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有名企業の行動指針事例まとめ6選

[ ブランド戦略 ]

【保存版】有名企業の行動指針事例まとめ6選

行動指針は、企業のビジョンやミッションを実現するために、社員がどのように行動すべきかを具体的に示すガイドラインです。これにより、企業の価値観や文化が日常の業務に浸透し、全社員が共通の方向性を持って働くことが可能になります。成功する行動指針は、シンプルで実践しやすい言葉で構成され、社員が日々の業務でそれを意識しやすく、行動に移しやすいものであるべきです。行動指針の導入に成功した企業では、社員のモチベーションやチームワークが向上し、企業全体のパフォーマンスが高まるケースも多く見られます。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、行動指針の開発に役立つ具体的な事例を紹介し成功のポイントについて詳しく解説します。


■ 行動指針の目的とは?

行動指針の目的とは?

企業ブランディングを体系的に捉えると、行動指針はブランドビジョンやブランドミッション、ブランドバリューを支える台座として位置づけられます。では、この行動指針は従業員にはどう映るでしょうか。多くの場合、「素晴らしい内容ではあるが、だから???」という感想になるのではないでしょうか。企業のブランディング活動を実行するのは、従業員一人ひとりに他なりません。自社のビジョンやミッションが、どこか他人事になってしまっている状態では、ブランドビジョンの実現は到底難しいでしょう。このようなことからも、行動指針を定める目的は、ブランドビジョンをはじめとした企業としての考え方を、社内の隅々まで浸透させていくためのものと捉えるべきでしょう。

■ 行動指針の開発事例

有名企業では、どのような行動指針を定めているのか事例をまじえながらご説明させていただきます。以下の行動指針の事例の通り、会社によって何に価値を置いているかが大きく異なっている事がわかります。一人一人の性格が違うように、会社の個性も異なるという言い方ができるかもしれません。

株式会社ニコンの行動指針

【 株式会社ニコン|行動指針 】

優しく語る“語句+補足文”は、丁寧な企業イメージを感じさせる。

ニコン社の行動指針は、社の企業理念・ビジョンの中で「心掛け」として掲げられています。大きく3つ。『好奇心』、『親和力』、『伝える力』です。それぞれに1センテンスの補文が添えられています。例えば、好奇心には、「常に変化を楽しみ、広く興味を持つことで、新しい発想を生み出します」といった具合です。この1文を解読してみると、宣誓する形式をとりながら、従業員に変化や行動など自らアクションをとることを促していることがわかります。また、こうした毎日の先に、「経営ビジョン」として定められてる“Unlock the future with the power of light”があり、さらに励行していくことによって「企業理念」として定められている“信頼と創造”が実現していくというシナリオであることが分かります。この一連の展開には無理がなく、他の2つの心掛けについても同様のことが言えます。行動指針とはせず、あえて“心掛け”としているところも、伝統ある光学メーカーとしての「らしさ」が出ていると見るべきではないでしょうか。

⚫︎社会への貢献

企業活動を通じて社会に対して価値を提供し、持続可能な成長を目指します。製品やサービスを通じて社会課題の解決に寄与することを重視し、環境保護や地域社会の支援などに取り組みます。

⚫︎高い倫理観と透明性の確保

企業の行動基準として、誠実で公正なビジネスの実践が求められます。従業員一人ひとりが法令を遵守し、透明性ある行動を心がけ、利害関係者に対して信頼を提供することで企業価値を高める役割を担います。

⚫︎技術革新への挑戦

技術開発力とイノベーションを武器に、品質の高い製品やサービスの提供を目指します。絶え間ない技術革新に挑戦し、製品を通じてユーザーの生活を向上させることを目標としています。

⚫︎グローバルな視点と地域への配慮

多様な文化やニーズを尊重し、世界規模での事業展開を行う際にも地域の特性に応じた配慮を行います。グローバルな視点と地域社会の調和を目指し、国際的なネットワークを活用します。

