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【保存版】行動指針とは?有名企業の開発事例まとめ
行動指針は、企業のビジョンやミッションを実現するために、社員がどのように行動すべきかを具体的に示すガイドラインです。これにより、企業の価値観や文化が日常の業務に浸透し、全社員が共通の方向性を持って働くことが可能になります。成功する行動指針は、シンプルで実践しやすい言葉で構成され、社員が日々の業務でそれを意識しやすく、行動に移しやすいものであるべきです。行動指針の導入に成功した企業では、社員のモチベーションやチームワークが向上し、企業全体のパフォーマンスが高まるケースも多く見られます。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、行動指針の開発に役立つ具体的な事例を紹介し成功のポイントについて詳しく解説します。
■ 行動指針とは?
行動指針とは、企業や組織が理念やビジョンを実現するために、日々の行動や意思決定の基準となる考え方を具体的に示したものです。言い換えれば、「どう考え、どう動くか」を定義する“行動の軸”です。経営理念やミッションが「存在意義」や「目的」を語るものであるのに対し、行動指針はそれを実践へと導くための道しるべです。社員一人ひとりが迷ったとき、この指針が正しい選択へと導く役割を果たします。また、組織全体に共通の価値観を浸透させ、チームとして一体感を高めるためにも欠かせません。
■ 行動指針の5つの目的

1. 理念を実践に落とし込むため
行動指針は、企業理念やビジョンを“言葉だけの理想”で終わらせず、現場の具体的な行動へと変換するために存在します。理念は「何のために存在するのか」を示し、行動指針は「どう行動すべきか」を導く実践の道筋です。社員一人ひとりが日々の業務で迷ったとき、この指針を基準に判断することで、企業の理念が生きた行動として浸透します。つまり行動指針は、理念を現実の力に変える“翻訳者”のような存在なのです。
● 経営理念を日常業務に結びつける実践基準である
● 理念を「判断」や「行動」へと具体的に落とし込む
● 理念を“語るもの”から“体現するもの”へと進化させる
2. 社員の判断基準を統一するため
行動指針は、組織全体で判断軸を共有し、意思決定の一貫性を保つためのツールです。組織が大きくなるほど、価値観や判断のズレが生まれやすくなりますが、共通の行動基準を明文化することで、そのブレを防ぎます。上司・部下・部署を超えて「同じ基準で考える文化」が定着すれば、企業の信頼性とスピードが向上します。行動指針は、組織をひとつにまとめる「判断の言語」なのです。
● 社員全員が共通の価値観で意思決定できるようにする
● 判断や行動の一貫性を保ち、組織の信頼性を高める
● 組織内のコミュニケーションを円滑にし、迷いを減らす
3. 企業文化を形成・浸透させるため
行動指針は、企業が大切にしてきた価値観や考え方を明確にし、それを文化として根づかせる役割を担います。単に「こう行動せよ」という規範ではなく、「なぜその行動が大切なのか」を伝えることで、社員の心に理念が定着します。長期的に見れば、行動指針は企業文化のDNAとなり、社員の言葉や振る舞いにまで影響を与えます。文化とは、日々の行動の積み重ねからしか生まれないのです。
● 組織の価値観・姿勢・行動様式を明確に言語化する
● 理念を“自分ごと化”し、自然な行動として定着させる
● 長期的な視点で、理念を文化として根づかせる
4. 信頼されるブランド行動を確立するため
行動指針は、企業が社会や顧客に対してどんな姿勢で向き合うのかを示す“ブランドの行動規範”です。外に向けたメッセージだけでなく、内側の行動が伴ってこそブランドは信頼を得られます。言葉と行動が一致していることが、ブランドの誠実さを示す最大の証。行動指針を軸にした一貫した行動こそが、企業の信頼性とブランド価値を持続的に高める力になります。
● ブランド理念を「行動」で体現するためのガイドライン
● 社会や顧客との信頼関係を築くための行動基準
● 内外の一貫した姿勢がブランド価値を支える
5. 社員の主体性と自律的行動を促すため
