
[ ブランド戦略 ]
リブランディングで競合に差をつける|成功のための実践ステップ
リブランディングは、企業や製品、サービスが市場での競争力を保ち、成長を持続させるための戦略です。市場環境や消費者ニーズが変化する中、ブランドが古びた印象を与えたり、メッセージが時代に合わなくなったりすると、リブランディングが必要になります。また、新たなターゲットや市場の開拓や、企業のビジョン・ミッションの転換に合わせてブランドを刷新することも重要です。適切なタイミングでリブランディングを行うことで、ブランドの価値を再定義し、顧客の信頼を取り戻すことができます。本記事では、株式会社チビコでブランディングディレクターをしている筆者がリブランディングが必要になる理由やそのタイミング、そして成功させるための具体的な手順について詳しく解説します。
CONTENTS | 目次
■ リブランディングの効果

【 ブランド価値の向上 】
リブランディングは、単に見た目を整えることではなく、ブランドの存在意義を再定義し、社会や顧客との関係性を深めるプロセスです。その結果、ブランドが持つ信頼・好感・共感といった無形資産が高まり、市場での価値が向上します。見た目の統一感だけでなく、発信するメッセージや体験の一貫性が「らしさ」を生み出し、顧客からの支持を強化します。ブランド価値が上がることで、価格競争から抜け出し、長期的なファンづくりや選ばれ続ける力が育っていきます。リブランディングは、未来への投資です。
【 競争優位の確立 】
市場が成熟する中で、機能や価格だけでは差がつきにくくなっています。リブランディングによって自社の独自性や思想を明確にすることで、「なぜそのブランドを選ぶのか」という理由が生まれます。つまり、スペック競争から“意味の競争”へと軸を移すことができるのです。ブランドが持つ世界観や哲学が浸透すれば、模倣されにくい価値が形成され、競合に左右されない立ち位置を築けます。差別化ではなく、共感による優位性をつくることがリブランディングの真の成果です。共感がブランドを永続へと導きます。
【 顧客体験の改善 】
リブランディングを通じて、顧客との接点を改めて見直すことで、体験全体の質が向上します。広告・店舗・Web・商品など、どの接点でもブランドの一貫した想いが感じられると、顧客は安心し、信頼を深めます。見た目の刷新だけでなく、体験そのものをブランド視点で再設計することがポイントです。顧客がブランドと出会い、関わり、継続していく流れを丁寧に整えることで、“買う体験”から“共感する体験”へと進化し、顧客満足度の向上につながります。体験が感情を動かし、感情がブランドを育てます。
【 新規顧客獲得 】
リブランディングによってブランドのメッセージや表現が現代化されると、これまで届かなかった層にも響くようになります。特に、価値観やライフスタイルの変化に合わせた見せ方・語り方を行うことで、新しい顧客層への認知が広がります。デザインの刷新やコミュニケーションの再設計は、ブランドの再発見を促し、「このブランド、今の自分に合うかも」という共感を生みます。結果として、既存顧客を維持しながらも、新しい市場への扉を開くきっかけとなります。共感が新たな市場を切り拓きます。
【 社内意識の統一 】
リブランディングの効果は外向きだけでなく、社内にも大きく現れます。理念や価値観を再定義し、言語化して共有することで、社員一人ひとりの判断軸や行動基準が揃い、組織全体に一体感が生まれます。ブランドが社員にとって“自分ごと”になることで、発信のブレがなくなり、社内外で一貫したブランド体験が実現します。また、ブランドの表現やメッセージを現代化することで、これまで届かなかった層にも共感が広がり、新しい顧客との接点が生まれます。リブランディングは、組織の内側と市場を再びつなぐ架け橋です。
➤ 詳細記事:インナーブランディングとは?その目的と進め方と成功事例
■ リブランディング成功への実践ステップ

