[ ブランド戦略 ]
グループ会社のブランデングとは何か？その手法と成功事例
グループ会社のブランディングとは、複数の企業が一体となってブランド戦略を統一し、グループ全体としての認知度や信頼性を向上させるための戦略です。各企業が独自の事業を展開する一方で、グループとしての統一感やブランド価値を高めることが求められます。これには、共通のブランドビジョンや価値観の策定、ロゴやカラースキームなどのデザイン要素の統一が含まれます。成功するブランディング手法には、親会社と子会社間の連携を強化し、シナジー効果を生み出すことが重要です。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、グループ会社のブランディング手法と、実際に成功した事例を紹介し、その効果とポイントについて詳しく解説します。
CONTENTS | 目次
■ グループ会社のブランディングとは？
グループ会社のブランディングとは、ひとつの企業だけでなく、グループ全体としてどう見られたいか、どんな価値を社会に届けたいかを整理し、それを軸に各社のブランドをデザインしていく戦略です。大切なのは「統一感」と「個性」のバランスです。まずグループ全体の存在意義(パーパス)や価値観を明確にし、それをもとに全社が共有できるブランドの考え方や構造をつくります。そのうえで、各会社が自社の事業や顧客に合った形でブランドを表現しながらも、全体として一貫した印象を持たせることを目指します。これにより、外から見たときに信頼感や安心感が生まれ、採用・投資・事業連携などでもグループ全体の魅力と存在意義がより深く伝わりやすくなります。
■ グループ会社におけるブランディングの重要性
【 グループ内の企業間でシナジーを生み出すこと 】
グループ会社のブランディングは、各社が同じ方向を向いて協力し合えるようにするための大切な仕組みです。共通のブランドの考え方や目指す姿を持つことで、自然と連携が生まれ、営業や採用、プロモーションなどの場面でもお互いを補い合いやすくなります。たとえば、ある会社の強みを別の会社が活かすことで、より大きな成果を出すことも可能になります。グループとしての一体感が高まることで、結果的にそれぞれの企業の活動が全体の価値向上にもつながっていきます。
【 グループ全体のブランド価値を向上させること 】
グループとして一貫したブランディングを行うことで、社会からの信頼や安心感を得やすくなります。各社がそれぞれ違う印象を持っていると、グループ全体の姿が伝わりにくく、評価も分散しがちです。共通の価値観やメッセージを共有しながら発信していくことで、「このグループはしっかりしている」「考えが通っている」という印象を持ってもらいやすくなります。その結果、顧客やパートナー、採用候補者など、さまざまな関係者からの信頼が積み重なり、グループ全体のブランド力が少しずつ育っていきます。
【 グループの認知度を上げ競合との差別化を図ること 】
グループ全体で統一したブランドの考え方をもつことで、「どんなグループなのか」「何を大切にしているのか」が伝わりやすくなり、結果的に他社との差別化につながります。個々の会社がそれぞれの発信をするよりも、グループとしてまとまりのあるメッセージを出す方が、印象に残りやすくなります。また、グループの存在感が高まることで、広報や採用などの取り組みもより効果的に進められます。デザインやロゴだけでなく、グループとしての姿勢や想いをそろえて伝えることが大切です。
■ グループ会社のブランディング手法
1. ビジョン・ミッション・バリューの明確化
グループ会社のブランディングにおいて最も重要なのが、「何のために存在しているのか」「どんな未来を目指しているのか」「どんな価値観で行動するのか」を明確にすることです。これが曖昧なままだと、各社が独自の方向へ進み、グループとしてのまとまりが生まれにくくなります。まずは経営層が中心となり、グループ全体のパーパス(存在意義)を定義し、その上でビジョン(目指す姿)とミッション(果たすべき役割)を整理することが大切です。さらに、それを支えるバリュー(価値観)を言語化し、全社員が共感できる形で共有していくことで、ブランドの軸ができます。これらは単なるスローガンではなく、日々の意思決定やコミュニケーション、そして企業文化の形成の拠り所となるべきものです。
● 具体的な進め方のポイント
- 経営陣と現場双方の視点を交えながら議論し、「実感のある言葉」で定義する。
- 一度決めたら終わりではなく、定期的に見直し、社会や事業環境に合わせてアップデートする。
