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ブランドストーリーとは?重要性・作成方法と成功事例5選

[ ブランド戦略 ]

ブランドストーリーとは?重要性や作成方法と成功事例

ブランドストーリーは、企業や製品がどのように誕生し、どんな理念や価値観を持っているのかを消費者に伝えるための重要な手段です。単に商品を売るだけではなく、背後にあるストーリーを共有することで、消費者はブランドに共感し、深い感情的なつながりを持つようになります。強力なブランドストーリーは、顧客にブランドの本質を理解させ、競合との差別化を図るための大きな武器です。特に、共感を呼ぶメッセージや企業のビジョンを明確にすることが、ブランドロイヤルティの強化に繋がります。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ブランドストーリーの重要性と、効果的なストーリーを作り上げるためのステップやポイントを解説し、成功に導く方法について詳しく解説します。


■ ブランドストーリーとは?

ブランドストーリーの重要性

ブランドストーリーとは、企業やブランドが「なぜ存在するのか」「どのような価値を提供するのか」「どんな想いで活動しているのか」を物語として表現したものです。単なる企業紹介や商品説明ではなく、創業の背景、理念、挑戦、顧客との関係性などを通じてブランドの“想い”を伝えます。目的は共感を生み、顧客の心にブランドを印象づけること。良いブランドストーリーは感情に訴え、ブランドの世界観を伝え、差別化と信頼を築きます。

【 ブランドストーリーの目的 】

差別化:市場で競合と差別化を図るための独自の「語れる強み」を作る
共感 :ユーザーの共感と感情的つながりを生む
一貫性:社員や関係者がブランドの方向性を共有し、行動の軸とする

【 ブランドストーリーの主なメリット 】

価格競争に巻き込まれない:「選ばれる理由」が価格以外の軸にシフトします。
顧客ロイヤルティの向上:ストーリーに共感した顧客と関係性が築けます。
社員のモチベーションが高まる:社員の働きがい・ブランド愛が向上します。

■ ブランドストーリーの重要性

ブランドストーリーとは何か?

【 顧客との感情的なつながり 】

顧客との感情的なつながりは、ブランドに対する信頼とロイヤルティを築くために不可欠です。単なる商品やサービスの提供だけでなく、顧客がブランドに対して共感や愛着を感じることが、競争の激しい市場での差別化要因となります。この感情的なつながりは、ポジティブな体験や共感できるブランドストーリーを通じて生まれます。顧客がブランドに感情的な価値を見出すと、価格以上の価値を感じ、リピート購入や他者への推薦に繋がります。さらに、こうしたつながりは、ブランドが予期せぬ問題に直面した際にも、顧客が寛容に対応してくれる可能性を高めます。ブランドにとって、顧客との感情的なつながりを深めることは、持続的な成功を支える重要な要素です。

▶︎ 詳細記事:エモーショナルブランディング:感情に訴える手法

【 ブランドの差別化 】

ブランドの差別化は、競争の激しい市場で企業が成功するために不可欠な戦略です。他社の商品やサービスが似通っている中でブランドを際立たせるためには、明確な独自性を打ち出すことが求められます。差別化の要素には製品の品質、デザイン、価格、顧客体験、さらには企業の社会的責任やブランドストーリーなどが含まれます。これらの要素を通じて顧客に「なぜこのブランドを選ぶべきなのか」を明確に伝えることが重要です。成功した差別化は、顧客に対して強い印象を残しブランドロイヤルティを築く手助けとなります。結果として、競合他社との差別化がブランドの長期的な成長と市場での優位性を支える鍵となります。

【 ブランドの信頼性の強化 】

ブランドの信頼性の強化は、顧客との長期的な関係を築く上で極めて重要です。信頼性のあるブランドは、顧客に対して一貫した品質やサービスを提供し、期待に応えることで、その信頼を獲得します。また、ブランドの信念、つまり企業が大切にする価値観や理念を明確にし、それに基づいた行動を継続することが、ブランドの強化に繋がります。たとえば、サステナビリティや社会貢献への取り組みを具体的に示すことで、顧客はブランドの誠実さを感じ、深い共感を得ます。こうした信頼性と信念の強化は、ブランドロイヤルティを高め、顧客がブランドを支持し続ける理由となります。結果として、ブランドは市場での競争力を持続的に維持し、成長を続けることが可能となります。