1. 現状分析
リブランディングの出発点は、まず「今のブランドを正しく理解すること」です。社内の認識、顧客の評価、市場での立ち位置などを客観的に把握する必要があります。特に、自社が意図して発信しているイメージと、外部からどう見られているかのギャップを見つけることが重要です。アンケートやインタビュー、SNS分析などを活用し、定量・定性の両面から実態を掴みます。ブランドの課題は感覚ではなく「事実」として整理し、何を守り、何を変えるべきかを判断するための土台をつくることが現状分析の目的です。
[ ポイント ]
● 市場・競合調査
● 顧客評価の把握
● 社内ブランド浸透度の確認
➤ 詳細記事:ブランディングにリサーチと分析が重要な理由とは?
2. 課題と目的の明確化
現状を把握したら、次に「何のためにリブランディングを行うのか」を明確にします。単に“古いから変える”ではなく、どんな成果を目指すのかを定義することが大切です。売上拡大、採用強化、顧客層の刷新、ブランドイメージの統一など、目的によって戦略の方向性は変わります。また、課題と目的をセットで整理することで、全員が同じ目線で意思決定できるようになります。リブランディングは手段であり、目的ではありません。ブランドを変える「理由」が明確であってこそ、ブレない戦略が生まれます。
[ ポイント ]
● 具体的な課題を特定
● 達成すべき目的を数値化
● 成果指標(KPI)を設定
3. ブランド戦略の再構築
ブランド戦略の再構築では、理念・ビジョン・価値提供の再定義が中心となります。まず「自社がどんな存在意義を持ち、誰のどんな課題を解決したいのか」を言語化し、ブランドの軸を明確にします。次に、その考えをどう発信し、どんな体験で体現するのかを整理します。ロゴやデザインより先に、ブランドの“物語”を再構築することがポイントです。ここで定まった方向性が、今後のコミュニケーションやクリエイティブすべての基準になります。戦略は「美しい理念」ではなく、「行動を導く指針」であるべきです。
[ ポイント ]
● ビジョン・ミッション再設定
● 差別化ポイントの整理
● 提供価値とターゲットの明確化
4. VI(ビジュアル・アイデンティティ)開発
VI開発は、ブランドの思想や個性を「見える形」にする工程です。ロゴ、カラー、フォント、写真、グラフィックなど、すべての要素が一貫した世界観を伝える役割を持ちます。ここで大切なのは、単なるデザイン刷新ではなく、ブランド戦略で定義した価値やトーンを視覚的に翻訳すること。たとえば“誠実さ”や“革新性”といった言葉を、具体的にどう表現するかを丁寧に設計します。社内外で統一して使えるガイドラインを整備することで、ブランドの印象を長期的に安定して育てていくことができます。
[ ポイント ]
● ロゴ・カラー・フォント設計
● トーン&マナーの定義
● ブランドストーリーの表現化
➤ 詳細記事:VI(ビジュアル・アイデンティティ)とは何か?効果と成功事例
➤ 詳細記事:トーン&マナーとは?目的と成功事例
➤ 詳細記事:ブランドストーリーとは?重要性・作成方法と成功事例5選
■ リブランディングのメリット

【 差別化の強化 】
市場の成熟や競合の増加により、製品やサービスの機能や価格だけでは差がつきにくくなっています。リブランディングは、“何を提供するか”ではなく、“なぜそれを提供するのか”という思想で差別化を図る手段です。ブランドの価値観や存在意義を再定義し、それを言葉とデザインで一貫して表現することで、「このブランドだから選びたい」という理由が生まれます。模倣されにくい独自の世界観を築くことこそが、リブランディングの真価であり、企業の持続的な競争力を生み出します。
【 時代への適応 】
社会の価値観や顧客の判断基準は、デジタル化・多様化によって大きく変わっています。リブランディングを行うことで、古くなった印象や過去のメッセージを見直し、今の時代にふさわしい表現や体験へと更新することができます。単なるデザイン変更ではなく、ブランドが社会とどう関わり、どんな意義を持つのかを再定義するプロセスです。時代の変化に適応したブランドは、常に新鮮で共感される存在として長く支持されます。それは未来への持続力を生む取り組みでもあります。変化に寄り添う姿勢が信頼を育てます。
【 顧客体験の改善 】
リブランディングの過程では、顧客がブランドに触れるあらゆる接点を見直すことになります。広告・店舗・商品・サポートなど、それぞれが一貫した体験を提供できているかを検証し、改善するきっかけになります。ブランドの想いが体験としてきちんと伝わることで、顧客は「心地よさ」や「信頼感」を感じます。言葉とデザインだけでなく、サービスや接客など実体験を含めてブランドを磨くことが、結果的に顧客満足度を高め、ファンを増やすことにつながります。体験の質が、ブランドの真価を決めます。
【 社員のモチベーション向上 】
リブランディングは、外向けだけでなく、社内の意識変革にも大きな効果をもたらします。ブランドの理念や価値を再定義することで、社員が「自分たちは何のためにこの仕事をしているのか」を再確認できます。共通のビジョンやメッセージを共有することで、チームとしての一体感が生まれ、行動や判断にも軸ができます。ブランドを自分ごととして語れる社員が増えることで、社内のエネルギーが高まり、結果的に外部への発信力も強くなります。内側の熱量こそが、ブランドを動かす原動力です。
【 価格競争からの脱却 】
ブランドの価値が明確で、共感される存在になれば、価格だけで選ばれる状況から抜け出すことができます。リブランディングによって「なぜこのブランドに価値があるのか」が伝わると、顧客は単なるコスト比較ではなく、体験や信頼といった情緒的価値で判断するようになります。結果として、安売りではなく“納得して選ばれるブランド”に変わっていきます。強いブランドは、価格競争に巻き込まれず、安定した利益構造を築くことができます。そしてその信頼は、長期的な成長を支える力になります。
■ リブランディングのタイミング