行動指針は、社員が自ら考え、自律的に行動できるための“判断の羅針盤”です。ルールに縛るものではなく、信頼を前提に「自分でどう動くか」を考える基準を与えます。明確な行動軸があることで、社員は指示待ちではなく、自らの判断で行動できるようになります。その積み重ねが組織の活力となり、変化に強い企業を生み出すのです。
● 社員が自ら考え、主体的に判断・行動できるようにする
● ルールではなく「信頼と責任」に基づく行動基準を提示する
● 自律した個の力が組織全体の成長エネルギーとなる
■ 有名企業の行動指針
有名企業の行動指針は、理念やビジョンを単なる言葉で終わらせず、日々の行動へと具体的に落とし込むための実践的な道しるべとして機能しています。これは、社員一人ひとりが「どう考え、どう動くべきか」を明確にするものであり、組織全体の判断や行動の一貫性を保つ役割を果たします。行動指針があることで、経営層から現場まで共通の価値観を共有でき、理念が実際の行動として企業文化に根づいていきます。さらに、行動指針は社内だけでなく、社会や顧客に対しても企業の姿勢や誠実さを示す重要なメッセージになります。言葉と行動が一致している企業ほど、信頼を得やすく、ブランド価値を高めることができます。つまり、有名企業における行動指針とは、理念・文化・行動を結びつける「組織の羅針盤」であり、ブレない価値観を実践の力に変える仕組みなのです。

【 株式会社ニコン|行動指針 】
優しく語る“語句+補足文”は、丁寧な企業イメージを感じさせる。
ニコン社の行動指針は、社の企業理念・ビジョンの中で「心掛け」として掲げられています。大きく3つ。『好奇心』、『親和力』、『伝える力』です。それぞれに1センテンスの補文が添えられています。例えば、好奇心には、「常に変化を楽しみ、広く興味を持つことで、新しい発想を生み出します」といった具合です。この1文を解読してみると、宣誓する形式をとりながら、従業員に変化や行動など自らアクションをとることを促していることがわかります。また、こうした毎日の先に、「経営ビジョン」として定められてる“Unlock the future with the power of light”があり、さらに励行していくことによって「企業理念」として定められている“信頼と創造”が実現していくというシナリオであることが分かります。この一連の展開には無理がなく、他の2つの心掛けについても同様のことが言えます。行動指針とはせず、あえて“心掛け”としているところも、伝統ある光学メーカーとしての「らしさ」が出ていると見るべきではないでしょうか。
● 社会への貢献
ニコンは、光学技術を通じて社会の発展と人々の幸福に寄与することを使命としています。企業の成長は社会との共生の上に成り立つという信念のもと、技術を通して人類の可能性を広げ、持続可能な未来の実現に貢献しています。社会課題に真摯に向き合い、環境・医療・教育など多様な領域で価値を創出することで、単なる企業活動を超えた“社会的存在意義”を体現しています。
● 高い倫理観と透明性の確保
ニコンは、誠実さと責任ある行動を重視し、常に高い倫理観をもって社会と向き合います。すべてのステークホルダーに対して公正・透明な経営を行い、信頼される企業であり続けることを目指しています。法令遵守はもちろん、倫理的判断を最優先とする姿勢を貫くことで、社員一人ひとりが社会の期待に応える行動を取ります。信頼はブランドの基盤であり、その礎を守り続けることが企業の責務です。
● 技術革新への挑戦
ニコンは、常に変化を恐れず、新たな可能性を切り拓く挑戦を続けます。光学と精密技術の進化を軸に、社会や産業の未来を支える革新を追求し続けることが使命です。技術開発は目的ではなく、人や社会に価値をもたらすための手段であり、創造的な探求の連鎖が企業の存在意義を高めます。ニコンは“変わらない信念で、変わり続ける”という精神のもと、未来に希望を照らし続けます。
● グローバルな視点と地域への配慮
ニコンは、グローバル企業として多様な文化と価値観を尊重し、世界と地域が共に豊かになる社会の実現を目指しています。国や地域の違いを超え、人と人、社会と社会を結ぶ架け橋としての責任を果たします。同時に、地域社会との共生を大切にし、地球環境への配慮を欠かさず、持続可能な発展を支える存在であり続けます。世界規模での視野と、地域への思いやりが調和する企業であることを誇りとします。
