[ ブランド戦略 ]
メインブランドとサブブランドの違いと役割とは？
メインブランドとサブブランドの使い分けは、企業にとってとても重要なポイントです。複数のブランドを展開することで、異なる市場や顧客層にアプローチし、ビジネスの広がりをつくることができます。メインブランドは企業全体を代表し、長年かけて培ってきた信頼や価値を示す存在です。一方で、サブブランドはメインブランドを土台にしながら、特定のニーズに応えたり、新しい市場へ挑戦したりするために活用されます。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、メインブランドとサブブランドの違いや役割をわかりやすく解説していきます。
CONTENTS | 目次
■ メインブランドとサブブランドの違い
【 メインブランドとは 】
メインブランドとは、企業全体を代表する中心的なブランドです。企業の理念や価値観を体現し、消費者に広く知られる存在として位置づけられます。メインブランドは信頼性や品質の象徴であり、企業の“顔”として機能します。たとえば、トヨタ自動車における「トヨタ」というブランド名がそれにあたり、長年にわたり多くの消費者から支持されてきました。メインブランドは、企業がどの方向を目指し、市場でどう見られたいかを伝える役割も持っており、ブランド戦略の中心軸として重要です。
【 サブブランドとは 】
サブブランドとは、メインブランドと別に位置し、特定の市場や製品カテゴリーに向けて展開されるブランドです。メインブランドが持つ信頼や価値を活かしながら、独自のアイデンティティや特徴を持たせることができます。たとえば、トヨタのサブブランドである「レクサス」は、高級車市場に向けたブランドとして確立されています。このように、サブブランドは特定のニーズや市場に応じて差別化を図るために活用され、企業の柔軟な市場対応を支える重要な存在です。また、新しい価値提案を試す場にもなります。
【 メインブランドとサブブランドの役割の違い 】
メインブランドは企業全体の信頼や価値を象徴し、広い顧客層にアプローチします。一方でサブブランドは、より特定の市場や顧客に焦点を当てた展開を行います。メインブランドが企業の基盤を築く存在であるのに対し、サブブランドはその基盤を活かしながら新しい顧客層やニッチ市場にリーチしていく役割を担います。これにより、企業は多角的なブランド展開ができ、複数の市場で競争力を発揮しやすくなります。さらに、事業拡大のリスクを分散し、柔軟なブランド運用を可能にする点も大きな強みです。
■ メインブランドの役割
【 企業全体のイメージを支える 】
メインブランドは、企業全体のイメージを形づくり、支えるうえで重要な存在です。顧客にとってメインブランドは、その企業の信頼性や品質、理念を判断するひとつの指標になります。企業の歴史や実績が反映されるため、メインブランドが成長すれば企業全体の評価も高まりやすくなります。たとえば、Appleのメインブランドはイノベーションや洗練されたデザインの象徴として広く認識されています。
【 ブランド価値の維持と強化 】
メインブランドは、長期的に価値を維持し、強化していくための重要な戦略です。これは信頼性の向上や顧客ロイヤルティの強化につながります。広告やマーケティングにおいても、一貫したメッセージを発信することでブランドイメージを安定させ、継続的な成長を支えます。企業全体の戦略を支えるメインブランドは、その価値を保つことで他のブランドにも良い影響を与える存在になります。
【 消費者との信頼関係構築 】
メインブランドは、消費者との信頼関係を築くうえで欠かせない役割を持っています。ブランドに対して感じる安心感や信頼感は、企業の成長に大きく影響します。強いメインブランドを持つ企業は、一貫した品質やサービスを提供し続けることで、長期的な信頼関係を育てています。その結果、新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客の継続利用にもつながりやすくなり、事業基盤を強化します。
■ サブブランドの役割
【 新しい市場への対応 】
サブブランドは、企業が新しい市場に進出する際にとても有効です。メインブランドの信頼を活かしながら、異なる製品やサービスを市場に向けて展開することで、新たな顧客層を開拓しやすくなります。たとえば、自動車メーカーが電気自動車ブランドを立ち上げる場合、既存のメインブランドの影響力を土台にしつつ、サブブランドとして展開するケースが多く見られます。
【 ターゲット層の細分化 】
