


関連記事

  • CATEGORY

  • 日々の暮らしの中の愛用品や街で見かけた気になるデザイン
    弊社のデザイン実績などをご紹介させていただきます。
    ブランディングを語る際に使用する用語集です。
    分からない用語が出てきた場合などにご活用ください。