ブランドストーリーの特徴

ブランドストーリーの特徴

【 明確な“使命と存在意義”が含まれている 】

売れるブランドには、単なる利益や成長ではない「存在する理由」があります。それが“使命”であり、社会や顧客に対して果たすべき役割なのです。「自分たちは何をもたらすのか」という問いに真正面から向き合っているブランドほど、深い共感を得やすい傾向があります。表面的なビジョンではなく、創業の原点や問題意識と結びついた“存在意義”が語られているかがポイントです。この強い「なぜ」こそが、ブランドのストーリーに本質的な説得力と独自性を与え、競合との差を生むのです。

【 誰のために、なぜ存在するのかを語っている 】

ブランドが誰に対して、どのような価値を届けるのかが明確に語られていると、顧客の共感度は高まります。「自分のためのブランドだ」と感じてもらうには、顧客の悩みや欲求を深く理解し、それに応える姿勢をストーリーに織り込むことが必要です。たとえば、「働く女性が自分らしく輝けるように」「アレルギーを抱える子どもにも安心を」など、具体的な人物像を設定してストーリーを描くと、メッセージはより明確に伝わります。こうした“誰のために”という視点があるか否かで、ブランドの軸は大きく変わります。

【 ストーリーの主人公は顧客という視点がある 】

多くのブランドが陥る誤りは、自分たちを主人公にしてしまうことです。しかし売れるブランドは、常に「顧客こそ物語の主役」という視点があります。ブランドはあくまで、顧客の変化や成功を支援する“伴走者”にすぎません。顧客が自らの課題や夢と向き合い、そこにブランドが寄り添う形でストーリーが展開されるとき、物語はより深く心に刺さります。ブランドの使命や理念は、顧客の成長や幸福と結びつくことで、初めてリアリティと意味を持つのです。この“視点の転換”が、ブランドストーリーの鍵となります。

■ ブランドストーリーを作るメリット

ブランドストーリーを作るメリット

1. 差別化が明確になる

ブランドストーリーは、機能や価格の比較では伝えきれない独自性を際立たせます。背景や理念、創業の想いを物語として伝えることで、競合と似たサービスであっても「なぜこのブランドを選ぶべきか」が明確になります。差別化の根拠を表層的な特徴に依存せず、長期的に持続可能な形で築けるのが大きな強みです。

2. 共感を得やすくなる

人は情報よりも物語に心を動かされます。ブランドストーリーは、企業や製品の背後にある想いや価値観を表現することで、顧客の感情に訴えかけます。単なる説明や広告以上に、「自分もその考えに共感する」という心理的なつながりを生み出し、ファンを育てます。共感は信頼や継続的な支持の土台となります。

3. 意思決定の軸になる

ブランドストーリーは外向けのメッセージにとどまらず、社内にとっても指針になります。日々の企画やマーケティング施策、デザインの選択に迷ったとき、ストーリーが「何を優先すべきか」を判断する基準となります。組織全体で一貫性を持った行動が可能となり、ブランド価値を揺るがさない意思決定ができます。

4. 記憶に残りやすい

人々の記憶に強く残るのは、事実よりも感情を伴う物語です。ブランドストーリーは、単なる製品説明ではなくエピソードや背景を伝えることで、顧客の心に強くイメージを刻みます。印象に残ると、他の情報よりも思い出されやすくなり、購買につながります。忘れられにくい存在となることが競争力を高めます。

■ ブランドストーリーの4つの構成要素

ブランドストーリーの4つの構成要素

1. ブランドの存在意義

ブランドの存在意義とは、「このブランドはなぜ存在するのか」という根本的な問いへの答えです。単に商品やサービスを提供するためではなく、社会や人々の暮らしにどんな価値をもたらすのかを明確にします。存在意義が定まっているブランドは、一貫した判断基準を持ち、どんな時代の変化にも軸を失いません。それは社員の行動指針にもなり、顧客との信頼関係を生む基盤となります。