リブランディングは思いつきで行うものではありません。企業の成長ステージや外部環境の変化に応じて、適切なタイミングで実行することが重要です。タイミングを誤ると「早すぎて効果が出ない」あるいは「遅すぎて手遅れになる」といったリスクもあります。ここでは、多くの企業がリブランディングを成功させている典型的なタイミングとその理由をご紹介します。ぜひ、自社の現状と照らし合わせてみてください。
【 事業拡大期 】
事業が拡大し、新たな市場や顧客層に進出するタイミングは、リブランディングの絶好の機会です。既存のブランドイメージが新市場にそぐわない場合、ブランドが成長の足かせになることがあります。事業規模や提供価値が進化する中で、ブランドのメッセージやビジュアル、トーンも一貫性と柔軟性を持って刷新する必要があります。新たな顧客層に対しても自社の独自性と魅力をしっかり届けるために、ブランドの再構築が求められます。それは次のステージへ進むための重要な経営判断でもあります。
[ 理由 ]
● 既存のブランドイメージが新市場に合っていない場合、ブランドが障害になり得ます。
● ブランドの枠組みが成長スピードについてこれず、ブランド体験が一貫性を欠くリスクが高まります。
● スケールに合わせてブランドアセットを再設計することで、社内外の共通認識を築きやすくなります。
[ 典型例 ]
● 地域密着型だった企業が全国展開・海外進出するタイミング
● 新たな製品ラインを追加し多角化を進めるタイミング
【 組織再編・経営陣交代 】
組織再編や経営陣の交代は、企業のビジョンや方向性が大きく変わる局面であり、リブランディングが必要になることが多い場面です。新たな経営方針や価値観をブランドに反映させ、社内外へ明確に発信することが求められます。従来のブランドイメージのままでは、社員や顧客との間にギャップが生じ、エンゲージメント低下や混乱を招く恐れがあります。ブランドの再構築は、組織全体の一体感と新たな方向性の共有に不可欠なプロセスです。そしてそれは、変化を前向きに受け止める文化を育てる契機にもなります。
[ 理由 ]
● 新しいビジョンや価値観をブランドに反映させ、社内外へ明確に発信する必要がある。
● 組織の変化にブランドが対応していないと、社員のエンゲージメントやブランド整合性が低下する。
[ 典型例 ]
● M&A後の統合ブランド策定
● ファウンダー交代・新経営体制への移行時
【 新市場展開 】
新たな市場(国・地域・セグメント)へ進出する際は、その市場特有の価値観や文化に合わせたブランド戦略が不可欠です。既存市場で成功したブランドが新市場でそのまま通用するとは限りません。言語や文化的背景、消費者の価値観に配慮し、ブランドの核を保ちながらも柔軟にローカライズする必要があります。適切なリブランディングを行うことで、新たな市場での受容性を高め、ブランドとしての一貫性と新鮮さの両立を図ることができます。そうした姿勢が、グローバルな信頼の構築にもつながります。
[ 理由 ]
● 既存市場で成功したブランドが新市場では通用しないことは珍しくありません。
● 文化的背景、言語、競争環境、消費者期待に対応した柔軟性のあるブランドが求められます。
[ 典型例 ]
● 国内成功ブランドがアジア・欧米市場に進出する場合
● BtoB企業がコンシューマー市場へ拡張する場合
【 売上低迷・ブランド価値毀損の兆候が見えた時 】
売上の低迷やブランド調査でネガティブなフィードバックが増えてきた時は、ブランドの再評価が必要です。市場や顧客との間にズレが生じている可能性が高く、現状を放置するとブランドの信頼性や価値がさらに低下してしまいます。単なるプロモーション強化だけでは根本的な解決にはなりません。ブランドのポジショニングやメッセージ、ビジュアルの一貫性を見直し、時代や顧客ニーズに合った形へ進化させることが求められます。リブランディングは停滞を打破し、再成長を導くための重要な契機です。
[ 理由 ]
● 市場との「ズレ」が蓄積され、ブランドが消費者との接点を失っている可能性が高い。
● ネガティブなブランドイメージは放置すると回復が極めて困難になる。
[ 典型例 ]
● 認知は高いが好意度・購入意向が低下している場合
● SNS等でネガティブな言及が増加している場合
【 社会環境・価値観の大きな変化 】
社会全体の価値観や規範が大きく変化する局面でも、リブランディングは重要な選択肢になります。SDGs、サステナビリティ、ダイバーシティなどのテーマが注目される中で、過去のブランドメッセージや表現が時代にそぐわなくなることもあります。企業としての姿勢や社会的責任がブランド評価に直結する今、ブランドの在り方を再定義し、新しい価値観に基づいた発信へと切り替えることが、信頼の維持と共感獲得につながります。それは企業が社会と共に進化するための大切な責務でもあります。
[ 理由 ]
● サステナビリティ、ダイバーシティといった価値観が重視される。
● 企業の社会的役割や存在意義を再定義し、発信していく必要がある。
[ 典型例 ]
● SDGs対応をブランドの中核に据える場合
● 時代遅れなジェンダー表現・広告手法を刷新する場合
■ リブランディングが必要な3つの理由