サブブランドは、異なる顧客層やニーズに合わせて柔軟に対応できるため、ターゲット市場を細分化する際に役立ちます。メインブランドが広い層を対象にしている場合でも、サブブランドを活用することで、特定の年齢層や価値観、ライフスタイルに合わせた製品やサービスを提供できます。これにより、ブランド全体の魅力が広がり、特定の顧客層とのつながりを強めることができます。
【 ブランドの柔軟性向上 】
サブブランドは、企業に柔軟性をもたらします。メインブランドが持つ制約や固定イメージにとらわれず、新しいアイデアやコンセプトを取り入れやすくなります。その結果、企業は変化の早い市場環境にも適応しやすくなります。サブブランドを上手く活用することで、ブランド全体の多様性が広がり、競争の激しい市場でも戦いやすくなり、継続的な成長にもつながりやすくなります。
■ メインブランドとサブブランドの相乗効果
【 ブランドポートフォリオ戦略 】
ブランドポートフォリオ戦略では、メインブランドとサブブランドを組み合わせることで、市場全体を効率的にカバーできます。メインブランドは統一された信頼基盤をつくり、サブブランドは細分化された市場やニーズに柔軟に対応します。これにより、過度な競合を避けながら、グループ全体としての存在感を高めることができます。また、複数ブランドを適切に配置することで、長期的な収益機会も広がります。
● メインブランドで信頼と認知を確立
● サブブランドで多様な市場に対応
● ブランド間の競合を最小限に調整
● 消費者の選択肢を広げる設計
● グループ全体で市場シェアを拡大
【 メインブランドの強みを活かしたサブブランド展開】
メインブランドが持つ強み（信頼・技術・デザイン性など）を土台としてサブブランドを展開することで、立ち上げ段階から一定の信用を得やすくなります。また、メインブランドと価値観を共有することで、消費者に一貫した体験を届けられます。その結果、新市場への参入リスクを抑えながら、ブランドをスムーズに浸透させることができます。さらに、ブランド同士の相乗効果が生まれ、長期的な成長にもつながります。
● メインブランドの信頼を活用
● 技術や品質を継承し展開
● ブランドメッセージを統一
● 新規市場での参入障壁を軽減
● 消費者の受け入れやすさを向上
【 サブブランドによるメインブランドの補完 】
サブブランドは、メインブランドが対応しにくい領域や価格帯を担うことで、ブランド全体を補完する役割を果たします。これによりメインブランドのイメージを守りながら、幅広い顧客層を取り込むことができます。補完関係が強まることで、顧客に「このグループなら安心」という印象が生まれ、長期的なブランド価値向上にもつながります。さらに、多様なニーズに応える柔軟な体制も築けます。
● 新たなターゲット層を開拓
● メインブランドの高級感を維持
● 価格帯や用途の幅を広げる
● グループ全体で顧客体験を強化
● ブランド価値の長期的な成長を促す
■ メインブランドとサブブランドの成功事例
【 TOYOTAとLEXUSブランドの成功事例 】
トヨタとレクサスの関係は、自動車市場におけるメインブランドとサブブランドの代表的な成功例です。トヨタは、大衆向けに信頼性と品質を提供するブランドとして長い歴史を持っています。一方で、レクサスは1989年に高級車市場へ参入する目的で設けられ、トヨタの高い技術力を土台にしながらも、よりプレミアムなブランドイメージを築いてきました。両ブランドは異なるターゲットにアプローチすることで、トヨタ全体の販売力を底上げしています。トヨタは信頼性と手頃な価格を求める幅広い層に支持され、レクサスは高級感やステータス性を重視する顧客に選ばれています。この相乗効果により、トヨタは多様な市場で存在感を強め、全体のブランド価値を高めています。
[ ブランド戦略の成功ポイント ]
● 異なるターゲット層への訴求
TOYOTAは信頼性と手頃な価格を軸に大衆向けへ、LEXUSは高級車市場の顧客へ明確にアプローチ。
● 高級車ブランドとしての独自性確立
LEXUSはデザインや技術でTOYOTAとの差別化を図り、独自のプレミアム感を築いている。
● 一貫した品質と信頼性
LEXUSもTOYOTAの品質基準を継承し、ユーザーに安心感と信頼を提供している。
[ 出典 ] トヨタ自動車公式サイトより
[ 出典 ] LEXUS公式サイトより
【 BMWとMINIブランドの成功事例 】
BMWとMINIの関係は、メインブランドとサブブランドが異なる市場セグメントで共存しながら相乗効果を生み出している代表的な成功例です。BMWは、高級車市場でスポーティさや革新性を特徴とし、高価格帯の車両を展開しています。一方でMINIは、2001年にBMWが買収して以降、小型でスタイリッシュな都市向けコンパクトカーとして展開され、若年層や都市部の消費者から支持を集めています。MINIはBMWの技術力や高級感を取り入れつつ、独自の個性とコンパクトさを活かしたポジションを確立しています。両ブランドが異なる顧客層をターゲットに展開することで、BMWグループ全体の競争力が高まり、MINIの存在が新たな顧客を呼び込むことで全体のブランド価値向上にもつながっています。
