
[ ブランド戦略 ]
ネーミング開発の条件と成功事例
ネーミングは、ブランドのイメージを大きく左右する重要な要素です。適切なネーミングは、顧客に強い印象を与え、ブランドの認知度や信頼性を高める効果があります。しかし、インパクトがありながらも覚えやすく、事業や製品の特徴を的確に伝えるネーミングを開発することは容易ではありません。成功するネーミングには、発音しやすさ、意味の明確さ、独自性などのポイントが不可欠です。また、競合との差別化や、国際的な視点での名前の適切性も考慮する必要があります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ネーミング開発のコツを成功事例を紹介しながら、効果的なネーミングを生み出すための具体的なヒントについて詳しく解説します。
CONTENTS | 目次
■ ネーミング開発の5つの条件

1. 覚えやすいこと
ネーミングが覚えやすいかどうかは、ブランドの認知に大きく左右します。デザインや戦略が優れていても、名前が覚えられなければ記憶に残りません。覚えやすさを生むのは、短くてリズムが良く、口に出しても気持ちいい名前です。日本語では3〜5音くらいの長さが記憶に残りやすいと言われます。また、人は「意味」や「感情」に結びついた言葉が覚えやすいので、ストーリー性や情緒を感じさせるネーミングが有効です。単に短いだけでなく、「自然に口に出せて、耳に残る」ことを意識すると、印象が強くなります。
2. 視覚的な魅力を備えていること
ブランド名は音で伝わるだけでなく、目で見たときの印象も重要です。ロゴにしたときに美しく見えるか、バランスが取れているかを意識することで、完成度が上がります。たとえば、アルファベットやカタカナの形の並びが整っているか、文字の丸みや角の印象がブランド表現と合っているか、といった視点です。デザインになったときに違和感がなく、自然に「ブランドらしい」と感じられることが理想です。ネーミングの段階で、書かれた姿やロゴ化したイメージを想像しておくと、表現全体に統一感が出ます。
3. ブランドイメージが反映されていること
良いネーミングは、ブランドの考え方や世界観を言葉に落とし込んだものです。何を大事にしているブランドなのか、どんな価値を届けたいのかが自然とに伝わる名前は、強い印象を与えます。たとえば、上品さを大切にするなら落ち着いた響きを、革新性を打ち出したいならスピード感や軽やかさを感じる音を選ぶ、というように。ブランドのトーンや性格を整理してから、それに合う音や言葉を探すのが効果的です。単にかっこいい・かわいいではなく、「ブランドらしいかどうか」で判断することが大切です。
➤ 詳細記事:ブランドイメージを高めるデザインの重要性と一貫性
4. 記憶に残る印象があること
印象に残るネーミングは、どこかに「引っかかり」があります。少し意外な音の組み合わせや、意味の余白があることで、人の心に残るのです。人は予想外のものに強く反応するため、ほんの少しだけ「意外性」を持たせるのがポイントです。ただし、奇抜にする必要はありません。ブランドのトーンを壊さずに、自然な個性を感じさせるくらいがちょうどいいです。心理的には、感情を動かす言葉ほど長く記憶に残る傾向があります。感情が動く瞬間を設計できると、名前の印象はぐっと深まります。
5. 法的規制の遵守がされていること
どんなに良いネーミングでも、法的に使えなければブランドとして成立しません。特に商標の重複や類似はトラブルにつながることがあるため、早い段階で特許庁データベースなどを使って確認しておくことが大切です。業種ごとの分類もあるため、自社のサービスや商品の範囲に合っているかを見ておく必要があります。海外展開を視野に入れるなら、他の言語で不適切な意味にならないかもチェックしておくと安心です。法的な安全性を確保することは、ブランドを長く守り続けるための基本的な準備です。
■ ネーミング開発のプロセス