1. 市場や消費者ニーズの変化
現代はデジタル化の進展により、消費者の購買行動が劇的に変化しています。オンラインショッピングやSNSの普及により、消費者はブランドを比較・評価するスピードが格段に速くなりました。また、サステナビリティや多様性といった価値観が重視されるようになり、従来のブランド戦略では共感を得られないケースも増えています。さらに、口コミやSNSでの評価がブランドイメージを大きく左右する時代では、一貫したブランドメッセージと顧客体験の提供が不可欠です。これらの変化に対応できない企業は、競争力を失うリスクが高まります。リブランディングは、市場変化と消費者ニーズに適応するための有効な手段です。
[ ポイント ]
● デジタル化による購買行動の変化
● サステナビリティ・多様性といった新しい価値観の台頭
● 口コミやSNSがブランド評価に与える影響の拡大
2. 競合環境の激化
市場では類似した商品やサービスが次々と登場し、競合環境は激化しています。比較サイトやSNSの普及により、消費者は一瞬で複数ブランドを比較できるようになり「機能」や「価格」だけでの差別化は不可能な時代となりました。その結果、価格競争に巻き込まれ、ブランド価値が低下するリスクが高まっています。こうした状況では、「何を売るか」よりも「なぜそのブランドなのか」を明確にすることが重要です。リブランディングによって、独自の価値提案を再定義し、機能や価格以外での差別化を図ることが競争優位性の確立につながります。競合分析を踏まえたブランド戦略が、選ばれるブランドへの第一歩です。
[ ポイント ]
● 類似商品・サービスの乱立
● 比較サイトやSNSで一瞬で競合と比較される時代
● 機能や価格だけでは差別化できない現実
3. 社内外でのブランド認識のズレ
社内メンバーごとにブランド定義がバラバラだと、発信するメッセージに一貫性がなくなり、顧客体験が分断されてしまいます。さらに、顧客が抱くブランドイメージと、企業が打ち出したい価値が一致していない場合、信頼性が低下し、ブランド価値の毀損につながります。こうした状態を放置すると、競合との差別化が難しくなり、顧客ロイヤルティも低下します。リブランディングでは、ブランドコンセプトを再定義し、社内外で共有できるブランドガイドラインを整備することが重要です。ブランドの一貫性を保つことで、顧客に選ばれる強いブランドを再構築できます。共通言語こそが、組織の結束を生むのです。
[ ポイント ]
● 社内メンバーごとにブランド定義がバラバラ
● 顧客が抱くイメージと、会社が打ち出したい価値が不一致
● ブランドの一貫性が欠如し、顧客体験が分断される
■ リブランディングにおける5つの課題