[ ブランド戦略の成功ポイント ]
● 異なるターゲット層へのアプローチ
BMWは高級車志向、MINIは若年層や都市生活者向けのコンパクトカーを中心に展開。
● 個性を活かしたブランドアイデンティティ
MINIはレトロで遊び心あるデザインを守りながら、BMWの技術基盤を共有している。
● 一貫した高品質と信頼性
MINIもBMWの品質基準を満たし、利用者に安心感と信頼を届けている。
[ 出典 ] BMW Group公式サイトより
[ 出典 ] MINI公式サイトより
【 NESTLEとNESCAFEブランドの成功事例 】
ネスレとネスカフェの関係は、食品業界におけるメインブランドとサブブランドが相乗効果を発揮している成功例として知られています。ネスレは世界的な食品・飲料メーカーとして多様な製品を展開しており、その中でネスカフェはインスタントコーヒーのサブブランドとして非常に高い認知度を持っています。ネスレが持つグローバル規模の流通ネットワークやブランド基盤を活かし、ネスカフェは世界中に素早く展開され、各国の市場に合わせた製品を提供しています。ネスレの信頼性と品質がネスカフェの基盤となり、ネスカフェは独自のブランド力を育てることができました。また、ネスカフェの成功はネスレ全体のブランド価値向上にも貢献し、特にコーヒー市場で強いポジションを維持しています。このように、両ブランドは互いにプラスの影響を与え合い、持続的な成長につなげています。
[ ブランド戦略の成功ポイント ]
● 親ブランドからの信頼性の継承
NESCAFEはNESTLEの品質と信頼性を引き継ぎ、消費者に安心感を届けている。
● 独自のブランドアイデンティティ
NESCAFEはコーヒー専門ブランドとして認知を高めつつ、NESTLEとのつながりも保っている。
● 多様な商品ラインナップ
NESCAFEはインスタントからプレミアム製品まで幅広く展開し、多様なニーズに応えている。
[ 出典 ] ネスレ日本公式サイトより
[ 出典 ] ネスカフェ公式サイトより
【 DISNEYとPIXARブランドの成功事例 】
ディズニーとピクサーの関係は、エンターテインメント業界におけるメインブランドとサブブランドが相乗効果を発揮している代表的な成功例です。ディズニーは映画、テーマパーク、グッズ展開などで世界的に知られ、長く愛されてきたブランドです。一方でピクサーは、1995年の『トイ・ストーリー』をはじめとした高品質な3Dアニメーションで評価されているスタジオです。ディズニーがピクサーを買収した後は、双方の強みを組み合わせることでメリットを広げ、ディズニーはピクサーの技術力やストーリーテリングを取り入れて、アニメーション映画の競争力を高めました。ピクサー側も、ディズニーが持つマーケティング力やキャラクターブランディングのノウハウを活用し、作品の成功を後押ししています。このように、ディズニーとピクサーは互いの強みを補い合うことで、新しい価値を生み出し続けています。
[ ブランド戦略の成功ポイント ]
● 補完的なブランド価値の提供
ディズニーのファミリー向けイメージと、ピクサーの革新的な表現力が組み合わさり、幅広い層にアプローチできている。
● クリエイティブ資源の共有
ディズニーのリソースや配給力を活かしながら、ピクサーの創造性や技術力も伸ばせる体制を整えている。
● 品質と信頼性の一貫性
両ブランドとも安定して高品質なコンテンツを提供し続け、ブランド全体の信頼性を高めている。
[ 出典 ] DISNEY公式サイトより
[ 出典 ] PIXAR公式サイトより
【 Johnson & JohnsonとBAND-AIDブランドの成功事例 】
ジョンソン・エンド・ジョンソンとバンドエイドの関係は、医療・消費財分野においてメインブランドとサブブランドが相乗効果を発揮している成功例としてよく知られています。ジョンソン・エンド・ジョンソンは医療用品から日用品まで幅広い製品を扱うグローバル企業であり、バンドエイドはその中でも絆創膏に特化したサブブランドです。バンドエイドは単なる製品名にとどまらず、絆創膏の代名詞として広く認識されており、ジョンソン・エンド・ジョンソン全体のブランド力を支える存在になっています。ジョンソン・エンド・ジョンソンの信頼性や品質がバンドエイドにも反映されることで、高い支持を得ています。また、バンドエイドの成功はジョンソン・エンド・ジョンソン全体の医療用品や日用品の信頼度向上にもつながり、ブランド価値を押し上げる相乗効果を生み出しています。