1. 目的と方向性の定義
ネーミング開発の最初のステップは、「何のために」「どんな目的で」名前をつくるのかを決めることです。ここを曖昧にしたまま進めると、途中で迷いが生まれたり、判断がブレてしまいます。まずは、ブランドの目的を整理し、今回のネーミングが果たすべき役割を明確にします。たとえば、新しい世界観を打ち出すためなのか、既存ブランドの印象を更新するためなのか。さらに「誰にどう感じてもらいたいか」「どんな印象を与えたいのか」を言葉にしておくと、チーム全体で方向性を共有しやすくなります。ネーミング開発は論理と感性が重要です。しっかりとした目的設定が、後のアイデアを支える鍵になります。
● ネーミングの目的が具体的に言語化されているか
● ブランドの価値観やトーンとつながっているか
● 想定する印象や感情が共有されているか
2. ターゲットと競合の分析
ネーミングを考える前に、まずは「誰に向けて」「どんな市場で」使われるのかを理解することが大切です。ターゲットの価値観や感性を掴むことで、響く言葉の方向性が見えてきます。若い層には覚えやすく親しみやすい音が好まれ、ビジネス層には信頼感や品格を感じる言葉が適しています。また、競合ブランドのネーミングを調べることで、よくあるパターンや差別化できる点が見えてきます。似たような構造や流行語に寄ると、印象に残らないことが多いので注意が必要です。ターゲットと競合を冷静に見比べ、自分たちのポジションを明確にしておくと、言葉の方向が定まり、より戦略的な視点で考えられます。
● 想定顧客の価値観や言葉の感度を把握しているか
● 競合の傾向と差別化ポイントを整理しているか
● 自社ブランドの立ち位置が明確か
3. ネーミングのコンセプト開発
コンセプト開発は、ブランドの個性を「言葉の方向」として定義する工程です。ここでは「どんな印象を持たれるブランドにしたいか」を明確にし、そのイメージを支えるキーワードを整理していきます。感覚的に良いネーミングを探すのではなく、「なぜこの方向が合うのか」を言葉で説明できる状態が理想です。たとえば、挑戦的・穏やか・先進的といった抽象的な印象をもとに、音や語感を考えます。チーム内でこの方向性を共有することで、アイデア出しの際に判断がブレにくくなります。ネーミングのコンセプトは、いわば羅針盤のような存在であり、開発全体の質を左右します。
● ブランドらしさを表すキーワードが整理されているか
● 言葉の方向性がチーム内で共有できているか
● 感性だけでなく意味づけも明確か
4. ネーミングのアイデア出し
発想の段階では、自由に広げることが大切です。いきなり完成度を求めず、思いつく限り書き出してみることで、言葉の可能性が見えてきます。キーワードから連想を広げたり、語源を調べたり、他言語の響きを参考にしたりと、複数のアプローチで探っていきます。造語や比喩、擬音などを取り入れると、印象に残るリズムが生まれることもあります。この段階では「正しさ」よりも「広さ」が大事です。数を出す中で、意外な発見や深い方向性にたどり着くことがあります。音の響きやリズム、口にしたときの心地よさも意識しながら、できるだけ柔軟に考えていきます。思考を柔軟に感性に任せることが必要です。
● 判断を急がず、自由に発想できているか
● 意味・音・印象を多角的に見ているか
● 量を出すことを優先できているか