● 従業員の育成と働きやすい職場づくり
ニコンは、人を最も重要な資産と考え、社員一人ひとりの成長と挑戦を支援します。多様な個性や価値観を尊重し、誰もが安心して能力を発揮できる職場環境づくりを推進しています。社員が自ら考え、学び、行動することで、組織全体の創造力が高まります。働きやすさと働きがいを両立させることで、企業の未来を支える原動力を生み出し、共に持続可能な成長を実現します。
[ 出典 ] ニコン 企業理念・ビジョンより

【 ニッポンハムグループ|行動指針 】
箇条書きで言い切る文体は、強い意志を感じさせる。
ニッポンハムグループは、グループ共通のブランド体系を敷いています。行動指針は、企業理念の中で「行動指針」として5つのことが定められています。それぞれをまとめると、「顧客主義」「誠実・正義さ」「先駆・挑戦」「熱意・創意」「切磋琢磨・協調」ということになりそうです。ニッポンハムグループでは、ブランドミッション(企業使命)にあたるものとして「経営理念」が、こちらも5つのことをもって語られています。ニッポンハムグループでも行動指針と経営理念や企業理念との関係性は明らかで、行動指針に不履行があればいずれかの理念が不達成となってしまうと読み解くことができます。また、ニッポンハムグループの行動指針はすべて、「〜する」という結びでつくられていることにも注目したいところです(他の2つの理念も同様)。企業として宣誓をする文体です。宣誓とは、約束です。理念の中で語られていますが、ニッポンハムグループが文字通り“不退転の意志”をもってグループの企業理念体系を実践する堅い決心があることが現れていると言えます。
● 顧客価値の提供
ニッポンハムグループは、「食」を通じて人々の健やかな暮らしと豊かな社会を支えることを使命としています。顧客一人ひとりの声に耳を傾け、安心・安全・おいしさを追求した商品とサービスを提供します。単なる製品供給ではなく、「しあわせな食卓」という価値体験を創出し続けることが私たちの責務です。顧客に選ばれ、信頼される存在であるために、誠実な姿勢と挑戦の精神で期待を超える価値を届けます。
● 公正で透明な取引
私たちは、すべての取引において公正さと誠実さを貫き、透明性の高い企業活動を実践します。取引先や関係者を対等なパートナーとして尊重し、信頼関係に基づいた長期的な共栄を目指します。ルールを守るだけでなく、社会的良識に照らして「正しいかどうか」を自ら問い続けることが、持続可能な経営の基盤です。誠実な取引を通じて、信頼される企業文化を築き上げます。
● 環境保護の推進
ニッポンハムグループは、食の未来を支える企業として、地球環境の保全を重要な使命としています。資源を大切にし、廃棄を減らし、持続可能な生産と流通を追求します。環境への取り組みは社会的責任にとどまらず、未来の世代への約束でもあります。環境と経済の調和を目指し、すべての事業活動を通じて地球にやさしい価値創造を実現していきます。
● 従業員の育成と職場環境の整備
人こそが企業の最大の財産です。ニッポンハムグループは、多様な人材が互いを尊重し、能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進します。学びと挑戦の機会を提供し、社員一人ひとりの成長を企業の力へとつなげます。また、安全で安心して働ける職場を整えることで、社員が誇りとやりがいを持てる組織を目指します。人を育てることは、企業の未来を育てることです。
● 地域社会への貢献
私たちは、地域に根ざした企業として、社会の一員である自覚を持ち、地域との共生を大切にします。食育活動や災害支援、スポーツ振興などを通じて、人と人をつなぐ温かな絆を育みます。地域の発展に寄与することは、企業の社会的責任であると同時に、存在価値の証でもあります。地域とともに歩み、しあわせな社会を共創する――それが私たちの誇りです。
[ 出典 ] ニッポンハムグループ 企業理念より

【 SGホールディングス株式会社|行動指針 】
行動憲章を行動面へ移していることを明示