2. ブランド誕生の背景

ブランドがどのような時代や環境の中で生まれたのかを語ることは、そのブランドの“必然性”を伝えるうえで不可欠です。創業者の原体験や市場の課題、社会の流れなど、背景を掘り下げることでブランドの思想や方向性が自然に浮かび上がります。単なる歴史紹介ではなく、「なぜその瞬間に、このブランドが必要だったのか」を明確にすることが重要です。

3. ブランドの価値観

ブランドの価値観は、そのブランドが何を「正しい」と感じ、どんな行動原理で動いているのかを示すものです。これは単なる理念ではなく、日々の意思決定や顧客との関わり方に現れる「生きた信念」です。価値観が明確なブランドは、どんな状況でも一貫した姿勢を保ち、共感を呼びます。社員やパートナーが同じ価値観でつながることで、ブランドの世界観がぶれずに育っていきます。

4. ブランドの開発秘話

ブランドの開発秘話は、人々に「このブランドを応援したい」と思わせる感情の源泉です。苦労や葛藤、試行錯誤の裏にある人間的な物語を語ることで、ブランドはぐっと身近な存在になります。完成された姿だけでなく、そこに至るプロセスを共有することが、共感と信頼を生み出す鍵です。物語性があるほど、ブランドへの愛着が深まります。

■ ブランドストーリーの作成方法

ブランドストーリーの作成方法

1. 企業の歴史と背景を掘り下げる

ブランドストーリーの核となるのは「なぜこの企業が生まれたのか」という原点です。創業時の課題意識、創業者の想い、社会背景などを丁寧に掘り下げることで、ブランドの存在理由が浮かび上がります。単なる年表的な歴史ではなく、「何を変えたかったのか」「どんな価値を届けたかったのか」という“動機”に焦点を当てましょう。背景を深く理解することで、ブランドの人格が明確になります。

[ ポイント ]

創業のきっかけ:どんな課題意識や想いから始まったのか
転機や挑戦:ブランドを形づくった重要な出来事は何か
現在へのつながり:その経験が今のブランドにどう影響しているか

▶︎ 詳細記事:100年企業に学ぶブランディングとは?

2. 価値観とビジョンを明確にする

ブランドは「何を大切にして、どこを目指すのか」が明確でなければ人の心を動かせません。企業の価値観(=判断軸)とビジョン(=未来像)を整理し、言語化することが重要です。これらはブランドストーリーの“羅針盤”となり、語る内容の一貫性と方向性を保ちます。感情的な共感と理性的な納得、両方を生む軸を設計する意識が必要です。

[ ポイント ]

価値観:企業として絶対に譲れない信念や行動原理
ビジョン:社会にどんな未来をもたらしたいか
約束:顧客に対してどんな体験・価値を提供するのか

▶︎ 詳細記事:ブランドビジョン開発のポイントとは?

3. ストーリーテリングの要素を入れる

ブランドストーリーは、情報ではなく“物語”として伝わることで人の心に残ります。ストーリーテリングを活用し、感情の流れと共感を設計することが大切です。主役(創業者・ブランド・顧客)の葛藤や挑戦、成長を描くことで、ブランドが「生きている存在」として感じられるようになります。理性ではなく感情に届く表現を意識しましょう。

[ ポイント ]

主人公:誰の視点で物語を語るのか(創業者・社員・顧客)
課題と変化:どんな困難があり、どう乗り越えたのか
メッセージ:物語を通じて何を伝えたいのか

■ 業界別のブランドストーリーの作り方

業界別のブランドストーリーの作り方

【 製造業

製造業のブランドストーリーは「技術力」と「信頼性」を核に据えることが効果的です。長年培ったノウハウや職人技術を語ることで、品質への安心感を与えます。また、未来志向の開発姿勢を物語に盛り込むことで革新性を強調できます。

[ ポイント ]

技術の歴史や進化の道のり
社員の誇りやものづくり精神
持続可能性や環境への取り組み

食品・飲料業

食品・飲料業では「人・土地・暮らしとの結びつき」がストーリーの中心です。素材の背景や生産者の思いを伝えることで、単なる味や価格以上の価値を届けられます。消費者は「誰から買うか」を重視するため、物語が差別化に直結します。

[ ポイント ]