5. ネーミング案の整理・選定
多くの案が出たら、それを現実的な観点から整理していきます。ここでは「ブランドとの相性」「言いやすさ」「覚えやすさ」「独自性」などを基準に絞り込みます。候補をグループ化して比較し、似た印象のものをまとめてみると、傾向が見えてきます。判断する際は主観に偏らず、チームで意見を出し合いながら検討するのがおすすめです。また、音や意味が似ている既存ブランドがないかを軽く調べる段階でもあります。この整理を丁寧に行うことで、後の商標チェックやテストの精度が上がります。最終候補は3〜5案ほどに絞るのが一般的です。この段階では、理性と直感のバランスを大切にすることが鍵です。
● ブランドとの整合性があるか
● 音や印象に一貫性があるか
● 客観的な基準で選定できているか
6. 法的・実務的チェック
ここでは、選んだ候補が実際に使えるかどうかを確認します。まず、特許庁の商標データベースを使って、同一または類似の登録がないかを調べます。該当するものがあれば、トラブルを避けるため再検討が必要です。あわせて、WebドメインやSNSアカウントなどの空き状況も確認しておくと安心です。今後のブランド運用で一貫性を保つために、早い段階で実務的な確認をしておくのがおすすめです。海外での展開を考えている場合は、他言語での意味や文化的なニュアンスにも注意が必要です。法的なチェックは、ブランドを守るための基本的なステップです。慎重な確認が後の問題の回避となります。
● 商標登録が可能かどうか確認しているか
● ドメインやSNSで一貫性を保てるか
● 他言語で誤解を招く意味がないか
7. 検証とフィードバック
候補をいくつかに絞ったら、実際に人に聞いて印象を確認します。社内や想定するターゲット層に対して「どんなイメージを受けるか」「覚えやすいか」などをヒアリングします。客観的な意見を得ることで、思い込みを捨てることができます。ただし、好みの多数決で決めるのではなく「ブランドとして相応しいか」を軸に判断することが大切です。実際に口に出したり、ロゴ案と並べて見たりすることで、印象の違いがより明確になります。この段階で丁寧に検証するほど、最終決定への納得感が高まります。判断軸を言葉にして、評価の基準を共有しながら進めると良いです。感覚だけでなく、検証結果も意識して整えていきます。
● ターゲットに近い人の感覚を確認しているか
● フィードバックを基準に沿って整理しているか
● 音やデザインとの相性も検証しているか
8. 最終決定・表現展開
最終的に残ったネーミングを決定したら、その案がブランド全体にどう反映できるか見ていきます。ロゴやコピー、ビジュアルデザインとの相性を確認し、全体のトーンに一貫性があるかを確認します。また、ネーミングの意図や背景を言語化し、チームや関係者に共有しておくと、ブランドの発信に深みが出ます。発表時には、単に名前を伝えるのではなく、その中にある考えや想いを一緒に届けることが大切です。ネーミングは「決めて終わり」ではなく、使いながら価値を育てていくプロセスの始まりでもあります。時間とともに意味が広がり、ブランドのらしさを形づくっていきます。
● ブランド全体の世界観と統一されているか
● ロゴやデザインとの整合性が取れているか
● 意図をチーム全体で共有できているか
■ 成功するネーミング開発のポイント

