
[ ブランド戦略 ]
技術をブランド化する方法|成功事例と実践ステップ
日本企業の中には、世界でもトップクラスの技術を持つ企業が数多くあります。しかし、その価値が十分に伝わらず、価格競争に巻き込まれたり、埋もれてしまうことも少なくありません。問題は技術の優劣ではなく、「技術をどう見せ、どう伝えるか」というブランディングの力です。技術をブランド化することは、単なるネーミングやロゴの話ではなく、企業の理念や市場での立ち位置、顧客との関係性までを含めた総合的な取り組みです。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、技術ブランドの考え方から実践のステップ、デザインや運用のポイント、国内外の事例までを交え、技術を「選ばれる価値」に変える方法を紹介します。
CONTENTS | 目次
■ なぜ、技術をブランド化する必要があるのか?

技術の凄さだけでは選ばれない
企業や開発者は、自社技術の優位性を理論やスペックで語りがちです。ですが、市場を動かすのは「理解」ではなく「共感」です。BtoBの現場でも、最終的な導入を決めるのは「この企業に任せたい」と思えるかどうか。どれほど優れた技術であっても、顧客の課題にどう役立ち、どんな成果や価値を生むのかが伝わらなければ選ばれません。技術を“伝わる言葉”に変えてこそ、共感を得て選ばれる企業になれるのです。つまり、技術を語ることと、技術の価値を伝えることはまったく別なのです。
➤ 詳細記事:なぜ、BtoB企業こそ「ブランディング」が必要なのか?
競合他社との差別化が重要
市場が成熟するほど競合との差は小さくなり、製品やサービスの違いは見えづらくなります。もし自社に技術的な強みがあるなら、それをどう見せ、どう語るかが大きな分かれ道です。特許や独自ノウハウといった強みも、「その企業ならではの価値」として伝えなければ、顧客には違いが伝わらず、結果的に価格競争に陥ってしまいます。技術そのものではなく、その技術がもたらす意味や価値を明確に言語化し、ブランドとして表現することが差別化の鍵となり、長期的な信頼にもつながります。
■ 技術をブランドとして伝えるための3つのポイント

1. スペックよりもどう役に立つのか
顧客が知りたいのは、技術の仕組みそのものではなく、「それが自分にどう役立つのか」という点です。技術はスペックの説明ではなく、“使う人の価値”へ置き換えて伝える必要があります。たとえば「ナノイー」は除菌率や粒子サイズではなく、「空気をきれいに保つ」「肌にもやさしい」といった生活実感で訴求しました。このように、技術を感覚的な価値へ変換することが、ブランドをつくる第一歩になります。
2. 顧客目線での強みは何なのか
技術者が誇る性能や構造が、必ずしも顧客のニーズと一致するとは限りません。大切なのは、顧客が抱える課題に対して、自社の技術がどう貢献できるか、どんな価値を生み出すのかを示すことです。競合との比較ではなく、顧客の期待や状況に寄り添って技術の意味を見出すことで、ブランドとして信頼される理由が生まれます。強みを顧客視点で整理することが、差別化のスタートになります。
3. 難しいことを簡単に伝えること
専門性の高い技術は、つい「分かる人にだけ伝わればいい」となりがちですが、ブランドづくりでは「誰にでも伝わること」が欠かせません。専門性を保ちながら伝えるには、図解やストーリー、具体的な事例を使い、理解ではなく“イメージとして伝わる”表現が効果的です。難しい内容をかみ砕き、抽象的な概念を見える形にすることで、ブランドの伝わり方は大きく変わります。
■ 技術をブランド化するための実践ステップ

1. 何のためにブランド化するのかを決める
技術をブランド化する目的は、単に売上を伸ばすことだけではありません。採用力の向上、資金調達、海外展開、社内意識の醸成など、幅広い経営課題の解決につながります。だからこそ、最初に「なぜブランド化するのか」を明確にすることが大切です。目的が定まれば、施策の優先順位や発信の方向性、デザインやメッセージにも一貫性が生まれ、より効果的にブランド価値を築いていけます。
2. どのポジションで誰に伝えるかを明確にする
誰に届けるのか(ターゲット)、どう違うのか(ポジション)、何を伝えるのか(メッセージ)。この3つが曖昧なままでは、どんなに優れた技術でも印象に残らず、選ばれる理由になりません。技術をブランドとして確立するには、相手を明確に定め、その人に響く言葉で伝えることが重要です。価値を整理し、ポジションを定めることで、ブランドの軸ができ、伝わり方にも深みが出ます。
➤ 関連記事:ブランドポジショニングから始めるブランディング
3. ストーリーと独自性をどう作るか検討する
同じような機能を持つ技術でも、「なぜこの企業がその技術を生み出したのか」「どんな想いや課題意識から生まれたのか」を語ることで、ブランドに厚みが生まれます。スペックだけでなく、背景にあるストーリーや開発への姿勢を伝えることで、顧客との距離が縮まり、共感が生まれます。その共感が信頼を育て、やがてはブランドを支えるファン層へとつながっていきます。
➤ 関連記事:ブランドストーリーの作り方|成功事例と開発ステップを解説
■ 技術のブランド化に必要なデザイン開発