1. 市場変化に追いつけていない
市場や生活者の価値観は、想像以上のスピードで変化しています。デジタル技術やSNSの普及によって、情報の伝わり方や購買のきっかけも大きく変わりました。かつて通用していた強みやメッセージが、今の時代には響かなくなっているケースも少なくありません。リブランディングでは、こうした変化に合わせてブランドの「存在理由」を改めて見直すことが欠かせません。単なる見た目の刷新ではなく、時代の文脈に合った新しい意味づけを行うことが、次の成長への第一歩になります。変化に応える力が未来を創ります。
2. ブランドイメージが古い
ブランドが長く続くほど、当初の世界観や表現が今の時代感とズレてくることがあります。創業時には新鮮だったデザインや言葉も、今見ると少し古めかしく感じられることがあるでしょう。特に若い世代や新しい市場に広げたい場合、この印象のズレは障害になります。リブランディングでは、これまで築いてきた信頼を大切にしながらも、今の時代にふさわしい見せ方や語り方に更新していくことが重要です。過去を手放すのではなく、今の視点で再解釈する姿勢が求められます。進化こそ、伝統を生かす力です。
➤ 詳細記事:ブランドイメージを高めるデザインの重要性と一貫性
3. 競合との差別化が難しい
多くの市場で製品やサービスの機能・価格が似通っており、「どこも同じ」に見えてしまう状況が生まれています。そんな中で必要なのは、スペックではなくブランドの考え方や姿勢といった“内側の価値”で違いを出すことです。リブランディングでは、自社の想いや文化を見つめ直し、「らしさ」を言葉とデザインでどう表現するかを整理することが鍵になります。差別化は機能ではなく、共感を生む物語の中にあるという視点が大切です。そこにこそ、ブランドの未来が宿ります。物語が共感を呼び、共感が価値を生みます。
4. 顧客接点のズレ
ブランドの理念やメッセージが、実際の顧客体験と噛み合っていないケースは意外と多くあります。広告では魅力的に見えても、店舗や営業、サポートの現場で体験が一致していなければ、ブランドへの信頼は育ちません。リブランディングの本質は、表現を変えることではなく、「どの接点でも同じ想いを感じられる体験」を設計することにあります。言葉で伝えるだけでなく、体験を通じてブランドを感じてもらうことが大切です。その一貫性こそが、信頼を生む基盤になります。体験こそが、ブランドの真実を語ります。
5. 新たなターゲットに響かない
成長の過程で、新しい顧客層や市場に広げようとすると、これまでのメッセージが届かなくなることがあります。価値観やライフスタイルが違えば、共感のポイントも変わります。リブランディングでは、年齢や性別といった表面的な属性ではなく、「どんな考え方や生き方に共鳴してもらいたいか」を丁寧に見定めることが大切です。新しいターゲットに響かない原因は、伝え方よりも「誰の心に語りかけているか」が曖昧になっている場合が多いのです。その解像度の差が、共感の深さを決めます。共感が未来を導く。
■ リブランディングの成功事例

【 Instagram|リブランディングの成功事例 】
Instagramは2016年に大規模なリブランディングを行い、アイコンやインターフェースのデザインを一新しました。それまでのレトロなカメラのアイコンから、シンプルでカラフルなデザインに変更し、よりモダンで視覚的に洗練されたイメージを打ち出しました。このリブランディングの背景には、プラットフォームの進化があります。Instagramは当初、写真共有アプリとしてスタートしましたが、成長とともに動画やストーリー機能など、より多様なコンテンツを扱うプラットフォームへと変化しました。新しいロゴやデザインは、こうした機能の多様化を反映させ、より広範なユーザー層にアピールすることに成功しています。リブランディングにより、Instagramは現代的で活気あるブランドイメージを確立し、世界的なSNSプラットフォームとしての地位をさらに強化しました。
[ リブランディングが成功した理由 ]
● 新しいアイデンティティで視覚的魅力を強化
Instagramのリブランディングでは、新しいロゴデザインとカラフルな背景を導入し、視覚的な魅力をさらに引き出しました。これにより、ユーザーの印象に残る一貫したビジュアルアイデンティティを確立し、アプリ全体の使いやすさと美的統一感を強化しています。
● シンプルさとインターフェースの改善
リブランディング時にシンプルでフラットなデザインを採用することで、直感的に操作しやすいインターフェースを提供しました。このシンプルさが幅広いユーザー層に好評で、機能が複雑化してもユーザーが使いやすいデザインに貢献しています。
● ブランドのモダンさを再定義
Instagramは新たなビジュアルで、モダンでシンプルなデザインを追求しました。このアプローチにより、デジタル世代にアピールし、若年層から支持を得ています。ブランドが時代に合わせて進化し続けていることを強調し、ユーザーに新鮮な印象を与えました。
● アイコンとビジュアルの一貫性
アイコンとアプリ全体のデザインを統一することで、Instagramのビジュアルアイデンティティがさらに強化されました。特に、アプリ内でのアイコンやカラーの一貫性はユーザーに視覚的な安定感を提供し、ブランドの信頼性を高める役割を果たしています。
● グローバルな魅力と認知の向上
リブランディング後、シンプルでわかりやすいデザインが国境を越えて受け入れられやすくなりました。このグローバル対応が、Instagramの認知度向上とユーザーの増加につながり、多国籍のユーザーに対応するための重要な要素となっています。
[ 画像出典 ] Meta公式サイト・Gingersauceより