1. 覚えやすいこと
ネーミングの基本中の基本は「覚えやすさ」です。どんなに意味が良くても、記憶に残らなければ人の心には届きません。覚えやすい名前は、短く、音のリズムが良く、そしてイメージが自然に浮かぶものです。音の響きには心理的な影響があり、柔らかい音は親しみを、硬い音は力強さを印象づけます。言葉を構成する音節数やアクセントの位置も重要です。人は、3〜4音節程度の短い単語を特に記憶しやすい傾向があります。また、視覚的にも記憶に残るように、文字の形や並びにリズムがあると効果的です。たとえば、繰り返しや対称性を意識した構成は印象を強めます。さらに、ネーミングを聞いた瞬間に「なんかいいな」と感じさせる直感的な覚えやすさも大切です。心にすっと残る名前こそが、ブランドの入口になります。
● 3〜4音節以内でリズムがある構成にする
● 響きに感情的な印象(柔らかさ・力強さ)を持たせる
● 見たときの文字の形やリズムにも気を配る
2. 発音しやすいこと
どんなに美しい名前でも、発音しづらければ広まりません。発音のしやすさは、ブランドが口コミで広がるスピードにも関わる重要な要素です。特にグローバル展開を視野に入れる場合、複雑な発音や発音の揺れがある言葉は避けた方が良いでしょう。日本語での滑らかさだけでなく、英語や他言語での発音のしやすさも考慮する必要があります。発音の心地よさは、母音と子音のバランスに大きく左右されます。母音が続きすぎると曖昧になり、子音が多すぎると硬く感じられます。ブランド名を実際に口に出してみて、呼びやすさやリズムの自然さを確かめることが重要です。また、社内外で複数の人に声に出してもらうと、意外な発見があることも。音として流れる名前は、書かれた文字以上に人の感覚に残ります。
● 実際に声に出して心地よさを確認する
● 母音と子音のバランスを意識する
● 他言語でも読み間違いが起きにくい構成にする
3. 意味が伝わること
ネーミングは単なる記号ではなく、「何を大切にしているブランドか」を伝える最初のメッセージです。意味が伝わる名前は、ブランドの価値や存在理由を一言で感じさせる力を持ちます。とはいえ、説明的すぎると平凡になり、抽象的すぎると伝わらない。その中間をどう設計するかがポイントです。言葉の意味を直接的に伝えるのではなく、「連想」を促す形が理想的です。たとえば、自然・光・動きなど、人が共感しやすい概念をモチーフにすることで、印象が広がります。また、ネーミングの意味を明確にしすぎず、受け手の想像に余白を残すことで、時間とともにブランドに深みが出てきます。名前が“説明”ではなく“物語の入り口”になっているかを意識すると良いでしょう。
● ブランドの価値や理念と自然に結びつく意味を持たせる
● 直接的すぎず、連想を生む余白を残す
● 受け手が自分の感覚で物語を感じられる設計にする
4. 独自性があること
市場の中で埋もれないためには、独自性が欠かせません。特に競合が多い分野では、似たような言葉や響きが氾濫しているため、他と区別できる個性が必要です。独自性は奇抜さではなく、「ブランドらしさを明確に表現できているか」という観点で考えます。ネーミングの背景にある価値観や哲学が、他社と異なる方向から導かれているかどうかが重要です。また、意外な組み合わせの言葉や、新しい語感の造語なども効果的です。特に造語は、意味をブランド自身が育てていけるという強みがあります。独自性を出すには、最初に「競合分析」と「言葉の市場調査」を行い、似た傾向の表現を避けることも大切です。ユニークな響きとブランドの本質が合致していれば、それが最も強い独自性になります。
● 競合の名称傾向を調べて差別化する
● ブランドの理念から導かれる言葉を軸にする
● 新しい語感や組み合わせで個性を生み出す
5. 拡張性があること
ブランドは常に進化していくものです。そのため、ネーミングにも「未来への余白」が必要です。現在の事業内容に限定されすぎる名前は、ブランドが成長したときに足かせになる可能性があります。拡張性のあるネーミングとは、事業領域が広がっても違和感なく使い続けられること。たとえば、特定の商品名ではなく、思想や体験を想起させる言葉にすることで、幅を持たせることができます。また、派生ブランドやシリーズ展開がしやすいかもポイントです。さらに、デジタル領域での使いやすさやタグ展開など、将来的な発信方法にも適応できる柔軟さを意識しましょう。長期的な視点で考えることで、ブランドの進化に耐える強い名前になります。変化を前提に開発された言葉は、時代とともに成長し続ける力を持っています。
● 現在の事業だけでなく将来の展開も見据える
● 思想や価値観をベースにした広がりのある言葉を選ぶ
● 派生展開やデジタル運用のしやすさも考慮する
6. グローバル対応可能なこと
今の時代、ブランドは最初からグローバルに発信される可能性を持っています。そのため、ネーミングも世界の多様な文化や言語の中で誤解なく伝わることが大切です。特定の国でネガティブな意味を持つ言葉や、発音しにくい構成は避けましょう。また、英語圏以外でも受け入れられる響きを意識することがポイントです。グローバル対応とは、単に「英語的であること」ではなく、「どの文化圏でもポジティブに響く中立的な言葉であること」です。加えて、国際的な商標登録の観点からも、既存の名称との重複リスクを早めに調べる必要があります。最初の段階で海外展開を視野に入れておくことで、後のブランド拡張がスムーズになります。文化や価値観の多様性を尊重しながら、普遍的な魅力を持つ名前を目指しましょう。
● 他言語での意味や発音を事前にリサーチする
● どの文化でもポジティブに受け取られる響きを意識する
● 国際商標の登録可能性を早めに確認しておく
■ ネーミング開発の注意点

