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ブランド価値とは?高める方法と活用方法

[ ブランド戦略 ]

ブランド価値とは?高める方法と活用方法

強い企業が市場で成功を収め、持続的に成長を続ける背景には、ブランド価値の存在が大きな役割を果たしています。ブランド価値とは、企業や製品に対する消費者の信頼や評価、感情的なつながりを指し、競争の激しい市場での差別化を図るための重要な要素です。強いブランド価値を持つ企業は、単に優れた製品やサービスを提供するだけでなく、その価値観や理念が消費者に共感され、長期的な信頼関係を築いています。このブランド価値が、顧客ロイヤルティを高め、価格競争に左右されない強い企業体制を支えるのです。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者が、ブランド価値が企業に与える影響と、それを高めるためのポイントについて詳しく解説します。


■ ブランド価値とは?

企業にとってのブランド価値とは、顧客や社会に対して企業が提供する信頼や独自性、好意的な印象を総合的に評価したものです。ブランド価値は単なる知名度にとどまらず、消費者がその企業や製品に抱く「質」や「信頼」の象徴として機能します。たとえば、品質やサービス、企業理念が消費者から共感や信頼を得ていれば、そのブランドは顧客の心に強く響き、購買意欲やブランドロイヤリティが高まります。また、ブランド価値の高い企業は市場でのポジションを確立し、長期的に競争力を保つことができます。さらに、ブランド価値は顧客だけでなく、投資家や従業員などさまざまなステークホルダーからの信頼をも得るため、企業全体の発展に重要な役割を果たします。

【 知名度=ブランド価値ではない 】

ブランド価値は単なる知名度とは異なり、知名度が高くてもブランド価値が必ずしも高いとは限りません。知名度は、どれだけ多くの人々に認知されているかを示す指標ですが、ブランド価値は顧客に提供する信頼性、品質、共感、価値観など、ブランドに対する総合的な評価や印象を意味します。たとえば、知名度がある企業であっても、顧客のニーズに合致しておらず不信感を与える場合、そのブランド価値は低くなります。逆に、知名度が低いブランドでも、確かな品質や信頼性を持つことで一部の消費者に強く支持され、高いブランド価値を持つことがあるのです。このように、ブランド価値は消費者との関係や感情的なつながりを重視するものであり、長期的な成長や競争優位性を支える基盤となります。企業が競争の中で成功を維持するには、知名度だけでなく、信頼と共感を築き、価値を提供し続けることが必要です。

【 ブランド価値の指標 】

⚫︎ブランドを好んでいる

顧客がブランドを好むことは、ブランド価値の最も重要な指標の一つです。好意的な印象を持つことで、そのブランドへの購買意欲が高まり、競合他社よりも選ばれる確率が上がります。企業は、品質やサービス、理念の共有などで顧客との絆を築くことが求められます。

⚫︎固定客が付いている

リピート顧客の存在はブランド価値の安定性を示し、特に競争の激しい市場での優位性を表します。固定客はブランドのアンバサダーとして、他の顧客へのポジティブな影響を与える存在でもあり、企業にとって重要な長期的資産です。

⚫︎知名度があり認知されている

知名度は多くの消費者にとってブランド認識の入り口ですが、それが好意や信頼に結びついていることが重要です。知名度の高いブランドは新たな製品や市場へ参入しやすく、競争力を維持するための基盤ともなります。

【 ブランド価値による優位性 】

⚫︎競合他社の商品よりも高く売れる

強いブランド価値は商品に付加価値を与え、消費者が価格に見合った価値を感じやすくなります。高いブランド信頼度により、消費者はブランドを支持し、価格が少々高くても購入することが多くなります。これは、顧客のブランドへの信頼や満足度が、価格に対する抵抗感を低減させる効果を持つからです。

⚫︎店頭での優位置確保が可能

小売業者にとって、人気ブランドの商品は集客力のある要素として扱われます。店舗側も売り場で目立つ位置に配置し、販売機会を高めることで、ブランドにとっても有利な環境が整えられます。これにより、ブランドの認知度が高まり、消費者の購入意欲を促進しやすくなります。