生産地や風土の魅力
開発秘話や食文化との関連
家族や日常生活に寄り添う姿勢

ファッション・アパレル業

ファッションは「美意識」と「自己表現」を映す産業。ブランドストーリーでは創業者やデザイナーの哲学を示し、デザインに込められた価値観を明らかにすることが重要です。また、クラフトマンシップや社会的テーマとの接続で支持が広がります。

[ ポイント ]

デザインへのこだわりや信念
素材・技術の独自性
サステナビリティや文化との関係

IT・スタートアップ業

IT・スタートアップでは「課題解決」と「時代性」が物語の核になります。創業者の原体験や問題意識から始まるストーリーは、共感と信頼を生みます。さらに、ユーザーと共に成長してきた歴史を加えることで、進化するブランド像を伝えられます。

[ ポイント ]

課題発見と解決のエピソード
「なぜ今」取り組むのかという使命感
初期ユーザーとの共創・改善の歩み

■ ブランドストーリーの伝え方

ブランドストーリーの伝え方

1. コピーライティングによる言語化

情熱的な想いがあっても、言語化できなければ顧客には伝わりません。ブランドストーリーを伝える第一歩は、核となる想いを「人の心を動かす言葉」で表現すること。機能説明ではなく、背景にある哲学や価値観を言葉に込めるのがプロのコピーライティングです。心に残る表現とは、誰かの人生に照らして「これは自分のことだ」と感じさせるものでなければなりません。そのためには、感情に訴える言葉・比喩・リズム感など、言語の精度を高める必要があります。曖昧さを排除しつつ、共感を誘う語り口が重要です。

2. ビジュアルとブランドストーリーの整合性

ブランドストーリーは文字だけで完結しません。ロゴ、写真、動画、パッケージなどのビジュアル表現も、ストーリーの一部として統一感を持たせる必要があります。たとえば、温もりや手仕事の背景を語るブランドが、無機質でシャープなデザインを採用してしまうと、違和感が生まれ、顧客は本質的な価値を感じ取れません。ストーリーで語る世界観が、視覚表現でも矛盾なく伝わることが、ブランドの信頼性を担保します。トーン&マナーの設計は、ブランド全体の印象形成に直結する要素です。

▶︎ 関連記事:VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?

3. ブランドストーリーを社内外に浸透させる

ブランドストーリーは外向けのマーケティングツールではなく、企業文化そのものでもあります。まず大切なのは、社員がそのストーリーを深く理解し、自ら語れるようになることです。現場スタッフが言葉にできなければ、顧客接点での体験も一貫しません。社内研修やミッション共有の場を設けることで、ストーリーが「自分ごと化」されていきます。そして社外への発信も、SNS、店舗体験、営業トークなど、あらゆる接点で一貫したメッセージが届けられてこそ、本当の意味で“生きたストーリー”となります。

▶︎ 関連記事:インナーブランディングとは?その目的と進め方と成功事例

■ ブランドストーリーの成功事例

MUJIのブランドストーリー

【 無印良品 | ブランドストーリー 】

無印良品は、1980年代の大量消費時代に対するアンチテーゼとして誕生しました。「これでいい」ではなく「これがいい」という思想のもと、華美な装飾や無駄を排し、機能美と生活に根ざした本質的な価値を追求してきました。無印の哲学は、商品のデザイン、価格設定、コミュニケーションすべてに反映されており、それらが一貫した世界観を形づくっています。ただのブランドではなく思想に共感する人々を惹きつけ、共感から生まれるファンコミュニティを築き上げている点が、無印良品の強さであり独自性です。

[ ブランドの成功ポイント ]

消費社会へのカウンターから誕生
無駄を削ぎ落とした機能美
作り手の思想を可視化
言葉・デザイン・価格が一貫
「生活の本質とは何か?」を問い続ける

[ 出典 ] 無印良品公式サイトより

星野リゾートのブランドストーリー

【 星野リゾート | ブランドストーリー 】

星野リゾートは、「その地ならではの体験」を軸に、旅の在り方を根本から再定義してきました。単なる宿泊施設ではなく、地域の文化や風土を活かした物語性のある滞在を提供することで、宿そのものが“語る存在”として機能しています。画一的なリゾートとは一線を画し、土地に根差した独自の価値を創出。経営の理念と現場での体験が高度に一致しており、トップダウンでも現場任せでもない、双方が連動することでブランドとしての一貫性と革新性を実現しています。この独自の姿勢が、星野リゾートの揺るぎない魅力となっています。