【 ネーミングやロゴ、WEB等での「らしさ」の追求 】
技術をブランドとして確立するには、その技術が持つ独自の強みや特徴を「らしさ」として見える形にすることが大切です。ネーミングは覚えやすく象徴的であること、ロゴは視覚的なアイデンティティを示すこと、そしてWebサイトでは信頼性や革新性を感じさせるデザインであることが求められます。これらを統一的に設計することで、技術ブランドの存在感が高まり、市場での認知や信頼の基盤が築かれていきます。
● 独自の価値を表すシンプルで覚えやすい名前を付ける
● 技術を象徴するロゴやアイコンを開発する
● Webなどで一貫した世界観と信頼性を表現する
➤ 関連記事:ブランディングデザインとは?目的・重要性を成功事例で解説
【 営業資料・動画・SNSまで一貫したデザイン表現の構築 】
ブランド化した技術を広く浸透させるには、営業資料や動画、SNSといった多様な媒体で一貫したデザインを保つことが欠かせません。媒体ごとに表現がバラつくとブランドの印象が弱まってしまうため、統一されたトーン&マナーを定義し、「その技術らしさ」を常に感じられる発信を意識します。どの接点でも同じ印象を積み重ねることで、信頼性とブランド力が自然と高まります。
● 営業資料からSNSまで一貫したビジュアルを用いる
● 媒体の特性を踏まえつつ世界観をそろえる
● トーン&マナーを整えブランド表現を統一する
■ 技術ブランドを機能させるための運用方法

【 ローンチだけで終わらせない仕組み作り 】
ブランドは立ち上げて終わりではなく、日々の運用で少しずつ価値を育てていくものです。社内での共有や連携、外部への情報発信、継続的なプロモーションなど、日常的な取り組みがブランドを成長させます。さらに、技術の新しい活用方法を提案したり、時代に合わせてアップデートを重ねることで、ブランドの鮮度と関心を保ち続けることができます。継続的な運用こそが、ブランドを強くする原動力になります。
【 数値で見える効果・感じる反応を調査する 】
ブランドの効果は「なんとなく」ではなく、数値と反応の両面から確認することが大切です。認知度の推移、Webサイトのアクセス数、営業の成約率、口コミ内容、SNSでの反応など、定量と定性のデータを組み合わせて評価しましょう。データをもとに現状を見える化すれば、次に取り組むべき課題も明確になります。成果を可視化しながら改善を重ねていくことが、ブランドを継続的に育てるための鍵です。
【 市場や顧客の変化に合わせて進化させる 】
技術も市場も、そして顧客の価値観も常に変化しています。その変化に合わせてブランドも進化させていくことが大切です。Appleのように、定期的にデザインや価値提案を見直しながらブランドを更新していくことで、“生きた資産”としての力を保つことができます。変化を前向きに受け入れ、柔軟に対応し続ける姿勢が、長く信頼されるブランドを支える基盤になります。
■ 成功事例に学ぶ伝わる技術ブランド

【 Heattech | ユニクロの成功事例 】
東レとの共同開発による先進素材を活かし、UNIQLOは「暖かさ」「薄さ」「動きやすさ」を兼ね備えた高機能インナー、ヒートテックを生み出しました。最先端の技術を“感じる快適さ”という日常的な価値へと置き換え、テレビCMや店舗体験、商品パッケージに至るまで一貫したブランド表現を展開。結果として、冬の定番として多くの人に選ばれる存在となり、機能性アパレル市場に新しいスタンダードを築きました。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● 東レとの共同開発による素材の信頼性と品質の高さ
● 技術を「快適」という生活実感に転換
● パッケージや広告、売場まで一貫した世界観を構築
● 改良を重ねる“進化する定番”としての認知を獲得
● シーズンごとの購買習慣を生み出し、継続的な支持を確保