1. 意味・響きの確認を怠らない
ネーミングを考える際、意味と響きの両面を確認することは重要です。言葉は単なる記号ではなく、文化や感情を伴って受け取られるからです。特にグローバル展開を想定する場合、他言語での意味や発音に注意しなければなりません。ある国では美しい響きでも、別の国では不快な意味を持つケースも少なくありません。また、響きには心理的効果があります。柔らかい母音が続くと温かく優しい印象を与え、硬い子音が多いと力強さや洗練さを感じさせます。ブランドの性格に合った音の選び方を意識することで、ネーミングはより深く印象づけられます。さらに、日本語・英語・カタカナなどの表記で見たときの印象も確認しましょう。言葉の響きと意味が一致しているかを丁寧に確かめることが良いネーミング開発につながります。
2. 既存商標・登録名のリサーチを行う
どんなに優れたネーミングでも、既に同名や類似の商標があれば使うことはできません。商標トラブルはブランドの信頼を大きく損ない、最悪の場合は改名を余儀なくされます。そのため、ネーミングがある程度絞り込めた段階で、特許庁の商標データベースなどを使い、同一・類似の名称が登録されていないか必ず確認する必要があります。また、商標だけでなく、企業名・商品名・サービス名・ドメイン名の使用状況なども調べておくと安心です。音や意味が近いものも紛らわしさを生むため、単純な一致だけでなく、印象が似ていないかも見極めましょう。リサーチは手間のかかる工程ですが、ここを怠ると後々のリスクが大きい部分です。ブランドを守るための“防衛策”として、早い段階から慎重に調査を行うことが欠かせません。
3. 意味を詰め込みすぎない
ネーミングには、ブランドの想いや価値を込めたいという気持ちが自然と働きます。しかし、あれもこれもと詰め込みすぎると、結果的に何を伝えたいのか分からない名前になってしまいます。ネーミングは、短い言葉の中に「エッセンスだけを凝縮する」行為です。情報を詰めるよりも、「本質を抽出する」ことを意識しましょう。ブランドの特徴や理念をすべて盛り込むのではなく、その中で最も象徴的な要素を一つ選ぶ方が、印象は強く、覚えやすくなります。また、言葉に余白を残すことで、受け手が自由に解釈できる余地が生まれます。説明的な名前よりも、少しの想像を促す名前の方が、ブランドに深みと広がりを与えます。意味を削ぎ落とすことは勇気のいる作業ですが、それがブランドの強さを際立たせるポイントです。
4. 一時的な流行語を使わない
ネーミングにトレンドを取り入れることは、一見キャッチーで魅力的に思えるかもしれません。しかし、流行語や一時的な言葉は、時間の経過とともに陳腐化し、ブランドの寿命を短くしてしまうリスクがあります。ブランド名は数年、あるいは数十年にわたって使い続けるもの。だからこそ、流行よりも時代を超えて通用する普遍性を優先するべきです。また、流行語には文化的背景や世代特有のニュアンスが含まれており、特定の層には受けても他の層には伝わらないことがあります。さらに、流行が去った後にその言葉が“古い印象”を与えてしまいます。短期的な話題性よりも、長く使っても自然に感じられる言葉を選ぶことが、ブランドを成熟させる鍵です。時間を味方につけられるネーミングこそ、真に強い名前といえます。
■ ネーミング開発における成功事例