- 言葉として定めるだけでなく、行動や制度に反映させ、社員が自然と体現できるようにする。
2. ブランドアーキテクチャの設計
グループ内のブランド構造を整理し、「親会社と子会社がどのような関係性でブランドを展開するか」を設計するのがブランドアーキテクチャです。これを曖昧にしておくと、社名やロゴ、メッセージがバラバラになり、外部から見たときに混乱を招きます。基本的には「統一型(マスターブランド)」「連携型(エンドーストブランド)」「独立型(個別ブランド)」の3つの型があり、事業の多様性や市場の違いに応じて最適な構造を選ぶことが大切です。グループ全体の一貫性を保ちながらも、各社の独自性を損なわないバランス設計が求められます。また、アーキテクチャ設計は「見た目の統一」だけでなく、「顧客にどう認識されたいか」という戦略的な視点で考えることが何よりも重要です。
● 実践のためのポイント
- 各社の事業特性・市場・ブランド力を踏まえ、最も自然な関係性を定義する。
- ビジュアル面(ロゴ、ネーミングなど)とメッセージ面の両方で整理する。
- 社内外の混乱を防ぐため、ルールと意図を明確に文書化し共有する。
➤ 詳細記事：ブランディングデザインとは？目的や重要性を成功事例で解説
3. ブランドガイドラインの策定
ブランドを統一的に運用するためには、明確なルールを定めたガイドラインが不可欠です。ロゴ、カラー、フォント、写真表現、言葉づかいなど、ブランドを構成するすべての要素を整理し、「どう使うべきか」を明示します。ガイドラインがない状態では、各社や担当者の判断でバラつきが生まれ、ブランドの印象が不安定になります。また、ガイドラインは単なるデザインマニュアルではなく、「なぜその表現を使うのか」というブランド思想を伝えるツールでもあります。運用時には、現場の自由度を残しつつ、ブランドの一貫性を守る柔軟な設計が望まれます。さらに、ガイドラインは現場で実際に使われてこそ意味があるため、運用ルールと教育の両輪で浸透させることが重要です。
● 策定のためのポイント
- デザインルールだけでなく、ブランドの考え方や背景も併せて記載する。
- 各社が使いやすいようにテンプレートや事例を豊富に用意する。
- 時代やメディアの変化に合わせて定期的に更新し、運用負荷を下げる。
➤ 詳細記事：ブランドガイドラインの作り方 | 構成内容と成功事例
4. インナーブランディングの強化
どれだけ素晴らしいブランド戦略を立てても、社員が理解し、共感し、体現できなければ意味がありません。インナーブランディングは、ブランドを「社員の意識と行動」にまで浸透させる取り組みです。まずは経営トップがブランドの意図を明確に語り、現場の言葉で伝えることが重要です。そのうえで、研修・ワークショップ・社内報・表彰制度など、社員がブランドを自分ごととして感じられる機会を設けていきます。ブランドが社内文化として根づくことで、自然と顧客体験の質も高まっていきます。さらに、社内での成功事例を共有し合うことで、ブランドの理解が深まり、社員一人ひとりの意識がより前向きに変化していきます。その積み重ねが、ブランドの本当の力を育てていくのです。
● 取り組みのポイント
- トップダウンとボトムアップの両面からブランドを伝える。
- 社員の共感を得るため、身近な事例やストーリーで語る。
- 日常業務や評価制度にもブランド視点を反映させる。
➤ 詳細記事：インナーブランディングとは？その目的と進め方と成功事例
5. グループ横断のコミュニケーション開発
グループ全体の一体感をつくるには、日常的に情報と想いを共有できるコミュニケーションの仕組みが欠かせません。社内ではグループ報やオンラインプラットフォームを活用して、各社の取り組みや成功事例を発信し合うことで、互いの理解が深まります。社外に向けては、コーポレートサイトやSNSなどでグループとしてのストーリーを発信し、「一貫した印象」を育てていきます。これらを通じて、グループ内外のつながりが強まり、ブランドの世界観がより立体的に伝わるようになります。さらに、定期的なグループイベントやトップメッセージの発信を行うことで、共有する価値観が育ち、組織全体の結束力がより強固になります。そして、そうした積み重ねがグループブランドの信頼を着実に深めていきます。
● 開発時のポイント
- 社内外での情報共有チャネルを整理し、発信リズムを整える。
- グループ全体で共通のトーン＆マナーを定め、統一感を保つ。
- 各社の成果やストーリーを紹介し、ブランド体験を広げていく。
■ グループ会社のブランド戦略
【 共通のビジョンとミッションの策定 】