⚫︎従業員の育成と働きやすい職場づくり

社員の成長とキャリア形成をサポートする環境を提供し、働きがいのある職場を目指します。多様な人材が協力し合うことで、創造性と革新性の発揮を促進します。

[ 出典 ] ニコン 企業理念・ビジョンより

ニッポンハムグループの行動指針

【 ニッポンハムグループ|行動指針 】

箇条書きで言い切る文体は、強い意志を感じさせる

ニッポンハムグループは、グループ共通のブランド体系を敷いています。行動指針は、企業理念の中で「行動指針」として5つのことが定められています。それぞれをまとめると、「顧客主義」「誠実・正義さ」「先駆・挑戦」「熱意・創意」「切磋琢磨・協調」ということになりそうです。ニッポンハムグループでは、ブランドミッション(企業使命)にあたるものとして「経営理念」が、こちらも5つのことをもって語られています。ニッポンハムグループでも行動指針と経営理念や企業理念との関係性は明らかで、行動指針に不履行があればいずれかの理念が不達成となってしまうと読み解くことができます。また、ニッポンハムグループの行動指針はすべて、「〜する」という結びでつくられていることにも注目したいところです(他の2つの理念も同様)。企業として宣誓をする文体です。宣誓とは、約束です。理念の中で語られていますが、ニッポンハムグループが文字通り“不退転の意志”をもってグループの企業理念体系を実践する堅い決心があることが現れていると言えます。

⚫︎顧客価値の提供

顧客の視点に立ち、安全で高品質な製品・サービスを提供することにより、信頼関係を築き、社会に貢献します。

⚫︎公正で透明な取引

法令遵守を徹底し、誠実で公正な企業活動を実践することで、企業としての信頼性を維持します。取引先との透明な関係が強調されています。

⚫︎環境保護の推進

持続可能な社会を目指して、資源の有効利用やエネルギー消費削減に取り組み、環境に優しい企業活動を推進しています。

⚫︎従業員の育成と職場環境の整備

社員一人ひとりの成長を重視し、働きがいのある職場づくりを目指しています。多様性を尊重し、社員の能力を引き出す環境整備に努めています。

⚫︎地域社会への貢献

地域と協力し、福祉・教育活動に貢献することで、社会の一員としての責任を果たしています。

[ 出典 ] ニッポンハムグループ 企業理念より

SGホールディングスの行動指針

【 SGホールディングス株式会社|行動指針 】

「行動憲章」を行動面へ移していることを明示

佐川急便を傘下とする持株会社であるSGホールディングス社は、グループのものとして企業理念を策定しています。行動規範は、その中で「倫理・行動規範」として4つの文言で定められています。それぞれは分野が異なり、お客さまとの関係、従業員同士の関係、地域社会との関係、ステークホルダーとの関係を通して互いに成長していこうという意志を表明しています。この、顧客・社内・社会・ステークホルダーになぞらえていくのは、行動指針としてはとてもバランスが良く、同グループが全方向的に配慮していることが分かります。また、この倫理・行動規範は、「SGホールディンググループ行動憲章」を具体的に表現したものであることが明記されています。この行動憲章には“社会の信頼と共感を得るための宣言”の見出しが付けられており、その関係性を保って開発されたものであることが分かります。公共のために尽力していくというグループの姿勢が、徹頭徹尾で貫かれており、信頼の獲得に重きを置く企業としての戦略が垣間見られる気がします。