[ ブランドの成功ポイント ]

地域資源を生かす宿運営
「旅の意味」を再定義
観光=文化体験として設計
スタッフも語り手として育成
経営と理念が強く結びつく構造

[ 出典 ] 星野リゾート公式サイトより

中川政七商店のブランドストーリー

中川政七商店 | ブランドストーリー

中川政七商店は、「日本の工芸を元気にする」という明確なミッションのもと、300年続く老舗としての歴史を現代に再定義したブランドです。伝統を単に守るのではなく、暮らしの中に自然に溶け込ませることで、工芸を“今”の生活に再接続。生活者との共創を重視し、受け継ぐだけでなく進化させる姿勢が特徴です。理念・商品・デザインが一貫しており、どのタッチポイントにもブランドの思想が通底。過去と未来をつなぐ独自の在り方で、日本のものづくりに新たな息吹をもたらしています。

[ ブランドの成功ポイント ]

老舗の再定義に挑戦
工芸=暮らしの道具と再解釈
経営理念が商品戦略と直結
デザインと思想の融合
伝統を未来につなぐ使命感

[ 出典 ] 中川政七商店公式サイトより

BALMUDAのブランドストーリー

BALMUDA | ブランドストーリー

BALMUDAは、「クリエイティブな家電」をコンセプトに、日常に驚きと感動をもたらすことを目的として誕生しました。創業者・寺尾玄の個人的な体験や美意識が原点にあり、「テクノロジーを人のよろこびのために使う」という思想を徹底。高いスペックを誇示するのではなく、使う人の体験そのものを設計することに重きを置いています。その哲学は、トースターや扇風機といった日常的でシンプルな家電にも息づき、これまでにない価値や使い心地を生み出しています。機能と感性が融合したプロダクトによって、家電のあり方を根本から問い直す存在です。

[ ブランドの成功ポイント ]

家電=機能という常識への挑戦
五感で感じる体験価値の設計
創業者の哲学がプロダクトに投影
視覚・触覚・使用感まで徹底的に統一
使うこと自体が感動という価値提供

[ 出典 ] BALMUDA公式サイトより

STARBUCKSのブランドストーリー

STARBUCKS | ブランドストーリー

STARBUCKSは、単なる「コーヒーを売る店」ではなく、自宅でも職場でもない「サードプレイス(第三の居場所)」を提供するブランドとして進化してきました。アメリカ西海岸のカルチャーとホスピタリティを背景に、顧客一人ひとりとの関係性を大切にし、空間・サービス・商品すべてに「人と人のつながり」への強い信念が貫かれています。その哲学は、店舗デザインや接客、商品提案にまで一貫して反映され、単なる消費行動を超えた温かな体験を生み出しています。スターバックスは社会的な役割を果たす、新しい形のブランドです。

[ ブランドの成功ポイント ]

単なる商品提供を超えた「体験の場」の創出
顧客との関係性を資産とする思想
地域性とグローバル感覚の両立
スタッフがブランドの人格を体現
「日常に必要な余白」を提供する場として定着

[ 出典 ] STARBUCKS公式サイトより

legoのブランドストーリー

LEGO | ブランドストーリー

LEGOは、「遊びを通じて未来を創る力を育てる」という使命のもと、ただのブロックではなく“想像力のインフラ”として世界中で愛されるブランドへと成長しました。設計された自由度と無限の組み合わせ可能性により、子どもから大人まで誰もが創造性と自主性を発揮できる遊びを提供しています。その根底には「遊びは学びである」という揺るぎない哲学があり、楽しさの中に知性や社会性を育む仕組みが緻密に組み込まれています。LEGOは、創造的思考を育むためのグローバルな教育ツールでもあります。

[ ブランドの成功ポイント ]

遊び=教育という思想の提示
ユーザーの創造性を引き出すプロダクト設計
製品のシステムが一貫していることによる信頼
コミュニティを巻き込む共創型ブランド展開
「つくる自由」への深いリスペクト