⚫︎宣伝広告費を抑えることが可能

強力なブランドは、広告宣伝のコストを抑える効果も発揮します。高い認知度を持つブランドは口コミや顧客ロイヤルティを活かし、既存顧客による紹介が自然な広告となるため、新規広告の頻度や範囲を抑制できるのです。この結果、広告費用を大幅に削減しつつも安定した売上を見込むことができます。

ブランド価値を高める方法

ブランド価値を高める4つの条件

ブランド価値を高める4つの条件 】

強いブランドの条件としては、まず明確なコンセプトが重要です。ブランドが提供する価値や目標がはっきりしていると、消費者にわかりやすく伝わり、一貫性が保たれます。さらに、消費者の感情に響くメッセージを持つこともポイントで、感性的な訴求が顧客との共感を生み、ブランドへの愛着や信頼が深まります。また、情報発信力も欠かせません。定期的な情報発信はブランドの認知度を高め、口コミ効果でさらに広がります。消費者が共感しやすく、共有したくなるような要素を備えたブランドは、長期的な成功を維持しやすいです。

⚫︎コンセプトが明確であること

ブランドの基礎は明確なコンセプトにあります。ブランドが何を目指し、どのような価値を提供するかが明確であると、消費者に分かりやすいメッセージとして伝わります。こうしたコンセプトが確立されているブランドは、一貫性を保ち、長期的な信頼を築きやすくなります。

⚫︎感性に響く訴求であること

消費者の感情に響くメッセージが含まれていることも重要です。製品やサービスの訴求が理論的であるだけでなく、感性的な側面を強調することで、顧客との共感が生まれます。感情的な結びつきはブランドロイヤルティを向上させ、長期的なファンを育てる基盤となります。

⚫︎情報発信力があること

ブランドの情報発信力は、消費者との接点を増やし、ブランドの存在感を強化するために欠かせません。WEBサイト、SNS、ニュースレターなどを通じて継続的に情報を発信し、価値観やビジョンを届けることで、ブランド認知を拡大し、消費者の関心を引き付け続けます。

⚫︎口コミ発信力があること

口コミは、顧客がブランドの信頼性を他の潜在顧客に伝える力を持ちます。特にSNS時代では、口コミは瞬時に広がり、ブランドへの共感や信頼を強化する重要な手段です。ポジティブな口コミを促進するため、優れた顧客体験を提供し、顧客の声を反映させた改善が必要です。

ブランド価値を高めるブランドの資産活用

ブランド価値を高めるためのブランド資産活用

【 ブランド資産を活用する4つの方法 】

1. マルチブランド

異なるターゲットや市場ニーズに合わせて複数のブランドを展開することで、ブランドの存在感と競争力を強化します。同一企業内で異なるブランドを複数展開することで、さまざまな顧客層に対応でき、特定市場における他ブランドとの差別化も実現します。これにより、消費者の選択肢を増やし、競合の中でもブランドが優位性を持ちやすくなります。

2. ブランドエクステンション

ブランドエクステンションは、既存のブランド資産を活用して新たな製品カテゴリーへ展開する戦略です。たとえば、スキンケアブランドが同ブランド名でメイクアップ商品を出すことで、信頼性が高まり、消費者の購入に繋がりやすくなります。既存ブランドに新たな魅力を加えることで、市場のニーズを満たしつつ企業の売上拡大にも貢献します。

3. プレミアムブランド(サブブランド)

既存ブランドの価値を引き上げ、プレミアムな位置づけのサブブランドを展開します。たとえば、アパレルブランドが高級ラインを発表することで、ブランド全体のイメージが上がり、既存の顧客に加えて高所得層もターゲットにすることができます。高価格帯での展開は、ブランド価値の向上とともに利益率の向上にも貢献します。

4. ディフュージョンブランド(サブブランド)

主力ブランドの名前やイメージを活かし、低価格で手に届きやすいラインを展開します。たとえば、ファッションブランドがディフュージョンラインを出すことで、若年層などの新規顧客層を取り込むことが可能です。ブランドに親しみやすさとアクセスしやすさを加えながら、メインブランドの影響力をより広範な消費者に広げ、認知度と売上拡大に繋げます。