⚫︎顧客重視の姿勢

顧客の期待に応えるため、顧客満足度向上を目指したサービスの提供が重視されます。迅速かつ丁寧な対応を基本とし、顧客の信頼を得るための取り組みを実施します。

⚫︎法令遵守と誠実な取引

法令や社会的ルールを守ることが、企業としての信頼基盤を支えます。誠実かつ透明性のある取引に努め、社内外からの信頼を確保します。

⚫︎環境保護と持続可能性への貢献

事業活動による環境負荷を軽減し、持続可能な社会を目指します。資源の効率的な活用やリサイクルの推進など、環境に配慮した活動を進めます。

⚫︎社員の成長と多様性の尊重

社員が成長できる環境を整え、職場の多様性を尊重します。働きやすい職場づくりにより、社員の能力を最大限に引き出すことを目指します。

⚫︎地域社会との協力と貢献

企業市民として地域社会に貢献し、地域とのつながりを大切にします。防災支援や教育など、地域の発展を支援するための活動を行います。

[ 出典 ] SGホールディングス 企業理念より

サッポロビールの行動指針

【 サッポロビール株式会社|行動指針 】

企業の「らしさ」を上手く活かしながら、柔らかく表現

サッポロビール社では、行動指針を「行動規範」として掲げています。それに並び、ブランドミッションにあたるものを「ビジョン」として、ブランドビジョンを「経営理念」として設定しています。“規範”とされていますが、表記を含め、内容についてはとても柔らかいものとなっていることが分かります。『カイタクしよう』というキーワードの下、4つの分野「心を動かすアイデアを」「お酒の次の未来を」「深く愛されるブランドを」「社会との共鳴を」明記されています。ビジョンとの関係性もスムーズです。4つの分野を突き詰めた先には、ビジョンの達成が容易に予想できます。開拓が何故カタカナ表記なのかは言明されていませんが、「開拓」という語句は、数あるビール会社の中でもサッポロビール社にこそ相応しいものと言えるでしょう。企業のルーツを想起させ、かつ、受け継いでいくべきスピリットを上手く織り込んだものとなっており、ビジョンのフレーズと合わせて、企業としての個性を醸成させている例として大いに参考となりそうです。

⚫︎顧客への責任

サッポロビールは、お客様への満足度向上を目指し、常に安全で高品質な商品を提供しています。顧客からの信頼を確保するために、品質管理の徹底や顧客ニーズに応じた商品開発を重視し、迅速かつ誠実な対応に努めています。

⚫︎環境への配慮

環境保護を企業活動の一環として取り入れ、省エネや資源の有効利用、リサイクルの推進などを行っています。また、自然環境の保全や持続可能な資源の利用に対する取り組みを強化し、エコロジカルな未来を目指しています。

⚫︎社員の成長と職場環境の向上

社員一人ひとりの成長を支援し、働きやすい職場環境の整備に取り組んでいます。社員のキャリアアップを促進するための教育・研修プログラムを充実させ、多様性の尊重と公平な雇用体制に重点を置きます。

⚫︎社会への貢献

企業市民として、地域社会への貢献活動を積極的に行っています。地域密着型のイベントや、災害支援などを通じて地域の発展に寄与する姿勢を重視し、社会全体にとって有益な存在を目指しています。

⚫︎法令遵守と透明性の確保

法令や規範を遵守し、透明性の高い経営を実践しています。従業員に対しても法令遵守の重要性を教育し、社内のコンプライアンスを強化することで、企業としての信頼性を維持しています。

[ 出典 ] サッポロビール 企業理念体系より

野村総合研究所の行動指針

【 株式会社野村総合研究所|行動指針 】

自由度の高い行動指針は、同社のレベルをも知らしめる

言わずと知れた日本のシンクタンク最王手の野村総合研究所社ですが、その企業理念体系はシンプルです。中でも、行動指針は「真のプロフェッショナルとしての誇りを胸に、あくなき挑戦を続ける」という一文のみとなっています。コンサルタントである従業員に対し、そのスキルなどについては一切触れられていないというところにも特筆すべきものがあります。業務内容を考えれば、未来志向で、グローバルな視野で、牽引力をもって、、、と具体的なことを並べてしまいそうなところではないでしょうか。野村総合研究所社が、従業員であるコンサルタントに全幅の信頼を置いていることがわかると同時に、どのコンサルタントも細かなことを書く必要のない高いレベルにあるということを知らしめているようにも感じます。反面、各コンサルタントにとっては、自由度の高い行動指針は、より一層の不断の努力を求めるものとして映ることでしょう。行動指針で細かい設定をせずとも、従業員の自律を喚起することはできるという格好の事例と言えるでしょう。

⚫︎顧客満足と信頼の確保

野村総合研究所は、顧客にとって最適なソリューションを提供し、信頼関係を築くことを重要視しています。顧客ニーズの理解を深め、長期的な価値を創出することで、継続的な満足度向上を目指します。