[ 出典 ] LEGO公式サイトより

PATAGONIAのブランドストーリー

Patagonia | ブランドストーリー

Patagoniaはアウトドアウェアの枠を超え、「地球環境の保護」を企業活動の中心に据えたブランドです。創業者イヴォン・シュイナードの自然への深い愛情と環境危機への強い危機感が、製品づくりから広告表現、寄付活動、経営判断にまで一貫して反映されています。「ビジネスを通じて世界を救う」という明確な姿勢は、商業主義とは異なる価値観を示し、多くの共感と信頼を獲得。高品質な製品とともに、思想や行動そのものがブランドの魅力となっており、社会的使命とビジネスの両立を体現する希有な存在です。

[ ブランドの成功ポイント ]

企業活動=環境保護という一貫思想
利益よりも理念を優先する姿勢
製品のクオリティとエシカルな価値の両立
修理して使うを推奨するブランドメッセージ
サステナブル=かっこいいを体現

[ 出典 ] Patagonia公式サイトより

■ ブランドストーリーの効果的な戦略

ブランドストーリーの効果的な戦略

1. 顧客の視点を取り入れる

ブランドストーリーを顧客視点で考えることは非常に重要です。顧客がブランドをどのように見ているかを理解し、彼らの関心やニーズに基づいたストーリーを構築することで、より深い共感を得られます。たとえば、製品やサービスが顧客の生活にどのような価値を提供しているか、顧客がその商品を使ってどのような体験を得られるかを反映させることで、顧客は自身とブランドを関連づけて考えやすくなります。顧客が物語の主人公になったかのようなストーリーは、親近感を感じさせ、ブランドに対する忠誠心を育てるのに役立ちます。

2. ビジュアルとメッセージの一貫性

ブランドストーリーは、ビジュアルとメッセージの一貫性が求められます。ストーリー内で使用される画像や動画、フォント、色彩、ロゴなどが全て統一されていることで、ブランドのアイデンティティが強化され、顧客に強い印象を残すことができます。例えば、環境に配慮したブランドであれば、自然をイメージさせる色合いや素材感を取り入れることで、その価値観が消費者に伝わりやすくなります。視覚とメッセージが一致していると、ストーリーの内容が信頼されやすくなり、ブランド全体が統一された印象を与え、消費者に記憶に残りやすいブランドとして認識されます。

3. 多チャネルでの展開

ブランドストーリーを効果的に伝えるためには、複数のチャネルで展開することが重要です。SNS、ウェブサイト、メール、広告など、顧客が触れる様々なチャネルで一貫したストーリーを発信することで、ブランドのメッセージが顧客の記憶に残りやすくなります。また、各チャネルで異なる角度や方法でストーリーを見せることで、より深い理解を促すことが可能です。たとえば、SNSでは顧客の日常に寄り添った軽いタッチで、ウェブサイトでは深い背景やビジョンを語るといった具合に、各メディアの特徴を生かしながらメッセージを発信します。多チャネル展開により、顧客との接触機会が増え、ブランドのストーリーが浸透しやすくなります。

■ ブランドストーリー作成時の注意点と失敗例

表層的・綺麗事だけの構成になっている

ブランドストーリーが機能しない最も典型的なパターンは、「良いこと」を並べただけの構成です。理念や社会貢献を語っていても、具体性がなく、リアリティに欠ければ響きません。人が心を動かされるのは、成功の話ではなく、迷いや挫折といった“等身大の人間的な部分”です。つまずいた経験やそこから得た気づきを率直に語ることで、ブランドに“信頼できる人格”が宿ります。ブランドストーリーにおいて大切なのは、取り繕うことではなく「真摯さ」と「整合性」。飾りすぎは、逆効果になります。

誰に向けたメッセージかが不明瞭

ブランドストーリーは、誰に向けて語るのかを明確にしなければ意味がありません。顧客の理解が低いまま曖昧に書かれたブランドストーリーは、結果として誰にも刺さらない無難な文章になります。ペルソナ設定や顧客インサイトの掘り下げを行い、「この人の心を動かしたい」という意図を持つことで、メッセージは生きた言葉になります。また、BtoBかBtoCかでもトーンは異なります。誰に届けるのかを起点に、語り口・内容・エピソードの取捨選択をすることが、共感を得るための基本中の基本です。