佐川急便を傘下とする持株会社であるSGホールディングス社は、グループのものとして企業理念を策定しています。行動規範は、その中で「倫理・行動規範」として4つの文言で定められています。それぞれは分野が異なり、お客さまとの関係、従業員同士の関係、地域社会との関係、ステークホルダーとの関係を通して互いに成長していこうという意志を表明しています。この、顧客・社内・社会・ステークホルダーになぞらえていくのは、行動指針としてはとてもバランスが良く、同グループが全方向的に配慮していることが分かります。また、この倫理・行動規範は、「SGホールディンググループ行動憲章」を具体的に表現したものであることが明記されています。この行動憲章には“社会の信頼と共感を得るための宣言”の見出しが付けられており、その関係性を保って開発されたものであることが分かります。公共のために尽力していくというグループの姿勢が、徹頭徹尾で貫かれており、信頼の獲得に重きを置く企業としての戦略が垣間見られる気がします。
● 顧客重視の姿勢
SGホールディングスは、すべての事業活動において「お客様第一」を基本理念としています。物流を通じて社会と生活を支える使命を胸に、顧客の期待を超える品質と信頼を追求します。単に荷物を運ぶのではなく、“思いをつなぐ”という価値を届けることが私たちの責任です。多様なニーズに応え、安心と満足を提供することで、持続的な信頼関係を築き続けます。
● 法令遵守と誠実な取引
私たちは、法令や社会規範を厳格に遵守し、公正かつ誠実な事業運営を徹底します。あらゆる取引において誠意と責任を持ち、透明性の高い企業活動を実践します。信頼は、一朝一夕に築けるものではありません。誠実な行動の積み重ねこそが企業の信頼を支える基盤であり、私たちは常に「正しい行動とは何か」を自らに問い続けます。
● 環境保護と持続可能性への貢献
SGホールディングスは、物流の発展と地球環境の調和を目指し、環境負荷の低減と資源の有効活用に取り組んでいます。エネルギー効率の高い輸送システムや再生可能エネルギーの活用など、持続可能な社会づくりに貢献する技術と仕組みを追求します。地球と共に生きる企業として、環境を守りながら未来を運ぶ使命を果たしていきます。
● 社員の成長と多様性の尊重
SGホールディングスは、人こそが最大の価値であると考え、社員一人ひとりの成長と幸福を支援します。多様な価値観を尊重し、誰もが安心して自分らしく働ける環境づくりを推進します。学びと挑戦の機会を提供し、個の成長が組織の力となる風土を育てます。人を信じ、人を活かすことが、企業の未来を育む源泉です。
● 地域社会との協力と貢献
私たちは、企業活動が地域社会の支えの上に成り立っていることを深く認識しています。地域との共生を重視し、社会課題の解決や災害支援、教育・環境活動などを通じて、人と地域をつなぐ架け橋となります。物流の力で社会を支え、地域の豊かさと安心を共に育むこと。それが、SGホールディングスが果たすべき社会的責任です。
[ 出典 ] SGホールディングス 企業理念より

【 サッポロビール株式会社|行動指針 】
企業の「らしさ」を上手く活かしながら、柔らかく表現
サッポロビール社では、行動指針を「行動規範」として掲げています。それに並び、ブランドミッションにあたるものを「ビジョン」として、ブランドビジョンを「経営理念」として設定しています。“規範”とされていますが、表記を含め、内容についてはとても柔らかいものとなっていることが分かります。『カイタクしよう』というキーワードの下、4つの分野「心を動かすアイデアを」「お酒の次の未来を」「深く愛されるブランドを」「社会との共鳴を」明記されています。ビジョンとの関係性もスムーズです。4つの分野を突き詰めた先には、ビジョンの達成が容易に予想できます。開拓が何故カタカナ表記なのかは言明されていませんが、「開拓」という語句は、数あるビール会社の中でもサッポロビール社にこそ相応しいものと言えるでしょう。企業のルーツを想起させ、かつ、受け継いでいくべきスピリットを上手く織り込んだものとなっており、ビジョンのフレーズと合わせて、企業としての個性を醸成させている例として大いに参考となりそうです。
● 顧客への責任