グループ全体のビジョンとミッションを策定することで、各企業が共通の価値観と目標を持って活動できる基盤を築きます。これにより、グループ全体の行動指針が統一され、各企業の役割が明確化されるため、社員のモチベーションとチームワークも向上します。また、企業が目指す未来像が共有されることで、各企業の成長がより一貫性を持って進められ、信頼度やブランド価値が向上します。
【 ブランドポジショニングの確立 】
ブランドのポジショニングは、競合他社と差別化を図る上で不可欠です。ポジショニングを明確にすることで、顧客にとってのブランドの価値が理解しやすくなり、信頼性が高まります。さらに、ポジショニングが一貫しているブランドは、消費者に覚えてもらいやすく、市場内での影響力が大きくなります。特に競争の激しい市場においては、強固なブランドポジショニングが優位性を生み出します。
➤ 詳細記事：ブランドポジショニングから始めるブランディング
【 共通のコミュニケーション戦略の策定 】
一貫性のあるコミュニケーション戦略は、消費者との信頼関係を築くために重要です。グループ全体で統一したメッセージを発信することで、ブランドの認知度が安定し、消費者が安心してブランドに触れる環境が整います。また、メッセージの一貫性を維持することでブランドイメージが浸透しやすく、他社との差別化も図れます。結果として、長期的なブランド価値の向上にもつながっていきます。
【 ブランド価値の共有と取組みの実施 】
ブランド価値を社員と共有するためには、研修やワークショップを積極的に活用することが重要です。ブランドに対する理解が深まることで、社員は自らの仕事を通じてブランド価値を体現しようとします。組織全体にブランド意識が浸透することで、顧客対応の一貫性が向上し、ブランドイメージの強化にもつながります。また、社員のブランドへの愛着が高まることで、ロイヤリティの向上も期待できます。
【 ブランド価値を高めるマーケティング戦略 】
マーケティング戦略の策定には、市場動向や顧客ニーズを反映させることが重要です。グループ全体で統一されたメッセージを伝えることで、ブランドの存在感が増し、顧客とのつながりが強化されます。さらに、適切なマーケティング施策を行うことで、ブランド価値が最大化され、顧客ロイヤリティが向上します。マーケティング活動が効率化され、全体のパフォーマンスが向上する効果も期待できます。
■ グループ会社のブランドアーキテクチャの分類
1. モノリシック型(統一型）
グループ全体でひとつのブランド名やロゴ、デザインを共有し、一体感を出していくタイプです。親会社の信頼や知名度を活かしやすく、どの会社やサービスも同じブランドとして認識されるため、統一された印象をつくりやすいのが特徴です。一方で、すべてが同じイメージで見られる分、各社の個性を出しにくい面もあります。グループ全体の方向性を明確に示したいときに向いています。
2. エンドース型(後援型）
各社がそれぞれのブランド名を持ちながら、親会社のブランドを“信頼の印”として添える形です。親ブランドの知名度や安心感を借りつつ、各社の個性も表現できるバランスの取れたタイプです。たとえば「〇〇 by トヨタ」「ソニー・ミュージック」のように、独自性を保ちながらグループとしての一体感も出せます。柔軟性があり、事業の多様化にも対応しやすい構造で、多くの企業に採用されています。
3. ハウス型(独立型）
各社が独立したブランドとして活動し、それぞれの市場で最適なブランド戦略をとるタイプです。グループとしての一体感よりも、各社の自由度や専門性を重視します。P&Gやユニリーバのように、商品や企業ごとに異なるブランドを運営するケースが代表的です。事業ごとの独立性を活かしやすい反面、グループ全体としての認知を得にくい点は注意が必要で、戦略的な調整が求められます。
■ グループ会社のブランディング成功事例
【 セブン&アイホールディングス | グループブランディング成功事例 】
セブン＆アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア「セブン-イレブン」を中心に、多角的な事業を展開する日本の大手持株会社です。セブン-イレブンの売上高は国内トップクラスであり、スーパーマーケットや専門店など、幅広いグループ会社を傘下に持っています。セブン＆アイは、グループ全体のブランド力を高めるため、戦略的にブランディングを進めています。グループの一体感を育てながら、それぞれの事業が持つ強みを活かすことで、ブランド価値の最大化を目指しています。ブランドアイデンティティを明確にし、顧客に届ける価値をそろえることで、より強い印象と信頼を築くことを大切にしています。また、社会的責任やサステナビリティにも力を入れ、企業としての信頼を高めています。