顧客接点で語られていない・使われていない

いくら優れたブランドストーリーを作っても、それが社内資料やWebページだけに止まれば意味がありません。顧客と出会うすべての接点のSNS、広告、イベント、営業、カスタマーサポートなどでストーリーが“実際に語られ、体感できる”ことが重要です。また、スタッフ自身がそのブランドストーリーに誇りと共感を持っていることも欠かせません。企業側が一方的に用意したブランドストーリーではなく、社員一人ひとりの言葉で語れる状態が、ブランドの一貫性と信頼を支えます。

FAQ-よくある質問

ブランドストーリーに関するよくある質問

ブランドストーリー開発を支援していると、「何をどう語ればブランドになるのか」と悩む企業に多く出会います。ここでは、実践を通じて見えた本質とよくある疑問に答えます。

【 よくある質問① 】

Q :ブランドストーリーはどのように社内浸透させればいいですか?
A :経営層だけでなく、全社員への共有と定期的な社内研修、社内ツールやイントラネットでの可視化を通じて浸透させます。全員が“語れる”ようにすることが重要です。

【 よくある質問② 】

Q :顧客視点を入れる際、具体的な方法は?
A :ペルソナ設計や顧客インタビュー、実際の声(口コミ・レビュー)を活用し、顧客のストーリーをストーリーフレームに組み込みます。

【 よくある質問③ 】

Q :成功事例から学ぶ場合、どの要素に注目すべきですか?
A :ストーリーの「メッセージの一貫性」「顧客との感情的つながり」「価値観の明確さ」に注目し、自社に応用する際のヒントを抽出しましょう。

【 よくある質問④ 】

Q :ブランドストーリーを変えたい/アップデートしたいときは?
A :市場や価値観、事業領域が変化したタイミングで再構築を検討。顧客調査や社内レビューを基に、ビジョンやトーンを最新化します。

checklist-チェックリスト

ブランドストーリーのためのチェックリスト

多くのブランドストーリー開発を支援して実感するのは、「良い話」よりも「真実の体験」が心を動かすということ。ここでは、伝わる物語をつくるための重要なチェック項目を整理しました。

ブランドの核心チェック

⬜︎ ブランドの起源(創業背景や目的)が明確に語られているか?
⬜︎ 理念・価値観が消費者や社内メンバーに伝わる形で表現されているか?
⬜︎ ブランドストーリーに「共感を呼ぶ要素」(感情を揺さぶるエピソードなど)が含まれているか?
⬜︎ 顧客の声(レビューや体験談など)が適切に取り入れられているか?

ターゲティング/一貫性チェック

⬜︎ ペルソナ(理想の顧客像)が定義され、その層に響くストーリーになっているか?
⬜︎ ブランドビジョン・ミッション・バリューが一貫してストーリーに反映されているか?
⬜︎ ブランドの世界観(トーンや文体、表現スタイル)がブランド戦略全体で統一されているか?

デザイン・表現チェック

⬜︎ ストーリーの視覚的要素(ロゴ・色・フォントなど)がブランド世界観と整合しているか?
⬜︎ 表現スタイル(文体・トーン)がブランドの性格と一致し、魅力的になっているか?
⬜︎ 公開前に文章の校正・編集が行われ、誤字脱字や論理の矛盾がないか?

展開・見直しチェック

⬜︎ ブランドストーリーがWeb、SNS、資料、店舗などのあらゆるタッチポイントで活用されているか?
⬜︎ 社内でストーリー内容が共有され、社員が「語れる」状態になっているか?
⬜︎ 定期的にブランドストーリーをレビュー・更新し、時代や市場の変化に対応できているか?

記事のまとめ

■ まとめ

ブランドストーリーは、顧客との感情的なつながりを築き、ブランドの信頼性と魅力を高めるための強力なツールです。企業の歴史や価値観を掘り下げ、ストーリーテリングの要素を取り入れることで、魅力的で心に残るブランドストーリーを作成できます。顧客の視点を取り入れ、一貫性のあるビジュアルとメッセージを持ち、多チャネルで展開することが成功の鍵です。強力なブランドストーリーを通じて、顧客との信頼関係を築き、ブランドの価値を最大限に引き出しましょう。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

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