サッポロビールは、お客様の信頼に応えることを最も大切な使命としています。おいしさや品質だけでなく、安心と安全、そして心に残る体験を届けることを追求します。お客様の声に真摯に耳を傾け、一人ひとりの笑顔を原動力に、より豊かな生活文化の創造に貢献します。お客様の期待を超える価値を提供し続けることこそが、サッポロブランドの誇りであり責任です。
● 環境への配慮
サッポロビールは、自然の恵みへの感謝を忘れず、持続可能な社会の実現を目指します。原材料から製造、流通、販売に至るまで、環境への負荷を最小限に抑えた事業活動を推進します。地球資源を未来へとつなぐ責任を胸に、循環型社会の実現に向けて挑戦を続けます。自然とともに歩む企業として、環境保全は“次の世代への約束”です。
● 社員の成長と職場環境の向上
サッポロビールは、人こそが最大の財産であると考え、社員一人ひとりの可能性を尊重します。安心して働ける職場づくりと、挑戦を育む文化の両立を目指し、学びと成長の機会を提供します。多様な個性を活かし合い、互いを高め合うことで、組織全体が成長する――それが、サッポロの企業文化です。人が輝けば、ブランドも輝くのです。
● 社会への貢献
サッポロビールは、「人と社会を豊かにする企業」であり続けることを目指しています。地域社会との共生を大切にし、文化・教育・スポーツなど多様な分野で社会とのつながりを育みます。私たちの事業は、人々の笑顔やつながりを生み出す力です。企業活動を通じて社会課題の解決に取り組み、より良い未来のために貢献し続けます。
● 法令遵守と透明性の確保
サッポロビールは、企業としての誠実さを何より重視します。法令遵守はもちろん、倫理に基づいた判断と透明性のある経営を徹底します。信頼は、日々の正しい行動の積み重ねによって築かれるものです。社員一人ひとりが高い倫理観を持ち、公正な企業活動を行うことで、社会から永続的に信頼される企業を目指します。
[ 出典 ] サッポロビール 企業理念体系より

【 株式会社野村総合研究所|行動指針 】
自由度の高い行動指針は、同社のレベルをも知らしめる
言わずと知れた日本のシンクタンク最王手の野村総合研究所社ですが、その企業理念体系はシンプルです。中でも、行動指針は「真のプロフェッショナルとしての誇りを胸に、あくなき挑戦を続ける」という一文のみとなっています。コンサルタントである従業員に対し、そのスキルなどについては一切触れられていないというところにも特筆すべきものがあります。業務内容を考えれば、未来志向で、グローバルな視野で、牽引力をもって、、、と具体的なことを並べてしまいそうなところではないでしょうか。野村総合研究所社が、従業員であるコンサルタントに全幅の信頼を置いていることがわかると同時に、どのコンサルタントも細かなことを書く必要のない高いレベルにあるということを知らしめているようにも感じます。反面、各コンサルタントにとっては、自由度の高い行動指針は、より一層の不断の努力を求めるものとして映ることでしょう。行動指針で細かい設定をせずとも、従業員の自律を喚起することはできるという格好の事例と言えるでしょう。
● 顧客満足と信頼の確保
野村総合研究所は、常に顧客の課題と真摯に向き合い、最適な解決策を提供することを使命としています。私たちは、信頼に基づく長期的な関係を築くために、誠実な姿勢と高い専門性をもって顧客に貢献します。単なる成果提供ではなく、共に未来を創るパートナーとして、顧客価値の最大化を追求し続けます。信頼こそ、NRIのブランドを支える最も重要な資産です。
● 革新と挑戦の推進
NRIは、変化を恐れず、常に新たな価値を生み出す革新の姿勢を貫きます。デジタル技術や社会構造の変化を見据え、次代を先取りする知恵と創造力で挑戦し続けます。現状に満足せず、失敗を恐れない風土が、真の進化を生み出します。私たちは、未来を構想し、変革を現実にする「知のプロフェッショナル」として、新たな社会価値の創造を担います。
● 社員の成長と職場環境の充実
NRIは、人を最も重要な経営資産と位置づけ、社員一人ひとりの成長を尊重します。挑戦と学びの機会を提供し、個の力を組織の原動力へと変える環境を整えます。多様な価値観を尊重し、互いに高め合う風土を育むことで、創造的な組織文化を築きます。社員が自らの力を信じ、誇りを持って働ける場をつくることが、NRIの持続的成長の礎です。