[ グループブランディング成功の理由 ]
● 多角的な業態展開
セブン＆アイ・ホールディングスは、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、百貨店などの多様な業態を展開し、異なる消費ニーズを包括的にカバーしています。多角的展開により、消費者に密着したブランド体験を提供し、顧客との接点を強化しました。さらに、地域社会とのつながりも深めています。
● ブランドの統一性と柔軟性の両立
各業態が顧客層に特化しながらも、セブン＆アイ・ホールディングスの一貫した価値観や理念を反映することで、グループ全体としての統一感を維持しました。これにより、認知度が向上し、ブランド価値が強化されています。さらに、各ブランドの特性を活かした協働やシナジー効果につながっています。
● デジタル戦略の強化
デジタルプラットフォームを活用してオンラインショッピングやスマートフォンアプリを通じたサービスを提供し、消費者の利便性を向上させました。また、消費者データを活用することで、よりパーソナライズされたサービスを提供し、ブランドロイヤルティを高めています。
● 地域社会への貢献と環境への配慮
地域の特性に合わせた店舗づくりや地元産品の取り扱いにより、地域社会への貢献を図っています。また、環境保護への取り組みとして、プラスチック削減や再生可能エネルギーの活用にも力を入れ、持続可能な経営を推進しています。さらに、地域との共創を通じて新しい価値を生み出す活動にも取り組んでいます。
● 顧客の利便性を追求した商品・サービスの提供
「セブンプレミアム」などの独自ブランドで高品質な商品を提供し、顧客満足度を高めました。また、配送サービスやキャッシュレス決済など、日常生活の利便性を重視したサービスも展開し、消費者からの信頼を獲得しています。さらに、デジタル技術を活用した新たな顧客体験の創出にも力を入れています。
[ 出典 ] 株式会社セブン＆グループより
【 ファーストリテーリング | グループブランディング成功事例 】
ファーストリテイリングは、ユニクロ、GUなどのアパレルブランドを展開している企業です。同社は、「Life Wear」をコンセプトに、より高品質でより高い価値を提供することを目指しています。ファーストリテイリングのグループブランディング戦略は、世界中の人々が生活をより良くするための衣服を提供することにあります。ファーストリテイリングは、ユニクロを中心に、各ブランドごとに独自のブランディングを展開していますが、同時にグループ全体のブランディングも大切にしています。グループブランディングは、ファーストリテイリングのビジョンやコンセプトを反映した統一されたメッセージを伝え、各ブランドの個性を保ちつつ、グループ全体で一貫性のあるブランドイメージを構築することを目的としています。
[ グループブランディング成功の理由 ]
● 一貫したブランド理念「服を通じた社会貢献」
ファーストリテーリングは、「服を通じて、より良い社会を目指す」という明確なブランド理念を持ち、その理念を通して社会的価値を提供することで、企業全体のブランド価値を高めています。消費者に対して企業としての信念を示すことで、ファンを増やしブランドロイヤルティの向上に成功しました。
● 商品開発における高い機能性と品質重視
「ユニクロ」を中心に、着心地や機能性を徹底的に追求し、消費者のニーズに応える製品を提供しています。「ヒートテック」や「エアリズム」など、革新性を取り入れた商品の開発により、消費者に実用性と高品質を感じさせ、信頼を確立しています。さらに、グローバル市場でも同様の価値を発信し続けています。
● グローバル展開戦略とローカライズ
各国の市場に合わせた商品ラインナップやマーケティング戦略を取り入れることで、現地市場に密着した展開を行っています。例えば、海外店舗の設置や地元文化を尊重したプロモーションにより、各地域に根付くブランドとしての認知を高め、グローバル市場での成功を収めています。
● デジタル化の推進とオムニチャネル戦略
ECサイトの強化や、スマホアプリを活用したオンラインとオフラインの統合によって、消費者の利便性を向上させています。オンラインショッピングの利便性を高めることで、消費者の購買体験が向上し、ファン層の拡大につながっています。さらに、デジタル施策を通じてブランドとのつながりを深めています。
● サステナビリティへの積極的な取り組み