【 記憶に残るネーミングの成功事例 】
「Google」というネーミングは、その独特な響きと造語らしさにより、一度聞いたら忘れられない強い印象を与えます。この言葉は「googol(10の100乗)」をもとにしており、膨大な情報を扱う検索エンジンとしてのスケール感を連想させます。そのユニークさと親しみやすさが相まって、世界中で高い認知度を獲得し、ブランドの成功を後押ししました。また、「iPhone」という名前も非常にシンプルでありながら、Appleのブランド戦略を象徴するものです。「i」は個人・インターネットを示唆し、「Phone」は機能そのものを伝えています。このように、記憶に残るネーミングは、単なる言葉以上に、ブランドの価値や方向性を端的に伝える重要な要素です。
[ その他の有名な成功事例 ]
● Spotify:spot(見つける)とidentify(特定する)を掛け合わせた造語
● Nike:ギリシャ神話の勝利の女神「Nike」に由来
● Lego:デンマーク語の「leg godt(よく遊べ)」が由来
● Zoom:音のスピード感や親しみやすさがイメージを想起
● Uber:ドイツ語で「超越」を意味する“über”が語源。
● Pinterest:Pin(ピンで留める)+Interest(興味)の造語
[ 出典 ] www.google.com・www.apple.comより

【 簡潔かつ親しみやすいネーミングの成功事例 】
「Coca-Cola」は、語感が良くリズミカルで、シンプルかつ親しみやすいネーミングの代表例です。この名前は、もともとの原料である「コカの葉」と「コーラの実」に由来しており、成分の特徴を表現しつつ、ブランドとしての印象もしっかり残します。その結果、世界中で高い認知度を獲得し、世代を超えて愛される存在となりました。また、「Amazon」というネーミングもシンプルで親しみやすく、同時にスケール感のある印象を与えます。南米の大河「アマゾン川」にちなんだこの名前は、豊富な商品数やグローバル展開のイメージを強調し、ブランドの成長を後押ししました。このように、簡潔で親しみやすいネーミングは、消費者の心に長く残りやすく、ブランド価値の向上に直結します。
[ その他の有名な成功事例 ]
● Pepsi:語感が軽やかで親しみやすい。「消化酵素のペプシン」に由来
● Visa:旅行や国際性を想起させる。言いやすく、グローバルに通用する
● Sony:sonus(音)とsonny(若者)を掛け合わせた造語
● Zara:ファッションブランドらしく響きがスタイリッシュで親しみやすい
● Uber:短く覚えやすい上に、語源(über=“超える”)に含意がある
● LINE:誰にでも伝わる単語で、コミュニケーションの“つながり”をイメージ
[ 出典 ] us.coca-cola.com・www.aboutamazon.comより

【 ブランドコンセプトを表現したネーミングの成功事例】
「Airbnb」というネーミングは、「Air Bed and Breakfast」の略に由来しており、旅行者とホストをつなぐというシェアリングエコノミーの本質を巧みに表現しています。この言葉は造語でありながらも発音しやすく、記憶にも残りやすいため、ブランド認知の拡大に大きく貢献しました。さらに、「Tesla」というネーミングは、電気工学の天才ニコラ・テスラにちなんでおり、革新性や先進技術を象徴しています。未来志向の電気自動車ブランドとしてのイメージを明確にし、高価格帯でも強いブランド信頼を築くことに成功しました。両者に共通するのは、ネーミングが単なる名称にとどまらず、ブランドの世界観や哲学を言葉として表している点にあります。
[ その他の有名な成功事例 ]
● Patagonia:パタゴニア地方を象徴に、環境志向・挑戦精神を反映
● Google:Googol(10の100乗)に由来し、膨大な情報量と探求のスケール感を表現
● Notion:“概念・発想”という意味を含み、オールインワンのツールを表現
● Kindle:“火をつける”という意味があり、読書体験に再び火を灯すという知的さを表現
[ 出典 ] www.airbnb.jp・www.tesla.comより
■ ネーミング開発における失敗事例