● 法令遵守と透明性の確保
私たちは、高い倫理観と社会的責任を持ち、法令や規範を厳格に遵守します。経営・業務の透明性を確保し、公正で誠実な企業活動を行うことで、社会からの信頼を維持します。倫理的判断を最優先に置く文化を根づかせることが、真に健全な企業の条件です。信頼は一日で築けるものではありません。正直な行動の積み重ねこそが、NRIの信用を守ります。
● 社会貢献と環境保護
NRIは、社会と共に発展し、持続可能な未来を築くことを企業の使命としています。情報技術と知見を活かし、社会課題の解決や環境保全に取り組みます。地球環境への配慮を経営の中心に据え、持続可能な社会づくりに寄与することで、真の価値を創造します。社会に信頼される存在であり続けることが、NRIの誇りであり、存在意義です。
[ 出典 ] 野村総合研究所 企業理念より

【 ヒューマンホールディングス株式会社|行動指針 】
漢文調の行動指針は、企業理念「為世為人」との関係性によるもの
教育事業を幅広く手掛けるヒューマンホールディングス社は、しっかりとしたボリュームの企業理念体系をもっていることでも知られています。その一つである行動指針には、「日々是素直」、「生涯是勉学」、「万事是陽想」の3つと、それぞれを補足する1行の文章が添えられています。同社ではブランドビジョンも(企業理念)に相当するものとして、“為世為人”という「経営理念」が定められており(それを補う文章も設定されています)、行動指針が漢文のようなスタイルをとっていることの理由がここにあることが分かります。また、同社の行動指針は、常に自己を省みることのできる、先に挙げた3つからなる「行動指針」と、それをより具体的にわかりやすい形にしたという“Look”、“Speak”、“Act”の3点からなる「ヒューマングループのコーポレートビヘイビア(行動・振る舞い)」とで構成されています。企業として、また、教育という事業分野として価値の高い信頼性を大切にしながら、それを周知・理解してもらうための努力を惜しまないという姿勢が見られるように思います。
● 人材育成の重視
ヒューマンホールディングスは、「人を育て、社会を動かす」という理念のもと、人材育成を最も重要な使命としています。社員一人ひとりの成長が、企業と社会の発展につながるという信念のもと、教育と挑戦の機会を提供します。自ら考え行動できる人材を育むことで、変化の時代をリードする力を生み出します。人が成長する企業こそが、未来を創る原動力です。
● 社会貢献活動
私たちは、企業活動を通じて社会に貢献することを存在意義としています。教育支援、人材育成、地域との連携など、多様な形で社会課題の解決に取り組みます。利益を超えて“人と社会の可能性”を広げることが、ヒューマングループの使命です。持続可能な社会の実現に向けて、社会とともに歩み、信頼される企業市民として行動し続けます。
● 多様性と働きやすい職場環境の推進
ヒューマンホールディングスは、一人ひとりの個性と多様性を尊重し、誰もが活躍できる職場づくりを目指しています。性別・年齢・国籍・価値観を超えて、互いの違いを強みに変える文化を育みます。柔軟な働き方や公正な評価を通じて、社員が安心して力を発揮できる環境を整備します。多様性が創造性を生み、企業の成長を支える礎となります。
● 革新と成長
私たちは常に変化を恐れず、挑戦と革新を続けます。新しい時代に求められる価値を創造し、社会や顧客の期待に応えることが成長の原動力です。失敗を恐れず、前向きに挑み続ける風土が、企業の進化を支えます。現状に安住せず、未来に向けて学び、変化し続けること。それがヒューマンホールディングスの変わらぬ姿勢です。
● 信頼と透明性の確保
ヒューマンホールディングスは、信頼を企業の基盤と位置づけ、誠実で透明性の高い経営を徹底します。法令遵守はもちろん、倫理に基づく判断を重視し、社会からの信頼に応える行動を実践します。誠実な姿勢は、短期的な成果以上の価値を生み出します。社員一人ひとりが「信頼される行動」を積み重ねることで、企業全体の信用を築きます。
[ 出典 ] ヒューマンホールディングス株式会社
より

■ 行動指針に関するよくある質問
【 よくある質問① 】
Q :行動指針と企業理念の違いは何ですか?