環境保護や社会貢献活動を積極的に推進しており、リサイクル活動やエシカル素材の活用など、サステナビリティに配慮した施策が評価されています。このような取り組みによって、環境意識の高い消費者からの支持を集め、ブランドの信頼性を高めました。さらに、企業としての社会的価値も高めています。
[ 出典 ] 株式会社ファーストリテーリングより
【 KIRINホールディングス | グループブランディング成功事例 】
キリングループは、日本を代表する飲料メーカーであり、ビール、ワイン、ウイスキー、清涼飲料水、紅茶、コーヒーなど幅広い飲料製品を展開しています。グループブランディングの目的は、グループ全体のブランドイメージの統一および市場競争力の強化にあります。グループ全体のブランドアーキテクチャーを策定し、各ブランドのポジショニングを明確化しました。また、グループ全体で使用するロゴを一新し、統一感のあるデザインにリブランディングしました。キリングループは、持続可能な社会の実現を目指して、社会的責任を果たす取り組みを進めており、グループ全体でのCSR活動も展開しています。グループブランディングにおいても、社会的責任や環境保全に配慮したブランド戦略を展開し、消費者からの支持を得ています。さらに、社員一人ひとりがブランドの理念を体現する文化づくりにも力を入れています。
[ グループブランディング成功の理由 ]
● 多様な事業分野でのシナジー効果
キリンホールディングスはビール事業だけでなく、清涼飲料や医薬・健康食品などの事業展開をしています。この多様性により、グループ全体のブランド価値を向上させ、消費者との接点を広げています。また、異なる分野でのノウハウを活かすことで、新商品やサービスを生み出すシナジー効果を実現しています。
● ブランド理念の明確化と一貫したメッセージ
「おいしさと健康」の追求を掲げたブランド理念を徹底し、これをすべての事業分野で一貫して発信しています。健康志向の飲料や製品が注目を集める中、こうしたブランドメッセージは消費者に響き、同社への信頼感と共感を高めています。長期的にブランド価値を高めることに成功しています。
● 環境・社会貢献活動への積極的な取り組み
持続可能な社会の実現に向け、リサイクル活動や環境保護といった環境活動に積極的に取り組んでいます。消費者だけでなく、ステークホルダーとの信頼関係を築き、社会的責任を果たすことでブランドの信頼性と価値を高めています。さらに、地域社会との連携にも力を入れ、共に成長する姿勢を大切にしています。
● デジタル戦略の推進と顧客データの活用
デジタルプラットフォームの構築や、顧客データを活用したパーソナライズドマーケティングにより、消費者に合わせたサービスを提供しています。これにより、消費者体験が強化され、ブランドロイヤルティが向上しています。特に、オンラインとオフラインの融合で消費者の利便性を高め、競争力を維持しています。
● 健康志向への対応と新たな市場開拓
健康やウェルネスに対する消費者の関心が高まる中、健康食品や機能性飲料の開発に注力しています。こうした対応は既存のビール市場を超え、さらなる顧客層を開拓することに貢献しています。さらに、研究開発にも力を入れ、新しい価値提案を行うブランドづくりを進めています。
[ 出典 ] KIRINホールディングスより
【 すかいらーくグループ | グループブランディング成功事例 】
すかいらーくグループは、日本国内外に約3,000店舗を展開する飲食店グループで、「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」などのブランドを展開しています。グループブランディングに関しては、「感動の共有」をコンセプトに、顧客のニーズを把握し、高品質でリーズナブルな価格で提供することを目指しています。グループブランディングの一環として、2016年には「すかいらーくグループ」のロゴマークを新しくし、全ブランドの看板や店内のインテリア、メニュー表などに統一されました。また、グループのコミュニケーション戦略として、SNSやホームページを活用し、顧客とのコミュニケーションを強化する取り組みを行っています。さらに、従業員教育やサービス品質の向上にも積極的に取り組んでいます。
[ グループブランディング成功の理由 ]
● 多様な店舗ブランドの展開
「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」など複数のブランドを展開し、異なる顧客層に幅広く対応しています。各ブランドが異なるコンセプトやメニューを持ち、それぞれに特化した価値を提供することで、消費者のニーズに応えています。これによりグループ全体の集客力と認知度が向上しています。