【 Slack|リブランディングの成功事例 】
Slackは、チームコミュニケーションツールとしての機能とユーザー体験を重視し、2019年にロゴを中心にリブランディングを行いました。それまでのマルチカラーのハッシュタグ型のロゴから、よりシンプルでモダンなデザインに変更され、柔軟性と視認性を高めました。このリブランディングの背景には、ブランドの成長と国際展開があり、複数の場面でロゴをより効果的に使用するため、シンプルで洗練されたデザインが求められたのです。結果として、Slackはビジュアル面での一貫性を強化し、テクノロジー企業としての信頼性と先進性を強調しました。このリブランディングは、ユーザーからも肯定的に受け入れられ、Slackの市場ポジションをより強固にすることに成功しました。
[ リブランディングが成功した理由 ]
● ブランドのシンプルなデザイン統一
Slackはリブランディングでシンプルで柔軟なデザインを採用し、さまざまなメディアやサイズに対応しやすくしました。これにより、視覚的な一貫性が保たれ、ブランドの認知が強化されました。
● アイコンデザインの再構築
旧ロゴの複雑なデザインを刷新し、よりモダンで認識しやすいアイコンに変更しました。新しいアイコンは、Slackの多様なツールと統一され、ユーザーに対して親しみやすさを向上させました。
● カラーパレットの改善
多彩な組み合わせを使っていたデザインを見直し、よりシンプルなカラーパレットに統一しました。これにより、ブランドイメージの視覚的な一貫性が確保され、よりプロフェッショナルな印象が強まりました。
● 多用途に適したブランド要素の追加
さまざまなフォーマットで利用されるため、ロゴやシンボルが柔軟に適応できるよう設計。この柔軟性により、モバイルアプリやデスクトップアプリで一貫したブランド体験を提供しています。
● ブランドメッセージの再定義
リブランディングでシンプルかつ現代的なメッセージを伝えることを目指し、ユーザーが直感的にブランドの価値を理解できるようにしました。これにより、ブランドの魅力が伝わり、ユーザーの愛着がさらに強まりました。
[ 画像出典 ] Slack公式サイトより

【 LEGO|リブランディングの成功事例 】
LEGOは1990年代に経営危機に直面しましたが、ブランドの再定義を通じて驚異的な復活を遂げました。リブランディングの一環として、LEGOは伝統的なブロック遊びのブランドから、デジタルエンターテインメントや映画、テーマパークなど、多様なエンターテインメントに進出しました。ブランドメッセージも「遊びを通じて学ぶ」という理念にフォーカスし、創造性や教育的価値を強調しました。LEGOは、映画「LEGOムービー」の成功を通じて、新たな世代にアピールし、幅広い年齢層の支持を集めています。このリブランディングにより、LEGOは単なるおもちゃメーカーから、グローバルなエンターテインメントブランドへと進化し、業績を劇的に改善しました。
[ リブランディングが成功した理由 ]
● 教育的価値と遊びの再強調
リブランディングでLEGOは「遊びながら学ぶ」価値を再定義しました。教育を軸にしたコンテンツが支持を集め、親や教育関係者の間でLEGOが学びのツールとして位置付けられています。
● ターゲット拡大と多世代の支持
子どもだけでなく大人をターゲットに含め、クリエイティブなプロジェクトやデザインシリーズを提供。多世代に支持されることで、ブランドの多様な顧客層が形成されました。
● デジタルコンテンツと連携
LEGOはゲームや動画配信などのデジタルコンテンツとの連携を進め、オンラインとオフラインの体験を融合。これによりブランド価値が強化され、デジタル世代にもアプローチしています。
● 多様なキャラクターとのコラボレーション
LEGOは「スター・ウォーズ」や「ハリー・ポッター」とのコラボレーションでファン層を拡大。ブランドのアイコンであるブロックの世界を広げ、幅広いユーザーに愛される要素を増やしました。
● ブランドの持続可能性への取り組み
持続可能な素材の使用や環境に配慮した生産体制の導入により、ブランドの社会的責任が評価されています。この取り組みによって、LEGOはサステナブルなブランドとして支持を得ています。
[ 画像出典 ] Lego公式サイトより

【 McDonald’s|リブランディングの成功事例 】
McDonald’sは、健康志向の高まりやファストフード業界の競争激化を受け、2000年代にリブランディングを実施しました。それまでの「ジャンクフード」のイメージから脱却し、メニューにサラダや低カロリー商品を加えることで、より健康的なブランドイメージを強調しました。また、店舗デザインも大幅に改装し、居心地の良いカフェ風のインテリアを採用するなど、ファストフード店のイメージを刷新しました。このリブランディングにより、McDonald’sは新しい顧客層を取り込み、既存顧客にも再びアピールすることに成功しました。ニーズに対応したメニューと体験のアップデートが、世界的に高評価を得ています。
[ リブランディングが成功した理由 ]
● 健康志向メニューの導入
消費者の健康意識の高まりに対応し、サラダや果物、低カロリーメニューなどを追加。これにより、ファストフードとしてのイメージを刷新し、健康志向の顧客層も取り込むことができました。
● 店舗デザインの刷新
新たなデザインコンセプトで店舗内装を改装し、居心地の良いカフェ風の空間を演出。ファミリー層や若年層だけでなく、多様な層にリラックスして過ごしてもらえるようになりました。
● デジタル体験の強化
注文アプリやセルフオーダー端末を導入し、利便性を向上。デジタル体験を強化することで、効率的なサービスとともに、顧客の満足度を向上させることに成功しました。
● 地域特化型メニューの展開
各地域に合わせた限定メニューを提供することで、地元の食文化に合わせた柔軟な戦略を実施。これにより、地域特有のニーズに応え、ローカルな顧客基盤を強化しました。
● 持続可能性への取り組み
環境に配慮した包装材やリサイクル活動、食品ロス削減などの取り組みで企業の社会的責任を強化。環境問題に対する意識の高まりに対応し、持続可能なブランドとしての評価が向上しました。
[ 画像出典 ] Roman・McDonald’s Cyprusより