[ ブランド戦略の成功ポイント ]
● 信頼性の継承
BAND-AIDはJohnson & Johnsonの医療分野での信頼性を背景に、消費者へ安心感を届けている。
● 製品カテゴリでの専門性強化
BAND-AIDは創傷ケアブランドとして認知を高め、Johnson & Johnsonの医療イメージ強化に貢献。
● 広範な市場へのアプローチ
BAND-AIDは商品ラインナップやデザインを幅広く展開し、子どもから大人まで多様な層にリーチしている。
[ 出典 ] Johnson & Johnson公式サイトより
[ 出典 ] BAND-AID公式サイトより
■ メインブランドとサブブランドに関するよくある質問
メインブランドとサブブランドは、企業の市場戦略を形づくる重要な要素です。ここでは、それぞれの役割や違い、導入時のポイントについて、よくある質問形式でわかりやすくまとめました。
【 よくある質問① 】
Q ：メインブランドとは何ですか？
A ：企業全体を代表し、信頼性や価値を体現する中核ブランドです。企業の顔として機能し、広範な顧客に訴求します。
【 よくある質問② 】
Q ：サブブランドとは何ですか？
A ：メインブランドの延長として設けられ、特定の市場やターゲット層に向けて展開されるブランドです。メインブランドの信頼を活かしつつ、独自性を持ちます。
【 よくある質問③ 】
Q ：メインブランドとサブブランドの役割の違いは？
A ：メインブランドは企業の信頼と基盤を構築し、広い顧客層へ影響を与える役割を担います。一方、サブブランドはその基盤を活かしながら、ニッチな市場や特定の顧客層に差別化された価値を提供します。
【 よくある質問④ 】
Q ：サブブランドの成功例はありますか？
A ：トヨタの「レクサス」は、高級車市場をターゲットにしたサブブランドで、メインブランドの信頼をベースに独自の高級感を持ち合わせています。同様にAppleでは「iPhone」がそれ自体強力なサブブランドとして機能しています。
【 よくある質問⑤ 】
Q ：サブブランドを導入する際の注意点は？
A ：メインブランドのイメージを曖昧にせず、明確な役割分担と差別化が不可欠です。顧客が混乱しないよう、命名とポジショニングを慎重に設計すべきです。
■ メインブランドとサブブランドのためのチェックリスト
メインブランドとサブブランドを適切に運用するには、戦略・デザイン・体制の整合性が欠かせません。以下のチェックリストは、ブランド体系を見直し、全体の質を高めるための実践的な指標として活用できます。
【 ブランド戦略全体のチェック 】
⬜︎ メインブランドとサブブランドの役割分担が明確になっているか？
⬜︎ 両ブランドのコンセプトに一貫性があるか？
⬜︎ 市場全体におけるブランドポートフォリオ戦略が整理されているか？
【 ターゲット・ポジショニングのチェック 】
⬜︎ メインブランドとサブブランドでターゲット層を明確に区分できているか？
⬜︎ それぞれのブランド価値がターゲットに正しく伝わっているか？
⬜︎ 顧客がブランド間で混乱しないポジショニングができているか？
【 ブランド体験・デザインのチェック 】
⬜︎ メインブランドとサブブランドでビジュアルアイデンティティが統一されているか？
⬜︎ ロゴやカラーなど、ブランドごとの個性と一貫性のバランスが取れているか？
⬜︎ サブブランド独自の世界観が明確に定義されているか？
【 運用・ガイドラインのチェック 】
⬜︎ ブランド体系を社内で共有できているか？
⬜︎ ブランドごとのガイドラインが整備され、制作物に適切に反映されているか？
⬜︎ 市場や戦略の変化に応じた見直しが定期的に行われているか？
■ まとめ
メインブランドとサブブランドの効果的な活用は、企業の成長戦略を進めるうえで大切な要素です。メインブランドは企業全体の信頼性と価値を示し、幅広い市場での認知を支えます。一方、サブブランドは特定のニーズに応える形で展開され、新市場の開拓や顧客層の細分化に役立ちます。両者のバランスを適切に保つことで、メインブランドの信頼性を土台にしながら、サブブランドによって市場への柔軟な対応ができ、企業の継続的な成長につながっていきます。
株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。
【 ご質問、お打合せ希望など、お気軽にお問合わせください。】
– ブランド戦略からデザイン開発まで –
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