● 一貫した品質とサービスの提供
どの店舗ブランドにおいても、一定の品質とサービスを維持することで、信頼性を確立しています。すべてのブランドで高水準のサービスと味を提供するための徹底した品質管理により、顧客がどの店舗に行っても安心して利用できる環境を実現しました。これが、ブランドロイヤルティの向上に繋がっています。
● メニュー開発における多様な選択肢の提供
すかいらーくグループは健康志向や低価格帯のメニュー、高級志向のメニューなど、幅広い顧客ニーズに対応する多様なメニューを開発しています。これにより、消費者が目的やシチュエーションに合わせて利用できるブランドとして認識され、幅広い層の支持を得ています。
● デジタル戦略と利便性の向上
モバイルアプリやデジタルメニューなどのデジタル戦略を取り入れ、顧客の利便性を高めています。さらに、会員制アプリを通じたクーポン配布や予約システムの強化により、消費者の利便性を向上させ、集客やリピート率の向上に貢献しています。加えて、データ分析を活用したサービス改善にも取り組んでいます。
● 地域密着型のサービス提供
地域に根差した店舗づくりを心掛け、各地域の特性に応じたメニューやサービスを提供しています。地域限定メニューや地元産品の積極的な使用により、地域の顧客層との関係を強化し、ローカルブランドとしての認知度を高めています。さらに、地域イベントへの参加など交流の場も広げています。
[ 出典 ] すかいらーくグループより
【 ヤマトホールディングス | グループブランディング成功事例 】
ヤマトホールディングスは、物流・宅配便サービスの大手企業です。同社のグループブランディングの一環として、「ヤマトグループ」の統一ブランドを掲げ、一体感のあるイメージを確立しています。また、グループ各社のビジネスの連携を強化することで、顧客への付加価値の提供を目指しています。さらに、同社は、SDGsに取り組むことを掲げ、「Green Smart Life」というビジョンを掲げ、環境貢献にも注力しています。ヤマトホールディングスは、グループ全体のブランディングに取り組みながら、社会に貢献する企業としてのイメージを高めています。加えて、次世代物流の実現にも積極的に挑戦しています。
[ グループブランディング成功の理由 ]
● 顧客中心の「宅急便」ブランドの浸透
ヤマトは「宅急便」というサービス名を、日本全国で「速く、確実に荷物を届ける」という信頼のブランドとして確立しました。顧客に寄り添うサービスを心がけ、地域密着型のサービスや集配網の整備により、顧客からの信頼を得ています。ブランド構築により、ヤマトの宅配業界での競争優位性が高まりました。
● デジタル化と利便性の向上
顧客がスマホやパソコンを通じて荷物の追跡や集配依頼ができる仕組みを提供し、利便性を向上しています。特に、アプリでの細かな配送指示や再配達の手配を可能にすることで、消費者体験を向上させ、デジタル分野でも業界をリードしています。これが、顧客のリピート率や顧客満足度の向上に繋がっています。
● 環境保護への積極的な取り組み
ヤマトは環境保護にも積極的に取り組んでおり、電動車両の導入やエコ配達システムの採用などを行っています。サステナビリティへの配慮は、消費者やステークホルダーに好意的に受け入れられ、企業としての信頼を強化する要因となっています。環境への配慮が、長期的なブランド価値の向上に寄与しています。
● 柔軟な対応力と革新
多様なニーズに対応するため、企業向けの法人サービスやクール宅急便などの多彩なサービスを展開し、顧客のニーズに合わせた柔軟な対応を実現しています。特に食品配送の品質維持や迅速な対応力で新たな市場を開拓し、競争力を高めてきました。革新を追求する姿勢が、ブランドの信頼と支持を獲得しています。
● 地域社会との強い連携
地域社会と積極的に連携し、防災協定や地域ボランティア活動を通じた貢献も行っています。地域に根ざした活動は、地域住民との信頼関係を構築し、企業の社会的責任(CSR)の面でも評価されています。この地域密着型の戦略が、グループ全体のブランドイメージ向上に貢献しています。
[ 出典 ] ヤマトホールディングスより
■ グループ会社のブランディングの課題と解決策
【 グループ会社のブランド統一の課題と解決策 】
● ブランド統一の課題