⚫︎革新と挑戦の推進

常に新しい技術と知識を活用し、未来志向のビジネスモデルに挑戦しています。野村総研は、社会とビジネスの変化に応じて革新を取り入れ、先駆的なサービス提供を行うことで競争力を強化しています。

⚫︎社員の成長と職場環境の充実

社員のキャリア開発と職場環境の整備に力を入れています。研修や教育プログラムを通じてスキルを高め、働きやすい環境を整備することで社員の意欲と能力の最大化を目指しています。

⚫︎法令遵守と透明性の確保

法令や社内規範を徹底的に守り、透明性のある経営を実践しています。全社員が倫理観を持って行動できるように教育を行い、社会的信頼の向上と健全な経営基盤を支えます。

⚫︎社会貢献と環境保護

地域社会や環境に対する貢献活動を重視し、持続可能な社会の構築に貢献しています。CSR活動を積極的に推進し、社会的責任を果たす企業としての姿勢を強化しています。

[ 出典 ] 野村総合研究所 企業理念より

ヒューマンホールディングスの行動指針

【 ヒューマンホールディングス株式会社|行動指針 】

漢文調の行動指針は、企業理念「為世為人」との関係性によるもの

教育事業を幅広く手掛けるヒューマンホールディングス社は、しっかりとしたボリュームの企業理念体系をもっていることでも知られています。その一つである行動指針には、「日々是素直」、「生涯是勉学」、「万事是陽想」の3つと、それぞれを補足する1行の文章が添えられています。同社ではブランドビジョンも(企業理念)に相当するものとして、“為世為人”という「経営理念」が定められており(それを補う文章も設定されています)、行動指針が漢文のようなスタイルをとっていることの理由がここにあることが分かります。また、同社の行動指針は、常に自己を省みることのできる、先に挙げた3つからなる「行動指針」と、それをより具体的にわかりやすい形にしたという“Look”、“Speak”、“Act”の3点からなる「ヒューマングループのコーポレートビヘイビア(行動・振る舞い)」とで構成されています。企業として、また、教育という事業分野として価値の高い信頼性を大切にしながら、それを周知・理解してもらうための努力を惜しまないという姿勢が見られるように思います。

⚫︎人材育成の重視

人材の成長を事業の中心に据え、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出すことを目指しています。研修やキャリア支援を充実させ、社員の成長と共に企業も発展できる環境を提供します。

⚫︎社会貢献活動

地域や社会への貢献活動を重要視し、ボランティア活動や支援活動を積極的に展開しています。これにより、企業としての社会的責任を果たし、地域社会との関係を強化しています。

⚫︎多様性と働きやすい職場環境の推進

多様な人材が活躍できる職場環境を提供し、社員が自己実現できる場を整備しています。フレキシブルな働き方や健康管理支援などを通じて、社員の生活と仕事の調和をサポートしています。

⚫︎革新と成長

市場の変化に即応し、常に革新を求め、挑戦する企業文化を育んでいます。新規事業の創出や最新技術の活用を積極的に取り入れ、企業全体の成長を促進します。

⚫︎信頼と透明性の確保

信頼と透明性を基盤に、法令を遵守し、高い倫理基準で行動しています。全社員が高い責任感と倫理観を持ち、透明性のある経営を通じて社会的信頼を築くことに努めています。

[ 出典 ] ヒューマンホールディングス株式会社より

■ まとめ

様々な形式・形態をとる行動指針ですが、特徴的と思われる事例を他要素との関係を交えて考察をしてみました。行動指針は、語尾の使い方や、文調、詳細に語るか否か、英語か日本語かなどにより、企業の個性・“らしさ”や、職場・現場の雰囲気などを感じさせます。また、行動指針は企業側が従業員に対して求めるものやことが一方的な表現で出てしまいがちです。自社では情熱的として捉えられている言い回しも、事情を知らないステークホルダーには単に高圧的なものとして読めてしまうこともあります。理解してもらいたい企業姿勢を正しくイメージしてもらうためにも、その開示の可否を含め、行動指針には熟思された戦略が必要です。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

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