A :企業理念は「なぜこの会社が存在するのか」という価値観や目的を示すもので、行動指針はその理念を実現するために社員が「どう行動すべきか」を具体的に示したものです。
【 よくある質問② 】
Q :行動指針はなぜ重要なのですか?
A :行動指針があることで、社員一人ひとりが迷わず判断・行動できるようになり、組織全体で一貫性のあるブランド体験を提供できます。また、企業文化の醸成やモチベーション向上にもつながります。
【 よくある質問③ 】
Q :行動指針を作るときに意識すべきポイントは何ですか?
A : 抽象的すぎず、社員が日常業務で実践できるレベルに落とし込むことです。また、企業のビジョンやブランド価値と一貫性を持たせることが重要です。
【 よくある質問④ 】
Q :行動指針はどうやって社内に浸透させればいいですか?
A :クレドカードの配布、研修、朝礼、社内報などを活用し、繰り返し共有することが大切です。さらに、評価制度や表彰制度と連動させることで、行動指針を日常的な行動に結びつけやすくなります。
【 よくある質問⑤ 】
Q :他社事例を参考にしても良いですか?
A :はい。有名企業の行動指針事例は参考になりますが、自社の文化やビジョンに合わせた設計が必要です。事例は「形式」ではなく「考え方」を学ぶ視点で活用すると効果的です。

■ 行動指針のチェックリスト
【 行動指針策定前のチェック 】
⬜︎ 自社のビジョン・ミッション・価値観が明確に定義されているか?
⬜︎ 行動指針を策定する目的や活用方法が社内で共有されているか?
⬜︎ 他社事例に頼りすぎず、自社独自の文化や強みを反映できているか?
【 行動指針の内容設計チェック 】
⬜︎ 行動指針が企業理念・ブランドビジョンと一貫しているか?
⬜︎ 社員が実務で行動に移しやすい具体的な内容になっているか?
⬜︎ 顧客体験やブランド価値を高める行動につながる内容になっているか?
【 社内浸透と運用のチェック 】
⬜︎ 行動指針が全社員に共有され、共通認識として定着しているか?
⬜︎ クレドカード、朝礼、研修などを通じた繰り返しの共有が行われているか?
⬜︎ 評価制度や表彰制度と連動し、社員の行動に反映されているか?
【 継続的改善と見直しのチェック 】
⬜︎ 行動指針の実効性を定期的に検証する仕組みがあるか?
⬜︎ 社員からのフィードバックや現場の声を反映する体制が整っているか?
⬜︎ 市場環境やブランド戦略の変化に応じて、内容を適宜見直しているか?

■ まとめ
様々な形式・形態をとる行動指針ですが、特徴的と思われる事例を他要素との関係を交えて考察をしてみました。行動指針は、語尾の使い方や、文調、詳細に語るか否か、英語か日本語かなどにより、企業の個性・“らしさ”や、職場・現場の雰囲気などを感じさせます。また、行動指針は企業側が従業員に対して求めるものやことが一方的な表現で出てしまいがちです。自社では情熱的として捉えられている言い回しも、事情を知らないステークホルダーには単に高圧的なものとして読めてしまうこともあります。理解してもらいたい企業姿勢を正しくイメージしてもらうためにも、その開示の可否を含め、行動指針には熟思された戦略が必要です。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
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