グループ会社のブランド統一における課題としては、それぞれの会社が独自にブランドイメージを持っているため、一貫性のあるブランドイメージを作り出すことが難しいことが挙げられます。また、グループ会社が異なる業種や市場で事業を展開している場合、それぞれの業種や市場に合わせたブランド戦略を考える必要があります。このような課題を解決するためには、まずグループ全体で共通するブランドの目的や価値観を明確にすることが重要です。さらに、継続的な対話と調整の仕組みを整えることも欠かせません。
● ブランド統一の解決策
各グループ会社ごとにブランドイメージを見直し統一することが必要です。グループ内での情報共有やコミュニケーションを活発化させ、各グループ会社の取り組みを連携させることも有効です。具体的な解決策としては、グループ会社全体で共通するブランドポリシーの策定やブランドガイドラインの整備、グループ内でのコミュニケーションの促進、各グループ会社におけるブランド戦略の共有や連携などがあります。グループ全体で一貫性のあるブランドイメージを確立し、ブランド価値を高めることができます。
【 グループ会社のブランドアーキテクチャーの課題と解決策 】
● ブランドアーキテクチャーの課題
グループ会社が複数存在する場合、ブランドの一貫性を維持し、グループ全体のイメージを統一することが課題となります。また、グループ内の各社が独自のブランドアイデンティティを持っている場合、グループ全体でのブランディングがうまくいかない場合もあります。このような課題を解決するために、グループ会社のブランドアーキテクチャを策定することがあります。グループ全体のブランド戦略を定め、各社のブランドアイデンティティを整理するためのフレームワークです。
● ブランドアーキテクチャーの解決策
フレームワークを活用することで、グループ全体でのブランドイメージの統一性を高めることができます。具体的な解決策としては、グループ全体のポジショニングを設定し、各社がそのポジショニングに基づいて自社のブランドアイデンティティを設計することが挙げられます。また、共通のブランド要素を導入し、各社が独自のブランドイメージを持ちつつも、グループ全体での一貫性を保つことも効果的です。さらに、グループ全体でのマーケティング活動を一元化することで、ブランドの統一性を高めることも可能です。
【 グループ会社のブランドコミュニケーションの課題と解決策 】
● ブランドコミュニケーションの課題
グループ会社のブランドコミュニケーションにおける課題は、各社が独自のブランドイメージを持っていることであり、グループ全体のブランディングを図る上での課題となっています。また、ブランドコミュニケーションの一貫性が欠如している場合があり、消費者に対して統一したメッセージを発信することができないことも課題の一つです。さらに、各社間の情報共有や戦略調整が十分でない場合、ブランド全体の印象にばらつきが生じる点も問題となります。その結果、グループとしての信頼性が低下するおそれがあります。
● ブランドコミュニケーションの解決策
解決策としては、グループ全体でのブランディングの方針を策定し、各社がその方針に従ったブランドイメージを持つようにすることが必要です。また、ブランドコミュニケーションの一貫性を確保するために、グループ内での情報共有を強化し、共通のコミュニケーションツールを使用することが有効です。さらに、消費者の視点に立ったマーケティング戦略を立て、ブランドイメージの統一だけでなく、ブランドメッセージの一貫性も確保することが必要です。加えて、定期的な評価と改善の仕組みを整えることも重要です。
■ グループ会社のブランディングの展望
【 グローバル化に対応する 】
グローバル展開を視野に入れると、ブランドメッセージやビジュアルを地域ごとに最適化する必要が出てきます。各市場の文化や消費者の特性を考慮しつつ、共通のブランドアイデンティティを保つことが重要です。例えば、現地の言語や文化に配慮したデザインや広告が求められます。同時に、各地域の法規制や社会的責任にも対応することで、信頼性が高まります。グローバル市場に適応するには、ブランド統一とローカライズのバランスが成功の鍵となり、継続的な検証と改善も欠かせません。
【 デジタル化に対応する 】
デジタル時代において、ブランドはオンラインとデジタルマーケティング戦略の最適化が不可欠です。SNS、WEB、モバイルアプリといったチャネルを活用して一貫したブランド体験を提供することで、消費者との接点を強化できます。また、顧客のデータを活用してパーソナライズされたコンテンツやサービスを提供することにより、顧客満足度を向上させ、ブランドロイヤルティを高めることができます。さらに、最新のデジタル技術を活用することで、より深い顧客理解と継続的な関係構築が可能になります。