経済産業省のブランド価値評価

【 使用データは公表財務諸表を中心とする客観的財務データのみ 】

⚫︎定性要因の指数化

企業や製品のブランド力を分析するために、定性的な要因を数値化するアプローチが重要視されています。これには、ブランドの認知度や顧客の信頼度、満足度などの要素を指標化し、ブランド価値の客観的な評価を目指す取り組みが含まれます。これらの定性データを数値として捉えることで、ブランドの市場での立ち位置や影響力を具体的に分析でき、マーケティング戦略の向上に役立つものとされています。

⚫︎金銭的評価の限界

ブランドを金銭的に直接評価するアプローチには限界があり、ブランド価値の測定に信頼性を欠く可能性があるとされています。ブランドは無形の資産であり、経済的な指標に収めるだけでは、そのイメージや社会的な評価といった非金銭的な要素を正確に反映できないためです。したがって、ブランド評価には、定性的な要因を多角的に分析し、定量データと組み合わせて包括的な指標を導き出すアプローチが重要です。

【 ブランド価値3つの構成要素 】

⚫︎プレステージ・ドライバー(PD)→価格プレミアム

これは、ブランドが提供する「価格プレミアム」の要素で、消費者が製品やサービスに対して高い価格を支払う意思を示します。プレステージ・ドライバーは、ブランドの高級感や洗練されたイメージに支えられており、消費者がそのブランドを所有することで得られるステータス感が価格プレミアムを引き出します。このため、ブランドの地位や希少性が重要な要素となります。

⚫︎ロイヤルティ・ドライバー(LD)→ロイヤルティ

これは、消費者の「ロイヤルティ」を高める要因で、顧客がブランドに対して長期的な信頼関係を築き、繰り返し購入することに基づいています。ロイヤルティ・ドライバーは、顧客の体験の一貫性や満足度、アフターサポートの質、さらには共感や信頼を高める企業姿勢が重要です。ブランドがこれを強化することで、顧客が他の選択肢に目移りせず、持続的にブランドを選ぶ傾向が高まります。

⚫︎エクスパンション・ドライバー(ED)→ブランドの拡張力

「ブランドの拡張力」としての要素で、新たな市場や製品ラインへの展開がスムーズに行えるかに焦点を当てます。エクスパンション・ドライバーは、ブランドの柔軟性や他分野での適応力に依存し、製品やサービスが多様な市場に自然に溶け込む力を示します。強力なエクスパンション・ドライバーがあれば、ブランドの拡張が消費者にとって自然な選択となり、新たな顧客層の取り込みやブランド価値の増幅が可能となります。

[ 出典 ] 経済産業省公式サイトより

■ 企業ブランドの価値ランキング

企業ブランドの価値ランキング

世界最大のブランドコンサルティング会社Interbrandが2016年のグローバル企業のブランド価値ランキングを発表し、Appleが首位を獲得しました。同ランキングでAppleがトップになるのは4年連続です。Appleに続いて、2位にGoogle、3位にCoca-Cola、4位にMicrosoftがランクインしています。上位4位は去年と同じ順位になり、Coca-Cola以外はテクノロジー企業がトップを占有した形になりました。日本企業では、昨年6位だったトヨタがランクアップし、アジアブランド初のトップ5入りを果たしました。他にも21位にホンダ(前19位)、42位にキヤノン(前40位)がランクインするなど健闘している模様です。

[ 出典 ] Interbrand公式サイトより

■ まとめ

企業から「ブランド価値を上げたい」というご依頼をよく受けます。しかし、それはとても難しい課題なのです。実際には、予算があれば、広告宣伝投下量を増やしたり、インパクトのあるCMに打つことも可能です。しかし、これでは短期的な売上増加効果はあっても、長期的なブランド力の向上には繋がりません。ブランド価値を上げるためには基礎体力を付け代謝を上げることが一番の近道なのです。

株式会社チビコ今田佳司ブランディングディレクター

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

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