ネーミング開発は、商品やサービスの成功に欠かせない要素のひとつであり、適切なネーミングはブランドイメージの向上にもつながります。しかし、反対に不適切なネーミングは、ブランドイメージを損なうだけでなく、ビジネスに悪影響を及ぼすこともあります。ここでは、ネーミング開発においてよく見られる失敗事例について、以下の3つの観点から解説します。
【 意味の不明確なネーミングの例 】
ネーミングの目的は、その商品やサービスの内容や特徴を明確に伝えることです。しかし、意味の不明確なネーミングは、商品やサービスに対する消費者の理解を妨げる原因になります。たとえば、あるブランドの名前が「ELLE」であった場合、ファッション雑誌「ELLE」や同名のブランドが存在するため、消費者に混乱を与えることが予想されます。また、極端な例ですが、商品名に意図的に意味を持たせず、ただ無意味な言葉を使っている場合もあります。その結果、ブランドの方向性が曖昧になります。
【 発音が難しいネーミングの例 】
ネーミングの中には、発音が難しいものもあります。これは、消費者が正しく言えないため、コミュニケーションの妨げとなります。たとえば、あるシャンプーの名前が「XANTHIPE」であった場合、発音が難しいため、消費者にとって覚えにくくなります。このように、発音が難しいネーミングは、消費者のコミュニケーションを妨げるだけでなく、ブランドの認知度を下げる要因にもなります。誰もが自然に口にできる名前こそ、ブランドが広がる力を持っています。言葉は音のデザインでもあるのです。
【 不適切なネーミングの例 】
ネーミングには、法的問題がある場合には配慮することが必要です。また、不適切なネーミングは、消費者に悪印象を与える可能性があります。例えば、あるスポーツ用品ブランドが「JAPAN MONKEY」という名前をつけたことがありますが、この名前は人種差別的な表現であるため、消費者から批判を浴びることになりました。ブランド名は社会的な責任を伴うものであり、文化的背景や倫理的観点を踏まえた慎重な判断が求められます。信頼を築くためには、言葉の持つ力を正しく理解し、尊重する姿勢が不可欠です。
■ ネーミング開発の弊社実績
株式会社チビコは、ブランド戦略の核となる「ネーミング開発」を数多く手がけてきました。単なる名前づくりではなく、企業の理念・世界観・市場ポジションを言葉で体現することを重視しています。感性と戦略を融合させた独自の開発プロセスで、本質を捉えたネーミングを生み出しています。

[ OPTICO ]
上市前の商品開発に特化したマーケティングリサーチDXのプラットフォーム。多くのマーケティング部署やマーケターが抱えている様々な課題とニーズに具体的に対応します。OPTICOの意は、アイデア(Idea)の 最適化(Optimization)を図るものであるから。Optic(目の)+Consumer(生活者)
[ 詳細 ] chobico WORKS | OPTICOより

[ CONTAINER PLUS ]
CONTAINER PLUSは、可能性を広げる高品質のコンテナ建築モデルのブランドです。コンテナオフィスを起点として、コンテナ店舗、オフィス+ガレージ、店舗+コンテナ倉庫などをラインナップ。コンテナ建築+スペースの有効活用として新しいサービスを提供しています。
[ 詳細 ] chobico WORKS | CONTAINER PLUSより

[ MONOCOTO ]
MONOCOTOは、リアルソーシングを特徴とするソーシャルマニュファクチュアリングサービスです。モノが溢れ余る社会において「モノの先にあるコトの価値」が求められています。単にモノを作るという発想から、その先にあるモノを使う楽しみや経験、人とのコミュニケーションを提案するブランドです。
[ 詳細 ] chobico WORKS | MONOCOTOより

[ JAPANITURE ]
日本発の家具ブランド「JAPANITURE」の海外展開」。JAPANITUREとは、JAPANとFURNITUREの造語に由来し、ブランドコンセプトは「日出ずる国の家具」。日本の伝統と革新的でモダンなデザイン家具を海外に広く発信し新規マーケットを開拓することを目的とするブランドです。
[ 詳細 ] chobico WORKS | JAPANITUREより