【 nanoe x | パナソニックの成功事例 】
目に見えない空気を、確かな安心へ。パナソニックは、空気清浄技術を「ナノイーX」というブランドとして確立しました。微粒子イオンによる除菌・脱臭の技術を、家電の差別化要素として活用するだけでなく、“清潔な空気”を象徴する名前として定着させています。空調機器や美容家電、車載機器などへも横断的に展開し、「家中をナノイーXで満たす」という一貫したブランド体験を提供。見えにくい技術を、わかりやすく信頼できる価値へと変えています。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● 名前そのものを技術ブランドとして定着させた
● 複数の家電カテゴリへ横展開し接点を拡大
● 見えない安心を情緒的な価値として伝達
● 家庭・美容・車内など多様な生活シーンに展開
● 空気家電分野で高い認知と信頼を獲得

【 MagSafe | Appleの成功事例 】
“便利”を極めた磁力設計。ユーザー体験を支える静かなイノベーション。MagSafeは、Appleが開発した磁力を利用した接続技術です。もともとはMacの充電ポートに採用され、のちにiPhoneのワイヤレス充電やアクセサリ接続にも応用されました。「カチッとつく安心感」や「ケーブルが外れやすい安全性」など、使いやすさに直結する技術でありながら、意識させない自然な使い心地が特徴です。Appleらしい“目立たないけれど手放せない”技術ブランドとして定着しています。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● 技術そのものより“使いやすさ”を重視した設計思想
● 視覚や触覚で感じる安心感を演出
● iPhoneアクセサリ市場拡大の基盤として機能
● Apple製品に共通する“なめらかな体験”を象徴
● ハードとエコシステムをつなぐ技術ブランディング

【 Alexa | Amazonの成功事例 】
「声で操作する」ことを日常にした、音声AIの代表的ブランド。AmazonのAlexaは、スマートスピーカーに搭載された音声認識AIです。名前そのものがブランドとして機能し、「アレクサ、○○して」というフレーズが一般化するほど定着しました。API連携によって家電や住まいの操作にも対応し、スマートホームの入り口として広く活用されています。AI技術を前面に出すのではなく、“話しかけたくなる便利な存在”として親しみを持たせた点が特徴です。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● 名前に人格を持たせ、使いやすさと親近感を演出
● 声による操作を自然なUXとして定着させた
● 家庭内に“AIと暮らす”体験を広げた
● API連携で他デバイスとの連携を拡大
● 技術の複雑さを感じさせないユーザー設計

【 Dolby Atmos | Dolby Laboratoriesの成功事例 】
「音が空間に広がる体験」を新たな基準に。Dolby Atmosは、音の位置を立体的にコントロールできる3D音響技術です。映画館から家庭用テレビ、ゲーム、音楽ストリーミングまで幅広く普及し、「音が上から降ってくる」という印象的な表現によって、技術の複雑さを感じさせずにユーザーの感動体験へとつなげています。現在では、“Atmos対応=高品質”という認識を確立し、映像・音響分野の新しいスタンダードとして広く受け入れられています。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● 映像体験を“音”でアップデートする訴求
● 技術解説よりも「感動体験」を中心に伝える戦略
● 映画館から家庭用まで一貫した展開で認知を拡大
● 製品ロゴ表示による安心感と差別化を実現
● プレミアムな音響体験を象徴するブランドとして定着

【 e-POWER | 日産の成功事例 】
“電気の走り”をガソリンで実現した、逆転の発想による技術ブランディング。日産のe-POWERは、「ガソリンで発電し、モーターで走る」という独自の電動駆動技術です。EVのような静かで滑らかな加速感を持ちながら、充電の手間がない点が特徴。「いいとこ取りの電動車」としてポジションを築き、ノートをはじめとする主力車種に採用されています。CMや試乗体験、販売現場までを通じて“電気の走り”を実感できる一貫したブランド体験をつくり上げました。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● 技術の仕組みを“体感できる価値”に転換
● EVかガソリンかではない新しい選択肢を提案
● 製品・広告・店舗でストーリーを一貫して伝達
● シリーズ展開による技術ブランドの定着化
● 走行性能をそのままブランド体験として設計