【 サステナビリティに対応する 】
境への配慮や社会的責任が重視される現代、ブランド戦略にもサステナビリティを組み込むことが求められます。グループ会社全体で環境保護や持続可能なビジネスへの取り組みを進めることで、企業の信頼性とブランド価値が向上します。エコフレンドリーな製品やリサイクルプログラムの導入など、具体的なアクションが消費者の共感を得やすくし、長期的なブランド強化につながります。さらに、社会課題の解決に貢献する姿勢を示すことで、企業としての存在意義をより明確に発信することができます。
【 ユーザーエクスペリエンスの向上 】
顧客の体験を改善し、ブランドとのポジティブな関係を築くことは、現代のブランディングにおいて重要です。商品の品質やデザインだけでなく、カスタマーサポートや購買プロセスといった要素も含めた総合的な顧客体験を向上させることが重要です。フィードバックを取り入れたサービス改善や、利便性の高いデジタルツールの導入により、顧客満足度とロイヤルティを高め、ブランドを選ぶ理由を消費者に提供します。さらに、顧客の声を継続的に分析し、体験価値を磨き続ける姿勢が信頼の積み重ねにつながります。
■ グループ会社のブランディングに関するよくある質問
グループ会社のブランディングは、企業グループ全体の価値を高める重要な取り組みです。ここでは、その基本的な考え方や目的、実践方法など、よく寄せられる質問とその回答を分かりやすく紹介します。
[ よくある質問① ]
Q ：グループ会社のブランディングとは何ですか？
A ：複数企業が一体となり共通のブランドビジョンや価値観、デザインを導入し、認知性と信頼性をグループ全体で高める戦略です。統一感が顧客の安心感を育みます。
[ よくある質問② ]
Q ：ブランド統一によってどんな効果が得られますか？
A ： 共通のイメージでグループ全体への信頼感が高まり、ロイヤリティの向上やマーケティング効果の加速、競争力強化が期待できます。
[ よくある質問③ ]
Q ：ブランディング手法にはどんなものがありますか？
A ：親会社と子会社間の連携強化によりシナジーを創出し、共通のデザイン(ロゴ・カラー)やビジョン共有を通じて統一したブランド体験を構築します。
[ よくある質問④ ]
Q ：なぜグループブランディングが今重要なのですか？
A ：競争の激化する市場下では、グループとして信頼を醸成し、顧客に分かりやすいブランド構造を提供することが、長期的な成長の鍵となるためです。
■ グループ会社のブランディングをする際のチェックリスト
グループ会社のブランディングを進める際は、全体の方向性や一貫性を保ちながら進めることが大切です。ここでは、検討段階から実行までに確認しておきたいポイントをチェックリストとしてまとめました。
[ 戦略設計のチェック ]
⬜︎ グループ全体の共通ブランドビジョンや価値観が明確に策定されているか？
⬜︎ 親会社と子会社のブランディングにシナジーが生まれる設計になっているか？
⬜︎ グループ全体の認知や信頼性を高める概念設計が施されているか？
[ デザイン統一のチェック ]
⬜︎ ロゴやカラースキーム、フォントなどがグループ全体で統一されているか？
⬜︎ グループと各子会社のデザインの整合性が保たれているか？
⬜︎ ブランド施策を通して各社の個性が壊れず、調和しているか？
[ ブランド体系のチェック ]
⬜︎ グループブランド・コーポレートブランド・事業ブランドなど、階層構造が整理されているか？
⬜︎ 役割と連携の両面からブランドの位置づけが整理されているか？
⬜︎ ステークホルダーとの関係性を考慮したグループブランディングがされているか？
■ まとめ
グループ会社のブランディングは、グループ全体としての認知度や信頼性を高めるため、共通のブランド戦略を統一する重要な取り組みです。各子会社が個別に事業を展開しつつ、共通のブランドビジョンや価値観を共有し、ロゴやカラーといったデザイン要素を統一することで、一体感のあるブランド体験を提供できます。親会社と子会社が連携し、シナジーを創出することは、ブランドの信頼性と市場価値を高めるうえで効果的です。成功事例では、グループ全体の整合されたイメージを強化することで、顧客に「この企業グループなら安心」と感じさせるブランディングが実現されています。つまり、各社の独自性を保ちつつ、グループとしての統一性を持たせるブランド設計こそが、信頼構築と効率的マーケティングの鍵となります。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
■ おすすめ関連記事