【 Nike|リブランディングの成功事例 】
Nikeは、数十年にわたりリブランディングを重ねており、その中でも特筆すべきは「Just Do It」というスローガンを中心に据えた1980年代後半のリブランディングです。当時、Nikeは競合するReebokに市場シェアを奪われつつありましたが、このシンプルかつ力強いメッセージによって、全世代のアスリートに向けた普遍的なブランドイメージを確立しました。その後も、持続可能性や社会的責任を強調したキャンペーンを展開し、単なるスポーツブランドではなく、社会的メッセージを発信するグローバルブランドとしての地位を固めました。Nikeはこのリブランディングで、スポーツウェアの域を超えたブランド体験を提供し続けています。
[ リブランディングが成功した理由 ]
● 強力なブランドメッセージ「Just Do It」
Nikeの「Just Do It」というスローガンは、挑戦や努力を促すメッセージとして世界中の消費者に広く認知されています。シンプルながら強いメッセージが多くの人々の心に響き、スポーツブランドとしてのイメージを確立しました。
● 社会問題への積極的な取り組み
人種差別や平等といった社会問題への支援を行うことで、消費者の共感と支持を獲得。カーネル・カーペニックを起用した広告キャンペーンは議論を呼び、ブランドのアイデンティティを強化しました。
● デジタルプラットフォームの活用
Nikeは「Nike+」や「Nike Run Club」といったデジタルプラットフォームでユーザーと接点を持ち、個別の体験を提供。データに基づくパーソナライズ戦略が顧客のロイヤルティ向上に寄与しています。
● 持続可能な商品開発への取り組み
Nikeはリサイクル素材やエコフレンドリーな製品開発に力を入れ、環境意識の高い消費者層にアピールしています。これにより、持続可能なブランドとしての認識が広がり、支持層を拡大しました。
● 限定商品やコラボによる希少価値の提供
アーティストやスポーツ選手とのコラボレーションによる限定商品を展開し、希少性と新鮮さを常に提供。これにより、ファッション性も兼ね備えたスポーツブランドとしての地位を強固なものとしています。
■ リブランディングの弊社実績
弊社では、多様な業種・規模のクライアント様に対して、ブランド戦略、ロゴデザイン開発、ブランドステートメント策定、名刺・封筒・Webサイトなどのデザイン開発を一貫して手がけています。ネーミングやパッケージ、サインデザインなども包括的に開発しブランドの統一感と差別化を実現しています。

[ LANDPIA ]
LANDPIAは、不動産の有効利用を通じて活力ある経済社会の実現に貢献するブランドです。日本には、まだまだ未開拓の土地や、価値を見出されていない土地が多く残されています。それらを発見、有効活用することで、社会全体が潤う仕組みを作ることを掲げています。
[ 詳細 ] chobico WORKS | LANDPIAより

[ RENEWABLE JAPAN ]
すべての人を、エネルギーの主人公に。主人公という言葉には、同じ時代を生きる一人ひとりにエネルギーづくりの主体となって活躍していただける社会を実現したいというブランドの想いを込めています。そして、共にエネルギーについて考え行動し、社会の創生に寄与していく企業ブランドの姿勢を表しています。
[ 詳細 ] chobico WORKS | RENEWABLE JAPANより

[ I’ROM GROUP ]
希望と安⼼に満ちた健やかな未来を、すべての⼈へ。アイロムグループは「憂いなき未来のために。」のブランドプロミスのもと、人々の未来が希望と安心そして健康で満ちあふれたものとなるように先端医療事業、SMO事業、CRO事業、メディカルサポート事業の4つの事業でブランドを展開しています。
[ 詳細 ] chobico WORKS | I’ROM GROUPより