【 EyeSight | スバルの成功事例 】
「安全性といえばスバル」という印象を築いた代表的な技術ブランド。スバルの「EyeSight」は、ステレオカメラによる運転支援システムで、早い段階から市場に導入され高い評価を得ています。ネーミングには“視線”という意味を重ね、ドライバーとクルマが一体で周囲を見守るイメージを表現。CMや試乗体験、比較データなどを通じて信頼性を積み重ね、安全を軸にしたブランドイメージの確立に大きく貢献しました。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● 技術の特徴をわかりやすく伝えるネーミング設計
● CM・試乗・資料を通じた一貫した教育型アプローチ
● 「安全=スバル」というブランドイメージを浸透
● 実績データに基づく信頼性の強化
● 技術の進化に合わせた継続的なアップデート

【 SKYACTIV | マツダの成功事例 】
「走る歓びと環境性能の両立」を体現し、マツダらしさを明確にした技術ブランド。マツダの「SKYACTIV」は、エンジン・トランスミッション・シャシー・ボディといった車の主要構成要素をゼロから見直し、走行性能と燃費性能を高い次元で両立させた技術群です。単なる技術名称ではなく、「空(SKY)」のような開放感と「活動(ACTIVE)」のエネルギーを掛け合わせたネーミングで、ブランドの思想を表現。車全体をトータルで最適化するアプローチにより、“走る歓び”を軸にしたマツダ独自の価値を確立しました。
[ 技術ブランドの成功ポイント ]
● ブランド思想を反映したコンセプチュアルなネーミング
● 技術群を「SKYACTIV TECHNOLOGY」として体系的に整理
● “走る歓び”と“環境性能”を両立させた訴求を継続
● 車両全体を刷新する包括的な技術革新を展開
● 新型車の投入とともに進化の物語を発信し続けた
■ 技術ブランドの認知と企業ブランドの結びつき(認知%)

技術ブランド自体の認知状況を自動車関連の3つでみると「アイサイト」が最も高く、次いで「e-POWER」、「SKYACTIV TECHNOLOGY」と続きました。一方で、これら技術ブランドと企業ブランドとの結びつき認知状況はマツダの「SKYACTIV TECHNOLOGY」が最も高く、日産自動車の「e-POWER」、SUBARUの「アイサイト」の順となりました。
同じ自動車の技術ブランドであっても「アイサイト」は技術ブランド単体としての認知が高く、「SKYACTIV TECHNOLOGY」は技術ブランド単体での認知はそこまで高くないものの、認知者の多くは企業ブランドと結びつけて記憶しており、認知のされ方に違いがあることがわかります。
■ 技術ブランドによる企業の印象向上度(%)

自動車業界に限らず、多くの企業が技術ブランドを用いてコミュニケーションをしています。技術ブランドだけを訴求するのではなく、企業ブランドとの関連性を保ちながら発信していくことが、企業のブランド力を高める上で効果的です。
[ 参考文献 ] 田中洋「ブランド戦略論」p.97(有斐閣)
[ 調査資料 ] 日経リサーチ/ブランドに関する調査(2020年5月21~25日実施)より
■ ブランド化でよくある失敗例とその回避策

「 わかりにくい名前 」で伝わらない
専門用語や略語をそのまま使った名前は、理解されにくく、覚えられません。たとえば「HRX-9280」のような名前では、何を意味するのかが伝わらず、印象にも残りにくいものです。大切なのは、親しみやすく呼びやすい名前にすること。使う人の気持ちに寄り添い、「速い」「簡単」など、直感的にメリットが伝わる言葉を入れることで印象が良くなり、選ばれる確率も高まります。特に生活者向けのサービスでは、名前が購入意欲に直結し、ブランドの第一印象を左右する重要な要素になります。
[ 回避策 ]
● 名前には「何をしてくれるのか」を感じさせる言葉を使う。
名前は機能の説明ではなく、「使うとどう感じるか」を想起させることが大切です。たとえば「Alexa」は声で動く、「EyeSight」は安全を見守る――そんなイメージがすぐに浮かびます。覚えやすく、直感で理解できる名前は、ローンチ時の浸透スピードを大きく左右します。ネーミングは、価値を伝えるための“翻訳ツール”と言えるでしょう。
「 浸透させる仕組みがない 」ので広がらない
どれだけ魅力的なブランドをつくっても、浸透させる仕組みがなければ広がりません。営業資料やSNSなどで表現がバラバラだったり、社員が意図を理解していないまま使っていたりすると、ブランドはすぐに形だけのものになってしまいます。ブランドは“使われてこそ価値が生まれる”もの。社内外で一貫して伝え、自然に使われる仕組みを設計することが、広がりと定着のカギです。さらに、その仕組みを継続的に運用し、定期的に見直していくことが、ブランドを長く息づかせるために欠かせません。
[ 回避策 ]
● タッチポイントごとの展開計画と社内浸透の仕組みをセットで用意する
ブランドは放っておいても浸透しません。名刺やWeb、SNSなどの展開をあらかじめ計画し、社内では説明会やワークショップで理解を深めましょう。ロゴやカラーの使い方をまとめたガイドラインを整備すれば、表現のブレも防げます。意図的に伝え、使い、定着させる仕組みをつくることが、ブランドを育てる原動力になります。
➤ 詳細記事:ブランドガイドラインの作り方や構成内容と成功事例6選
「 社内が納得していない 」ことで形骸化する
ブランドは「信頼」と「約束」を伝えるものですが、社内がその意味を理解していないと形だけの存在になります。特に営業やサポートなど、顧客と接する人が“自分ごと”として捉えていないと、伝え方にバラつきが生まれ、顧客体験にも一貫性がなくなります。外向きのデザインがどれだけ整っていても、社内の共感がなければブランドは機能しません。ブランドは社内の文化として根づいてこそ力を発揮し、社員一人ひとりの行動がブランド体験を形づくるのです。
[ 回避策 ]
● 現場を巻き込み、共感を育てる。社内浸透は継続的に行う
ブランド開発を一部の担当者だけで進めると、現場の納得が得られにくくなります。初期段階から現場のキーパーソンを巻き込み、議論に参加してもらうことで、当事者意識が生まれます。「自分たちのブランド」として受け入れられることで、使われ方も自然と統一されていきます。発表後も研修や社内報、イントラでの発信を続け、文化として定着させることが大切です。