[ CLARTE ]
Clarteとは、フランス語で「光」「輝き」を意味する言葉です。いつも感謝すること。楽しみとユーモアをみつけること。身近な人たちの幸せを願うこと。この3つのコンセプトから生まれたブランドです。ショップ5周年を記念しプレゼントとしてアロマキャンドルにメッセージカードを添えて配布しました。
[ 詳細 ] chobico WORKS | CLARTEより

■ ネーミング開発の条件に関するよくある質問
ネーミング開発を重ねる中で、多くの企業から「どんな名前が良いのか?」という質問を受けてきました。ここでは、実際のプロジェクト経験をもとに、よくある疑問にお答えします。
[ よくある質問① ]
Q :覚えやすさって具体的にどういうことですか?
A :一度聞いてすぐに覚えられ、日常会話に自然と混じるシンプルで響きの良い名前が理想です。長すぎたり難解な名称は避けるべきです。
[ よくある質問② ]
Q :ネーミングに“視覚的魅力”が必要なのはなぜですか?
A :見た瞬間に目を引き、パッケージや広告で映える文字・デザインになっていると認知が加速し、印象に残りやすくなるためです。
[ よくある質問③ ]
Q :ブランドイメージを名前に反映するにはどうすればいいですか?
A :名前にブランドの価値観や製品特性(たとえば革新性や安心感)を含めることで、消費者にブランドの本質が直感的に伝わります。
[ よくある質問④ ]
Q :記憶に残るネーミングってどんなものですか?
A :ユニークな響きや語感、スペリング、言葉遊びがある名前は、他ブランドと区別されやすく、長期的な記憶に刻まれやすいです。
[ よくある質問⑤ ]
Q :法的規制への配慮は何をすればいいですか?
A :商標登録の可否や既存類似名称の調査を必ず行い、法的に安全な名前を選定することが必要です。グローバル展開も視野に入れて検討してください。

■ ネーミング開発に関するチェックリスト
数多くのネーミング開発を支援してきた中で、最終判断を迷う企業ほど「確認項目の整理」が不十分な傾向があります。ここでは実務で効果的だったチェックポイントを紹介します。
[ コンセプト適合性のチェック ]
⬜︎ ブランドのビジョン・コンセプトとネーミングが一貫しているか?
⬜︎ 事業領域や提供価値が名前から直感的に伝わるか?
⬜︎ ブランドの世界観やポジショニングを損なっていないか?
[ 響き・発音性のチェック ]
⬜︎ 発音しやすく、口に出したくなるリズムになっているか?
⬜︎ 3〜4音節以内で覚えやすい長さになっているか?
⬜︎ 日本語だけでなく、海外展開も視野に入れた発音のしやすさを考慮しているか?
[ 差別化・独自性のチェック ]
⬜︎ 競合他社のネーミングと明確に差別化できているか?
⬜︎ 類似した名前や登録商標との重複リスクは回避しているか?
⬜︎ 一度聞いただけで印象に残る独自性があるか?
[ 市場適応性・拡張性のチェック ]
⬜︎ 新しい事業やサービスにも柔軟に対応できる名前になっているか?
⬜︎ SNS・SEO・ドメイン取得などのデジタル環境で適応可能か?
⬜︎ 海外市場でネガティブな意味を持たないかを確認しているか?

■ まとめ
ネーミングはブランドや商品の第一印象を決め、認知度や信頼性を高める重要な要素です。記事では、ヒットするネーミングの条件を5つに整理しています。まず覚えやすさ。シンプルで響きが良く、一度聞けば自然に記憶されること。次に視覚的魅力。パッケージや広告で際立つ形や文字列が認知を促進します。さらにブランドイメージの反映で価値観や製品特性を直感的に伝え、記憶に残る独自性で他社との差別化を実現。最後に法的リスクの回避として商標や海外使用の適性を確認することが不可欠です。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
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