[ NIHONN MOBILITY SERVICE ]
NIHONN OIL SERVICEからNIHONN MOBILITY SERVICEへの社名変更に伴うコーポレートアイディンティティ開発。新ブランドのコンセプトは、「新しい移動と技術の進化。モノを超えたサービスとしてのあり方。」モビリティには無限の可能性があることを表現しています。
[ 詳細 ] chobico WORKS | NIHONN MOBILITY SERVICEより

■ リブランディングに関するよくある質問
数多くのリブランディング案件を手がける中で「どこまで変えるべきか」で迷う企業が多いと感じます。ここでは、実務経験から得た判断のポイントとよくある質問に答えます。
[ よくある質問① ]
Q :リブランディングが必要になる典型的なケースは何ですか?
A :主に以下の5つです:市場トレンドや価値観の変化へ追随、競合と差異化が困難、ブランドイメージの陳腐化、新規事業やターゲットへの展開、M&A・組織・経営ビジョンの変化へ対応するタイミングです。これらはリブランディングの明確なサインです。
[ よくある質問② ]
Q :リブランディングの進め方はどのようなステップですか?
A :以下のステップで戦略的に進行するのが理想です。
- 現状分析(ブランド認知、顧客インサイト、競合/市場環境を含む)
- ブランド戦略の再定義(ターゲット、ミッション、提供価値の再設計)
- ビジュアル・メッセージの刷新(ロゴやカラー、コピーを含む)
- 社内浸透策(研修や浸透用ツールなど)
- 市場への再ローンチ(広報、SNS、キャンペーン等)
[ よくある質問③ ]
Q :変更ポイントは「見た目」だけでいいんですか?
A :いいえ。リブランディングとは単なる表層刷新ではありません。「存在意義」を明確化し、その上で「How」「What」を戦略的に再設計する包括的なプロセスです。⎯例えばブランド資産の再定義やメッセージ体系の再構築なども含まれます。
[ よくある質問④ ]
Q :リブランディングを成功させるための注意点は?
・ 顧客との対話を欠かさない(インサイト重視)
・ ブランド資産を丁寧に継承すること
・ ステークホルダー(社員・顧客含む)とのコミュニケーションを密にすることの3点です。
[ よくある質問⑤ ]
Q :リブランディングを短期で成果を上げるための方法は?
A :リブランディングは短期的成果に焦点を置けば失敗の原因になります。信頼・認知・共感を時間をかけて積み上げる長期戦として取り組み、効果を中長期で評価するアプローチこそが成功の鍵です。

■ リブランディングのためのチェックリスト
数多くのリブランディング案件を手がける中で感じるのは「変える勇気」と同時に「守る判断」が重要だということ。ここでは、成功に導くための実践的チェック項目を整理しました。
【 ブランドイメージに関するチェック 】
□ 最後にブランドのロゴやビジュアルを見直したのは5年以上前である。
□ サイトや販促物のデザインが「古い」と社内外から言われたことがある。
□ ブランドのストーリーや理念が時代や顧客層とズレていると感じている。
【 ターゲットと市場の適合性に関するチェック 】
□ 創業当時と現在で主な顧客層が大きく変化している。
□ 顧客から「御社って何を一番得意としているの?」とよく聞かれる。
□ ブランドの伝えている価値が実際の顧客ニーズと合っていないと感じる。
【 競合との差別化に関するチェック 】
□ 自社と競合他社のWebサイトや広告の見た目・メッセージが似てきている。
□ 自社の強み・独自性を短く一言で説明できない。
□ 競合ブランドと比較されたときに「選ばれる理由」が曖昧になっている。

■ まとめ
現代では、ブランドは単なる識別マークではなく、「企業の価値観や社会への貢献」を体現する存在になっています。そのため、情報過多や購買行動の変化、多様化する価値観に対応できないブランドは、選ばれなくなりつつあります。特に以下の5つのケースでは、リブランディングが有効です。①市場環境の変化、②競合との差別化の喪失、③ブランドイメージの老朽化、④事業拡大や新商品展開、⑤M&Aなどによる組織やビジョンの転換。これらはブランドにとって危機であると同時に、再定義と進化のタイミングです。リブランディングを成功させるには、まず「現状分析」で課題を浮き彫りにし(調査/顧客インサイト)、続いて「ブランドストーリーの策定」「視覚表現の刷新」「社内浸透」「市場再ローンチ」といった手順を踏むことが必要です。戦略的かつ包括的にブランドを見直し、企業の成長と信頼を再構築していくための核となるプロセスといえます。

株式会社チビコ
今田 佳司 (ブランディング・ディレクター)
ブランド戦略とコミュニケーションデザインを掛け合わせることで、企業や商品などのブランド価値の向上や競争力強化に貢献。数多くのブランディングを手がける。

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