■ 技術をブランド化する方法に関するよくある質問
技術を磨いても「なぜ選ばれないのか」と悩む企業を数多く見てきました。答えは、技術を“語れる価値”に変えること。そこからブランド化は始まります。
[ よくある質問① ]
Q :技術をブランド化する最初のステップは?
A :技術の持つ独自性と市場に与える価値を整理し、それをブランドストーリーに変換することです。
[ よくある質問② ]
Q :専門的すぎる技術をどう伝えればよいですか?
A :難解な説明ではなく、顧客が得られるベネフィットに置き換えて表現することが効果的です。
[ よくある質問③ ]
Q :成功事例に共通するポイントは?
A :一貫したコミュニケーションと、体験を通じた価値訴求に注力している点です。
[ よくある質問④ ]
Q :技術力だけでブランド化は可能ですか?
A :技術力だけでは不十分で、顧客との信頼関係や世界観の構築も不可欠です。
[ よくある質問⑤ ]
Q :内中小企業でも技術をブランド化できますか?
A :規模に関係なく、明確な強みと一貫した発信を続ければブランド化は実現可能です。

■ 技術ブランド化のためのチェックリスト
多くの企業を支援する中で、「技術はあるのにブランドにならない」共通点が見えてきました。そこで私が実践で気づいた確認項目をまとめました。
[ 目的・メッセージのチェック ]
⬜︎ 技術をブランド化する目的が明文化されているか?
⬜︎ 技術が持つスペック以上の価値(顧客・社会での意義や差別性)が言語化されているか?
⬜︎ 技術の背景や開発ストーリーが整理され、共感を生む物語として語れるか?
[ ターゲット・ポジショニングのチェック ]
⬜︎ 技術を届けたい顧客/市場セグメントが明確になっているか?
⬜︎ 他社との差別性(独自技術・強み)がターゲット視点で理解できるか?
⬜︎ 技術による顧客が得るソリューションや価値が整理されているか?
[ 表現・伝達方法のチェック 】
⬜︎ 専門用語だけで終わらず、図解・例・ストーリーなどでわかりやすく表現されているか?
⬜︎ 技術の「意味」や「感じる価値」が顧客の感覚に届く形で伝えられているか?
⬜︎ メッセージと体験(Webサイト、販促資料、プレゼン等)が一貫性をもって設計されているか?

■ まとめ
どんなに革新的な技術でも、それがきちんと伝わらなければ、存在していないのと同じです。技術のブランド化とは、「価値を翻訳し」「意味を与え」「共感を生む」ことで、技術を選ばれる理由に変えていくことです。ブランドは単なるラベルではなく、企業と顧客をつなぐ“信頼と約束”の証です。自社の技術に眠る価値を見つめ直し、それをわかりやすく、魅力的に伝えていくことが、これからの時代に求められる取り組みだといえるでしょう。技術を誇るだけでなく、どう伝えるかを磨くことが未来への第一歩です。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
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